自動運転レベルとは?定義や実用化状況は?(2024年最新版)

レベルによって運転主体や走行可能エリアに違い



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自動運転レベルは、運転の主体や自動運転の技術到達度、走行可能エリアなどによって、「レベル0」から「レベル5」の6段階に分類されている。2024年現在、レベル3の機能を搭載した市販車の販売はすでに始まっており、レベル4自動運転タクシー自動運転シャトルの開発、実証実験も盛んになってきた。







この記事では自動運転レベルについて、現在主流となっているアメリカの「自動車技術会」(SAE)の基準を中心に説明し、2024年時点での各レベルにおける最新の事例や取り組みについても紹介していく。

また自動運転レベルについては、日本の国土交通省も独自に呼称や定義を策定しているので、合わせて紹介していく。ちなみに自動運転ラボでは、現在の最高レベルであるレベル5を超える「自動運転レベル6」についても別な記事で考察しているので、後半、紹介したい。

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<記事の更新情報>
・2024年1月11日:BMWのレベル3展開計画について追記
・2018年4月9日:記事初稿を公開

記事の目次

■自動運転レベルとして採用されている基準は?

自動運転レベルは当初、「米運輸省道路交通安全局」(NHTSA)の定義が世界的によく採用されていた。しかし、NHTSAがアメリカの「自動車技術会」(SAE)が示した基準を2016年に採用したことから、現在はこのSAEの6段階の自動運転レベルの定義が日本を含む世界においての主流となっている。

SAEの6段階の自動運転レベルの定義は2014年1月に初めて示された後、分類の明確化や用語定義の修正などが行われ、現在は2016年9月発行の第2版で示されている内容が最新のものとなっている。今後さらに改訂が行われる可能性もあるが、法整備や開発に混乱を生じさせることも考えられるため、しばらくはこの基準に沿っていくものと思われる。

日本では2018年2月、日本の公益社団法人「自動車技術会」(JSAE)がこの第2版の日本語翻訳版を発行した。運転自動レベルの定義が英語ではなく日本語で説明されていることもあり、日本の政府や業界の間でもこの日本語翻訳版の定義文章がたびたび引用されている。

【参考】SAEの第2版(2016年9月版)は、SAEに無料会員登録すれば「専用ページ」から無料でダウンロードできる。日本のJSAEが公開している2018年2月発行の翻訳版も「https://questant.jp/q/8ZJW8X8K」(※アンケートへの回答が必要)から可能だ。

【参考】関連記事としては「自動運転レベル、誰が決めた?」も参照。

■自動運転レベルの名称・主体・走行領域

SAEにおいては自動運転化レベルの0〜5まで、「名称」「主体」「走行領域」に関して以下のように定義されている。

段階名称主体・走行領域
レベル0運転自動化なし人・限定なし
レベル1運転支援人・限定的
レベル2部分運転自動化人・限定的
レベル3条件付き運転自動化車・限定的
レベル4高度運転自動化車・限定的
レベル5完全運転自動化車・限定的

自動運転レベル0(運転自動化なし)の口語的定義は「運転者が全ての動的運転タスクを実行(予防安全システムによって支援されている場合も含む)」とされている。自動運転機能を有していない従来の自動車がこのレベルに含まれる。

システムが警告を発するだけの予防安全システムなども、自動車の制御についてはドライバー自身が行うためレベル0に含まれるものと解される。

ちなみに自動運転レベル2では「ハンズオフ(手の解放)」、自動運転レベル3では「アイズオフ(目の解放)」、自動運転レベル4以上では「ブレインオフ(脳の解放)」が一定条件化で可能になる。

出典:自動車技術会

▼自動運転のレベル分けについて|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf

■自動運転レベル1:「運転支援」


自動運転レベル1(運転支援)の口語的定義は「運転自動化システムが動的運転タスクの縦方向又は横方向のいずれか(両方同時ではない)の車両運動制御のサブタスクを特定の限定領域において持続的に実行。この際、運転者は残りの動的運転タスクを実行する事が期待される」とされている。

