自動運転レベル4、ゼロから分かる基礎知識&進捗まとめ

各国企業がウェイモ猛追、2020年がターニングポイント



グーグル系Waymo(ウェイモ)が自動運転タクシーの商用サービスで口火を切った「自動運転レベル4」(高度運転自動化)。実証実験におけるホットなレベルも「4」になりつつあり、ウェイモに追随する動きが世界的に加速し、2020年ごろから本格的に世界各地で無人による自動運転サービスが誕生する見込みだ。







バスやタクシーといった商用サービスが中心となるレベル4の定義をはじめ、最新の開発状況など各国、各メーカーの動きに迫ってみよう。

記事の目次

■自動運転レベル4の定義・要件

自動運転レベル4(高度運転自動化)の口語的定義は「運転自動化システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において持続的に実行。作動継続が困難な場合、利用者が介入の要求に応答することは期待されない」とされている。

言い換えると、一定の区域や自動車専用道路などの走行する場所や走行速度、天候などの環境など、一定の条件がそろった際にドライバーを必要としない無人走行を可能とするのがレベル4だ。

ちなみに自動運転システムが機能する条件を「ODD(Operational Design Domain/運行設計領域)」といい、自動運転レベル4でもODDを外れた際は車両が安全に自動停止するか、ドライバーによる手動運転に切り替えることになる。そしてこのODDの制限がはずれたとき、そのシステムは自動運転レベルの最上位「自動運転レベル5」(完全運転自動化)にステップアップする。

■自動運転レベル4実現への各国の取り組み
日本:2020年中にレベル4無人移動サービス実現へ


官民ITS構想・ロードマップ 2019によると、限定地域における無人自動運転の移動サービスを実証実験の枠組みを利用して2020年までの実用化を図り、ODD の拡大を含む技術レベルの向上やサービス内容の拡大を図りながらサービスの全国展開を進め、2025年を目途に全国の各地域で高齢者らが自由に移動できる社会を実現することを目指すとしている。

自家用車においては2020年までにレベル2、できればレベル3を実現し、2025年をめどに高速道路におけるレベル4の実現を目指すこととしている。

2019年6月には、国土交通省が「限定地域での無人自動運転移動サービスにおいて旅客自動車運送事業者が安全性・利便性を確保するためのガイドライン」を策定・公表した。無人自動運転による移動サービス導入に関わる必要要件などが明確になり、導入を目指すバス・タクシーをはじめとした事業者らの取り組みが加速しそうだ。

【参考】限定地域における移動サービスのガイドラインについては「ついに実現へ!レベル4の自動運転タクシー、限定地域での運行ガイドライン発表」も参照。

自家用車では、2020年ごろに国道などの主要幹線道路において直進運転が可能となる自動運転レベル2を実現し、2025年ごろには主要幹線道路における右左折やその他の道路における直進運転など、レベル2 システムのODDの拡大を期待している。レベル4に関しては、2020年のレベル2、レベル3の実現を踏まえ、2025年を目途に高速道路におけるレベル4の市場化を見込んでいる。

物流サービスでは、2021年までにレベル2以上の高速道路におけるトラックの後続車有人隊列走行を実現し、2022年以降に後続車無人隊列走行、2025年以降レベル4の完全自動運転の実現を目標に掲げている。

民間レベルでは、現在ZMPと日の出交通などが自動運転タクシーの実証に力を入れているほか、道の駅を拠点とした自動運転の実証実験が各地で進められている。また、技術開発力をPRする格好の場となる東京オリンピック・パラリンピックにおいても自動運転技術をお披露目する計画が発表されており、五輪開催の直前には東京の臨海副都心地区・羽田地区で自動運転レベル4相当の実証実験やデモンストレーションなどが行われる予定となっている。

法整備面では、道路運送車両法の一部を改正する法律案と道路交通法の一部を改正する法律案がそれぞれ2019年に国会で可決され、自動運転レベル3への道筋が開けた状況だ。これにより自動運転レベル3は日本国内で2020年に解禁されることになり、ホンダが2020年夏にもレベル3車両を発売開始する見込みだ。

