トヨタ×自動運転、ゼロから分かる4万字解説

開発方針から協業・投資まで一挙まとめ





東京モーターショー2019の会場で報道機関など向けにスピーチする豊田章男社長=出典:トヨタプレスリリース

世界の自動車販売において、独VW(フォルクス・ワーゲン)グループと首位を争うトヨタ自動車。リーディングカンパニーの1社として長年業界をけん引してきた実績は、確かな信頼や技術力を築き上げてきた。

同社のブランドは今後も揺るぎないものと思われるが、自動運転社会を見据えた再編が進む業界において、その地位はどのように変わっていくのか。







長く続いてきた自動車を製造するメーカーの時代はまもなく終わりを告げ、自動運転や新たな移動サービスをはじめとした次世代モビリティの時代が幕を開けようとしている。

これからの時代、トヨタはどのような信念を貫き、またどのように変化していくのか。トヨタをはじめ、グループ各社の次世代に向けた取り組みを精査し、トヨタの「今」と「今後」を見ていこう。

記事の目次

■自動運転の開発方針・実現目標
自動運転に対する考え方

トヨタにおける究極の目標は、クルマを自動化させることではなく、自動化を広めることで安全、便利かつ楽しい移動を誰もが享受できる社会を作り出すことだ。

トヨタは、自動運転技術の開発の理念に「チームメイト」という言葉を使い、人とクルマの関係性について表現している。クルマと所有者が、安全で快適、そして楽しい移動の時間と空間を作っていくものであるべきとする考え方で、運転が自動化された将来においてもクルマは人にとって愛されるべき存在であり続け、自動運転技術は、クルマと人との関係をより緊密にしていく可能性があるとしている。

また、モビリティ企業として、自動運転技術を実現していくことはモビリティの次のステップとして自然な流れであり、従来からクルマが持つ、行きたい場所へ理想的な移動を提供するという役割の延長線上にあるとしている。

そのうえで、自動運転技術は交通事故死傷者がほぼゼロの世界をもたらすために有望であるとし、自動運転にかかる研究の全てにおいて安全性に焦点を当て、新技術の適切なパフォーマンスを保証するための実験や検証を徹底的に行うだけでなく、貴重な命を救える可能性のある機能を可能な限り普及させることに重点を置いている。

開発理念「Mobility Teammate Concept」

トヨタの自動運転技術の開発理念は、人とクルマが同じ目的で、ある時は見守り、ある時は助け合うといった、気持ちが通ったパートナーのような関係を築く「Mobility Teammate Concept(MTC)」だ。

MTCは、自動運転技術やドライバーの能力、運転環境の難しさにかかるトヨタの自動運転の全ての研究にかかわるコンセプトかつトヨタ独自の自動運転の考え方で、完全自動運転が実現する当面の間、安全運転のために人と機械が持っている異なるスキルを活用するアプローチとなる。

自動運転利用の選択の自由はドライバーに与えられるべきという信念に基づいており、自動運転技術の恩恵も享受しながら、自分で運転したい時には安全に楽しく、自由に運転できるようにする。

自動運転技術の開発戦略:「Highway Teammate」の2020年実用化目指す

短期的には、自動運転機能を備えたシステムを市場に送り出すことに取り組むこととしており、2020年には、高速道路において自動運転を可能にする「Highway Teammate」(ハイウェイ チームメイト)の実用化を目指す。

このシステムは、高速道路の走行中に交通状況を評価し、判断を下して必要な制御を行い、高速道路への合流やレーンチェンジ、車線・車間維持、分流などの機能を備える。

また、2020年代前半には、同様の機能を一般道で利用可能にする「Urban Teammate」(アーバン チームメイト)の実用化を目指す。車両周辺の人や自転車などを検知可能にするほか、地図データや交差点・交通信号の視覚データを利用し、その地域の交通規制に従って走行するように開発を進めている。

MaaSが自動運転技術を後押し

「自動車をつくる会社」から「モビリティカンパニー」へのモデルチェンジを図るトヨタ。MaaS(Mobility as a Service)分野においては、独自のプログラムやさまざまな企業とパートナーシップを組むことで、MaaS市場の可能性を積極的に模索していく姿勢だ。

また、トヨタは「Autonomous Vehicle(自動運転車)」とMaaSを融合させた、自動運転車を利用したモビリティサービスを示す「Autono-MaaS」に力を入れており、移動サービスとしてのMaaS展開とともに、自動運転技術の向上にどのようにMaaSを結び付けていくかに注目が集まる。

MaaSと自動運転の関連については、走行コストの低下やデータ取得などの観点にも注目しているようだ。

MaaSは自動運転システムの開発に際し、中核をなす技術向上に必要となる大量のデータの取得に役立つ。自動運転の導入初期においてはコストの高さからパーソナルユース車両の使用率は低く、そのため各車両から提供されるデータも少なくなると予想されるが、MaaSによって高利用されることで、データを多く集めることができる。

一方、MaaSによって提供される効率の良い自動運転システムは、乗客1人当たりの走行コストを低下させ、新たな消費者需要の波を生み出し、そこからモビリティ、安全性、利便性が向上していく好循環が生まれると考えており、結果的に自動運転技術を発展させ、社会や消費者への普及をもたらすことになるとしている。

【参考】関連記事としては「MaaS(マース)の基礎知識と完成像を徹底解説&まとめ」も参照。

■トヨタのCASE戦略

次世代のモビリティ業界の在り方を象徴するCASE(コネクテッド=Connected/自動運転=Autonomoius/シェアリング・サービス=Sharing・Service/電動化=Electric)の各分野において、トヨタは積極的に投資や研究開発、実用化を進めている。自動運転以外の3分野もトヨタの自動運転戦略と密接に関わりがあるため、ここではそれぞれの分野についても簡単に触れていきたい。

C(コネクテッド)分野:MSPFの構築を2016年から推進
モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)=出典:トヨタプレスリリース

コネクテッド分野では、多様なモビリティサービスとの接続機能を備えた統一プラットフォーム「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」の構築を2016年から推進している。ライドシェアなどのモビリティサービス事業者と提携する際など、開発・提供していた車両管理システムやリースプログラムといった個別の機能を包括したプラットフォームで、提携事業者がこのプラットフォーム内の機能をサービス内容に応じて利用することで、より便利で細やかなサービスの提供が可能になる。

トヨタはこのMSPFをカーシェアやライドシェアといったモビリティサービスのほか、テレマティクス保険など、さまざまなサービス事業者との連携に活用していく方針を打ち出しており、今後登場するさまざまな移動サービスのプラットフォームとしての期待も寄せられている。

乗用車向けのコネクテッドサービスでは、2018年6月発売の新型クラウンとカローラスポーツに車載通信機(DCM)を標準搭載し、「T-Connect」を本格スタートさせた。同年9月には、T-Connectナビの新モデルを投入し、最新の地図データとMSPFに蓄積されている道路交通情報などのビッグデータを活用したルート探索が可能なハイブリッドナビ機能や、車両警告音やガソリン残量などクルマの状態をナビが認識して音声案内する機能などを導入している。

自動運転車にはこうしたコネクテッド技術も当然搭載される見込みだ。自動運転車自体がクラウドとつながりながら走行することもあり、海外では「Connected Autonomous Vehicle(コネクテッド自動運転車)」(CAV)というカテゴライズも一般化している。

S(シェアリング・サービス)分野:TOYOTA SHAREの展開スタート
出典:トヨタ公式サイト

シェアリング・サービス分野では、トヨタ販売店やトヨタレンタリース店によるカーシェアリングサービス「TOYOTA SHARE」と、トヨタレンタカーの新サービスとして無人貸渡しが可能なレンタカーサービス「チョクノリ!」の全国展開を2019年10月からスタートした。

「TOYOTA SHARE」は、全国共通のサービス制度を構築し、安全装備を積極的に搭載した車両を短時間から利用できる。車両には、スマホアプリを操作することにより車両の解錠施錠を可能にする「Smart Key Box(SKB)」や、カーシェア運用に必要な位置情報や走行距離といった車両情報を取得する通信機「TransLogⅡ」などのデバイスを搭載している。

「チョクノリ!」は、トヨタレンタカーの品質・料金をそのままに完全無人での貸し渡しを可能にし、貸渡・返却手続き時間を短縮した新サービスとなっている。

また、2019年3月には、サブスクリプションサービス「KINTO」を東京地区で開始している。車両代や任意保険、自動車税、登録諸費用、車両の定期メンテナンス(一部サービスのみ)がパッケージ化された月額定額サービスで、愛車を長い目でシェアする形のサービスだ。

同年7月には、アクア、プリウス、カローラスポーツ、アルファード、ヴェルファイア、クラウンの中から愛車を選択可能な「KINTO ONE」の全国サービスを開始している。レクサス車種を選択可能な「KINTO SELECT」も1都2府28県にサービス対象地域を拡大し、トライアルを継続している。

車種ラインナップは今後も順次拡大し、2020年内までにほぼ全てのトヨタブランド車とレクサスブランド車を追加する予定としている。

このほか、小型のパーソナルモビリティを活用したシェアリングサービス「Times Car PLUS TOYOTA i-ROAD Drive」や「Times Car PLUS × Ha:mo」の実証実験を駐車場やカーシェアリング事業などを手掛けるパーク24と進めているほか、2018年10月からは、西日本鉄道とスマートフォン向けマルチモーダルモビリティサービス「my route(マイルート)」の実証実験を福岡市で行うなど、新たな移動サービスやMaaS向けの取り組みも加速している。

他社との取り組みでは、2018年にソフトバンクと設立したMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)の存在が大きい。プラットフォームを活用した新たな移動サービスを自治体と連携して展開するほか、広範囲に及ぶ他分野の企業との連携も促進し、将来の移動サービスの在り方を模索している印象だ。

また、米Uberや中国のDidi Chuxing(滴滴出行)、東南アジアのGrabといった配車サービス大手との結びつきも深めており、各社が手掛けるライドシェアなどの移動サービスやプラットフォームと、トヨタのMSPFや自動運転技術の導入に注目が集まる。

シェアリング分野に関して言えば、将来的に「自動運転車のシェアサービス」を展開することも、少なからず検討はしているはずだ。自動運転の「A」と合わせて、注目していきたい。

【参考】「TOYOTA SHARE」や「チョクノリ!」については「トヨタの「TOYOTA SHARE」「チョクノリ!」、気になる中身は?」も参照。KINTOについては「【最新版】トヨタのKINTO(キント)を徹底解説!月額料金や車種は?」も参照。

E(電動化)分野:2019年6月に生産累計台数1万台を達成
出典:トヨタプレスリリース

自動運転車はほぼイコール電気自動車となる。電気制御の方がAI(人工知能)の細かな指令に対応しやすく、電動化領域も自動運転とは切り離して考えることはできない。

具体的には電動化の分野では、トヨタは2017年、2030年の新車販売においてHVとPHVで450万台以上、EVとFCVで100万台以上、計550万台以上をEVとする目標や、新車から排出される走行時のCO2排出量を2050年に2010年比で90%削減するといった長期目標を掲げており、取り組みの幅を広げている。