つまり自動運転レベル1では、アクセルとブレーキ操作による「前後」(加速・減速)の制御、もしくはハンドル操作による「左右」の制御のどちらかの監視・対応をシステム側が担う。残りの監視・対応は運転手が行う。

具体例としては、高速道路などにおいてあらかじめ設定した車速で自動的に加減速を行い、前走車に追従するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)などがレベル1にあたる。

■自動運転レベル2:「部分運転自動化」


自動運転レベル2(部分運転自動化)の口語的定義は「運転自動化システムが動的運転タスクの縦方向及び横方向両方の車両運動制御のサブタスクを特定の限定領域において持続的に実行。この際、運転者は動的運転タスクのサブタスクである対象物・事象の検知及び応答を完了し、システムを監督する事が期待される」とされている。

自動運転レベル2では「前後」と「左右」の監視・対応の両方をシステム側が担う。レベル2までは運転手がシステムを常に監督する必要があり、自動運転の主体は「人」ということになる。

【参考】自動運転レベル2については「【最新版】自動運転レベル2の要件や定義、機能を解説」も参照。

一般的にレベル2相当と言われるADAS(先進運転支援システム)については、各社が独自ブランドでシステムを展開している。そんな中、自動運転レベル2の機能に関しては、呼称が問題視されるケースが出てきている。

例えばテスラは2024年時点では、「Autopilot(オートパイロット)」や「FSD(Full Self-Driving)」といった機能を提供しているが、いずれも機能は運転支援程度の「レベル2」にとどまっている。しかしその呼称から自動運転機能が実装されていると勘違いを誘発しやすく、こうした呼称が問題視され始めている。

トヨタ:Toyota Safety Sense

出典:トヨタ公式サイト

Toyota Safety Senseは、高速道路や夜間の走行、駐車・発進・停車など多彩な運転シーンに合わせた予防安全の機能パッケージだ。

ウインカー操作を伴わない車線逸脱を警告する「レーンディパーチャーアラート」や車線を中央走行するようハンドル操作をサポートする「レーントレーシングアシスト」、一定の車間距離を保った追従走行を可能とする「レーダークルーズコントロール」、衝突が予測される場合に警報を発する「プリクラッシュセーフティ」などで構成される。

▼トヨタの安全技術|トヨタの安全技術とは|トヨタ自動車WEBサイト
https://toyota.jp/safety/about/

レクサス:Lexus Safety System

出典:レクサス公式サイト

レクサスに搭載されているLexus Safety Systemは、クルマのさまざまな安全システムを連携し、安全性を高めていくという「結合安全コンセプト」に基づき開発された「予防安全パッケージ」。全車速追従機能付のレーダークルーズコントロールやレーントレーシングアシスト、レーンチェンジアシスト機能などを備えている。

▼LEXUS Safety System|レクサス公式サイト
https://lexus.jp/technology/safety/

レクサス:Teammate

出典:レクサス公式サイト

レクサスに搭載されているTeammateは、自動運転に対するトヨタ自動車独自の考え方「Mobility Teammate Concept」に基づき開発された、AI技術搭載の高度運転支援技術だ。

「Advanced Drive」では自動車専用道路での速度調整や車線維持、車間維持や分岐などの運転支援が安全に行われ、ドライバーはその間ハンドル操作から解放される。「Advanced Park」は高度駐車支援技術であり、直感的なスイッチ操作で高度駐車支援を行ってくれる。駐車時のアクセルやブレーキ、シフトチェンジなどが全て自動で制御されるという。

▼LEXUS ‐ Lexus Teammate|TECHNOLOGY
https://lexus.jp/technology/teammate/

日産:プロパイロット

出典:日産公式サイト

日産自動車のADASと言えばプロパイロット。第1世代では一定速度域でインテリジェントクルーズコントロールやハンドル支援を行うことで話題になり、2019年9月に発売されたスカイラインには第2世代のプロパイロット2.0が搭載され、一定条件下においては高速道路の同一車線内でハンズオフ(手放し)運転が可能となった。

プロパイロット2.0では、ナビゲーションシステムで目的地を設定するとアクセル、ブレーキ、ステアリングを自動で制御し、ルート上にある高速道路の出口まで運転支援が行われる。