【参考】道交法改正案などについては「【解説】自動運転解禁への道路交通法と道路運送車両法の改正案の概要」も参照。

アメリカ:米国統一ルール制定へ議論続く


米国では、2017年9月に自動運転車の安全確保策を盛り込んだ連邦法「車両の進化における生命の安全確保と将来的な導入および調査に関する法律(SELF DRIVE Act)」が米国下院で法案可決され、上院においては「SELF DRIVE Act」に変更を加えた「AV START Act」が議論されているが、2019年8月時点で成立には至っていない状況だ。

これまで自動運転車に係る規制は各州独自に法制化を進めてきたが、州ごとに要件が異なっていたことから米国統一ルールとして連邦法の制定が検討されており、「SELF DRIVE Act」には自動車安全基準の見直しやメーカーに安全性評価証明書の提出義務付け、州の権限などが盛り込まれている。

欧州:道交法改正したドイツが一歩リード


欧州委員会は完全自動運転社会を2030年代に実現するためのロードマップを2018年5月に発表しており、いち早く域内基準を策定することで国際ルールをめぐる世界の主導権争いをリードしていく構えだ。

2018年内に域内各国の自動運転車の安全基準の統一を図るための指針の作成に着手し、2020年代に都市部での低速自動運転を可能にする。そして、すべての新車がコネクテッド化された後、2030年代に完全自動運転が標準となる社会を目指すこととしている。欧州委の試算では、自動運転社会への移行で2025年までに8000億ユーロ(約104兆円)を超える市場がEUの自動車と電機業界に生まれるとしている。

国別では、ドイツが2017年5月、レベル3を実用化する道路交通法改正案をいち早く成立させている。高度・完全自動運転機能を備えた車両の運行は、高速道路のみでの使用など規定通りに運用される場合に許可することとしているほか、運転者の注意義務や事故の際の賠償責任などが盛り込まれている。

【参考】欧州における政策動向については「「自動運転×ヨーロッパ」の最新動向は? 各国政府や企業の取り組みまとめ」も参照。

中国:EV・自動運転分野で国内企業が躍進


中国はウィーン条約、ジュネーブ条約両方を批准していないため国際的な縛りはなく、国策として電気自動車(EV)や自動運転の開発に力を入れている。これまで無人運転による公道実験は北京や上海で認めていたが、2018年に新たなガイドラインを発表し、一定ルールのもと他都市に拡大して実証実験を推進していく方針を打ち出している。

このほか、自動運転に対応したスマートシティをまるごと作り上げる「自動運転シティ構想」を2017年に発表し、インフラ協調型の新たなまちづくりが着々と進められているようだ。

国策のもと新技術を武器に活躍する中国企業の成長は目覚ましく、わずか数年間で世界有数の自動運転大国に上り詰めた感が強い。

【参考】中国の政策動向については「「自動運転×中国」の最新動向は? 国や企業の取り組み状況まとめ」も参照。

■自動運転レベル4の車種・サービス例
トヨタ(日本):多目的に活用可能な「e-Palette Concept」発表
2019年3月期の決算発表を行う豊田章男社長=出典:トヨタ自動車公式動画

2018年1月に米ラスベガスで開催されたCESに出展した「e-Palette Concept」は、レベル4相当の技術搭載を想定したコンセプトモデルとなっている。電動化、コネクテッド、自動運転技術を活用したMaaS専用次世代EVで、移動や物流、物販などさまざまなサービスに対応できる自由度の高い室内空間を有する。

また、ワールドワイドパートナーを務める2020東京五輪におけるサポート体制も次々と発表しており、自動運転技術やロボティクスを活用したさまざまなモビリティで大会を強力にサポートする予定だ。その取り組みの一つとして、オリンピックの選手村ではe-Paletteが選手の移動に使われることになっている。

【参考】e-Paletteについては「トヨタの秘策….自動運転技術で「移動型」の無人コンビニ実現へ|自動運転ラボ」も参照。トヨタ自動車の自動運転戦略については「トヨタの自動運転車、戦略まとめ 実用化はいつから? AIやコネクテッドカーの開発状況、ロードマップも|自動運転ラボ」も参照。2020東京五輪については「「トヨタ×オリンピック」!登場する自動運転技術や低速EV、ロボットまとめ」も参照。

DeNA×日産自動車:無人タクシー公道で実証、早期実現へ
出典:DeNAプレスリリース

レベル4技術を搭載した自動運転タクシーによる新しい交通サービス「イージーライド(Easy Ride)」の実証実験を2018年に続き2019年にも実施した両社。横浜みなとみらい地区の限定区域において、遠隔管制センターのサポートのもと無人による自動走行を実現している。

