2020年代もいよいよ折り返しとなる2025年を迎えた。国内では、ドライバーレス車両に求められる保安要件の議論が進められているようだ。自動運転専用設計車には、ハンドルなどの制御装置のみならずバックミラーなども不要とする案が出ている。
サービス実証・実装も加速し、国内外で継続走行する自動運転車もその数を大きく伸ばしているが、それに比例して新たなエラーも続発しているようだ。
2025年1月の10大ニュースを一つずつ振り返っていこう。
記事の目次
- ■自動運転バス、AIが「ブレーキ踏みすぎ」で部品破損か 安全重視があだに?(2025年1月3日付)
- ■自動運転レベル3、ドイツが世界最速の「時速95km」まで認可(2025年1月7日付)
- ■自動運転ビジネス専門家・下山哲平が語る「桶屋を探せ」論 結局「自動運転」は儲かるのか(2025年1月9日付)
- ■Googleの自動運転タクシーに不具合!駐車場を周り続け、乗客「ドッキリかと」(2025年1月13日付)
- ■自治体と連携のGO、官製ライドシェアで再び「沈黙は金なり」モード?(2025年1月13日付)
- ■日本の自動運転タクシー、「アメリカ企業頼み」の様相 単独ローンチの機運しぼむ(2025年1月15日付)
- ■Googleもトランプ氏に「自動運転」でごますり 就任控え、テスラに負けじと(2025年1月17日付)
- ■タクシー配車回数、準大手の米リフトに「Googleの自動運転サービス」が追いつく?(2025年1月20日付)
- ■自動運転車、「バックミラー」不要に?国交省、基準見直しを検討(2025年1月21日付)
- ■テスラの視覚システム、列車を「トラックや乗用車の車列」と誤認識(2025年1月22日付)
- ■【まとめ】走行台数増加に伴いトラブル事案も多様化
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■自動運転バス、AIが「ブレーキ踏みすぎ」で部品破損か 安全重視があだに?(2025年1月3日付)
広島県福山市で実証中止していた自動運転バスの運行が再開されたようだ。ブレーキの不具合などが見つかり当初予定を変更していたが、無事再開したようだ。
当初、11月末から試乗会を予定していたが、2日目終了後に機器の異常が検知された。自動運転用のブレーキシステムや冷却系統に不具合が生じたことが原因とされている。
自動運転実証を委託している日本モビリティによると、ブレーキの多用で電流が流れすぎたことによりモーター内の部品が破損したという。交通量の多い市街地走行において、自動ブレーキが頻繁に作動したのだ。
安全性を最重視した自動運転車は、わずかな危険要因にも敏感に反応し、安全策を講じる。この絶対安全設計がアダになったとも言える。人間のドライバーに比べ、どうしてもブレーキの回数が増えるのだろう。
ただ、ベーパーロック現象やフェード現象が発生するような使い方ではなく、多用したとしても日常使用の範疇のようにも感じる。
いずれにしろ、ドライバーレスを想定した自動運転車は、こうした点を踏まえた設計が求められるのだろう。
【参考】詳しくは「自動運転バス、AIが「ブレーキ踏みすぎ」で部品破損か 安全重視があだに?」を参照。
■自動運転レベル3、ドイツが世界最速の「時速95km」まで認可(2025年1月7日付)
独メルセデス・ベンツが、レベル3システム「DRIVE PILOT」の速度制限引き上げを発表した。DRIVE PILOTのODD(運行設計領域)を時速95キロまで拡大するアップデートがドイツ連邦自動車交通局(KBA)から承認され、2025年中に実装を開始する。
レベル3は、これまでホンダ、メルセデス、BMWが実用化しているが、時速60キロを上限とするなどいずれも高速道路渋滞時に限定されていた。いまいち使い勝手が悪く、盛り上がりに欠けていたが、時速95キロで走行可能となれば話は変わってくる。
レベル3を高速道路での通常走行に使用できれば、その利便性は大幅に増し、長距離移動の負担が大幅に軽減される。偉大な一歩だ。
ユーザーが増えれば収集できるデータも増え、開発はさらに加速する。高速道路におけるレベル4や一般幹線道におけるレベル3への道に繋がっていくのだ。他社含め、レベル3市場の動向に改めて注目したい。
【参考】詳しくは「自動運転レベル3、ドイツが世界最速の「時速95km」まで認可」を参照。
■自動運転ビジネス専門家・下山哲平が語る「桶屋を探せ」論 結局「自動運転」は儲かるのか(2025年1月9日付)
自動運転ラボを主宰する下山哲平氏が、近い将来大きな市場を生み出すことが想定される自動運転分野で、いかにビジネスチャンスを見出すか――を解説した記事だ。
下山氏は、将来実現するだろう自動運転サービスから逆算し、「桶屋を探す」ことが成功のカギを握るとしている。