▼日産|先進技術|プロパイロット
https://www2.nissan.co.jp/BRAND/PROPILOT/

ホンダ:Honda SENSING

出典:ホンダ公式サイト

ホンダのADASはHonda SENSING。予め設定した速度で定速走行、また先行車と適切な車間距離を維持しつつ自動的に加減速を行う「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」や、先行車や歩行者との衝突を回避することができる「衝突軽減ブレーキ(CMBS)」、車線のはみ出しを防ぎながらステアリング操作を支援する「路外逸脱抑制機能」などを備えていることで知られる。

▼安全運転支援システム Honda SENSING|Honda公式サイト
https://www.honda.co.jp/hondasensing/

スバル:アイサイトシリーズ

出典:スバル公式サイト

スバルのADASとしては、高速道路などでアクセル・ブレーキ・ステアリング操作を自動でアシストする「アイサイト・ツーリングアシスト」や、最新の高度運転支援システムである「アイサイトX」などがある。アイサイトXを搭載した新型レヴォーグは「渋滞時ハンズオフアシスト」や「渋滞時発進アシスト」などを実現している。

▼アイサイトX|SUBARUの総合安全|SUBARU
https://www.subaru.jp/safety/eyesight/

マツダ:i-ACTIVSENSE

出典:マツダ公式サイト

マツダのADASとしては、ミリ波レーダーやカメラなど検知デバイスを使用したi-ACTIVSENSEがあり、ドライバーの安全運転をサポートする「アクティブセーフティ技術」と、衝突回避など事故のリスクを軽減する「プリクラッシュセーフティ技術」で構成されている。

自動で走行速度をコントロールする「マツダレーダークルーズコントロール(MRCC)」やドライバーのステアリング操作をサポートする「レーンキープアシストシステム」、アクセルの踏み間違いによる急発進を防ぐ「AT誤発進抑制制御」などを備えている。

▼マツダ|クルマが危険を察知し、ドライバーをサポート – i-ACTIVSENSE(アイアクティブセンス)|セーフティ
https://www.mazda.co.jp/beadriver/safety/i-activsense/01/

■自動運転レベル3:「条件付き運転自動化」


自動運転レベル3から自動運転を担う主体は一定条件下で「システム」側に移る。

レベル3(条件付き運転自動化)の口語的定義は「運転自動化システムが全ての動的運転タスクを限定領域において持続的に実行。この際、作動継続が困難な場合への応答準備ができている利用者は、他の車両のシステムにおける動的運転タスク実行システムに関連するシステム故障だけでなく、自動運転システムが出した介入の要求を受け容れ、適切に応答することが期待される」とされている。

自動運転レベル3は簡単に言えば、一定条件下において全ての運転操作をシステム側が行うものの、緊急時には運転手が運転操作を担うという状態のことを指す。レベル2との大きな違いは、原則的にはシステム側の責任において全ての自動運転が行われるという点だ。

日本においては、道路交通法と道路運送車両法の改正で、2020年4月にレベル3が解禁された。法改正でレベル3のシステムを市販化モデルに搭載できることとなり、まずは高速道路などでの走行に限定した自動運転レベル3のシステムを各社が開発するとみられている。

独アウディが「A8」で先陣を切ったと思われたが…

市販化モデルにおけるレベル3は、独アウディが2017年に発売したフラッグシップセダン「Audi A8」が先陣を切った。高速道路や中央分離帯のある片道2車線以上の道路で、時速60キロメートル以下の低速で交通が流れている場合に、ドライバーに代わってシステムが全ての運転操作を引き受ける「Audi AIトラフィックジャムパイロット」を搭載可能としている。

ただし、公道利用には各国の法整備を要することなどから、実際にはレベル2に相当するADASを実装して販売しているのが現状だ。そのため、アウディが自動運転レベル3を世界で初めて実用化したとされているわけではない。