両社は「2020年代早期」を本格的なサービス提供の開始時期としており、引き続き技術開発やサービスの拡充を図っていく構えだ。

【参考】イージーライドについては「【インタビュー】日産×DeNA、自動運転タクシー「Easy Ride」の進化に迫る」も参照。

ZMP(日本):2020年見据えレベル4を確実に事業化
ZMPが開発する自動運転開発プラットフォーム=自動運転ラボ撮影(2018年開催のZMPフォーラムにて)

ロボットベンチャーのZMPも2020年の実用化を見据え、タクシー会社などと共同で自動運転サービスの実証などに積極的に取り組んでいる。

法整備面を考慮し、空港の制限区域といった事業化しやすい環境に注目しており、制限区域内でのレベル3からレベル4の実現にむけ確実に事業化させていく構えだ。

また、無人宅配ロボの開発でも国内では先行しており、こちらも要注目だ。

【参考】ZMPの取り組みについては「「五輪までに自動運転実現」 ZMP社長を突き動かす総理との約束」も参照。

UDトラックス(日本):レベル4デモや実証実験実施
出典:日本通運プレスリリース

トラック業界では、スウェーデンのボルボ・グループの子会社UDトラックスが日本国内で積極的に取り組んでいる。

同社は2018年12月にレベル4技術を搭載した大型トラックの走行デモンストレーションを実施したほか、2019年8月には北海道で日本通運などと共同で実証実験を行っている。

同社は自動化や電動化について、2020年にかけて特定用途で実用化し、これをベースに2030年に向けて完全自動運転と大型フル電動トラックの量産化を実現するビジョンを掲げている。

【参考】UDトラックスの取り組みについては「日通、UDトラックスなどと北海道で自動運転レベル4の実証実験」も参照。

GM(アメリカ):2019年実用化予定の無人タクシーサービス延期
(左から)GMクルーズのダン・カン現COOとカイル・ボークトCEO、GM本体のダン・アマン社長=出典:GMプレスリリース

無人運転の量産車を2019年にも実用化する計画を発表していたGMだが、2019年7月25日までに同社CEO(最高経営責任者)のダン・アマン氏が計画を延期する方針を明かした。安全性をいっそう高めるための延期とみられており、新たなスタート目標時期については触れていないようだ。

自動運転タクシー開発の中核を担うGMクルーズは、2018年にソフトバンク・ビジョン・ファンドから22億5000万ドル(約2500億円)、ホンダから総額27億5000万ドル(約3000億円)、2019年に両社から新たに11億5000万ドル(約1260億円)の追加出資を受けることが発表されており、計画延期とはいえまだまだ期待感は強い。

【参考】GMの無人タクシーについては「GMクルーズ、「安全第一」で自動運転タクシーのサービス延期」も参照。

グーグル系ウェイモ(アメリカ):無人タクシーの配車サービス開始
出典:Waymo社メディア向けキット

米アリゾナ州フェニックスで2018年12月に自動運転タクシーの有料配車サービス「waymo one」を開始したウェイモ。利用対象を限定しているほか、当初は安全のためセーフティドライバー同乗のもとでサービスを提供していたが、2019年後半にはオペレーターなしでのサービス提供を一部でスタートしている。

自動運転車を製造する工場建設の発表やカリフォルニア州における自動運転タクシーサービスの許可、日産・ルノーとの無人モビリティサービスに関する独占契約締結など動きは加速しており、他地域におけるサービス実施や同社の自動運転技術を活用した他社との取り組みなどにも今後注目が集まりそうだ。

【参考】ルノー・日産との協業については「日産とルノー、自動運転分野でグーグル系ウェイモと独占契約」も参照。カリフォルニア州における自動運転タクシーの許可については「カリフォルニア州、ウェイモに自動運転タクシーのサービス許可」も参照。

アウディ(ドイツ):レベル4の「エレーヌ」2019年にも実用化

世界に先駆けてレベル3技術搭載の「Audi A8」を市販化したアウディ。各国の法整備が間に合わずレベル3技術は棚上げ状態が続いているが、2020年にはレベルアップした新たなレベル3技術が日の目を浴びそうだ。

レベル4では、フランクフルトモーターショー2017や東京モーターショー2017などでお披露目した「エレーヌ」をはじめ、次々とコンセプトモデルを発表しており、2019年の上海モーターショーでは「AI:ME」を初公開している。