自動運転に関するビジネスは、自動運転システム開発や運行管理に留まらない。無人車両を活用したサービスにはどのようなものが考えられるか。こうした車両に求められる仕様にはどのようなものが想定されるか――など思考をめぐらせ、そこに付随するシステムや素材など含め多角的に検討していくことで、まったくの異業種にもビジネスチャンスが生まれる。
広告ビジネスも面白い。移動サービスを通じ、人間のリアルな行動データを反映した広告モデルを構築できるためだ。どのような未来が訪れ、どのように自社サービス・ソリューションを生かすことができるのか。早期に検討を開始したいところだ。
【参考】詳しくは「自動運転ビジネス専門家・下山哲平が語る「桶屋を探せ」論 結局「自動運転」は儲かるのか」を参照。
■Googleの自動運転タクシーに不具合!駐車場を周り続け、乗客「ドッキリかと」(2025年1月13日付)
Waymoの自動運転タクシーに、新たな不具合が発生したようだ。乗客がWaymo車でロサンゼルスの空港に向かったところ、空港の駐車場でWaymo車がぐるぐると周回し続け、降車できなかったという。
客は搭乗予定の飛行機に間に合わなくなることを危惧しWaymoのカスタマーサービスに連絡するもなかなか解決せず、最終的に駐車場を8周回り、あやうく飛行機に乗り遅れるところだったとしている。
こういったトラブルも事前に想定しておくべきだ。連絡を受けたカスタマーサービスが迅速かつ的確に事態を把握し、オペレーターが遠隔操作ですぐに対処できるか。また、有事の際、乗客が自らの判断で降車する手段が講じられているのかなど、考慮しておく必要がある。
乗客自らの判断による降車は原則禁止されるべきだが、事故に遭遇した際など必要な時は必ず出てくる。悪用できない緊急脱出ボタンの設置など、自動運転車にはさまざまな対策が求められるのだろう。
【参考】詳しくは「Googleの自動運転タクシーに不具合!駐車場を周り続け、乗客「ドッキリかと」」を参照。
■自治体と連携のGO、官製ライドシェアで再び「沈黙は金なり」モード?(2025年1月13日付)
LINEヤフーの川邊健太郎会長が、日本版ライドシェアに牙をむいた。SNSで「官製の制度(日本版ライドシェア、公共ライドシェア)にこれから数百億円の補助金が使われてようとしている」と指摘し、一国民として全く受け入れられない――と表明している。
同氏は国の規制改革推進会議の委員も務めており、本格版ライドシェア推進派として解禁に向けた意見を積極展開している。
日本版ライドシェアの効果と補助金の用途については議論の余地があるため何とも言えないが、何としても解禁を阻止したい業界側と推進派の攻防はまだまだ続きそうだ。
一度、川邊氏と、全国ハイヤー・タクシー連合会を率いる川鍋一朗氏の「カワナベ対談」を実施してみてはどうだろうか……。
【参考】詳しくは「自治体と連携のGO、官製ライドシェアで再び「沈黙は金なり」モード?」を参照。
■日本の自動運転タクシー、「アメリカ企業頼み」の様相 単独ローンチの機運しぼむ(2025年1月15日付)
自動運転タクシー実現に向けた機運が日本でも高まっているが、その多くは先行する米国企業頼み――という構図が浮き彫りになった。
GM・Cruise勢と共同で事業展開していたホンダに加え、日本交通・GOがWaymoとパートナーシップを交わし、Waymoの日本進出を進めていくこととなった。
GM勢が手を引いたためホンダは苦戦しそうだが、Waymoとのパートナーシップは反則レベルとも言えるほど最高の一手だ。世界最高峰の技術に日本企業が立ち向かうのは容易ではない。
国産の自社技術で勝負するティアフォーは、どのようにWaymoに立ち向かうのか。予定するサービス提供エリアも被りそうなだけに、意識しないわけにもいかなそうだ。
【参考】詳しくは「日本の自動運転タクシー、「アメリカ企業頼み」の様相 単独ローンチの機運しぼむ」を参照。
■Googleもトランプ氏に「自動運転」でごますり 就任控え、テスラに負けじと(2025年1月17日付)
トランプ新政権に歩み寄るのは、テスラだけではないようだ。選挙前、トランプ氏に敵視されていたグーグルも大統領就任式基金に寄付するなど、友好関係構築に必死のようだ。
選挙戦においてトランプ氏をバックアップしたテスラのイーロン・マスク氏への恩返しかどうかは不明だが、トランプ氏は自動運転の社会実装を効率的に行うことができるよう連邦政府で統一基準のようなものを策定する方針を発表している。
Waymoの共同CEOもこうした政策を高く評価し、「自動運転による安全で持続可能な輸送の実現は、トランプ政権が目指すものと非常に合致している」と表明している。
トランプ氏に標的にされると、その言説に正当性があるかどうかに関係なく多大な損失を被る可能性が高い。目を付けられないよう適度に良好な関係を構築し、スムーズに事業展開できるよう同氏に歩み寄る動きは今後も続くものと思われる。
【参考】詳しくは「Googleもトランプ氏に「自動運転」でごますり 就任控え、テスラに負けじと」を参照。