日本のホンダがレベル3搭載車で「世界初」の称号

そんなアウディをよそに、2021年3月にホンダが日本、そして世界で初めてレベル3の搭載車両として新型レジェンドを発売し、話題となった。この新型レジェンドには国土交通省からレベル3の型式認定を受けた「Traffic Jam Pilot」機能が搭載されており、世界的にも「レベル3の市販車で世界初はホンダ」という評価を受けている。

【参考】関連記事としては「ホンダの自動運転レベル3搭載車「新型LEGEND」を徹底解剖!」も参照。

欧州勢ではメルセデスがレベル3を展開
出典:メルセデス・ベンツ・プレスリリース

ホンダに続いて市販車へのレベル3搭載を成功させたのが、ドイツのメルセデスだ。有料オプションという形で「Drive Pilot」を展開し、アメリカでも米国勢を差し置いて「米国初レベル3」を展開することが決まった。

レベル3の「世界3番手」はBMWか

出典:BMWプレスリリース

自動運転レベル3の提供でホンダとメルセデスに続くのは、ドイツの自動車メーカーであるBMWとなりそうだ。2024年3月から「BMW7シリーズ」にオプションとして搭載することを発表している。

まずはドイツ国内限定でレベル3の機能をオプション展開し、「BMW Personal Pilot L3」という呼称で実装させる計画だ。この機能を使えるのは高速道路を走行する際で、機能が稼働している最中はドライバーはスマートフォンを操作したり、車内ディスプレイで動画を再生したりすることができる。

価格は税込6,000ユーロ(※発表当時のレートで約97万円)とされている。

中国におけるレベル3車両の先陣は?

中国では、レベル3搭載車の一般市場参入への競争が加速している。中国のEV(電気自動車)スタートアップであるHuman Horizonsは、2020年末から生産を開始する完全電動車両「HiPhi X」に自動運転レベル3を搭載すると豪語している。2017年に創業したHuman Horizonsの自動運転技術については未知数な部分も多いが、OTA(Over The Air)によるソフトウェアアップデートで、最新のソフトウェアを保てることが特徴のようだ。

レベル3には「罠」も

こうした動きに対し、静観する動きもある。スウェーデンのボルボカーズは、レベル3を安全上「不確実」な技術とし、一段飛び越してレベル4の開発を進めている。米フォードもレベル3技術はレベル4と同程度に困難であると判断し、同様にレベル4の開発に注力しているようだ。

こうした背景には、レベル3に内在する人的要因がある。一定条件下において自動運転を可能とするレベル3は、システムから手動運転の要請があった際、ドライバーは速やかに運転操作を行わなければならないが、過信や慢心などにより手動運転が行われない可能性があるからだ。こうした点は「レベル3の罠」として知られている。

レベル3ではなくレベル2車両だが、米テスラ車のオーナーがシステムからの要請を無視して引き起こした交通事故などが、まさにこの懸念を象徴している。

こうした事態を避けるべく、ドライバーが要請に応じない場合に路肩へ安全に車両を停止させるなど被害を最小限に抑えるミニマル・リスク・マヌーバー(MRM)技術や、システムの作動状況を的確にドライバーらに知らせるヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)技術、ドライバーの状況をシステムが監視するドライバーモニタリング技術などが求められている。

【参考】テスラ車の事故については「テスラ自動運転車の交通事故・死亡事故まとめ 原因や責任は?」も参照。

自動運転レベル3の国際基準が成立

日本では既に2020年4月から自動運転レベル3の車両の公道走行が解禁されているが、2020年6月には国連WP29(自動車基準調和世界フォーラム)において日本のレベル3と同等の国際基準が成立された。

成立された国際基準は、「乗用車の自動運行装置」と「サイバーセキュリティとソフトウェアアップデート」に分けられる。

自動運行装置(定義:高速道路等における60km/h以下の渋滞時等において作動する車線維持機能に限定した自動運転システム)に求められる主な要件としては、「自動運転システムが作動中、乗車人員及び他の交通の安全を妨げるおそれがないことについて、注意深く有能な運転者と同等以上のレベルであること」や「運転者が運転操作を引き継げる状態にあることを監視するためのドライバーモニタリングを搭載すること」などが挙げられている。

