無人タクシー(ロボットタクシー)完全解説!自動運転技術で走行

公道実証が加速 ウェイモに続く無人化は?



米Waymo(ウェイモ)の商用サービス実施を皮切りに、現実味を帯びてきた無人タクシー(ロボットタクシー)。ドライバー不在の自動運転タクシーが当たり前のように客を乗せて市街地を走行する光景も、近い将来実現する見込みだ。







海外では米国のほか中国でも公道実証が進んでおり、本格実用化に向けた取り組みは過熱の一途をたどっている。無人化された自動運転タクシーはどのように運行し、乗車希望者はどのように利用するのか。無人タクシーの仕組みについて掘り下げて考えてみよう。

■無人タクシーの仕組み
乗客にとっては配車アプリ利用時と変わらないサービスに

現在世界各地で稼働している一般的なタクシーにおいては、配車アプリ対応の車両が増加しており、予約から目的地の告知、決済に至るまで、スマートフォンやタブレットを通して行うことが可能となった。コミュニケーションを必要としない乗客にとって、ドライバーは安全運転業務に従事してくれれば良い存在になったと言えるだろう。

つまり、車両の管理と運転操作以外の必要な業務はスマートフォンなどで賄まかなうことができるようになったのだ。車両の管理は別途必要だが、ドライバーに代わる自動運転レベル4(高度運転自動化)技術が確立されれば、基本的にタクシーは無人で運行することが可能になる。

乗客は、現在の配車アプリ利用時と同様、スマートフォンでタクシーを呼び、乗降場所指定や決済処理の後降車するシンプルな方法で利用できる。

運賃が大幅に低下する可能性も

料金設定は、サービスの普及促進を考慮すると当面は従来の配車サービスと同等か若干低く設定する可能性も考えられる。高額なイニシャルコスト、研究開発費、人件費削減効果、国土交通省の省令による取り扱いなど、料金を左右する要素はいろいろありそうだが、社会受容性を高めるためにも、まずは利用しやすい環境を作る必要があるはずだ。

また、将来的には大幅に低下する可能性もある。米調査会社アーク・インベストメントが2019年に発表したレポート「BIG IDEAS 2019」によると、自動運転タクシーの移動コストは従来に比べ約13分の1となるようだ。実現すれば「移動」に対する大勢の考え方を大きく変えていくことになりそうだ。

【参考】自動運転タクシーの移動コストについては「自動運転技術が東京〜大阪間「1万円タクシー」を実現する」も参照。

遠隔監視システムが要に

無人タクシーには車両そのものに自動運転レベル4以上の技術が搭載され、周囲の状況をAIが判断してアクセルやブレーキ、ハンドルを制御するのはもちろんのこと、より安全性を高めるため遠隔監視システムが導入されることになる。

実証試験を兼ねた現在開発されているレベル4車両には、ドライバーが乗車し手動で制御するシステムを備えているものも多いが、本格的なサービス普及段階に入ると、ハンドルなどを備えないレベル4車両が中心になるものと思われる。普及段階の主なニーズは商用車であり、限定された区域を自動で走行する機能が備わっていれば良いからだ。

車両には緊急停止ボタンなど最低限の手動装置のみが取り付けられることになるが、運行状況の管理や万が一の事態に備える手段として、遠隔監視システムが必須となる。次世代高速通信5Gなどを活用し、管制センターで複数の車両を常時監視し、必要に応じて制御する仕組みだ。

ロボットタクシー開発企業は概おおむね遠隔監視システムの開発も進めており、ZMPと日の丸交通が日本初となる遠隔型自動運転システムの公道実証実験を2017年12月に行っているほか、日産自動車とDeNAが実証を進める新モビリティ「Easy Ride(イージーライド)」においても、両社は遠隔管制センターを設置し、先進技術を融合させたシステムによる遠隔管制のテストを行っている。

このほか、愛知県でも2019年2月にアイサンテクノロジーやティアフォー、名古屋大学などが共同で5Gを活用した複数台の遠隔監視型自動運転の実証実験を行うなど、他業種協同のもと開発が進められている。