また、EVは比較的サイズが小さく移動距離の短い移動体にビジネスチャンスがあると考え、定員2名で軽自動車より小さく、一充電で100km程度の走行を目標とした超小型EVを2020年にも発売する計画を打ち出しているほか、空港や工場といった大規模施設での巡回や警備、手荷物を持った移動などを想定した1人乗りの電動モビリティも2020年の発売を目指しているようだ。

2017年9月には、マツダとデンソーとともにEVの基本構想に関する共同技術開発に向けた契約を締結したと発表している。共同技術開発を効率的に進めるために新会社「EV C.A. Spirit」を設立し、EVに最適となる性能および機能を規定する特性の研究や、この特性を実現する各ユニットの搭載および車両としての性能を検証、車種群として考えた場合の各ユニットおよび各車両の最適構想の検討などに取り組み、それぞれのブランド独自の付加価値あるクルマを追求していくこととしている。

電動化の根幹をなす電池の開発をめぐっては、これまでにHEV用ニッケル水素バッテリーやリチウムイオンバッテリー、バッテリーマネジメントシステムの開発・製造・販売などを手掛けるプライムアースEVエナジーを設立したほか、2019年1月にはパナソニックと車載用角形電池事業に関する新会社設立に向けた事業統合契約と合弁契約を締結している。

2019年には、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)と新エネルギー車(NEV)用電池の安定供給と発展進化に向けた包括的パートナーシップ、比亜迪股份有限公司(BYD)とEVの共同開発契約をそれぞれ締結するなど、中国市場も見据えた展開を見せている。

また、EVとともにトヨタが力を入れているのが燃料電池自動車(FCV)だ。2014年12月に発売した「MIRAI(ミライ)」は、自社開発の新型トヨタFCスタックや高圧水素タンクなどで構成する燃料電池技術とハイブリッド技術を融合した「トヨタフューエルセルシステム(TFCS)」を採用しており、内燃機関に比べエネルギー効率が高く、走行時にCO2や環境負荷物質を排出しない環境性能を実現するとともに、3分程度の水素の充填で充分な走行距離を得ることができる。

高価格とインフラ整備の不足により今一歩普及が進んでいない印象だが、2019年6月に生産累計台数1万台を達成している。

■自動運転機能搭載のコンセプトカーや実験車両
Concept-愛i:CES2017で公開 パーソナルモビリティモデルも
出典:トヨタプレスリリース

米ラスベガスで開催されたCES2017で公開された、AI技術によって人とクルマがパートナーの関係となるモビリティ社会の未来像を具現化したコンセプトカー「TOYOTA Concept-愛i(コンセプト・アイ)」。

最新のAI技術を応用し、感情認識や嗜好性蓄積といった人を理解するための複合技術を確立することで、ドライバーの表情や動作、覚醒度などのデータ化や、SNS発信や行動・会話履歴によって、ドライバーの嗜好を推定することができる。

また、こうした「人を理解する」技術と自動運転技術を組み合わせることで、ドライバーの感情や疲労度、覚醒状態に応じて、視覚や触覚などの五感に働きかけ自律神経を刺激し、より安全運転に誘導することも可能にしている。

コンセプト・アイには、シェアリングサービスでの活用も想定した小型2人乗りの「愛i RIDE」や、歩行者と同じ空間を走行することを想定した1人乗りの「愛i WALK」などもあり、将来的なパーソナルモビリティの普及を見越したモデルと言えそうだ。

e-Palette Concept:MaaSを象徴するコンセプト 東京2020五輪仕様も発表
出典:トヨタプレスリリース

CES2018では、MaaSを大きく意識したモデルが初披露された。移動や物流、物販など多目的に活用できるモビリティサービス専用次世代EV「e-Palette Concept」だ。

電動化、コネクテッド化、そして自動運転技術の活用により人々の暮らしを支える新たなモビリティで、将来は、複数のサービス事業者による1台の車両の相互利用や、複数のサイズバリエーションをもつ車両による効率的で一貫した輸送システムといったサービスの最適化を目指すとしている。

特徴の一つが、車両制御インターフェースを開示することで、他社開発の自動運転制御キットを搭載可能にした点だ。

トヨタが培ってきた安全性の高い車両制御技術を用いて開発した車両制御インターフェースを自動運転キット開発会社に開示することで、開発会社は、自動運転キットの開発に必要な車両状態や車両制御などを、MSPF(モビリティサービスプラットフォーム)上で公開されたAPI(Application Program Interface/プログラミングの際に使用できる関数)から取得することができ、自動運転制御ソフトウェアやカメラ・センサーといった自動運転キットをルーフトップなどに搭載することが可能となる。

また、車両制御インターフェースは、外部からのサイバーセキュリティ対策に加え、自動運転キットからの車両制御指令コマンドの安全性を一定のルールに基づき確認するガーディアン機能を備えているほか、MSPF上に整備されたOTA(Over The Air/無線通信によってソフトウェア更新を行う仕組み)環境を用いて、自動運転キット上のソフトウェアを常に最新の状態に更新することができる。

車両情報は、車両に搭載されたDCM(データコミュニケーションモジュール)から収集し、グローバル通信プラットフォームを介して、TBDC(TOYOTA Big Data Center)に蓄積する。その車両情報に基づき、車両をリースや保険などの各種ファイナンスや、販売店と連携した高度な車両メンテナンスなどとあわせて提供するとともに、MSPF上で車両状態や動態管理などのサービス事業者が必要とするAPIを公開し、モビリティサービスに活用できるようにする。

さらに、自動運転キット開発会社が、自動運転キットの利用やソフトウェアのメンテナンス更新といった自動運転に関するモビリティサービスをMSPF上で提供することで、サービス事業者は安全なモビリティを利用することができ、自ら自動運転キットを選ぶこともできるという。

こうしたプラットフォームを有効活用したシステムは、未来のMaaS車両において必須要素となるかもしれない。

2019年10月には、東京2020オリンピック・パラリンピック仕様のe-Paletteの詳細を明らかにしている。

トヨタの車両制御プラットフォームに専用開発の自動運転システムを搭載し、高精度3Dマップと運行管理による自動運転レベル4相当の低速自動運転を実現する。周囲360度の障害物を常に検知し、周囲の状況に応じて最適な速度で運行し、システム異常時には、車両に同乗するオペレーターが安全に車両を停止できる緊急停止ブレーキも装備している。

また、自動運転時に歩行者とコミュニケーションができるよう、アイコンタクトのように車両の状況を周りに知らせるフロントランプ、リアランプを採用している。

オペレーターを含む20人乗りで、最高速は時速19キロ、航続距離は150キロほど。東京2020大会では、e-Paletteを十数台提供し、選手村内を巡回するバスとして選手や大会関係者の移動をサポートする予定だ。

LQ:AIエージェント「YUI」が快適な移動を提供
出典:トヨタプレスリリース

「LQ」はトヨタが2019年10月に発表した最新のコンセプトカー。「TOYOTA Concept-愛i」で表現した未来の愛車体験コンセプトを忠実に実現したモデルで、東京モーターショー2019に出展された。

米国でAIや自動運転・ロボティクスなどの研究開発を行うToyota Research Institute(TRI)と共同開発したAIエージェント「YUI」やレベル4相当の自動運転機能を搭載するほか、パナソニックと共同開発した無人自動バレーパーキングシステムやAR-HUDなどの機能も備えている。

YUIは、モビリティエキスパートとして搭乗者一人ひとりに寄り添い、特別な移動体験を提供することを目的に開発されており、搭乗者の表情や動作から感情や眠気などの状態を推定し、会話を中心としたコミュニケーションをはじめ、覚醒・リラックス誘導機能付きシート・音楽・車内イルミネーション・空調・フレグランスなどの各種HMI(Human Machine Interface)を用いて働きかけることで、安全・安心・快適な移動に貢献する。

株式会社JTBやAWA株式会社、株式会社NTTドコモが開発やサービス向上に協力しており、嗜好に適した施設案内情報やドライブルートの提供、ストリーミング音楽の提供、5G基地局による高速かつ安定した通信環境の提供などを行っている。

無人自動バレーパーキングシステムは、駐車場において乗降場と駐車スペース間で無人自動運転ができるシステムで、駐車スペースを探す必要がなくなるほか、高齢者や身障者などの負担も軽減される。隣接する車両と20センチ間隔で駐車できるため、駐車場の省スペース化にも貢献する。

車両に搭載された複数のカメラやソナー、レーダーといったセンサーに加え、2次元路面マップを用いて車両の現在位置を特定するシステムと、駐車場に設置したカメラ、自動バレー駐車を指示する管制センターを連携させることで、駐車場内での入庫と出庫を無人で行う。車両のセンサーと駐車場のカメラが自動運転経路への他の車両や歩行者の進入を監視しており、他の車両や歩行者を検知した場合は自動で停車する。

AR-HUDは、AR(拡張現実)表示ができるHUD(ヘッドアップディスプレイ)によって情報表示エリアを拡大し、ドライバーの視線移動を低減することで安全運転を支援する。

ウインドシールド越しに見える風景に、車線や標識などの注意喚起情報や経路案内などの運転をサポートする情報を立体的にわかりやすく表示させることができるほか、車両前方の7~41メートルの奥行きを持つ230インチ相当の大画面表示によって、ドライバーの視線移動を低減する。

全長4530×全幅1840×全高1480ミリの3ナンバーサイズで、ホイールベースは2700ミリ。乗車定員4人でパワートレインはEV仕様、航続距離は約300キロ。

なお、LQの体験試乗会「トヨタYUIプロジェクトTOURS 2020」が2020年6~9月、東京都江東区のパレットタウン内にあるトヨタの展示ショールーム「MEGAWEB」やお台場・豊洲周辺の公道で開催される予定となっている。

【参考】LQについては「トヨタ「LQ」を徹底解説!自動運転時代の愛車に」も参照。

TRI-P4:ガーディアンとショ-ファー開発車両 2020年夏には東京で同乗試乗も
出典:トヨタプレスリリース

「TRI-P4」は、米国で自動運転技術の開発を進めるToyota research Institute(TRI)が開発実験に使用している車両で、CES2019で一般公開された。2020年夏には東京都内で一般向けの同乗試乗会の予定も立てられている。

TRI-P4は、第5世代となる新型の「Lexus LS」をベースとした車両で、TRIの2つの自動運転システム「ガーディアン(高度安全運転支援システム)」と「ショーファー(自動運転システム)」両方のシステム開発に活用されている。

