コネクテッドカーの機能解説(自動車メーカー別・国別)

自動運転化においても通信技術は必須



コネクテッドカーの普及が徐々に広がりを見せ、「つながるクルマ」が市民権を得ている。通信によって車両の状態を管理したり、地図情報を更新したり、アプリを活用したりするシーンはもはや珍しいものではなくなった。


サービスが本格化し始めてから数年が経ち、各社が提供するコンテンツはどのようなものとなっているのか。メーカー各社のコネクテッドサービスについて最新情報をまとめる。

<記事の更新情報>
・2025年6月4日:各自動車メーカーの機能を最新情報に更新
・2023年10月6日:日本の各自動車メーカーのコネクテッド機能の一覧を追加
・2019年6月10日:記事初稿を公開

記事の目次

■【日本】トヨタ自動車

基本的にすべての新車がT-Connect対応に、オプション課金も

出典:トヨタ自動車プレスリリース

トヨタのコネクテッドサービス「T-Connect」は、車載通信機DCM(Data Communication Module)や、スマートフォン端末などによるWi-FiテザリングやBluetooth接続によって利用することが可能になる。

2018年6月発売の新型クラウンとカローラスポーツを皮切りに、コネクテッド事業を本格スタートさせており、基本的にすべての新車がT-Connect対応車種となっている。以下はT-Connect対応車種一覧(2025年5月23日時点)だ。「https://toyota.jp/pages/contents/tconnectservice/contents/pdf/available_car_list.pdf」から高画質の画像を閲覧可能だ。

出典:トヨタ公式サイト

なお、NTTドコモの3G通信終了に伴い、一部対象のDCMを利用したT-Connect DCMパッケージプランは2024年末をもって終了したほか、携帯電話を接続して利用するT-Connect(携帯接続)プランも2029年までに順次終了する。古いモデルはコネクテッドサービスが受けられなくなるようだ。


現在、月額330円のT-Connect スタンダード、T-Connect エントリーと、新バージョンのT-Connectスタンダード(22)・T-Connectエントリー(22)が中心となっている。月額料金と一部のオプションは、新車登録から5年間は無料となる。

利用可能なサービスは、グレードや装備の設定によって同じ車種でも対応機能が異なる場合があるが、標準装備的サービスとオプションサービスに細かく分けられているようだ。スマートフォン連携では、アプリ「My TOYOTA+」を活用する。

事故発生時など有事の際にオペレーターが緊急通報するシステム「ヘルプネット」や、クルマの鍵や窓の閉め忘れ、ハザードランプの消し忘れをスマホに通知する「うっかり通知」、スマホからクルマのドアロックやハザードランプ消灯等の操作ができる「リモート操作」、クルマの健康状態(電子キーの電池残量、エンジンオイルの量など)をスマホで確認できる「eケア」などは標準装備されているが、スマホでクルマのエアコンを遠隔起動する「リモートスタート」やスマホをクルマのキーの代わりにする「デジタルキー」などは有料オプション扱いとなっている。

参考までに、年式2023年01月~のプリウス[HEV]で利用可能なT-Connect機能を以下に列挙する。


  • うっかり通知
  • リモート操作
  • リモート確認
  • カーファインダー
  • アラーム通知
  • マイカー始動通知
  • eケア
  • 整備手帳
  • リモートメンテナンスメール
  • マイカーログ
  • ドライブ診断
  • クルマの情報
  • マイセッティング
  • ナビ連携
  • ヘルプネット
  • リモートスタート(アプリ/オプション月額220円)
  • デジタルキー(オプション月額550円)
  • ロードアシスト24(オプション)
  • トヨタコネクティッドカー保険(オプション)
  • オペレーターサービス(オプション月額330円)
  • コネクティッドナビ(オプション月額880円)
  • エージェント (音声対話サービス/オプション)
  • 車内Wi-Fi(オプション月額1,650円)

【参考】トヨタのコネクテッドカーについては「トヨタのコネクテッドサービス「T-Connect」と「e-Palette」を完全解説」も参照。

■【日本】日産自動車

インフィニティなど全新型車を対象にコネクテッド化

出典:日産公式サイト

日産のコネクテッドサービス「NissanConnect」は、オリジナルナビに搭載された専用の通信ユニットや対応携帯電話などによって情報センターに接続することで、ドライブを快適にする情報提供や、オペレーターがナビの操作をサポートするサービスなどを受けることができる。