【参考】愛知県における遠隔システム実証実験については「国内初!5G車両を含む2台の遠隔監視型自動運転の実証実験 愛知県一宮市で実施」も参照。

当面は自動運転レベル4で運用

自動運転タクシーは、しばらくの間レベル4車両による時代が続く。レベル4は走行区域が限定されるため、区域内から区域外への移動ニーズに対しては、乗り換えが必要となる。こうした需要にスムーズに応えられるMaaS(Mobility as a Service)をはじめとした仕組みづくりも必要となりそうだ。

また、予約を待つ間、車両が待機するステーションなども必要となる。EV(電気自動車)の場合、ワイヤレス充電設備により待機中に自動で充電するシステムをステーションに配備するなど、さまざまなアイデアが生まれそうだ。

■開発企業
Waymo:世界初の商用サービススタート 無人運行も実現

Google系の米Waymo(ウェイモ)は2018年12月5日、米アリゾナ州フェニックスで自動運転タクシーの有料商用サービス「ウェイモワン」を世界で初めて開始した。

当初は乗客を過去の実証実験参加者らに限定し、安全のため運転席に専用のスタッフが同乗した状態で運行していたが、徐々に対象を拡大するとともにセーフティドライバーなしの無人運行も開始し、2020年には一般を対象とした無人運行にも着手している。

今後は他地域での展開をはじめ、自動車メーカーとのパートナーシップのもとどのような戦略で世界進出を図っていくのか注目だ。

GM×Cruise Automation:安全性を重視し計画を先延ばし

米自動車メーカー大手のゼネラル・モーターズ、及び傘下のCruise Automation(クルーズ・オートメーション)は、当初2019年中に自動運転タクシー事業に着手する予定だったが、安全性を重視し計画を先延ばししている。

一方、2020年1月には無人走行を可能にするバンタイプのモデル「Origin(オリジン)」を発表しており、同モデルの量産化とサービス化に向けた動向に注目が集まっている。ハンドルなどを備えていないモデルのため、低速オンデマンドバスなどのサービス形式で活用する可能性もありそうだ。

Aptiv:有料配車回数10万回突破 ヒュンダイとの提携にも注目

自動車部品大手の米Aptiv(アプティブ)は配車大手の米Lyft(リフト)と共同で自動運転タクシーの実証を進めており、2018年5月から2020年2月までの2年足らずで有料配車回数が通算10万回に達したという。

また、同社は韓国の現代(ヒュンダイ)ともパートナーシップを結んで合弁会社Motionalを設立しており、2022年からレベル4システムを自動運転タクシー事業者らに提供する計画を発表している。

【参考】Aptivの取り組みについては「米Aptivが頭角!自動運転タクシーの有料配車回数、10万回超え」も参照。

Navya:6人乗りの「AUTONOM CAB」製品化

仏スタートアップのNavyaは、完全自動運転タクシー「AUTONOM CAB(オートノムキャブ)」を開発し、2018年に製品化したようだ。ハンドルやブレーキなどを備えない6人乗りの車両で、ライダーやカメラ、レーダーなどで周囲を監視するほか、非常停止ボタンや緊急時のハンドブレーキなども備えている。

同社の自動運転EVバス「NAVYA ARMA(ナビヤ・アルマ)」はすでに世界各国で走行しており、オートノムキャブも世界各地の企業が実証や実用化に向け活用する場面が増えそうだ。

ダイムラー×ボッシュ×エヌビディア:2019年実証実験着手、高い技術力で先行勢を脅かす存在に

ヨーロッパ勢では、独自動車大手のダイムラーと独自動車部品大手のボッシュ、米半導体大手エヌビディアの協業に注目だ。3社は2019年に米シリコンバレーで無人の配車サービスを試験的に開始する方針を打ち出している。

また、ダイムラーは独BMWとレベル4相当の自動運転車の共同開発も発表している。サービス領域における両社の提携は解消されたが自動運転開発領域での関係は続いているものと思われ、開発能力の高い2社の取り組みに期待だ。

【参考】ダイムラーとBMWの協業については「ダイムラーとBMW、レベル4級の自動運転車を共同開発」も参照。ダイムラーなどの取り組みについては「ダイムラーの自動運転戦略まとめ 計画や提携状況を解説」も参照。