前モデルから二つのカメラを追加し、両サイドの認識性能を高め、自動運転車用に設計された二つの画像センサーを前方と後方に追加している。また、レーダーシステムは車両周辺の近距離の視野を向上させるため最適化した。8つのスキャニングヘッドを持つLIDAR(ライダー)システムは、前モデルの「Platform 3.0」で使用しているものを踏襲している。

また、前世代のPlatform 3.0と比較し、より高い計算能力や機械学習能力、早い学習能力を兼ね備えている。全てのコンピューターはハイブリッド車の二次電池を使用し、12Vのバッテリーはバックアップとしてのみ機能する。

自動運転技術のテストは、米ミシガン州・オタワレイクのテストコースで実施しており、TRI-P4が自動走行する場所を想定した厳しいインフラの特徴や運転シナリオを再現しているという。

同乗試乗会は、2020年7月から9月にかけて東京のお台場地区で実施する。歩行者・車両が入り交じる交通状況や、さまざまな道路インフラやガラス張りの背の高いビルが立ち並ぶ厳しい環境の下、自動運転技術の実力を示すとしている。

SORA:自動正着制御機能など備えた燃料電池バス
出典:トヨタプレスリリース

トヨタは2017年10月、燃料電池バス(FCバス)のコンセプトモデル「SORA」を発表した。燃料電池自動車「MIRAI」向けに開発した「トヨタフューエルセルシステム」を採用し、走行時にCO2や環境負荷物質を排出しない優れた環境性能を実現するほか、大容量外部給電システムを搭載しており、高出力かつ大容量の電源供給能力により、災害時に電源としての利用も可能という。

機能面では、車内外に配置した8個の高精細カメラがバス周囲の歩行者や自転車などの動体を検知し、ドライバーへ音と画像で知らせる周辺監視機能をはじめ、急加速を抑制し緩やかな発進を可能とする加速制御機能、路面の誘導線をカメラが検知し、自動操舵と自動減速によりバス停とバスの隙間を約3~6センチ、バス停車位置から前後約10センチの精度で停車させる自動正着制御機能、車車間通信や路車間通信により安全運転を支援するITS Connectに、バス同士の車群走行の支援やバス優先の信号制御(PTPS)を追加したシステムなどを備える。

なお、SORAは2018年3月から販売開始されており、2019年8月には安全性や輸送性を高めた改良モデルの販売も開始している。ITS Connect路車間通信システム(DSSS)や、ドライバーに急病などの異常が発生した際、非常ブレーキスイッチを押すことで車両が減速し停止するドライバー異常時対応システム(EDSS)、車両前方に搭載したミリ波レーダーが、進路上の先行車や障害物との衝突の危険性を検出した場合に警告を発し、ドライバーの運転操作による衝突回避を支援する衝突警報などの機能が改良されている。

■トヨタの自動運転・ADAS技術
ガーディアン:高度安全運転支援システムとして開発
出典:トヨタプレスリリース

ガーディアンは、ドライバーが手動で運転している間、過失やドライバーのミスによる失敗をはじめ、道路上のクルマや障害物、他者による交通ルールの無視といった外的な要因などから自動運転車が人を守る度合いを示す。

つまり、ドライバーによる手動運転を前提に、ドライバーによる操作と協調させながら正確に車両を制御することでさまざまな事故を防止するシステムで、いわばADAS(先進運転支援システム)の進化版のようなものだ。

このガーディアンの能力が高ければ高いほど、人間とシステムがチームメイトとして互いの良い部分を融合させ、さまざまな形態の衝突から搭乗者や車両を保護することが可能になる。

例えば、レーンディパーチャーアラートや自動緊急ブレーキシステムといったすでに実用化されている技術もガーディアンの技術に分類され、一部の衝突の回避を支援している。ガーディアンの能力が最も高まった場合には、ドライバーによる過失の有無にかかわらず車両が衝突することはなくなり、また他の車両やその他の原因によって発生する多くの衝突を避けるようクルマを動かすことが可能になる。

このガーディアンシステムは、人間のドライバーはもちろんトヨタや他社の自動運転システムによっても操作が可能となるよう、高度な安全運転支援システムの一つとして開発中を進めている。

e-Paletteのほか、配車サービス大手の米「Uber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)」と開発を進める自動運転車両などに搭載される予定で、他社の自動運転キットと組み合わせた導入も進みそうだ。

【参考】ガーディアンについては「トヨタの運転支援技術「ガーディアン」とは? 自動運転機能なの?」も参照。

ショーファー:自動運転システムとして開発
出典:トヨタプレスリリース

「ショーファー」は英語で「chauffeur=お抱え運転手」を意味し、この名が示すとおり、トヨタが開発を進めるショーファーは基本的にドライバーを必要とせず、システムがドライバーに代わって運転タスクを担う全自動運転システムを指す。

このショーファーの能力が低い場合は、ドライバーが運転環境を監視してフォールバックを実行する必要があるが、ショーファーの能力が向上すると、ドライバーはフォールバックの実行にのみ責任を負う。さらにショーファーの能力が高度化すると、ドライバーによる関与なしに車両だけで全ての運転操作を完全に処理することが可能となる。つまり、ショーファーの能力が上がるにつれ自動運転レベル2からレベル3へ、レベル3からレベル4~5へと進化していくイメージだ。

トヨタは、この2種類のモードに焦点をあてて自動運転開発を進めている。

ドライバーの能力や運転環境の複雑さは常に一定ではなく、良くなったり悪くなったり、時とともに変化する。例えば、運転環境の難しさがドライバーの能力を超え、衝突を回避する必要になった場合にガーディアンモードを起動させ、この状態を潜在的に解消するように機能させたり、運転が難しくない状況では、ショーファーモードによる自動運転を作動させ、一定の条件下で運転者の負担を軽減したりすることなどが考えられる。

今後、ガーディアンの能力は、ドライバーの不注意などに関わらず衝突を回避する車両の実現に向け、着実に改善していく方針で、ショーファーは、運転者による監視やフォールバックがなくとも、あらゆる状況下で安全な運転を可能にするという目標を掲げて開発を進めている。

Toyota Safety Sense:将来の自動運転システムにつながる機能多数
出典:トヨタプレスリリース

将来の自動運転システムにつながる機能が多数搭載されているのが、低速域から高速域まで衝突回避支援または被害軽減を図る予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」だ。トヨタは2015年に導入が開始している。

最新のToyota Safety Senseには、プリクラッシュセーフティ、レーントレーシングアシスト、レーダークルーズコントロール、オートマチックハイビーム、ロードサインアシストがパッケージ化されている。

プリクラッシュセーフティは、前方の車両や歩行者、自転車をミリ波レーダーと単眼カメラで検出し、警報ブザーとマルチインフォメーションディスプレイ表示で衝突の可能性を知らせる。ブレーキを踏んだ場合はプリクラッシュブレーキアシスト、またブレーキを踏めなかった場合はプリクラッシュブレーキを作動させ、衝突回避・被害軽減をサポートする。

レーントレーシングアシストは、車線の中央を走行するために必要なステアリング操作の一部を支援し、車線をはみ出しそうなときは、ブザーとディスプレイ表示に加え、ステアリング操作の一部をサポートする。渋滞時など白線や黄線が見えにくい場合も、先行車を追従してステアリング操作をサポートする。

レーダークルーズコントロールは、ミリ波レーダーと単眼カメラで先行車を認識し、車速に応じた車間距離を保ちながら追従走行を支援する。先行車が停止した際は自車も停止して停止状態を保持し、先行車が発進した際はドライバー操作により発進し、追従走行を再開する。全車速に対応しており、スイッチ操作で車間距離切替も可能だ。

オートマチックハイビームは、ハイビームとロービームを自動で切り替えることで遠くまで照らせるハイビームでの走行頻度を高め、夜間の歩行者などの早期発見をサポートする。またヘッドライトの切替忘れ防止をサポートするほか、手動操作の煩わしさも軽減する。アダプティブハイビームシステムは、LEDの配光範囲を細やかに制御し、先行車や対向車に光が当たる部分だけを自動的に遮光する。

ロードサインアシストは、最高速度やはみ出し通行禁止、車両進入禁止、一時停止などの道路標識をカメラで認識し、マルチインフォメーションディスプレイ上に表示して安全走行をサポートする。

このほか、Toyota Safety Senseの付帯機能として、信号待ちなどで前方車の発進を知らせる先行車発進告知機能や、駐車の際にアクセルやブレーキの踏み間違いをサポートし衝突被害を軽減するパーキングサポートブレーキ、死角を検知して駐車をサポートするリヤクロストラフィックオートブレーキ、車線変更時の後方確認をアシストするブラインドスポットモニターなどもある。

■自動運転技術の主な開発拠点
豊田中央研究所:車両制御や顔画像処理など幅広い研究 QRコードの開発も

1960年の設立以来、幅広い分野での研究を手掛け、世界の技術動向調査や新たな科学分野への挑戦を通じて新事業につながる将来ビジョンを提示する研究所。世界最大の大型放射光施設「SPring-8」内に設置した専用のビームライン放射光実験施設「豊田ビームライン」などの施設も有している。

これまでに、車両運動統合制御・状態推定技術や顔画像処理技術、ナイトビュー向け歩行者検出技術の開発などで成果を上げているほか、1994年には株式会社デンソーウェーブとともに「QRコード」を共同開発している。

【参考】豊田中央研究所については「トヨタ、バーチャル人体モデル「THUMS」を改良 Version 6に」も参照。

TRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート):自動運転開発の北米重要拠点

北米トヨタの100%子会社で、オーリン工科大学教授・副学長、米国国防総省システムプログラム・マネージャーなど輝かしい経歴を持つギル・プラット博士がCEOを務める。優秀なエンジニアが集うシリコンバレーなどを拠点に最先端の研究開発を進めているトヨタにおける重要な開発拠点。

トヨタの研究体制強化を目指し、①クルマの安全性の向上②運転できない人の車の利用③屋外モビリティ開発技術を生かした屋内モビリティへの取り組み④AI(人工知能)およびマシンラーニング(機械学習)の技術を利用した科学研究・発見の強化―の4つの目標・課題に取り組んでいる。

また、ベンチャーキャピタルファンドの「Toyota AI Ventures(TAIV)」を子会社に持ち、自動運転モビリティやロボティクス関連分野に代表される革新的な技術開発や新規事業の創出に取り組むベンチャー企業に積極的に投資も行っている。

TRI-AD(TRI-Advanced Development):国内最大規模の重要開発拠点に

自動運転技術の先行開発分野での技術開発を促進するため2018年3月に国内で設立された新たな開発拠点。エンジニア1000人規模の体制を敷き、TRIとの連携強化やトヨタグループ内の人材育成、研究から開発まで一気通貫のソフトウェア開発の実現を図っている。米Google(グーグル)で自動運転車開発に携わった経歴を持つDr. James KuffnerがCEOを務めている。