携帯電話やスマートフォンなどにおけるデータ通信や音声通話の際は、別途通信料などが必要となるが、NissanConnectサービス専用の車載搭載ユニット(TCU:Telematics Control Unit)付きのクルマの場合、通信料金はかからない。

主要サービスや料金プランは車種によって異なる。搭載車種は、アリア、リーフ、サクラ、ノート・ノートオーラ、エクストレイル、セレナ、スカイライン、フェアレディZで、ルークスデイズとキックスはSOSコールの未対応している。

料金は年額6,600円または7,920円で、プロパイロット2.0利用の場合D高精度地図データ利用料が含まれ、年額2万5,520円となる。

スマートフォンのNissanConnect アプリで検索した行き先情報をカーナビに送信可能な「ドアtoドア ナビ」や、音声プッシュ通知に対応するパナソニックの家電を通じてさまざまな情報を音声で知らせる「Panasonic 音声プッシュ通知」、ナビのボタンを押すだけでオペレータにつながる「オペレータサービス」、運転中にスマートフォンのメッセージアプリで受信したメッセージの通知を受け、内容の読み上げや音声操作による返信が可能な「Nissan Message Park」などは標準搭載されている。

車内で高速Wi-Fi使い放題となる「docomo in Car Connect」のみ有料オプションサービスとなっているが、それ以外はすべて基本料金に含まれているようだ。

以下、最新のコネクテッド技術が搭載されているというアリアを例に、各機能を列挙する。

  • EVサポート
  • ドアtoドア ナビ
  • 乗る前エアコン
  • OTA地図自動更新
  • OTA3D高精度地図データ自動更新
  • ボイスアシスタント
  • Panasonic 音声プッシュ通知
  • Amazon Alexa
  • オペレータサービス
  • docomo in Car Connect
  • Nissan Message Park
  • ドライブ履歴
  • SOSコール
  • 故障時サポートコール
  • リモートドアロック
  • カーアラーム通知

【参考】日産のコネクテッドカーについては「日産のコネクテッド機能「NissanConnect」を徹底解説 自動運転も視野に」も参照。

■【日本】ホンダ

「Honda Total Care プレミアム」搭載車両を拡大中

出典:Ian Muttoo / Flickr (CC BY-SA 2.0)

ホンダは2020年2月発売の新型「FIT」から独自の車載通信システム「Honda CONNECT」の搭載を開始し、コネクテッドサービス「Honda Total Careプレミアム」の提供を始めた。以後、発売する新型車やフルモデルチェンジ車に順次搭載していく計画としている。

Honda CONNECTを通じてクルマのさまざまなデータを送受信し、それらを活用して各オーナーのカーライフをより安心・快適にするサービスと位置付けている。Honda CONNECTのから送信された走行データに基づき運転性向を診断し、保険料を割り引く「Honda コネクト保険」も用意されている。

Honda Total CareプレミアムはHonda CONNECT搭載車オーナー限定の有料サービスとなっており、月額550円の「基本パック」と「追加オプションサービス」で構成されている。

基本パックには「エアバッグ展開時自動通報」「緊急通報ボタン」「トラブルサポートボタン」などが含まれ、緊急事態やトラブルなどの際に迅速なサポートが受けられる。

「追加オプションサービス」としては、盗難やいたずらなどに対処する「Honda ALSOK駆けつけサービス」やスマートフォンでクルマのドアロック・解除やエンジン始動ができる「Honda デジタルキー」などがある。

以下、Honda CONNECTディスプレー装備車における主な機能を列挙する。

  • エアバッグ展開時自動通報
  • 緊急通報ボタン
  • トラブルサポートボタン
  • Honda リモート操作
  • 自動地図更新サービス
  • Honda ALSOK駆けつけサービス(オプション月額330円)
  • Honda デジタルキー(オプション月額330円)
  • 車内Wi-Fi(オプション月額1,650円)

■【日本】スバル

SUBARU STARLINKを展開

出典:SUBARUプレスリリース

スバルのコネクトサービス「SUBARU STARLINK」は車種ごとに対象サービスや料金が異なるが、リコール通知とソフトウェア更新を行う基本機能に加え、「つながる安心ベーシック」や「つながる安心プレミアム」、「リモートサービス」、「SUBARU クルマ de ネット」で構成される。

月額190円の「つながる安心ベーシック」は、重大な事故に遭遇した際に車両が自動通報し、緊急車両を要請する「先進事故自動通報(ヘルプネット)」が利用できる。

月額280円の「つながる安心プレミアム」は、急な体調不良やクルマの故障をしっかりとサポートし、セキュリティ機能も備えた「SUBARU SOSコール」「SUBARU iコール」「故障診断アラート/セキュリティアラート」が利用可能だ。

