【最新版】自動運転レベル5とは?定義などの基礎知識まとめ

無人自動車の最終形態



モビリティ業界に「100年に一度の大変革」をもたらす自動運転。その最終形と言われるのが「自動運転レベル5」(完全運転自動化)だ。







運転の主体が完全にシステムに移行することからハンドルやアクセル・ブレーキなどは基本的に必要なくなり、自由な空間で自由な移動を楽しめるクルマの誕生は、モビリティに対する考え方を一変させる。実用化される頃には、取り巻く交通環境も今とは異なったものになっているだろう。

この記事では、自動運転レベルの最上位に位置付けられる「レベル5」の定義や実現時期、各社が発表しているコンセプトモデルなどについて説明していく。

■自動運転レベル5の定義

まず自動運転レベルは0〜5の6段階に分類されている。レベル2(部分運転自動化)までは人が運転操作の主体となり、レベル3(条件付き運転自動化)では緊急時以外はシステム、レベル4(高度運転自動化)以上では完全にシステム側が運転操作を担うことになる。

レベル4とレベル5の差は、完全無人での走行が一定のエリアに限られるかそうでないかというものだ。業界用語を使うのであれば、レベル4とレベル5は「ODD」(運行設計領域)の違いなどということになる。

具体的には、自動運転レベル5の口語的定義は「運転自動化システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を持続的かつ無制限に(すなわち、限定領域内ではない)実行。作動継続が困難な場合、利用者が介入の要求に応答することは期待されない」とされている。

■自動運転レベル5と法整備

日本では自動運転レベル3が道路交通法などの改正で2020年に解禁されるが、あくまで人が最終的な責任を負う形となっている。完全に運転の主体がシステム側に移る自動運転レベル4と自動運転レベル5の実現のためには、さらなる法整備が必要となる。

また国際法としては日本が現在批准しているジュネーブ道路交通条約に「自動車の運転にはドライバーが乗車しコントロールする」と規定されており、ドライバー不在の自動運転は認められていない。こうした規定の見直しも必要となっている。

■自動運転レベル5と事故責任

事故の際の責任の所在についても整理しておく必要がある。事故の類型によるが、賠償責任を運行責任者(所有者)、自動車メーカー、システムを構築したメーカーなどのうち誰が負うのかなど、一定の指針が必要となる。付随して、事故原因の詳細を知るためのイベント・データ・レコーダー(EDR)の搭載義務化なども検討しなければならない。

このほか、運転免許制度や自動運転車が道路交通法に違反した場合の罰則規定なども再考しなければならないだろう。

■自動運転レベル5とインフラ

インフラ面では、自動運転レベル5の車両の走行を前提とした交通環境の構築が必要となる。例えば、通信環境を整えるITSインフラの整備やセンサーが検知しやすい標識の標準化、ダイナミックマップの本格的な運用なども欠かせない。

必須要件はまだまだあるだろうが、高度な自動運転社会は決して自動運転車の開発だけでは実現しないのだ。

■自動運転レベル5と車室デザイン

自動運転レベル4までは自動車にはアクセルとブレーキ、そしてハンドルが必要だ。レベル4でも特定の地域を除けば人間が運転に関与する必要があるからだ。ただレベル5はどこでもシステムが完全に運転操作を担うことになるため、人間のために用意された物理的なアクセルとブレーキ、ハンドルは必要なくなる。

いまの自動車の運転席にあたる部分からこうしたものが消えると、車室デザインの自由度は大きく増す。極端に言えば、運転手が前方を視認するためのフロントガラスもなくてよい。そのため自動運転レベル5時代の車室デザインはいまの自動車と大きく変わるとみられている。

■自動運転レベル5の実現時期

レベル5の実現時期について、国レベルで明確な目標を掲げている例は少ないのが実状で、大まかに2030年代が目安となっているケースが多い。

日本:まずはレベル4の確立へ

日本においては、2025年以降に自家用車、物流サービス、移動サービスの全てにおいてレベル4を達成・実用化した後、実証を重ねながら対象範囲を徐々に拡大していくことが想定され、本格的な実現は2030年代になるものと思われる。ちなみに自動運転レベル3を解禁する改正道路交通法が2019年に国会で既に成立し、2020年に日本で自動運転レベル3は解禁される。