ガーディアンやショーファーのほか、高精度地図の生成などに関する実証実験やドライバーのモニタリングシステムの開発なども手掛けている。

トヨタ・モーター・ノース・アメリカ リサーチ&デベロップメント(TMNA R&D):北米における研究開発などの統括事業体

北米におけるエンジニアリングおよび研究・開発活動の原動力となっており、主に車両開発、先進技術研究・車両の評価と衝突安全性の3つの分野に取り組んでいる。

2017年から「One Toyota」活動の一環で北米における研究開発や生産事業体統括、販売統括、マーケティングなどのオペレーションは同社に統括されている。

2019年3月には、米国5州における車両・パワートレーン生産工場への新たな投資を発表しており、米国事業の強化・競争力向上に向け、電動車・電動化パワートレーンも含めた現地生産を拡充するとしている。

トヨタ先進安全技術研究センター(CSRC:Toyota Collaborative Safety Research Center):北米の大学などと連携し研究を推進

北米の大学や病院、研究機関、連邦機関との連携のもと、先端安全技術の開発と実用化を目的とした安全研究プロジェクトに焦点を当てた研究を行っている。研究分野には、予防安全・衝突安全の統合、安全にかかわる人間の経験に関する調査、ドライバーの状態検知とビッグデータ、安全性分析が含まれる。

2021年までの5カ年計画では、コネクテッド化や自動運転技術の社会的受容性に関する研究などを進める方針だ。

トヨタコネクティッド:日米拠点に事業集約したコネクテッド関連の開発拠点

テレマティクスサービス「T-Connect」の提供など、コネクテッド分野の戦略事業体として国内をはじめ北米や中国、タイ、インド、ドバイ、英国に拠点を持ち、シームレスなコンテンツ連動型サービスの提供、顧客・ディーラー・販売代理店・およびパートナーに向けた最先端のデータ分析による製品開発サポートの提供という2つの主要分野に取り組んでいる。

また、AIやロボット工学に関する研究やTRIの支援などを含む、トヨタの業務全般にわたるさまざまなデータやコンピュータサイエンスサービスも提供している。テキサス州のほか日本にも拠点を置いている。

欧州トヨタ自動運転車研究所(TRACE):諸大学と提携する欧州の研究開発拠点

欧州における先進研究チームで、ルーヴェン・カトリック大学、ケンブリッジ大学、チェコ工科大学プラハ校、マックス・プランク大学ザールブリュッケン校、スイス連邦工科大学チューリッヒ校と提携するなど、欧州の専門家と自動運転車のコンピュータビジョンの分野で協力している。

物体検知や精密なトラッキング、全体状況分割および分類にかかる最先端のラーニングアルゴリズムの研究などに取り組んでいる。

トヨタ自動車研究開発センター(TMEC):中国の研究開発拠点

中国の研究開発拠点で、2010年に「中国のためのクルマづくり」に向け開発体制の現地化と強化を目的に設立された。ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、EV、燃料電池車といったエコカーの開発が中心のようだ。

2016年には、既存実験棟の増強や新実験棟の建設、電池評価試験棟の新設およびテストコースの増強を実施することを公表している。

なお、中国ではこのほか、自動運転やAIの研究開発を担う拠点を2019年内にも北京市や上海市に設置することが2019年2月に日刊工業新聞で報じられている。

【参考】中国の新拠点については「トヨタ自動車、自動運転とAIの研究拠点を中国に開設か」も参照。

■自動運転に関連する提携・連携
SUBARU:コネクテッド領域や自動運転分野で技術連携

2005年に業務提携について合意して以来、スバルによるトヨタ車両受託生産やトヨタからスバルへの車両供給、「TOYOTA 86」「SUBARU BRZ」の共同開発など協業を進めてきた両社。2019年6月には、CASE領域を含む新しい領域における関係を強化するため、スバルのAWD(全輪駆動)技術とトヨタの電動化技術を活用したEV専用プラットフォームおよびEV車両開発にも取り組むことで合意した。

同年9月には、両社の長期的提携関係のさらなる発展・強化を目指して新たな業務資本提携に合意したことを発表した。100年に一度の変革期を生き残るための協業拡大として、スバル車へのトヨタハイブリッドシステムの搭載を拡大するとともに、コネクテッド領域での協調や自動運転分野での技術連携を進めることとしている。

資本提携では、議決権比率20%に達するまでトヨタがスバル株式を取得するとともに、800億円を上限に株式取得に要した金額と同額に相当するトヨタ株をスバルが取得する予定となっている。

スズキ:自動運転分野を含め協業推進

業務提携に向けた検討を2016年10月に開始したトヨタとスズキ。2019年3月には、トヨタが持つ電動化技術とスズキが持つ小型車技術といった各々の強みを持ち寄って商品補完を進めることに加え、商品の共同開発や生産領域での協業等に取り組むため、具体的な検討に着手することを公表した。

そして同年8月、変革期に共に挑むべく、自動運転分野を含めた新たなフィールドでの協力を進めていくため、両社の長期的な提携関係の構築・推進を目指し資本提携に関する合意書の締結に至った。

スズキが実施する第三者割当による自己株式の処分によって、普通株式2400万株、総額960億円をトヨタが取得し、スズキは、市場買付により480億円相当のトヨタ株式を取得する予定となっている。

【参考】スズキとの提携については「トヨタ、自動運転技術などでスズキと資本提携 合意書を締結と発表」も参照。

マツダ:コネクテッド技術や先進安全分野における技術で連携強化

トヨタとマツダは2017年8月、協業関係のさらなる強化を目的として、業務資本提携に関する合意書を締結したと発表した。米国での完成車の生産合弁会社設立やEVの共同技術開発、コネクテッド技術の共同開発、先進安全分野における技術連携、商品補完の拡充を推進していく。

自動運転関連では、クルマの情報化や車内外をつなぐ情報連携技術の要求の高まりに備え、車載用マルチメディアシステム関連技術の共同開発を進めていくほか、事故のない安全なクルマ社会の実現に向け、トヨタが保有する車々間通信技術、路車間通信技術をマツダと連携することで進めていくこととしている。

ソフトバンク:モビリティサービスの新たな価値創造へ横の連携推進

トヨタとソフトバンクは2018年9月、新会社「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」を設立し、オンデマンドモビリティサービスなどの事業に本格的に着手した。

モネはオンデマンドモビリティサービスのほか、データ解析サービスや「Autono-MaaS」事業を手掛けることとしており、トヨタが構築したコネクテッドカーの情報基盤「モビリティサービスプラットフォーム(MSPF)」と、スマートフォンやセンサーデバイスなどから収集・分析したデータによって新しい価値を生み出すソフトバンクの「IoTプラットフォーム」を連携させ、車や人の移動などに関するさまざまなデータを活用して需要と供給を最適化し、移動における社会課題の解決や新たな価値創造を可能にする未来のMaaS事業を進める。

まず、利用者の需要に合わせてジャスト・イン・タイムに配車が行える「地域連携型オンデマンド交通」や「企業向けシャトルサービス」などを全国の自治体や企業向けに展開していくこととしており、2019年2月には北海道安平町や愛知県豊田市など全国の17自治体との連携を発表した。以後、各地自体と具体的な業務連携協定の締結が進められている。

また、2019年3月には、モビリティイノベーションの実現に向けた「仲間づくり」の一環として企業間の連携を推進する「MONETコンソーシアム」を設立した。多様な業界・業種の企業の参加のもと、自動運転を見据えたMaaS事業開発などの活動を行うことで、次世代モビリティサービスの推進と移動における社会課題の解決や新たな価値創造を目指すとしており、参加企業は同年10月末までに420社に膨れ上がっている。

このほか、2020年代半ばまでに、移動、物流、物販など多目的に活用できるトヨタのモビリティサービス専用次世代EV「e-Palette」によるAutono-MaaS事業を展開する方針だ。一例として、移動中に料理を作って宅配するサービスや、移動中に診察を行う病院送迎サービス、移動型オフィスなどのモビリティサービスを需要に応じてジャスト・イン・タイムで届ける事業などを挙げ、将来はグローバル市場への提供も視野に入れていくこととしている。

Didi Chuxing(滴滴出行):中国でMaaSビジネス実現へ

トヨタは2019年7月、中国配車サービス最大手のDiDiと中国におけるモビリティサービス(MaaS)領域の協業拡大に合意したと発表した。

関係強化のため、両社はライドシェアドライバー向け車両関連サービスを展開する合弁会社を広汽トヨタ自動車有限会社(GTMC)とともに設立する。トヨタはDiDiと合弁会社それぞれに計6億ドル(約660億円)を出資する。

トヨタとDiDiは、2018年1月にe-Paletteにおける協業を発表したほか、2018年5月からはトヨタのモデル販売店においてDiDiのライドシェアドライバー向けに車両を貸し出すとともに、トヨタの通信型ドライブレコーダー「TransLog」の搭載やMSPFを活用したコネクティッドサービスによる車両メンテナンスのサポートなど、さまざまな車両関連サービスの提供を開始している。

今回の新たな合意により、両社は中国において、これまで開発してきたサービスを本格的な普及フェーズに移行させ、より効率的で質の高い配車ビジネスの実現を目指す。また、将来の中国におけるMaaSビジネスの実現に向け、車両管理からメンテナンス、保険、金融といった一連のバリューチェーンにおいて、MSPFによる各種コネクテッドサービスの拡充を通じ、中国の客やドライバーに選ばれるサービスを提供し、中国のモビリティサービスに相応しいEVの投入なども目指していく構えだ。

Uber Technologies:Autono-MaaS専用車両をライドシェアに導入

トヨタは2016年5月、米配車サービス大手のUber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)とライドシェア領域における協業を検討する旨の覚書を締結した。海外でライドシェアビジネスが拡大している国や地域において試験的な取り組みを始めながら協業を模索していくほか、トヨタファイナンシャルサービスと未来創生ファンドからウーバーへ戦略的出資を行うと発表した。

2018年8月には、自動運転技術を活用したライドシェアサービスの開発促進および市場への投入を目指し、両社の協業を拡大することに同意し、両社の持つ技術を搭載したライドシェア専用車両をウーバーのライドシェアネットワークに導入するとともに、トヨタがウーバーへ5億ドル(約5億5000万円)出資した。

トヨタのミニバンを最初の自動運転モビリティサービスAutono-MaaS専用車両とし、このAutono-MaaS車両をコネクテッドカーの基本的な情報基盤として機能するMSPFに常時接続するとともに、ウーバーの自動運転キットとトヨタのガーディアンシステムを搭載することとした。この車両は、2021年にウーバーのライドシェアネットワークに導入される予定となっている。

2019年4月には、トヨタ、デンソー、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の3社が、自動運転ライドシェア車両の開発と実用化を加速するため、ウーバーの自動運転開発部門Uber-ATGを基とした新会社へ計10億ドル(約1120億円)の出資を行うと発表した。