月額370円の「リモートサービス」は、専用スマートフォンアプリによって「ドアロック&アンロック」「マイカー検索」「目的地ナビ送信」「車両ステータスチェック」「スマートウォッチ連携」を可能にしている。「リモートエアコン」機能も備えた「リモートサービス+」は月額460円となっている。

月額1,650円の「SUBARU クルマ de ネット」は、車内Wi-Fiでスマートフォンやタブレット、ゲーム機などを接続できる。

2025年5月現在、レヴォーグレイバック、レガシィアウトバック、レヴォーグ、WRX S4、クロストレック、インプレッサ、フォレスターが対象車種となっているようだ。

【参考】関連記事としては「スバルのコネクテッド機能まとめ 「SUBARU STARLINK」とは?」も参照。

■【日本】マツダ

人間中心の考え方に基づいた「MAZDA CONNECT」

マツダ独自の人間中心の考え方に基づいたヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)設計により、安全で直感的に使え、さまざまなデバイスやメディアにも対応したコネクティビティシステム「マツダコネクト」。

エアバッグ作動時や後突時、車内のSOSボタンを押した際に緊急通報オペレーターに連携し、救急・警察を手配する「マツダエマージェンシーコール」や、重大な故障が発生した際のサポートサービス「マツダアドバイスコール」、「バッテリーケア」、「MyMazda」アプリでメンテナンス部品の交換時期やパーツのコンディションを確認できる「コンディションモニター」などが備わっている。これらは10年間無料だ。

便利機能としては、スマートフォンで設定した目的地をクルマのナビに送信できる「目的地送信」、アプリで大きな平面駐車場などでクルマの位置を簡単に確認できる「カーファインダー」、アプリでクルマの状態を確認できる「リモートモニター」、アプリでハザードランプの消灯やドアロックが可能な「リモートコントロール」、ドアやトランクの閉め忘れなどを通知する「うっかり通知」、「Amazon Alexa」が用意されている。これらは3年間無料の後、年額2,420円の有料サービスとなる。

このほか、「リモートエンジンスタート」も年額2,420円の有料サービスとして用意されている。

【参考】マツダのコネクテッド戦略については「マツダ、コネクティビティ技術の戦略公表 トヨタとのアライアンス最大限活用」も参照。

■【日本】三菱自動車

各種機能をパッケージ化した「MITSUBISHI CONNECT」

三菱のコネクテッドサービス「MITSUBISHI CONNECT」は、アウトランダーとekクロスEV、トライトンが対象車種となっている。

「基本パッケージ」は新車登録後5年間無料で、以後年額7,920円必要。「リモートエアコン(タイマーエアコン・今すぐエアコン)」や「充電管理(タイマー充電、今すぐ充電、プラグ挿し忘れ通知、充電完了通知)」、「目的地送信」、「降車後ナビ」、「Google Maps Platform」、「SOSコール(エアバッグ展開時自動通報機能付)」、「セキュリティアラーム通知」、「ドライブ見守り通知」、「リモートドアロック・アンロック」、「警告灯通知」、「閉め忘れ通知」、「マイカーステータスチェック」、「カーファインダー(駐車位置確認)」 、「ドライブ履歴」、「リモートボイスコントロール」、「自動ソフトウェアアップデート」など各種機能がパッケージ化されている。

追加オプションサービスとしては、「自動マップアップデート」(初年度無料、以後年額5,500円)などが用意されている。

■【アメリカ】GM

コネクテッド分野では先駆的な取り組み

1996年にサブスクリプションベースのコネクテッドカープラットフォーム「OnStar」のサービスを開始するなど、コネクテッド分野では先駆的な取り組みが目立つGM。OnStarはGMの子会社として車載通信・アプリ展開などを行っている。

早くから盗難車両追跡機能も標準装備しており、2008年には盗難車両減速機能もいち早く実装している。

OnStarサービスの中核を担う「OnStarアドバイザー」機能では、です。自動衝突対応(ACR)、緊急サービス、ロードサイドアシスタンス、クライシスアシスト 、盗難車両支援、ターンバイターンナビゲーションを通じて、オペレーターがドライバーの安全運転を支援する。