【参考】「AI:ME」については「自動運転時はハンドル格納 アウディの「AI:ME」が色々凄い」も参照。

ダイムラー(ドイツ):ボッシュやBMWとの協業に注目

ダイムラーは2019年3月3日までに、BMWと共同で自動運転開発を行うことを発表しており、レベル4相当の自動運転車を共同開発し、2020年半ばの実用化を目指す構えだ。モビリティサービスの面においても経営統合を積極的に進める両社の取り組みは今後ますます加速する可能性がある。

また、独自動車部品大手のボッシュと共同で開発した自動バレーパーキングが、独バーデン・ヴュルテンベルク州当局からレベル4クラスのドライバーレス完全自動駐車機能としての承認を受けたことも2019年7月に発表されている。自動バレーパーキングは日本への導入も検討されており、応用技術など実証が進められている。

【参考】ダイムラーとBMWの取り組みについては「ダイムラーとBMW、レベル4級の自動運転車を共同開発」も参照。自動バレーパーキングについては「ボッシュとダイムラーの自動駐車システム、自動運転レベル4でGOサイン」も参照。

フォルクスワーゲン(ドイツ):レベル4技術搭載車で実証実験

フォルクスワーゲンは2019年4月までに、レベル4技術を搭載した車両の実証実験をドイツ北部のハンブルグで開始したことを明らかにした。

実証実験にはVW製の電気自動車「e-Golf」が5台使用され、レーザースキャナーや超音波センサー、レーダーなどをそれぞれの車両に搭載しており、自動運転ソフトウェアの評価や検証などを進めていく構えだ。

同社は自動運転EVコンセプトカー4種を「ID.(アイディー)」のブランドで発表しており、2020年ごろから順次市場に投入していくとみられる。

【参考】VWの取り組みについては「独VW、ハンブルクで自動運転レベル4の実証実験を開始」も参照。

ボルボ(スウェーデン):2021年にレベル4搭載「XC90」発売へ
出典:ボルボ・カーズ・プレスリリース

レベル4の自動運転技術を搭載した新型SUV「XC90」を2021年に発売すると発表したボルボ社。「Highway Assist」と名付けられた自動運転機能を搭載し、クラウド上にある情報を基にシステムがナビゲーションを行い、自動運転の「目」となるLiDAR(ライダー)や車載カメラ、車間探知レーダーを活用しながら車両を目的地まで走らせるという。

ルノー(フランス):B2B活用視野に「EZ-GOコンセプト」発表
ルノーのEZ-GO=出典:ルノー・ジャポンプレスリリース

ジュネーブモーターショー2018で初公開したEVロボットカー「EZ-GOコンセプト」は、車両が前走車との距離を検知し、停車や車線変更などを自動で行う。走行速度は時速50キロメートルに制限している。

車内は、車両の進行方向に向かって乗員が横向きに着座するベンチシートを採用。個人利用だけでなく、カーシェアリングやライドシェアなどB2B(企業間取引)サービスへの活用も視野に入れているという。

アストンマーティン(イギリス):手動運転切り替え可能なコンセプト
出典:アストンマーティンプレスリリース

2021年から生産開始予定のラゴンダブランドの新型EVコンセプトカー「ラゴンダ・ビジョン・コンセプト」をジュネーブモーターショー2018で発表した。

ハンドルは必要に応じて格納や左右への移動が可能で、自動運転時には前席を180度回転させて対面乗車することもできるという。車両の周辺環境を360度監視するシステムを搭載し、常時インターネット接続、専用のコンシェルジュサービス、高度なコネクティビティ、サイバーセキュリティを備える。

百度(中国):自動運転EVバス「アポロン」実用化に向け各地で走行実験
出典;百度プレスリリース

アポロ計画を推し進める中国ネット検索最大手の百度(バイドゥ)は、2018年7月に自動運転EVバス「Apolong(アポロン)」を発表。レベル4相当の自動運転ソリューションを搭載しており、観光地や工場の敷地内など限定領域での完全な自動運転が可能で、車両にはハンドルや運転席なども設けられていない。

すでに受注に向けた販売活動を開始しており、中国各地などで商業化に向けた運用試験が始まっている。

2019年7月には、北京市内における公道走行実験におけるレベル4相当のライセンスが中国政府から付与されたことも明らかになっており、実用化に向けた取り組みは着実に進展している様子だ。