さらなる投資と協業の拡大により、自動運転ライドシェア車両の開発を継続するとともに、次世代自動運転キットの設計と開発を共同で行い、本格的な自動運転ライドシェアサービス車両の量産化とサービス実用化に目処をつける狙いだ。またトヨタは、共同開発推進のため、出資に加えて今後3年間で最大3億ドル(約340億円)の開発費負担を行う。

【参考】ウーバーとの提携については「トヨタやソフトバンク、米ウーバーの自動運転部門に1120億円出資」も参照。

Grab:MaaS領域で協業 コネクテッドサービス拡大へ

トヨタは2017年8月、あいおいニッセイ同和損害保険とともに東南アジアにおける配車サービス大手Grabと東南アジア地域における配車サービス領域での協業開始を発表した。

各種コネクテッドサービスの提供を視野に、Grabが保有するレンタカー車両100台に通信型ドライブレコーダー「TransLog」を搭載し、車両データを収集・分析する。MSPFに収集された走行データを活用し、Grab向けのコネクテッドサービスの開発を進めていく方針だ。

2018年6月には、東南アジアにおけるMaaS領域の協業深化に合意するとともに、一層の関係強化のためGrabへ10億ドル(約1100億円)出資することが発表された。東南アジア全域におけるGrabレンタカーのコネクテッド化をはじめ、それらの車両からMSPFに収集される車両データを活用し、走行データ連動型自動車保険や開発中のGrabドライバー向け金融サービス、メンテナンスサービスなど、各種コネクテッドサービスを東南アジア全域に拡大していくこととしている。

将来的にはGrabのライドシェアサービス向けにトヨタのコネクテッド自動運転車を提供するということも、十分に考えられる。

NTTデータ:高精度地図の自動生成技術確立へTRI-ADなどと実証

TRI-ADとNTTデータ、及び宇宙関連技術の開発を手掛ける米マクサー・テクノロジーズは2019年4月、高解像度の衛星画像を用いた自動運転車用の高精度地図の自動生成に向けた実証実験を3社共同で行うことを発表した。当面は東京の特定エリアの高精度地図を自動生成することを重点的に取り組み、将来的にはあらゆる道路における自動運転を実現していく構えだ。

マクサーのクラウドベースの地理空間情報クラウド(GBDX)から光学衛星画像ライブラリーの画像を取得し、NTTデータのAIを活用した独自アルゴリズムによって道路ネットワークの作成に必要な地図情報を自動抽出する。そしてTRI-ADが自動運転用に作成した高精度地図をクラウド環境からトヨタの自動運転試験車へ配信する。

なお、TRI-ADは2019年2月にも、高解像度マップに特化したストリートインテリジェンスプラットフォーム開発などを手掛ける米CARMERAと高精度地図の自動生成に向けた一般道での実証実験を共同で行うことに合意しており、この分野の開発に力を入れているようだ。

【参考】TRI-ADとNTTデータなどの協業については「トヨタTRI-AD、自動運転車用の高精度地図生成で実証実験 米マクサーやNTTデータと」も参照。

NTTドコモ:5G活用した遠隔操作実験に成功

NTTドコモとトヨタは2018年11月、第5世代移動通信方式「5G」を用いたロボット制御のトライアルで、約10キロメートル離れた遠隔地間を想定した実験環境において、その一部区間に5Gを活用し、トヨタが開発したヒューマノイドロボット「T-HR3」を制御することに成功したと発表した。

ドコモが培ってきた5Gの知見を生かしながら、5Gの特徴の1つである低遅延性を活用し、5Gを用いた無線接続を一部含む遠隔地間を模擬した環境において、T-HR3を制御した。

今後も両社は、ロボットの多様な利用シーンを想定した実証実験を実施し、2020年の5Gサービスの実現とその先の豊かなモビリティ社会の実現を目指して技術とサービスの研究開発を推進することとしている。

高速・大容量で低遅延、かつ多接続も可能な5Gは、自動運転車の実用化には欠かせない技術だ。NTTドコモとの取り組みは、こうしたことも視野に入っているだろう。

NTT:コネクテッドカー向けICT基盤の研究に向け協業

日本電信電話(NTT)とトヨタは2017年3月、コネクテッドカー向けICT基盤の研究開発に関する協業に合意したと発表した。

トヨタが保有する自動車に関する技術と、NTTグループ各社が保有するICTに関する技術を組み合わせ、コネクテッドカー分野での技術開発・技術検証及びそれらの標準化を目指す狙いで、データ収集・蓄積・分析基盤、IoTネットワーク・データセンター、5Gやエッジコンピューティングといった次世代通信技術などを対象分野に研究開発を進めていく方針としている。

宇宙航空研究開発機構(JAXA):月面探査モビリティ開発へ

トヨタは2019年3月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と国際宇宙探査ミッションでの協業の可能性を検討していく方向で合意したことを発表した。第一弾として、これまで共同で検討を進めてきた燃料電池車(FCV)技術を用いた月面での有人探査活動に必要なモビリティ「有人与圧ローバ」について、検討を加速していく。

トヨタは、燃料電池を始めとした電動車両をはじめ自動運転の技術を通じて月面でのプロジェクトに参画する意向で、地球上とは大きく勝手が異なる月面において、自動運転技術やコネクテッド技術の活用に注目と期待が高まるところだ。

同年7月には、有人宇宙ローバの開発及び国際協力による月面探査での活用を目指し、試作車の製作・実験・評価を含む3年間(2019年度~2021年度)の共同研究協定を締結した。

2019年度は実際の月面走行に向けて開発が必要な技術要素の識別、試作車の仕様定義を進め、2020年度に各技術要素の部品の試作、試作車の製作、2021年度には、試作・製作した部品や試作車を用いた実験・評価を行っていく予定だ。

Preferred Networks:AI分野での研究開発促進

トヨタは2014年10月、リアルタイム機械学習技術の開発などを手掛けるPreferred Networks(PFN)と、機械学習・Deep Learningの応用の可能性を探るため、自動運転領域における共同研究をスタート。2015年12月には、モビリティ事業分野におけるAI技術の共同研究・開発を進めることを目指し、PFNへ10億円出資することを発表した。

PFNが強みとする機械学習やディープラーニングをはじめとしたAI分野での独自の高い技術力を生かし、次世代のモビリティ社会の実現をはじめ誰もが安心して安全・自由に暮らすことができる社会の実現を目指して新たな技術・商品・サービスの企画・開発を進めるとしている。

2017年8月に約105億円の追加出資を発表したほか、2019年8月には、トヨタの生活支援ロボット「Human Support Robot(HSR)」をプラットフォームとして共同で研究開発を行うことに合意した。

トヨタのHSRを数十台規模でPFNに貸与し、今後3年間で両社が連携して研究開発を行う。開発に当たっては、両社が持つ既存の知的財産などの情報も含め相互の技術を共有し、共同研究の成果も両社が自由に活用可能とすることで、サービスロボットの実用化に向けた開発加速を図っていく方針だ。

ALBERT:自動運転領域のビッグデータ分析で提携

トヨタは2018年5月、ビッグデータ分析などデータソリューション事業を手掛けるALBERTと自動運転技術の先行開発分野におけるビッグデータ分析において業務提携し、4億円を出資すると発表した。

この提携により、トヨタのAI技術開発におけるデータ分析プロセスなどを強化することが可能となり、さらなるトヨタの自動運転技術開発の加速が実現できるとしている。

ALBERTの技術は、トヨタとTRI-AD、東京海上日動火災保険が取り組む自動運転技術開発の高度化に向けたシミュレーション検証などにも役立てられており、ビッグデータ分析やアルゴリズム開発領域において技術支援を行っている。

東京海上日動火災保険:事故データ活用で自動運転のシミュレーション環境を再現

トヨタとTRI-AD、東京海上日動火災保険は2018年10月、高度な自動運転の実現に向けた業務提携に合意したと発表した。東京海上日動が事故対応や各種サービスを通じて得たノウハウやデータを用いて、自動運転技術開発の高度化に向け共に取り組んでいくとしている。

具体的には、東京海上日動が分析した実際の交通事故の状況や事故が発生しやすい危険な状況を、トヨタやTRI-ADが自動運転のシミュレーション環境に再現する。これにより、現実の世界により近い状況下でのシミュレーションと検証が可能となり、自動運転システムの安全性向上を図ることができるという。

また、東京海上日動は、将来に向け自動運転車から取得する各種データを活用した損害サービスの高度化や迅速に保険金を支払いうための仕組みなどの新たなサービスを検討していくこととしている。

【参考】東京海上日動火災保険との取り組みについては「トヨタとTRI-AD、東京海上日動が業務提携 事故データ解析で自動運転の安全性向上」も参照。

Pony.ai:有力スタートアップと自動運転技術の開発などで協業

中国の自動運転スタートアップ「小馬智行(Pony.ai)」は2019年8月、トヨタと自動運転技術の開発などで協業すると発表した。

同社は中国で初めて自動運転タクシーの実証実験を始めるなど自動運転技術の実用化に積極的で、自動運転タクシー「PonyPilot(ポニーパイロット)」は2018年末ごろから広州の公道を走行しているという。

近い将来、どのような形で協業が具体化されるかに注目が集まりそうだ。

AGL:Linuxベースのオープンソフトウェア開発プロジェクトに参加

自動車メーカーやサプライヤー、テクノロジー企業が結集し、業界標準として機能する自動車アプリケーション向けのLinuxベースのオープンソフトウェアプラットフォームを構築する共同オープンソースプロジェクト「Automotive Grade Linux(AGL)」にトヨタも参加している。

業界全体を通した単一のプラットフォームの構築や、オープンソースを組み合わせることによる断片化の削減、単一のプラットフォームを使用し、開発者やサプライヤー、専門知識のエコシステムの開発―などを目標に掲げており、トヨタのほか、マツダやパナソニック、ルネサス、スズキがプラチナ会員として、またゴールド会員にホンダ、シルバー会員にアイシンAWや米アマゾン、独メルセデスベンツ、デンソーテン、米フォード、独フォルクスワーゲン、NTTデータなど、そうそうたるメンバーが名を連ねている。

百度:アポロ計画に参加 中国での自動運転開発加速か?