安全関連の機能が主となっているが、デジタルキー機能を搭載したモデルなどもあり、別途コネクテッドサービスを提供しているようだ。

【参考】GMの自動運転戦略については「GMと子会社クルーズの自動運転戦略を解説&まとめ 実現はいつ?」も参照。

■【アメリカ】フォード

マイクロソフトと共同開発した「SYNC」を実用化

GMに負けじとフォードもコネクテッドサービスには早くから力を入れており、2007年にマイクロソフトと共同開発した「SYNC」を実用化している。

各社との連携も盛んで、2017年には、トヨタやマツダ、スバルなどとともに、スマートフォン用アプリ開発に用いるオープンソースソフトウェアの管理を担う非営利団体「SmartDeviceLinkコンソーシアム」の設立を発表したほか、中国の電子商取引(EC)大手アリババ・グループとも戦略的提携を交わしており、オペレーティングシステムやクラウドコンピューティングプラットフォーム、デジタルマーケティングなどの事業で共同開発を進めているようだ。

最新版のSYNC 4 及び SYNC 4Aはクラウドベースの接続性と音声認識機能により、会話形式でさまざまなナビ機能を利用することができるほか、クルマの各機能もワイヤレスで操作することができる。FordPass Connectによる車内Wi-FiやAlexa連携、Apple CarPlay、Android Auto連携などにより、さまざまなアプリにアクセスできるようだ。

【参考】フォードの自動運転戦略については「フォードの自動運転戦略まとめ 開発状況は?実現はいつから?」も参照。

■【アメリカ】テスラ

ワイヤレスアップデートやリモート診断機能など搭載

電動化や運転支援技術などで注目を集めているテスラだが、もちろんコネクテッドカー技術も備えている。「ワイヤレスアップデート」や「リモート診断」はサービスセンターへの入庫頻度を最小限にする技術で、修理などに関する「スマートアラート」機能も有している。

テスラはネットワークに接続された車載ディスプレイの開発にも力を入れている。イーロン・マスク氏は2019年7月、停車中にYouTubeやNetflixが閲覧できるようになることをTwitter上で明言し、ニュースなどでも取り上げられた。

スマートサモン機能もテスラのコネクテッド技術が生かされた技術だ。スマートサモン機能は、スマートフォンを使ってテスラ車両を呼び寄せることが機能で、自分がいる場所から約60メートル以内に車両があった場合に利用できる。

こうした機能はスマートフォンと車両が通信できて初めて成り立つ機能だ。そのうち自動運転技術が進化すれば、自宅にいながらスマホ操作で車両をドライブスルーに出掛けさせることもできるかもしれない!?

■【ドイツ】フォルクスワーゲン(VW)

2020年までにすべての新車をコネクテッド化

VWのインフォテインメントシステム「Discover Pro」をスマートフォンやWi-Fiルーターなどの通信機器と接続し、専用サーバーと通信を行うことで各種情報を入手できるテレマティクス機能「Guide & Inform」や、スマートフォンとの通信を可能にするコネクティビティ機能「App-Connect」などが実用化されている。

これらの機能により、オンラインVICS情報や駐車場情報、車両のヘルスレポート、オンライン施設検索、ニュースなどのサービスをはじめ、対応するアプリケーションを車載器の画面上で閲覧したり音声で操作したりすることが可能になる。

同社は2020年までにVW乗用車ブランドのすべての新車をコネクテッド化する計画を打ち出しており、提携する米マイクロソフト社とクラウドの基礎技術や基盤の確立に向け開発を強化している。

2019年2月には、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Azure」を用いたコネクテッドカー向けのクラウド基盤「フォルクスワーゲンオートモーティブクラウド」の開発状況なども発表されており、さまざまなサービスを同一プラットフォーム上で提供できる環境の構築を進めているようだ。

■【ドイツ】アウディ

「Audi connect」を展開、自動SOSコールなども実装

車中におけるオンラインサービスの利用とコミュニケーション機能の最適化を目指すアウディのコネクテッドサービス「Audi connect」は、SNSのポータルから音楽のストリーミング、さらにナビゲーションデータのオンラインアップデートに至るまで、さまざまなクラウドアプリケーションの入り口として機能する。

24時間365日、専任オペレーターが駐車場などの施設検索やレストランなどの予約手配を代行する「Audi connect Navigator」や、最大8個の端末を同時につなげることが可能な「Wi-Fiホットスポット機能」、スマートフォンからドアの施錠・開錠を行える「リモートロック・アンロック」、スマートフォンのmyAudiアプリの地図上に駐車した車両の位置を表示し、どこに駐車したかを確認できる「カーファインダー」、万一の事故の際に車両から手動または自動的に緊急のSOSコールを発信する「Audi SOSコール」など、さまざまな機能を有する。