サイバーセキュリティとソフトウェアアップデートについては、「サイバーセキュリティ及びソフトウェアアップデートの適切さを担保するための業務管理システムを確保すること」などが挙げられている。

■自動運転レベル4:「高度運転自動化」


自動運転レベル4(高度運転自動化)の口語的定義は「運転自動化システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において持続的に実行。作動継続が困難な場合、利用者が介入の要求に応答することは期待されない」とされている。

レベル4の特徴は、レベル3とは違って緊急時にも運転手が対応せず、全てシステム側が自動運転の主体として責任を持つことにある。つまり運転手は運転操作に参加することは想定されていない。ただ、レベル4の定義は「限定領域内」での自動運転とされているため、領域外で走行する場合に備えハンドルやアクセルを搭載したタイプと、領域内のみを走行するように特化したタイプの2種類が想定される。

前者は、手動運転も可能とした汎用性の高いタイプとなり、自家用車への導入の道も開けるが、より高度な技術とコストがかかることになる。

一方、後者はあらかじめ定まった経路を走行するバスや空港内など特定のエリア内で走行する送迎車、タクシーなどに向いており、商用性もあることからレベル4の中心はバスやタクシーといった移動サービスに向けられる可能性が高い。

米ウェイモがレベル4の自動運転タクシーで一歩リード

レベル4の実用化においては、グーグル系の米ウェイモが2018年12月、セーフティドライバーが同乗する形での自動運転タクシーサービスを有償で開始している。2020年10月にはセーフティドライバーなしでのサービス提供も一般向けに一部で開始しており、この領域で他社を一歩リードしている印象だ。

ちなみに2021年9月現在では、当初からサービスを提供しているアリゾナ州フェニックスのほか、サンフランシスコでの実証的にサービス提供を行っている。

中国ではネット検索大手の百度(バイドゥ)が2020年9月、中国・重慶で自動運転レベル4搭載のバスを中国で初めてデビューさせたことが話題になった。ライドシェア最大手の滴滴出行(Didi Chuxing/ディディ)もすでに上海で自動運転レベル4のタクシーサービスの検証を開始している。

このほか、ダイムラーとボッシュが共同開発した自動バレーパーキングは、「駐車場」という限定領域化でレベル4を実用化しており、すでにメルセデス・ベンツ博物館の駐車場で導入されているほか、ドイツ国内の空港でも営業運用を開始する見込みとなっている。

自動バレーパーキングに関しては、中国ではHuman Horizonsが完全電動車両「HiPhi X」に世界初であるレベル4自動バレーパーキングシステムを搭載すると2020年9月に発表している。

国内では、DeNAと日産がレベル4技術を搭載した自動運転タクシーによる新しい交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」の実証実験を進めているほか、ロボットベンチャーのZMPも実証を重ねている。

自動運転ソフトウェアを開発するティアフォーやタクシー配車アプリを提供するMobility Technologiesなどが参加する実証実験も2020年11月に実施された。

レベル4での走行を前提とした自動運転シャトルが続々登場

自動車メーカーや自動運転ベンチャーによって、小型の自動運転バスや自動運転シャトルが続々と開発されており、その中でハンドルやペダル類がない「ポッド型」などと呼ばれる車両は、基本的には自動運転レベル4での走行を前提としたものだ。

レベル4での走行を前提とした自動運転シャトルとしては、トヨタの「e-Palette」(イーパレット)、米GM Cruiseの「Origin」(オリジン)、仏ナビヤの「ARMA」(アルマ)、仏EasyMileの「EZ10」などが挙げられる。

自家用車よりも自動運転シャトルでレベル4の開発・実装が進められているのは、シャトルが走行するルートやエリアは自家用車よりも限定的であるケースが多いことが理由だ。決まったエリアであれば国や自治体からの走行許可も得やすいほか、道路空間における動的情報・静的情報を含んだダイナミックマップを整備するハードルも低いからだ。

日本国内では、茨城県境町でナビヤ社のARMAを使った移動サービスが有料で提供されているほか、東京五輪ではトヨタのe-Paletteが選手村で巡回バスとして導入された。両方の取り組みとも、人が運行に一定程度介入することから、実質的には「自動運転レベル2」となるが、人が介入しなくても安全性が確保されるようになれば、自動運転レベル4へと技術レベルは昇華する。