中国勢:百度やDiDi、WeRideら競争激化

中国では2019年ごろから公道実証が本格化しており、IT大手の百度(バイドゥ)をはじめ、配車サービス大手ののDidi Chuxing(滴滴出行/ディディチューシン)、スタートアップのWeRide、Pony.ai、AutoX、Momentaら開発勢が北京や上海、深センなど各地で実証を進めている。

不特定多数に向けたサービス実証もすでに始まっており、この1年間の進捗には目を見張るものがある。現在はセーフティドライバー同乗のもと運行しているが、中国政府がどの時点で無人化にゴーサインを出すか注目だ。

ZMP×日の丸交通:国内初の実用化なるか?

自動運転タクシーの開発に向け2017年6月に協業を開始したロボットベンチャーのZMPとタクシー事業者の日の丸交通。遠隔型自動運転システムの公道実証実験のほか、2018年8月には営業実証実験を行うなど、着実に歩みを進めている。

2019年4月には、この取り組みがAPEC(アジア太平洋経済協力会議)参加国におけるエネルギー構想に基づいた先進的な取り組みや実施例などを選考する「ESCIベスト・プラクティス・アワード」で、スマート・トランスポート部門においてベスト5に選出されるなど、世界的にも注目が高まっているようだ。

日産自動車×DeNA:新モビリティ実用化へ前進

無人運転車両を活用した新しい交通サービス「Easy Ride」を共同開発する日産とDeNA。「もっと自由な移動を」をコンセプトに、誰でもどこからでも好きな場所へ自由に移動できる交通サービスで、移動手段の提供にとどまらず、地域の魅力に出会える体験の提供を目指し、2020年代早期の実現に向け開発を進めている。

2018年2月に一般モニターを対象に神奈川県横浜市で実証実験を実施。2019年2月には、事前予約方式からオンデマンド配車方式に変えるなど、より実際のサービスに近い形で実証実験を行っている。

ティアフォーなど5社:2020年11月に公道実証開始

ティアフォー、Mobility Technologies、損害保険ジャパン、KDDI、アイサンテクノロジーの5社は自動運転タクシーの事業化に向け2019年11月から協業しており、ユニバーサルデザイン仕様の「JPN TAXI」をベースに自動運転システムの実装を進めている。

2020年10月には一般社団法人新宿副都心エリア環境改善委員会と西新宿地区のスマートシティ化推進に向けた連携協定を結び、移動通信システム「5G」を活用した遠隔監視システムで複数台の車両を監視する公道実証を西新宿エリアで同年11月に実施している。

今後は、実証の結果をもとに法的課題や採算性などを検証し、自動運転サービスの事業化に向けた課題抽出をはじめ採算性やニーズの分析、地域の課題に対応した新たな移動サービスのあり方の検討を行っていくこととしている。

【参考】ティアフォーらの実証実験については「都心に無人の「5G自動運転タクシー」君臨!一般の予約客も乗せ実証実験」も参照。

■【まとめ】動き出した自動運転タクシー市場 無人化の実現がカギを握る

実用化に向けた実証では、乗客となる利用者を制限するか不特定多数の利用を可能にするか、サービスを無料で提供するか有料で提供するか、セーフティドライバーが同乗するかなど段階を踏む場合が多い。利用対象を制限することなく有料サービスを無人で実施することができれば、晴れて本物のレベル4自動運転サービスとなる。

特に、無人化はレベル4の本質であり、移動サービスにおけるコスト面でも大きなカギを握る。今後は、セーフティドライバーなしの状態で走行可能なレベルまで安全性を高めることが重視され、改めてウェイモに続く開発・サービス提供企業の誕生に注目が集まる。一方、無人走行には法規制の壁もあるため、各国政府の取り組みにも注視が必要だ。

また、米テスラのロボタクシー構想のように、リースした自家用自動運転車をタクシー用途に活用するアイデアなども飛び出している。将来、タクシーやカーシェア、ライドシェアのみならず、自家用車も巻き込む形で新たな移動サービスが誕生する可能性もありそうだ。

(初稿公開日:2019年5月15日/最終更新日:2020年11月20日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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