同社は2018年7月に中国通信機器メーカーのファーウェイとコネクテッド分野で提携を交わした。また、同年11月までに、米ディズニーと車内におけるエンターテインメントメディアの開発についてパートナーシップを結んだことなども報じられており、さらなる開発体制の強化を進めている。

CES2019では、クルマの動きとバーチャルコンテンツをリアルタイムで同期させるテクノロジーなどを発表したほか、ベンチャー企業「holoride(ホロライド)GmbH」を設立し、将来すべての自動車メーカーやコンテンツデベロッパーが利用できるオープンプラットフォームを介して、新しい形態のエンターテインメントを商品化することを目指すこととしている。

【参考】アウディの自動運転戦略については「アウディの自動運転戦略まとめ 車種一覧やA8が備える機能」も参照。

■【ドイツ】ダイムラー

「COMANDシステム」と「Mercedes me connect」を展開

ダイムラーにおけるコネクテッドサービスに相当するのが「COMANDシステム」と「Mercedes me connect」だ。COMANDシステムでは、「Apple CarPlay」や「Android Auto」を活用したスマートフォン連携機能をはじめ、COMANDオンラインというインターネット接続機能を標準装備したモデルもある。

一方、Mercedes me connectでは、24時間コンシェルジュサービスやリモート車両(ステータス)確認、リモートパーキングアシストなど、先進的なテレマティクスサービスを受けることができる。

開発においては、2018年7月に中国の百度と自動運転とコネクテッドカーに関する戦略的提携を強化することを発表しており、百度のコネクテッドサービスを、メルセデスベンツのインフォテインメントシステムに統合することで合意している。

【参考】ダイムラーの自動運転戦略については「ダイムラーの自動運転戦略まとめ 計画や提携状況を解説」も参照。

■【ドイツ】BMW

専用アプリ「BMW Connected」で多彩な機能を利用可能

専用アプリ「BMW Connected」を使うことで、ドアの施錠などの遠隔操作や、ベンチレーションの起動などのリモートサービス、駐車したクルマの周囲をスマートフォンから遠隔で確認・操作することができる「リモート3Dビュー」、スマートフォンと連動したナビゲーション機能、サポートデスクが天候や飲食情報といった多様なリクエストに応える機能、緊急時のSOSコールなど、さまざまなサービスを受けることができる。

2018年12月には、同社と株式会社NTTドコモが協同し、自動車に「コンシューマeSIM」を搭載してスマートフォンと自動車を連携させる新たなコネクテッドカーサービスの開発・展開に取り組むことなども発表されている。

【参考】BMWの自動運転戦略については「BMWの自動運転技術や戦略は? ADAS搭載車種や価格も紹介」も参照。

■【スウェーデン】ボルボカーズ

2015年モデルから新車にSensus Connect」を搭載

ボルボは、2015年モデルからすべての新車にインフォテインメントシステム「Sensus Connect」を搭載しており、インターネットやBluetoothによる音楽ストリーミング、その他エンターテイメントサービスを楽しむことができる。

車内アプリでは、最新ニュース、スポーツ、経済、エンターテイメントプログラムを車内で楽しめる無料オンデマンドサービス「Stitcher」や、自分の現在地を第三者と共有することができる「Glympse」、個人的なボイスメッセージを録音し、選択した受信者に送信することができる「Record & Send」など、独特なサービスが提供されている。

コネクテッド分野では、2017年5月に米グーグル社との提携を発表しており、車内インフォテイメントシステムやコネクティビティの次世代システム開発に向け、アンドロイドをベースにした幅広いアプリやサービスへのアクセス提供を目指すこととしている。

また、各ボルボ車の情報をクラウドで共有し、道路上における安全強化を図る試験運用プログラム「コネクテッド・セーフティ」なども実施している。

【参考】ボルボの自動運転戦略については「ボルボの自動運転戦略まとめ コネクテッドカーの開発状況は?トラック部門は?」も参照。

■【フランス】ルノー

「アライアンスコネクテッドクラウド」の立ち上げ発表

ルノー、日産自動車、三菱自動車のアライアンスですべてのコネクテッドカーのデータを一元管理するプラットフォーム「アライアンスコネクテッドクラウド」の立ち上げを発表しており、プラットフォームには、アライアンスとマイクロソフトが共同開発した「Microsoft Azure」ベースのものを使用することとしている。