ちなみに、東京五輪ではトヨタのe-Paletteが視覚障害がある日本人選手と接触事故を起こし、安全性に対する懸念も少なからず広まった。

■自動運転レベル5:「完全運転自動化」


自動運転レベル5(完全運転自動化)の口語的定義は「運転自動化システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を持続的かつ無制限に(すなわち、限定領域内ではない)実行。作動継続が困難な場合、利用者が介入の要求に応答することは期待されない」とされている。

レベル5は運転手を必要とせず、走行エリアも限定されずにどんな場所の道路でも自動運転で走行が可能な状態のことを指す。そのため、ハンドルやアクセル、ブレーキなども必要とせず、車内の空間デザインの自由度も格段に増す。レベル4からレベル5に到達するためには、国・政府側の自動運転に対する法整備などのルール作りが必須になる。

車両設計の自由度が増すことで、ウィンドウが大型ディスプレイ化やボディとの一体化が進められるなど、室内空間は従来のクルマの概念にとらわれないものへと大きく変化する。移動が可能な一つの部屋、空間として認知されるようになり、日常生活の一部やあらゆるサービスが車内で行われるようになる。

なお、いかなる状況下においても自動運転を可能とするシステムに関しては、一部専門家から実現不可とする声も出ているが、レベル4におけるODD(運行設計領域)を少しずつ拡大していく形で、地道にレベル5の確立を目指す開発競争が続いていくものと思われる。

テスラの自動運転レベル5へのアプローチ

イーロン・マスクCEO(最高経営責任者)のもと、独自のアプローチで自動運転開発を進める米EV(電気自動車)大手のテスラは、カメラを主体としたセンサーデータをAI(人工知能)解析することで完全自動運転を成立させる戦略を立てている。

現在、多くの企業が開発している完全自動運転技術の方向性は、高精度3次元マップを使ったものだが、マップデータの整備が事前に行われていないエリアでは完全自動運転を実現させることはできない。

これでは、ODD(運行設計領域)の制約がないレベル5を達成するためには多大な時間がかかる。地球上の道路全てをマッピングする必要があるからだ。しかも情報は都度更新されていかなければならない。つまり、膨大な手間と時間がかかる。

しかし、地図を使わずに自動車が得たセンターデータだけで自動運転ができるようになれば、こうした膨大な手間と時間がかからなくなる。もちろん、その技術が確立できればの話だが、マスク氏の構想は自動運転レベル5の実現に向けては最短のアプローチかもしれない。

【参考】関連記事としては「地図はいらない!テスラ流の「人間的」自動運転とは?」も参照。

■国土交通省が定めた定義・呼称

国土交通省は、前述のSAEの自動運転レベル基準とは別に、自動運転車について日本独自の呼称と定義を策定している。

定義や呼称は、自動運転の開発・実用化・普及を促進するために発足した、産官学の有識者や関係者で構成される「先進安全自動車(ASV)推進検討会」によって策定された。

出典:国土交通省

自動運転レベル1:「運転支援車」

運転操作の主体は「運転者」で、自動運転レベル1は「アクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかが、部分的に自動化された状態」のことを指す。

自動運転レベル2:「運転支援車」

運転操作の主体「運転者」で、自動運転レベル2は「アクセル・ブレーキ操作およびハンドル操作の両方が、部分的に自動化された状態」のことを指す。

呼称自体は自動運転レベル1と同様だが、部分的に自動化される対象が「アクセル・ブレーキ操作およびハンドル操作の両方」という違いがある。

自動運転レベル3:「条件付自動運転車(限定領域)」

運転操作の主体は「自動運行装置(装置の作動困難時は運転者)」とされ、自動運転レベル3は「特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態」を指す。

ただし、注意点として「自動運行装置の作動中、自動運行装置が正常に作動しないおそれがある場合においては、運転操作を促す警報が発せられるので、適切に応答しなければならない」とも定められており、運転操作の主体は基本的に自動運行装置に任されるが、緊急時などは人が運転操作を担わなければならない。