中国ネット検索最大手の百度(バイドゥ)が進める、自動運転車向けのソフトウェアプラットフォームをオープンソース化するプロジェクト「Project Apollo(阿波羅)=アポロ計画」へのトヨタの参加も、明らかになっている。トヨタ側からの公式リリースは出されていないものの、2019年夏過ぎ頃、アポロ計画の公式サイトにトヨタの名がメンバーとして追加された。

世界の自動車メーカーらがこぞって参画するアポロ計画では、自動運転車の実証をはじめすでに生産段階に達した提携などもあり、今後、トヨタがどのような形で関わっていくかに注目が集まりそうだ。

【参考】アポロ計画については「中国・百度(baidu)の自動運転戦略まとめ アポロ計画を推進」も参照。

e-Paletteを通した提携:モビリティサービス・技術パートナーとアライアンス

MaaS専用次世代EV「e-Palette Concept」の開発を進めるにあたり、より実用性の高い車両仕様の検討や、e-Palette Conceptを活用した新たなモビリティサービスを実現するモビリティサービスプラットフォーム(MSPF)の構築を推進するため、トヨタは初期パートナーとして各社とアライアンスを締結している。

モビリティサービスパートナーには、米アマゾンや中国のDiDi、米ピザハット、米Uberが、また技術パートナーとして、DiDiとUber、マツダが参加している。

アライアンスパートナーはサービスの企画段階から参画し、実験車両による実証事業をともに進めていく予定としている。

TRIと手を組む各大学:マサチューセッツ工科大学、スタンフォード大学、ミシガン大学と連携

研究開発が盛んなシリコンバレーを拠点とするTRIは、優秀な研究機関として多くのスタートアップの設立やエンジニアを輩出する大学との連携も深い。

自動運転から自己認識にいたるまで幅広い分野のプロジェクトに連携して取り組んでいるマサチューセッツ工科大学のコンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL)をはじめ、スタンフォード大学人工知能研究所(SAIL)とは、人とコンピュータのインタラクションや人間とロボットのインタラクションの研究プロジェクトを進めており、画期的でインパクトのあるアプローチ、アルゴリズム、データの開発に重点を置いて取り組んでいる。

また、ミシガン大学とは、安全性の向上をはじめパートナーロボット工学と屋内モビリティ、自動運転、学生の学習と多様性に焦点を当てた研究を進めているという。

先進安全技術研究センターとの連携:北米の大学や病院、研究機関と多くの連携

北米で研究を進める先進安全技術研究センター(CSRC)は、大学や病院、研究機関などと数多くの連携を図っている。バージニア工科大学は、2025年の統合安全システム(ISS)導入後の残留安全問題を推定するための調査研究を行っている。ISS には、自動ブレーキや車線逸脱防止などの事故予防システムや、高度エアバッグ、カーテンシールドエアバッグといった衝突被害軽減装置など、あらゆる予防安全システムが含まれいる。

アイオワ大学は、運転者と歩行者・自転車の双方のシミュレーター調査により、歩行者と自転車利用者を検出して照らし出すアダプティブヘッドライトシステムの反応特性と、推定される負傷・死亡件数の低減効果を測定する研究などを行っている。

マサチューセッツ工科大学の高齢化研究所は、視覚センサーから得られた車両環境の全方位認識に基づいて、ディープラーニングの開発を進めている。また、カリフォルニア大学サンディエゴ校は、自動運転と人による運転との間での切り替えに関する計算予測モデルを提供するプロジェクトに取り組んでいる。

■自動運転領域における投資先

「トヨタの自動運転に関連する提携・連携」で紹介した、DiDi、Uber、Grab、ALBERT、Preferred Networksを除く出資・投資先を掲載していく。

ティアフォー:未来創生ファンドから10億円 自動運転システムの開発・商用化へ

自動運転技術の開発スタートアップ企業であるティアフォーに10億円規模の出資が行われたことを2018年5月に日経新聞が報じている。トヨタなどが出資する未来創生ファンドによる出資だ。

同社は、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware(オートウェア)」を武器に世界で活躍しており、2017年12月に遠隔制御型自動運転システムの公道実験を国内で初めて実施し、自動運転レベル4の無人運転に成功するなど、国内発のスタートアップとしては抜きんでた実績を誇る。

2019年7月には、損害保険ジャパン日本興亜やヤマハ発動機、KDDI、ジャフコ運営の投資事業有限責任組合、アイサンテクノロジーを引受先とする第三者割当により資金調達を実施し、シリーズAラウンドの累計資金調達額が113億円となったことを発表。自動運転システムの本格的な商用化を目指すとしている。

WHILL:未来創生ファンドが出資 パーソナルモビリティとしてMaaS分野に本格進出

2012年に設立のスタートアップで、日本や米シリコンバレーを拠点に電動車いすなどのパーソナルモビリティの開発・販売を手がける。2016年に実施した総額1750万ドル(約20億円)の資金調達に未来創生ファンドが参加している。

自動運転機能を備えた車いすの開発のほか、長距離の歩行を困難と感じる高齢者や障害者の移動シーンをスマート化する歩道領域における自動運転システムとしてMaaS分野でも注目を集めており、2019年8月に北米有数のスクーターレンタル事業者ScootaroundとMaaS事業の海外展開を加速させるため業務提携契約を締結した。

また、同年9月には、東京海上ホールディングスと今後のMaaS社会の進展を見据えた保険商品・サービス開発や、超高齢化社会における移動手段の確保・普及を目的として資本業務提携したことを発表している。

【参考】WHILLについては「WHILLと東京海上HD、MaaS社会見据え保険の開発などで提携」も参照。

フィーチャ:ADASやDMS向けのソフトウェアを開発

独自開発した機械学習技術によって高精度かつ現実的な実装性能を合わせ持つ画像認識ソフトウェアを提供する、2005年創業のベンチャー。ADAS向けの物体検知ソフトウェアやドライバーモニタリングシステム (DMS)向けのシステムなどを提供しており、2017年11月に未来創生ファンドからの出資を受け入れた。

同社が開発する画像認識ソフトウェアは、機械学習アルゴリズムに基づき、ドライブレコーダーなどの車載用カメラから撮影された画像より人、車体、標識などの対象物を、同時に高精度かつ高速で検出することが可能といい、自動運転社会に向かう自動車業界において、高度なアルゴリズムを更に発展させ、画像認識市場のリーディングカンパニーを目指すとしている。

ArchiTek:エッジAIソリューション開発強化

エッジAI ソリューションの開発などを手掛ける2011年設立の国内ベンチャーArchiTekに2018年3月、未来創生ファンドから出資が行われている。指先サイズのプログラマブルなサンプルチップの製造と当該回路上で動くアルゴリズムの開発強化に充当する予定としている。

同社は、世界に先駆けてAIと画像処理をわずか5ミリ四方のLSIチップで行う半導体の回路設計業務に移行し、AIによる画像認識や自動運転技術に欠かせない自己位置推定と環境地図作成を同時に行うSLAMの実現を目指している。

2018年6月には、革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供するスタートアップを生み出す経済産業省のプログラム「J-Startup」に選定されたことが発表されたほか、同年10月には、ソシオネクストと豊田自動織機とともに提案した「進化型・低消費電⼒AIエッジ LSIの研究開発」が、国⽴研究開発法⼈新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) が推進する事業「⾼効率・⾼速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」の研究開発項目の一つとして採択された。

エクスビジョン:高速画像処理プラットフォームの開発を推進

次世代センシング&コントロールテクノロジーを活用したプラットフォーム提供とソリューション開発などを手掛ける国内ベンチャーのエクスビジョンは2017年6月、未来創生ファンドなどから資金調達を実施したと発表した。

高速画像処理プラットフォームを中心とした研究開発の推進と販売・マーケティング活動の強化を図り、同プラットフォーム技術の早期確立と世界のさまざまな産業分野を視野にその技術が採用されたシステムの拡大を推進していくとしている。

Airbiquity:OTAシステムの開発を加速

コネクテッドカー関連のソフトウェア開発を手掛ける米Airbiquityに2019年3月、トヨタとデンソー、豊田通商が共同出資したことが発表された。出資額は各社それぞれ500万ドル(約5億6000万円)となっている。

Airbiquityは、車載マルチメディアなどのソフトウェア開発において多くのカーメーカーへの採用実績があり、無線通信を経由してデータを送受信するOTA(Over The Air)システムの開発においても、セキュリティへの対応などで強みを持っている。

3社は今後、Airbiquityの持つ技術力や開発リソーセスを活用し、共同で安全かつ信頼性の高いOTAシステムの開発を加速することとしている。

Kymeta:車載用平面アンテナを共同研究

自動車をはじめ船舶や航空機、列車などの移動体向けの衛星通信アンテナの開発を手掛ける2012年創業の米スタートアップKymetaに2016年1月、未来創生ファンドから500万ドル(約550億円)が出資されている。

トヨタとKymeta は2013年9月から、大量のデータを車両に衛星配信することを想定した車載用平面アンテナの共同研究を開始しており、自動車向けアンテナの開発・試験における独占権を得て同社に試験車を貸与し、走行評価を実施している。

2016年1月開催の北米国際自動車ショーでは、Kymetaの衛星通信技術を活用した燃料電池自動車「MIRAI」の実験車を参考出展し、話題を集めた。

Apex.AI:自動運転開発でティアフォーとも連携 TAIVが出資

自動運転ソフトウェアを開発するスタートアップの米Apex.AIは2018年、Toyota AI Venturesなどから1550万ドル(約17億円)の資金調達を実施すると発表した。

同社は自動運転システム「Apex.OS」などの開発を手掛けるほか、ティアフォーが進める国際業界団体「Autoware Foundaiton」の設立メンバーにも名を連ねている。

Boxbot:ラストワンマイル配送を自動化 TAIVが出資

自動運転技術とロボット工学を活用した物流・配送におけるラストワンマイルを実現する技術・サービスの開発を手掛けているスタートアップの米Boxbotは2018年、Toyota AI Venturesを含む投資家から総額750万ドル(約8億3000万円)の資金調達ラウンドを実施している。

同社は2016年、EV開発の米テスラとライドシェア大手の米ウーバー出身のエンジニアが米カリフォルニア州で設立した。自動運転可能な貨物用EVの荷台部分はロッカーのように区画分けされたボックスが並んでおり、パスワードを入力することで一つひとつの区画を開くことができる仕組みのようだ。

Nauto:AI搭載型通信ドライブレコーダー製品化 日本法人も設立

画像認識技術やAIアルゴリズム開発を手掛ける米スタートアップNautoは2017年7月、シリーズBラウンドでソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)やToyota AI Venturesなどから総額1億5900万ドル(約165億円)を調達している。

2015年にシリコンバレーで創業した同社は、安全運転支援デバイスとなるAI搭載型の通信ドライブレコーダーなどを製品化している。2017年6月には、日本の拠点として「Nauto Japan GK」の設立も発表している。

May Mobility:TAIVが出資 自動運転シャトルの定期運行スタート

自動運転シャトルバスの開発を手掛けるスタートアップの米May Mobilityは2018年、Toyota AI VenturesやBMW系ベンチャーキャピタルなどから総額1160万ドル(約13億円)の資金調達を実施し、バスの量産化を図るとともに事業拡大に向け動きを加速している。

2019年2月にも総額2200万ドル(約24億円)の資金調達が発表されており、2019年夏には、米ミシガン州グランドラピッズで自動運転シャトルの定期運行をスタートするなど、実用実証が進められている。