■タクシー配車回数、準大手の米リフトに「Googleの自動運転サービス」が追いつく?(2025年1月20日付)
シリコンバレーに本社を置くVC関連の人物によると、サンフランシスコにおける移動サービスで、Waymoの自動運転タクシーがLyftのライドシェアの配車回数に並ぶ水準に達したという。
Waymoが登場した時点(2023年8月)のシェアは、Uberが66%、Lyftが34%だったが、2024年11月にはWaymoのシェアがLyftと並ぶ22%になり、Uberは55%に減少したという。なお、一般タクシーはカウントされていないようだ。
それぞれの配車回数・エビデンスは不明だが、これは非常に興味深い。Waymoの料金水準は、ライドシェアサービスと大差なく同水準とされる。目的地に到着するまでの所要時間はライドシェアに劣るが、一般ドライバーの運転よりも無人サービスを好む人が増加しているのだろう。
ただ、この投稿に反応したLyftのCEOによると、2024年11月の自社シェアは30.6%で、1年前と比べほぼ増減していないという。
どちらが正しいのか第三者にはわからないが、Waymoの配車回数が増加傾向にあることには変わらない。今後どのように推移していくのか、正確な比較が待たれるところだ。
【参考】詳しくは「タクシー配車回数、準大手の米リフトに「Googleの自動運転サービス」が追いつく?」を参照。
■自動運転車、「バックミラー」不要に?国交省、基準見直しを検討(2025年1月21日付)
国交所所管の自動運転車の安全性能確保策に関する検討会で、ドライバーレス自動運転車の保安基準に関する議論が進められているようだ。
人間のドライバーを前提としない自動運転車両では、ハンドルやブレーキなどの手動制御装置が必要なくなるほか、バックミラーなどの安全装備も必要なくなる。
一方、現行の保安基準や国連規則では人間による運転を前提に規則が定められているため、整合しない面がいろいろと出てくる。
自家用車ベースの自動運転車など、手動運転併用モデルであればそれほど問題にはならないが、e-PaletteやOriginなどのような専用設計車両を開発する際、基準がなければ設計しづらい。都度認可するとしても、審査する側も判断に迷う。
新規格の自動運転車に求められる装備はどのようなものになるのか。議論の行く末に注目だ。
【参考】詳しくは「自動運転車、「バックミラー」不要に?国交省、基準見直しを検討」を参照。
■テスラの視覚システム、列車を「トラックや乗用車の車列」と誤認識(2025年1月22日付)
テスラのAutopilotが、踏切を交差点に、列車をトレーラーなどの車列に誤認する事案が米国で確認されたようだ。レベル2ADASとして提供されている限り大事に至る問題ではないが、テスラとしては見過ごせない課題と言える。
ウェブ上にアップされた画像を見ると、車内ディスプレイに表示されたAutopilotのビジョンシステムが、線路を車道として認識している様子がわかる。この誤認により、通過する列車も車列として認識してしまったのかもしれない。
画像を見る限り、現場には通常の交差点信号も設置されていることから、踏切を交差点と誤認した可能性もありそうだ。さすがに、Autopilotは踏切や線路を知らない――ということはないものと思われるが、遮断機も認識しておらず、ちょっと心配になる状況だ。
過去には、FSD使用中のテスラ車が列車通過中の踏切に突っ込みかけた動画もアップされている。あくまでレベル2で正しく使用する限り、ドライバーは目視で確認しているため大事には至らないが、この水準のままレベル3以降の自動運転にアップデートされてしまうと重大インシデントなる。即座にリコールがかかり、自動運転許可を取り消されるレベルの誤認だ。
こうした案件が定期的にSNSなどに上がってくるため、テスラの自動運転技術に不安を覚える人も少なくない。自動運転化までにどこまで精度を引き上げられるのか。そして、その日はいつ訪れるのか。その動向に引き続き注目したい。
【参考】詳しくは「テスラの視覚システム、列車を「トラックや乗用車の車列」と誤認識」を参照。
■【まとめ】走行台数増加に伴いトラブル事案も多様化
走行台数の増加に伴い、新たなトラブル事案が顔を見せるようになってきた。駐車場を周回し続ける事案は自動運転システムに起因する問題だが、その原因はどのようなものだったのか。今後、判断の自由度を増したAIが想定外の制御を行うことも考えられる。
ハード面においても、自動運転車特有の制御が一部機能に過度の負担をかける――といった可能性がある。各事案については、さまざまな観点からじっくりと精査し、一つひとつ解決して安全性・確実性を高めていくことが求められる。
折り返しを迎えた2020年代。前半5年の進化を踏まえ、今後の5年で自動運転技術・サービスはどこまで進化することになるのか。新たなフェーズの第一歩となる一年になりそうだ。
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