Azureに含まれるクラウド基盤やAIなどの技術を活用し、コネクテッドサービスの強化を図っていく方針だ。

【参考】アライアンスコネクテッドクラウドについては「日産ルノー三菱、コネクテッドカー向けの新プラットフォームを立ち上げ」も参照。

■【イギリス】FCA

米グーグルと韓国サムスンに技術開発を委託

自動運転関連でグーグル系Waymo(ウェイモ)とつながりを持つフィアット・クライスラー・オートモービルズは、コネクテッド技術の開発を米グーグルと韓国サムスン電子系列に外部委託することを発表している。

同社は自動運転技術をウェイモから導入する可能性も取りざたされている。従来の自動車製造をFCAが担い、先進技術をグーグルなどの他社が行うといった、新しい形の分業体制が確立されるかもしれない。

【参考】FCAの外部委託については「FCA、コネクテッド技術の開発をグーグルとサムスンに外部委託」も参照。

■今後も拡大し続けるコネクテッドカーの世界市場

民間調査会社の富士経済が2020年6月に発表したコネクテッドカーに関する世界市場の調査によれば、乗用車の新車販売台数におけるコネクテッドカーの比率は2019年の34%から2035年には80%まで上昇すると予測される。乗用車と商用車を合わせると新車販売台数は9420万台に達するという。

地域別では、北米と欧州がまずリードし、長期的にみると中国が市場を牽引すると予想される。自動運転車やコネクテッドカーで活用される通信技術「車載セルラー」を採用した車両を中心に市場が拡大すると見られている。

また、車載セルラーとスマートフォンと車を連携した「モバイル連携採用車両」も増加しており、新興国を中心にコネクテッドカー市場の成長を先導すると予想されている。

■コネクテッドカーの活用事例

コネクテッドカーの普及により、日々の道路交通社会から得られる膨大なデータが自然に生成・蓄積され、ビッグデータが誕生する。これらのビッグデータを用いた活用事例は、自動運転システムの精度向上やダイナミックマップの作製、ADASの進化、テレマティクス保険・MaaS・気象情報への活用、道路メンテナンスへの活用など多岐に渡る。

そのほか例えばトヨタは、コネクテッドカーから取得した交通情報プローブや車両挙動データなどの車両データを抽出し、分析を行い、道路の保守点検に生かす技術に関わる実証実験を愛知県豊田市で2018年8月から開始している。

■【まとめ】SDV化でコネクテッドサービスも本格化

試行錯誤のフェーズを経て、各社のサービスはほぼ横一線に並んだ感が強い。スマートフォンを活用したデジタルキーの有料オプション化など、サービスのオプション化も進み始めているようだ。

今後、自家用車はSDV(ソフトウェアディファインドビークル)化が一気に進み、膨大なソフトウェアで構成されるコンピュータへと変貌していくことが予想される。これまではインフォテインメント領域を主体としていた車載OSが、自動車の制御面なども含む総合的なOSへと様変わりしていくのだ。

自動車がパソコンやスマートフォンに近づいていくイメージだ。SDVは必然的にコネクテッドカーとなり、ソフトウェアアップデートやアプリの追加などで機能を拡張していく。

こうした近未来を踏まえると、現在はまだコネクテッドカーの創世期と言える。今後5年、10年で自動車がどのような進化を遂げ、サービスを拡充させていくのか、要注目だ。

■関連FAQ

    コネクテッドカーとは?

    一般的には、通信機能を備えた自動車のことを指す。「つながるクルマ」とも呼ばれる。自動運転化のためにも通信機能は必須だ。

    各自動車メーカーのコネクテッド機能は?

    トヨタの「T-Connect」、日産の「NissanConnect」、ホンダの「Honda CONNECT」、スバルの「SUBARU STARLINK」、マツダの「マツダコネクト」などがある。

    コネクテッドカーの市場規模は?

    富士経済によれば、台数ベースでは2021年の見込み台数が4,020万台で、2030年には9,480万台まで増えると予測されている。そして2035年には新車販売のうちコネクテッドカーが86.4%を占めるという。

    コネクテッド技術の活用方法は?

    通信によって車載ディスプレイにコンテンツを配信することが可能になるほか、渋滞情報や事故情報などをリアルタイムに受信し、ドライバーに通知することもできる。また、自動運転車の場合は動的データを含むマップデータを常時更新するためにコネクテッド機能が活用される。

(初稿:2019年6月10日/最終更新:2025年6月4日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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