【参考】関連記事としては「改正道路交通法が成立 自動運転レベル3解禁へ」も参照。

欧州:2030年代にレベル5標準化へ

欧州連合(EU)の欧州委員会が策定した工程表(ロードマップ)によると、2018年内に域内各国の自動運転車の安全基準の統一を図るための指針の作成に着手し、2020年代に高速道路における自動運転や都市部における低速自動運転を可能にする。

すべての新車がコネクテッド化された後、2030年代にレベル5となる完全自動運転が標準となる社会を目指すこととしている。

中国:2030年にレベル4以上の新車搭載率10%目指す

中国は、2015年に打ち出した産業政策「中国製造2025」の中で、レベル4~5の新車搭載率を2030年に10%とする目標を掲げている。政府の主導力が強いため、開発状況によっては早期実現の可能性もあるだろう。

アメリカ:州の判断により早期実現も可能か

米国では、2017年9月に連邦法「車両の進化における生命の安全確保と将来的な導入および調査に関する法律(SELF DRIVE Act.)」が下院を通過した。検討対象にはレベル5も含まれているが、レベル5の実現時期については特に明言はない。

アメリカではGoogle系Waymoが世界に先駆けて自動運転タクシーを商用化し、2019年末にはセーフティドライバーも乗せないで運用を開始している。州によっては自動運転の導入にかなり積極的で、州の独自の判断でレベル5の早期実現を目指す動きも考えられそうだ。

■自動運転レベル5のコンセプトモデル
【日本】トヨタ自動車:コンセプトモデル発表に期待感

トヨタ自動車は将来的にはレベル5の自動運転車を実現することを目指しているが、現在のところ、その具体的なロードマップなどは明らかになってはいない。しかし既に自動運転レベル4のEV車両「e-Palette」を発表するなど開発は着々を進んでいるようで、自動運転レベル5のコンセプトモデル発表にも期待が高まる。

【日本】日産自動車:ニッサン IMx

東京モーターショー2017で初公開したコンセプトカー「ニッサン IMx」は、手動運転を楽しめるマニュアルドライブモード(MDモード)と、完全自動運転のプロパイロットドライブモード(PDモード)を搭載。PDモード選択時はステアリングが格納され、シートが深くリクライニングする仕様だ。

また、ダッシュボード上のパノラミックディスプレイやインストルメントパネルがエンターテインメントツールとなり、外の風景や音楽に合わせたビジュアル、コミュニケーション機能など移動を楽しむ要素が盛り込まれているほか、センターコンソールの超音波センサーやインストルメントパネルのカメラによって、ドライバーはわずかな手の動きや視線でクルマを操作することができるという。

無人走行中に予期せぬ状況に直面した際は、指令センターが状況を判断して遠隔でクルマに指示を出す技術なども想定している。

【アメリカ】テスラ:2020年代半ばに実現?

米電気自動車(EV)大手のテスラは、自動運転レベル5のコンセプトモデルやソフトウェアを過去に発表しているわけではないが、CEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏は2020年半ばに自動運転レベル5を実現することを目指していると過去に発言している。

テスラは既に同社の先進運転支援システム「AutoPilot」向けの自動運転オプションとして「FSD」(フル・セルフ・ドライビング)を発表しており、このFSDに自動運転レベル5の技術をいずれ実装させるものとみられる。

【ドイツ】BMW:BMW VISION NEXT 100

BMWの次世代を象徴するコンセプトカー「BMW VISION NEXT 100」は、完全自動運転を実現する「EAZE(イーズ)モード」と思い通りのドライビングを実現する「BOOST(ブースト)モード」を搭載。ステアリング上のBMWロゴに触れるだけでモードが切り替わる。このEAZEモードは自動運転レベル5を想定したものと考えられる。