SLAMcore:地図情報・位置情報生成アルゴリズムを開発

自動運転車やドローン技術向けの周辺地図情報、位置情報を生成するためのアルゴリズムを開発する英国企業SLAMcoreは2017年3月、資金調達の実施を発表した。この際、TRIが出資元の一つとして参加しており、これをToyota AI Venturesが引き継いでいる。

同社は、情報の生成に必要な電力量を極力抑えることで、エネルギーを走行や飛行に最大限使えるようにすることを目指しているようだ。

Metawave:AIイメージングレーダーの開発スタートアップ TAIVやデンソーが出資

2017年に米カリフォルニア州で設立されたスタートアップで、AIを活用したを活用した革新的なイメージングレーダーの開発などを手掛けるMetawaveにToyota AI Venturesが出資ているほか、2018年5月にはデンソーも出資を発表した。

同社はレーダーの検知範囲の拡大、認識性能の向上、小型化を実現するためのコア技術を持っており、デンソーはこの最先端技術を生かしてミリ波レーダー開発を加速させるとしている。

Connected Signals:交通信号データ収集・予測アルゴリズムを開発

車載向けリアルタイム信号予測アルゴリズムの開発などを手掛けるスタートアップの米Connected Signalsは2018年11月、資金調達を発表し、Toyota AI Venturesや電気機器メーカーのオムロン(オムロンベンチャーズ)が出資に参加している。

同社は2010年に米オレゴン州で設立。交通信号データの収集・予測を手掛けており、次世代の交通管制システムに向けた技術開発に期待が持たれている。

■トヨタグループにおける自動運転開発状況
デンソー:グループ内外での連携や統合進め開発力を強化

自動車部品メーカー大手のデンソーは、2017年10月に発表した「デンソーグループ2025年長期構想」の中で①車両視点と横串機能の強化②先端R&D機能の改革③事業部の進化と小さく強い本社④グローバル経営の刷新⑤働き方の大改革――を経営改革に向けた5本の柱に据え、注力分野として「電動化」「自動運転」「コネクテッド」「非自動車事業(FA/農業)」を挙げている。

ADAS・自動運転では、すべての人が安心・安全に移動できるモビリティ社会を目指し、自動運転技術のリーディングカンパニーとして開発を推進する。また、先端技術の開発やリソーセスの拡充を目的として、大手企業やベンチャー企業など、パートナーとの連携を強化していくこととしており、トヨタと協調して積極的に出資なども進めている。

協業関係では、2016年2月にNTTドコモと高度運転支援と自動運転技術の実現に向けた研究開発の協力に合意し、LTEや次世代移動通信システム5Gを利用した車両制御システムの研究開発などを協力して進めていくこととしている。

同年12月には、日本電気(NEC)とAIやIoTを活用した高度運転支援・自動運転やモノづくりの分野で協業していくことを発表した。デンソーの先進安全技術とNECが開発した危険予測につながるAIを組み合わせ、安全・安心を実現する製品の共同開発を行うこととしている。

2017年4月には、東芝とも協業関係の強化に向けた協議を開始しており、デンソーの技術と東芝が持つ画像認識技術、IoTやAI技術、ソフトウェア開発技術を融合させることにより、自動車業界を取り巻くパラダイムシフトを勝ち抜くための競争力を強化していく方針としている。

2018年9月には、デンソーのグループ会社で半導体IP の設計・開発を行うエヌエスアイテクスが北米のスタートアップ企業ThinCIに出資を行ったことを発表した。ThinCIは次世代の高性能半導体のキー技術を保有しており、デンソーからも2016年に出資を受けている。なお、エヌエスアイテクスは2019年2月にも高性能半導体「エッジプロセッシングユニット(EPU)」の開発技術を持つ北米のスタートアップ企業quadric.ioへ出資を行っている。

2018年11月には、車載向け半導体のトップメーカーの1社である独インフィニオンへの出資も発表している。

開発体制においては、2017年10月に北米最大の生産拠点「DENSO MANUFACTURING TENNESSEE,(DMTN)」において、電動化や自動運転など新たな分野における生産体制を強化するため、2020年までに約1000億円の投資を行い、合わせて約1000人の従業員を現地で新規採用する計画を打ち出した。

2018年4月には自動運転やサイバーセキュリティ、AIなどの先端技術に関する研究開発をイスラエルで新たに開始し、現地のスタートアップとの協働でイノベーションを促進していくこととしている。

国内においても、2018年4月にADAS・自動運転やコネクテッド分野の研究開発を行う拠点として「Global R&D Tokyo」を開設している。本社や東京支社のR&D機能の一部を移転・集結し、今後さらに人材採用を拡大して2020年代前半にかけて研究開発機能を強化する予定としている。

また、トヨタグループ内のアイシン精機、アドヴィックス、ジェイテクトとともに2018年12月、自動運転や車両運動制御などの統合制御ソフトウェアを開発する合弁会社「J-QuAD DYNAMICS (ジェイクワッド ダイナミクス)」の設立に正式合意したことを発表した。

4社が持つ自動運転・車両運動制御等の技術知見を結集することで、ソフトウェアの開発を効率化しスピードアップを図るとしている。新会社は2019年4月に設立された。

2019年7月には、トヨタと車載半導体の研究や先行開発に取り組む合弁会社の設立に合意したことも発表されている。新会社は2020年4月設立予定で、次世代車載半導体における基本構造や加工方法などの先端研究をはじめ、自動運転車両向けの周辺監視センサーなどの電子部品の先行開発などを行うこととしている。

MaaS関連では、CES2019にMaaSを実現するコネクテッド技術として、多様な車両情報を一元管理・共有するためのクラウド技術「デジタルツイン」や、車両とクラウドを連携させるための車載エッジコンピューター「Mobility IoT Core」、車両のソフトウェアやデータの改ざん防止を目的とした「ブロックチェーン」などの要素技術や取り組みを展示している。

アイシン精機:自動バレー駐車システムを2020年初頭に実用化

パワートレーン領域をはじめ走行安全領域、車体領域、情報・電子領域などを手掛けるアイシン精機は、2019年4月に発表した「持続的成長に向けた中期戦略と経営目標」の中で、成長が見込める電動化商品を積極的に投入し、着実に需要を取り込むほか、CASEに対応する商品ラインナップとして、車両運動統合制御や制御ブレーキ、ドライバーモニタリングシステム、駐車支援システム、自動バレー駐車といった自動運転領域や、MaaS向け車体製品や見守り安心ドア、先読みシートアレンジ、車室内監視システム、物流支援システムなどのコネクテッド・シェアリングサービス領域の商品を拡販し、更なる成長を目指すこととしている。

自動運転領域では、特に「走る」「曲がる」「止まる」をスムーズに実現する「車両運動統合制御」と駐車支援システムを進化させた無人駐車システム「自動バレー駐車」の実現に力を入れている。駐車支援システムでは、2003年に世界初の駐車支援システムとなったインテリジェントパーキングアシストを量産車に搭載するなど以前から注力していた分野で、自動バレー駐車についても2020年初頭には実用化し、自動走行技術のビジネス展開を図っていく構えだ。

また、大学との共同研究も盛んで、2018年10月には、名古屋大学の研究グループと徳島大学とともに「マルチモーダル対話型自動運転車」の開発を発表した。

自動運転オープンソースソフトウェア「Autoware」を利用し、音声認識・顔画像認識・ジェスチャー認識を組み合わせたマルチモーダルインタフェースで自動車を直観的に操作するシステムを開発・搭載しており、一般ユーザーでも自動運転車を操作できるよう音声や視線、ジェスチャーを用いて車両を制御できる技術となっている。

このほか、2018年7月から12月にかけ、スギ薬局とともにライドシェアサービス「チョイソコ」の実証実験も行っている。いわゆる乗り合いサービスで、高齢化が進む地域に住み通院ができない「医療難民」や「買い物難民」を減らすことを目的としている。

豊田通商:トラック隊列走行や「みちびき」実証などを加速

総合商社の一つに数えられる豊田通商は、モビリティ分野をコア分野の一つと位置付け、2017年4月に全社横断の専門組織となる「ネクストモビリティ推進部」を新設した。同部は、商品本部を越えてネクストモビリティ活動の全社展開および次世代自動車に関連したビジネスの開発・推進業務を行うほか、社内横断プロジェクトとして活動テーマごとのワーキンググループを立ち上げるなど、幅広い事業領域にまたがる総合商社の事業資産と知見を最大限に生かしながら様々な取り組みを進めている。

同社は2017年11月、カナダの量子コンピュータメーカーであるD-Wave Systemsと日本における量子コンピューティングによる高速な最適化に基づくビジネス創出に共同で取り組む協力覚書を締結した。高速な最適化技術は、ICT基盤の活用による効率化・価値向上やコネクテッドシステム基盤の差別化が求められる次世代自動車分野をはじめ、物流、金融、医療、環境などのさまざまな分野で多くの用途に適用可能な技術として有望としている。

2018年1月には、準天頂衛星システム「みちびき」を活用した車線単位の高精度ルートガイダンスシステムの実証事業をタイのバンコク市で実施することを発表した。日本の衛星測位システム「みちびき」と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した衛星信号補正データ生成システム「MADOCA」の活用により、現行システムでは不可能な車線単位のプローブ情報を収集し、車線単位の高精度ルートガイダンスシステムの実用化を目指すこととしている。

みちびきを活用した取り組みは、2018年12月にもオーストラリアのメルボルン市近郊で開始したことが発表されている。

2018年1月、経済産業省から受託した「高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業:トラックの隊列走行の社会実装に向けた実証」の一環として、CACC(協調型車間距離維持支援システム)を用いた高速道路における後続有人隊列走行の実証実験を開始することを発表した。CACCは、通信で先行車の制御情報を受信し、加減速を自動で行って車間距離を一定に保つ機能のことで、これが世界初の実証となった。

同年12月にも、新東名高速道路においてCACC技術などを活用した後続車有人システムの公道実証を実施したほか、2019年1月には、国内初となる後続車無人システムのトラック隊列走行の公道実証を開始した。安全確保のため全ての車両に保安要員としてドライバーが乗車したうえで、最大3台のトラックが時速70キロメートルで車間距離約10メートルの車群を組んで走行した。

実証は2019年度も引き続き行われており、トンネルなどの道路環境や夜間走行も含めた多様な自然環境下での技術検証と信頼性向上を図っている。

移動サービス関連では、新たなモビリティサービス領域における協業推進を目的に2017年8月に東南アジアで配車サービスを展開するGrabへ出資を行っている。

国内では、トヨタ車体製の超小型EV「COMS(コムス)」のシェアサービス「Ha:moRIDE(ハーモライド)」を沖縄県の久米島で2019年7月にスタートしている。

ジェイテクト:ハンズオンディテクションや操舵権限委譲システムなど自動運転見据えたステアリング技術を開発

ステアリングシステムや駆動部品などに強みを持つジェイテクトは、CASE時代に向け、次世代物流システムプロジェクトや戦略的イノベーション創造プログラムへの参画をはじめ、ベンチャー企業との協業なども進めているようだ。