自動運転レベル4:「自動運転車(限定領域)」

運転主体は「自動運行装置」だ。自動運転レベル4の定義は「特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態」である。

運転の主体は自動運行装置だが、それは事前に定められた「ODD(運行設計領域)」下に限定される。ODDでは、自動運転が可能なエリアや道路、気象条件、時間帯などが定められる。

自動運転レベル5:「完全自動運転車」

運転主体は「自動運行装置」で、自動運転レベル4のようにODDに制限されることなく、どこでもどんなときでも自動運行装置が運転主体となれる段階を指す。定義は「自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態」とされている。

■【まとめ】市販車の主力がレベル2からまもなくレベル3へ

自家用車においては、現在は日本においても世界においても自動運転レベル2の技術を搭載した車両が最先端となっているが、ホンダの新型レジェンドを皮切りにレベル3の実用化が始まり、高級車種や戦略車種から導入が進み始めるものとみられる。導入状況によっては、MRMやHMIなどのより厳格な装備基準が定められるなど法改正の動きもありそうだ。

一方、レベル2は、ファミリーカーや軽自動車などへの標準装備化が進むとともに、限定条件が緩和されたより高度なレベル2へと進化していく。

商用車においては、レベル4の実用実証が加速し、これらの成果を踏まえ新たな法改正などの動きにつながっていくものと考えられる。

レベル3、レベル4とも本格的な普及はこれからだが、技術水準とともに法整備やインフラ整備も徐々に整ってきており、開発各メーカー、そして各国間の主導権争いはまだまだ続きそうだ。

また冒頭で触れた「自動運転レベル6」については、「誰も知らない「自動運転レベル6」の世界 管制センターが全車両をコントロール」の記事を参考にしてほしい。ラボではレベル6の世界について「車両側が走行の判断をせず、『中央官制センター』が全ての車両をコントロールする世界」と仮定し、レベル6を実現するための課題などについて考察している。

■関連FAQ

    自動運転レベルは何段階?

    0〜5の6段階となっている。自動運転レベル0は「運転自動化なし」、最高位のレベル5は「完全運転自動化」と定義される。

    既にどの自動運転レベルまで実用化されている?

    市販車では「自動運転レベル3」、無人タクシーサービスでは「自動運転レベル4」が実用化されている。レベル3の市販車としてはホンダの「新型LEGEND」があり、レベル4の無人タクシーサービスとしてはGoogle系Waymoの「Waymo One」がある。

    自動運転レベルを定義したのはどんな機関?

    「米自動車技術会」(SAE)が定義した基準が世界的に採用されている。SAEは2014年1月に自動運転レベルの定義を行い、その後、2016年9月に内容をアップデートした。ちなみにかつては、「米運輸省道路交通安全局」(NHTSA)の定義が利用されてきた。

    「自動運転」の呼称が問題になったことはある?

    ある。自動運転レベル1〜2の機能は実質的にはADAS(先進運転支援システム)にとどまるが、こうした機能を「自動運転」とPRするケースが目立った。そのため国土交通省は、自動運転レベル1〜2の技術を搭載した車両の呼称を「運転支援車」と独自に定義している。

    自動運転レベル5の実現時期は?

    現時点では不透明だ。レベル5は「どこでもいつでも自動運転が可能」という水準を指す。極端な話、アメリカのニューヨークであってもアフリカの荒野であっても自動運転ができなければならないため、実現難易度は決して低くない。ただし、「国単位でのレベル5」の実現は、比較的早いかもしれない。国単位であれば、自動運転のための3Dマップデータを網羅的に作製しやすいからだ。一方、テスラなどはマップデータに頼らない完全自動運転技術の確立を目指している。カメラとAI(人工知能)にそれぞれ人の「目」と「脳」の役割を持たせ、マップがなくても走行できる人間的なアプローチで開発を続けている。この技術が完璧なものになれば、全ての国を対象にした完全自動運転が実現することになりそうだ。

(初稿:2018年4月9日/最終更新日:2024年1月11日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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