【参考】百度の取り組みについては「中国・百度、自動運転車両の走行距離が200万キロ突破 国内13都市で走行」も参照。

DiDi(中国):上海でロボタクシーの試験走行許可取得 百度を猛追
出典:DiDiプレスリリース

配車サービス大手のDiDiも、2019年8月に社内の自動運転開発部門を独立する形で自動運転開発に特化した新会社の設立を発表するなど、自動運転開発に本腰を入れている。

同月に上海で開催された世界人工知能大会(WAIC)では、レベル4車両によるロボタクシーサービスを行うことを明らかにしており、上海当局から試験走行の許可も得たようだ。

百度やスタートアップが開発を強力に進める中国において、配車サービス面で圧倒的な実績を誇るDiDiが猛追する格好だ。

【参考】DiDiの取り組みについては「中国の自動運転タクシー、初実現は「滴滴」か「百度」か」も参照。

BYTON(中国):中国発EVスタートアップ、2020年にレベル4実現へ

BMW出身のエンジニアが2017年に立ち上げた新興EVメーカーのバイトン社。CESアジア2018において、同社2番目となるEVコンセプトカー「K-byte Concept」を発表した。将来的にレベル4の自動運転を可能とした電動サルーンで、自律走行技術を生かすため従来のセダンの型にとらわれない発想を導入している。

段階的に自動運転レベルを引き上げていくこととしており、2019年にレベル3、2020年にレベル4の実現を掲げている。

ZF(ドイツ):部品メーカーの技術結集したレベル4向けコクピットシステム発表

レベル4の開発は自動車メーカーに限ったものではない。自動車部品メーカーのZFも2018年夏に次世代モビリティをテーマに開催した「テクノロジーデイ2018」で、レベル4向けのコクピットシステム「トレンドセッティングコクピット」を発表している。

ハンドルやペダル類は未装備で、ドライバーは左右どちらのシートにも座ることができる。手動操作も可能で、3個のモニターが情報を表示し、センターコンソールに配置されたジョイスティック状の統合制御レバーで加減速や方向転換などクルマの前後左右の動きをコントロールできる。

■手動運転も可能にするかどうかという議論

レベル4搭載車は、大きく2パターンに分けられる。一つは限定領域のみを無人で走行する車両、そしてもう一つが限定領域においては無人、それ以外では手動で運転を行うことが可能な車両だ。後者の場合は手動運転機能が備わっており、一般道走行のためのドライバーも乗車していることから問題はないが、前者のケースには少し厄介な問題が潜んでいる。

無人走行のみを前提とした場合、手動運転装置を設けるべきかどうか。多くはハンドルやペダル類を省いた設計で、コスト面や室内空間確保のためにこういった仕様を採用しているようだ。しかし、万が一自動運転システムが故障した場合はどうなるのか。遠隔監視ステムが導入されていても、ただちに遠隔命令に対応できるとも限らない。

絶対に故障を起こさないというシステムは存在しない。ODDの諸条件を満たさなくなった際に、システムの機能を維持・制限した状態でシステムの稼働を継続させるフォールバック(縮退運転)や、路肩などへ安全に車両を停止させるミニマル・リスク・マヌーバー(MRM)、手動運転への切り替えを的確に促すヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)技術など、万が一に備えた二重三重のバックアップシステムの搭載も求められることになる。

■【まとめ】レベル4実用化に向けた動きは加速 2020年が本当のスタートに

ウェイモのレベル4サービス実用化をきっかけに、世界各国の開発企業の動きが加速したように思える。また、GMのように計画を延期する発表もあったが、これはレベル4サービスが雲をつかむような技術ではなくなり、より現実的な経営目線で捉えることができるようになったためと思われる。

2020年には実用実証を交えたものを含めレベル4サービスが世界各地で誕生する見込みだ。そこからが本当のスタートで、サービス開始からしばらくはウェイモのようにオペレーターの同乗や料金面でのサービス実施など採算度外視の実用化が続き、体力が試される可能性が高い。

より洗練されたサービスに昇華するまでまだまだ時間を要する。自動運転開発や自動運転技術を活用したサービスへの投資もまだまだ続きそうだ。

(初稿:2018年9月17日/最終更新:2020年1月27日)

【参考】自動運転レベルについては「自動運転レベル0〜5まで、6段階の技術到達度をまとめて解説」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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