【ドイツ】アウディ:AICON

フランクフルトモーターショー2017で発表された「AICON(アイコン)」は、現行のフラッグシップモデル「A8」よりもさらに大きなボディを誇る完全自動EV走行が可能なラグジュアリーサルーンだ。

ステアリングやペダル類のない広々とした車内では、搭載されたパーソナル・インテリジェント・アシスタント(PIA)とコミュニケーションを取ることで望み通りにクルマを動かせるという。

また、従来のヘッドライトやテールライトをデジタルディスプレイに置き換えることで表現力が増し、アニメーションで危険を知らせるなど周囲とのコミュニケーション機能も進化させている。

【ドイツ】フォルクス・ワーゲン:SEDRIC、I.D. VIZZION

2017年のジュネーブ国際モーターショーで初公開した「SEDRIC(セドリック)」、翌2018年に初公開した「I.D. VIZZION(アイ・ディ・ビジョン)」と立て続けにレベル5コンセプトカーを発表している。

SEDRICは自家用及び共用モビリティ向けユニバーサルコンセプトとしての自動運転車両で、2018年には最新バージョンとなる「SEDRIC School Bus(セドリック スクールバス)」も発表した。すべての操作をボタンやボイスコントロール、スマホアプリで行うことができる。

一方、「I.D.」シリーズ4作目となるI.D. VIZZIONは、数多くのアシスタンスシステムを備えた「デジタルショーファー」により、ステアリングホイールや目に見える操作類を使わずにクルマを制御することを想定している。乗員は、ボイスコントロールやジェスチャーコントロールを介して、個人的な好みを学習して各乗員に個別に対応可能なバーチャルホストとコミュニケーションを取ることが可能だ。

【スウェーデン】NEVS:InMotion

サーブブランドを傘下に持つスウェーデンのEVメーカーNEVSがCESアジア2017で初公開したレベル5のコンセプトカー「InMotion」。ステアリングやペダル類などの操作機能は装備せず、アプリケーションにアクセスすることで座席の動きや照明環境などを制御できる。座席はプライベート、ソーシャル、ビジネスの3つのレイアウトが可能だ。

【イタリア】Icona:Nucleus

トリノのデザインエンジニアリング会社Iconaがジュネーブモーターショー2018に出展した自動運転のEVコンセプトカー「Nucleus」。パワートレインにElaphe社の印ホイールモーターを採用することで内燃エンジンやドライブシャフトなどを省略し、車内空間の設計自由度を増している。

ステアリングのみならずダッシュボードまで廃した独特のデザインで、航空機に着想を得たというインテリアはリビングルームさながらの快適な移動空間となっている。

【スウェーデン】ボルボ:360c

ボルボが2018年9月に発表した完全自動運転車「360c」は、「運転手を不要にした場合の設計の自由度と時間の有効活用によって可能になること」をコンセプトに据え、睡眠できる環境、動くオフィス、リビングルーム、エンターテイメントスペースという4つの使い方を提示している。

他の道路利用者に対しては、発生音や色、形状、動作、これらの組み合わせによるシステムで、車両の意図を伝えられるよう開発されている。

2033年ごろの実用化を目指しているという。

■【まとめ】実現の肝は「インフラ整備」と「ルール作り整備」

自動運転レベル5の実現に対し、少しはリアリティを高められただろうか。各国ともレベル4の実現までに必要なルールづくりを進め、レベル4の実用化と並行して詳細を煮詰めながらインフラ整備なども進めていくものと思われる。

自動運転車の開発サイドにおいては、設計の自由度が増したことによる独創的なエクステリアやインテリアデザインが目立ち、移動しながらどういったことができるのか、といった観点がコンセプトカーに盛り込まれている。

今後は、センサー類やAIなどのさらなる進化のもと、レベル4の技術の応用範囲を広げるといった基本的な部分から、互換性の高いシステムやプラットフォームづくりなど横の連携も求められていくことになる。

遠いようで遠くないレベル5の世界に向け、自動運転業界の開発競争はますます激化し、さまざまなアライアンス(同盟)やグループの形成も進んでいくだろう。

(初稿:2018年9月19日/最終更新:2020年2月6日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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