自動運転の実現に向けた先進技術の研究開発として、ソフトウェア開発拠点「株式会社ジェイテクトIT開発センター秋田」を設立し電子制御技術の強化を図るほか、システム要求から評価までV字プロセスを一気通貫で開発するため東刈谷事業場にソフトウェア開発拠点を拡張した。また海外オフショア拠点の拡充と効率化で更なる開発リソーセスの強化も図っている。

自動運転に対応する技術としては、運転者の操作意思をEPS内のセンサーで検知するハンズオンディテクションや、システムと人間との操作意思を調和し、安全かつ正確に操舵権限を切り替える操舵権限委譲システムをはじめ、バスや小型の交通機関車両を、バス停などの所定の場所に高精度で自動停車させる正着制御技術の開発も進めている。

【参考】ジェイテクトの開発拠点整備については「トヨタGのジェイテクト、ソフトウェア開発体制を強化 ステアリングや自動運転関連事業で」も参照。

愛知製鋼:自動運転実証に磁気マーカーシステムが活躍

鋼材や電磁品の製造・販売などを手掛ける愛知製鋼は、独自開発した磁気マーカーシステムなどを武器に早期の実現が期待できる「限定された空間での特定・専門車両の自動運転」の実証実験を進めている。

2018年12月~2019年3月にかけて、JR大船渡線BRT(バス高速輸送システム)竹駒駅周辺で積雪時でも対応できる磁気マーカーシステムを使った実証実験を行ったほか、2019年1月15日~25日までの間、羽田空港の制限区域内で行われた自動運転バスの実証実験や、2019年5月~6月に北海道広尾郡大樹町の道の駅コスモール大樹を中心に行われた、乗客を乗せた状態で最高時速40キロで運行する自動運転レベル2のバス走行実証などでも同社の磁気マーカーシステムが活用されている。

磁気マーカーシステムは、バスなどの車両底部に取り付けられた磁気センサー(MIセンサモジュール)が、走路に沿って敷設された専用の磁石(磁気マーカー)から発せられる微弱な磁力を読み取りながら自車位置を高精度に推定する技術。これにより、GPSやカメラなどを使った自動運転が困難な悪天候や積雪時、トンネル内においても安定した自動運転を可能にする。道の駅を中心とした自動運転の実証実験などで多く活用されている。

なお、共同実証する機会が多い、自動運転技術を開発するベンチャー企業先進モビリティに2018年2月、3億円を出資したことを発表しており、実証試験の確実な推進とさらなるビジネスの展開・拡大に繋げていくこととしている。

豊田自動織機:トーイングトラクターやフォークリフトの自動運転化を推進

豊田佐吉が創業したトヨタグループの本家とも言うべき豊田自動織機は、産業用車両の自動運転化を進めており、佐賀空港で2019年3月、九州佐賀国際空港で2019年9月から10月にかけ、空港や工場内、港湾などで貨物を搭載したコンテナを牽引するトーイングトラクターの自動走行実証実験を行った。

また、2019年10月には、開発中のカウンタータイプ自動運転フォークリフトを報道陣に公開した。同社は1970年代から自動運転フォークリフトの開発に着手しており、2016年には農業分野での自動化・省人化に向けた研究開発を行う「露地野菜生産ロボット化コンソーシアム」に参画。2017年にはリーチタイプ自動運転フォークリフト「Rinova AGF」を発売するなど、着実に研究開発と実用化を進めているようだ。

【参考】豊田自動織機の取り組みについては「豊田自動織機とANA、トーイングトラクターの自動運転テストを実施へ」も参照。

トヨタ車体:超小型EV「COMS(コムス)」でMaaS分野に貢献

トヨタ車の企画・開発・生産を担うトヨタ車体は、超小型EV「COMS(コムス)」を製品化・販売している。現状、自動運転機能は備えていないが、街中や観光地などでも取り回しやすい小型EVとして、MaaSの中において今後存在感を高めていく可能性が高い。

コムスは乗車定員1人で、道路交通法上はミニカーにあたり、運転には普通免許が必要となるが、車検や車庫証明、重量税などは不要となる。最高時速60キロで、6時間の満充電で57キロメートル (JC08モード相当)走行できる。全長2395×全幅1095×全高約1500ミリで、駐車時も走行時もスペースを取らない。

鳥取県で2015年、コムスを公用車として導入するとともに、平日解放型で県民とシェアリングを行う全国初の取り組みとして「鳥取県コムスシェア実証プロジェクト」が行われたほか、岡山県津山市、鹿児島県薩摩川内市、山梨県南アルプス市、茨城県つくば市、愛知県豊田市、同名古屋市など、導入事例は多い。

2019年7月には、沖縄県の久米島で観光型MaaS事業「久米島Ha:mo」として活用が始まっている。

■豊田章男社長の自動運転に関する過去の発言
モビリティ・カンパニーにモデルチェンジを(2018年3月期の決算説明会)

2018年3月期の決算説明会で、「トヨタの真骨頂はトヨタ生産方式、TPSと原価低減」とし、初心に帰る形で地道な原価低減に徹底的に取り組んできたことを強調した豊田社長。その一方で、電動化や自動化、コネクテッド化といった新技術が進めば進むほどクルマの可能性が広がり、トヨタの強みがより生かされる時代になっていくとの考え方を示し、「トヨタを『自動車をつくる会社』から『モビリティ・カンパニー』にモデルチェンジする」ことを決断し、従来の延長線上にある成り行きの未来と決別し、自分たちの手で切りひらく未来を選択した。

モビリティ・カンパニーは、世界中の人々の「移動」に関わるあらゆるサービスを提供する会社で、100年に一度の大変革の時代を「100年に一度の大チャンス」ととらえ、これまでにないスピードと発想で自分たちの新しい未来を創造するためのチャレンジをしていく方針を明かした。

【参考】2018年3月期の決算説明会における豊田社長の発言については「トヨタ第二の創業(1)第11代社長、豊田章男62歳と夢の自動運転 トヨタ自動車特集—AI自動運転・コネクテッド・IT」も参照。

仲間づくり戦略においてソフトバンクとの提携がカギ(モネ設立共同記者会見)

2018年10月、MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)株式会社設立に際するソフトバンクとの共同記者会見の席で、豊田社長は「CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)」に言及し、今後クルマの概念が大きく変わり、競争の相手も競争のルールも大きく変化する中、これからのクルマは、情報によってまちとつながり、人々の暮らしを支えるあらゆるサービスとつながることによって社会システムの一部になるとの考えを示した。

その上で必要となる仲間づくり戦略について、デンソーやアイシンなど同じルーツを持つグループ企業との連携強化、スバルやマツダ、スズキといった他の自動車メーカーとのアライアンスの強化、ウーバーやグラブ、ディディ、ゲットアラウンドなどモビリティサービスを提供する新しい仲間とのアライアンスの強化――を3本柱に挙げ、ソフトバンクとの提携によってさまざまな仲間を巻き込み、まだ見ぬ未来のモビリティ社会を現実のものにするとした。

空飛ぶクルマを東京オリンピックで?(The Economic Club of Washington, D.C.のトークセッション)

2019年3月、米政財界の有識者たちが参加する「The Economic Club of Washington, D.C.」のイベントにゲストスピーカーとして招かれ、米金融大手カーライルグループ創業者兼会長のデビッド・ルーベンステイン氏とのトークセッションに臨んだ豊田社長は、自動運転の導入時期などを問われ「自動運転の時代になってもFun to Driveという考え方が必要で、運転が未熟でもプロのドライバーのごとく運転を体験できるとか、そういうことが車会社が進める自動運転の考え方」とした。

「空飛ぶクルマは考えているか」との問いには、「私は欲しいと思っているが、(社内に)私の言うことを聞く人はいない」と笑いを誘いつつも、「東京オリンピックのときにできれば」との思いを披露した。また、「モータースポーツが将来オリンピック種目として検討が始まると良い」との考えを示した。

明確な計画時期などは言及を避けていた様子だが、所々で笑いを誘って場を和ます豊田社長の人柄が表れたセッションだ。

未来のモビリティ社会は馬車と愛馬が共存する社会に(東京モーターショー2019のプレスカンファレンス)

2019年10月、東京モーターショー2019で行われたプレスカンファレンスで、豊田社長はe-Paletteを紹介し、「来年のオリンピック、パラリンピックの時期に皆さんの前に登場する予定。ゆくゆくはe-Paletteがオフィスになったり、お店になったり、ホテルになったり、さまざまなサービスになって皆さんのもとに移動していく」と話した。

また、EVスポーツカーのe-RACERも公開し、パーソナルモビリティの将来について「クルマの誕生によって、米国では1500万頭の馬がクルマに置き換わったが、競走馬は残った。馬を操る楽しさはクルマに勝るとも劣らず、また、馬は障害物があったら自ら避け、穴があったら自分で判断し、飛び越える」と例えながら「e-Paletteのようなみんなで共有するモビリティが馬車なら、e-RACERのような個人で所有するモビリティは愛馬」と位置付け、未来のモビリティ社会は馬車と愛馬が共存する社会となることを示唆した。

【参考】東京モーターショーでの豊田社長のスピーチについては「【速報】馬、ホテル、オフィス…トヨタ章男社長がメッセージ 自動運転や未来の自動車について語る」も参照。

■【まとめ】信頼性や安全性を重視 スピード感よりも安全かつ愛されるクルマづくりを推進

「故障が少なく高品質」といった日本車が持つイメージは、そのままトヨタに当てはまる部分が多い。日本の「ものづくり」に対する価値感は、丁寧な技術に裏打ちされた信頼性や安全性を重視しているからだ。

こうした価値観は、自動運転分野にも共通している。我先にと実用化を強行するのではなく、技術面をはじめ社会受容性も交えたうえで確かな安全性を確保してから実用化する考え方だ。トヨタの自動運転に対する考え方はまさにこれだ。

主導権をめぐる開発競争は激化の一途をたどっているが、安全面を軽視した公道実証が自動運転に対する不安を増長しているケースも散見される。

トヨタは、こうした競争に無理に参加はしない。場合によっては他社に後れを取ることになるだろうが、その代わりに「トヨタが実用化する自動運転技術は間違いない」という信頼を得ることができる。

もちろん、トヨタもいち早く実用化するために有力スタートアップをはじめとした他社との協業などを進めるなど研究開発を促進しており、他社に後れを取るとも限らない。自動運転レベル3相当と思われる「Highway Teammate」の実用化も2020年を見据えている。

ただ一つ言えることは、従来の自動車であれ自動運転車であれ、トヨタは安全かつ愛されるクルマづくりを進めていくということだ。モビリティ・カンパニーへのモデルチェンジを提唱しつつも、良い意味で根幹の部分は不変なのだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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