自動運転、日本でのレベル4初認可は「誘導型」 米中勢に遅れ

時速12キロ以下で電磁誘導線上を走行



出典:経済産業省プレスリリース

福井県永平寺町で実施する自動運転の実証実験において、道路交通法に基づく「特定自動運行」の許可が日本で初めて出された。これにより、レベル4の自動運行装置を用いた運転者なしでの運行が可能となる。許可は2023年5月11日付。

この実証実験は、経済産業省と国土交通省が2021年度から共同で行ってきた「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」の一環で行われているものだ。


電磁誘導線に沿って「誘導型」の自動運転を行う形態であるため、アメリカのGoogle系Waymoなどが展開する非誘導型の自動運転タクシーには匹敵しない。レベル4、つまりドライバーなしでの運行が可能になると言えど、誘導型である限りは真の自動運転レベル4とは言えない。

この分野では日本が米中にリードを許しており、たとえ狭い限定エリアにおいてもレベル4の無人移動サービスが早期に実現することが今の日本に求められている。

【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?(2023年最新版)」も参照。

■一般向けに5月28日からサービス開始

永平寺町では、2021年3月に自動運転レベル3の認可を受けた遠隔型自動運転システムによる無人自動運転移動サービス「ZEN drive」を開始し、「1人の遠隔監視者が3台の自動走行車両を運行する」という運行体制を国内で初めて実現した。現在は土・日・祝日の午前10時~午後3時に有償にて定時運行を行っている。


2023年3月30日に国内で初めてレベル4の自動運行装置として認可され、その後、今回の自動運転車によるレベル4での運行許可を取得した。5月21日に記念式典を開催し、一般向けには5月28日からサービスを開始するようだ。

なお自動運転レベル4は、「特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態」と定義されている。つまり、一定条件下において自動運転システムが全ての運転操作を行うレベルとなっている。

レベル4ではODD(運行設計領域)内で作動継続が困難となった際も、ドライバーなどが介入することなくシステム側が自ら安全を確保することが求められる。

【参考】関連記事としては「自動運転とODD」も参照。


■電磁誘導線を使ってレベル4自動運転

特定自動運行に使用する自動運転車は、ヤマハ発動機のグリーンスローモビリティ(電動カート公道仕様)「AR-07」をベースに、GPSアンテナやカメラ、ミリ波レーダー、RFID読取装置などが搭載された車両だ。

プレスリリースによれば、車両は7人乗りで、特定自動運行時に経路上で使用する車両3台、予備車両1台を所有している。約2キロの電磁誘導線とRFIDによる走行経路を、時速12キロ以下で走行する。走行環境条件と特定自動運行の経路については、それぞれ以下のように紹介されている。

出典:経済産業省プレスリリース(※クリックorタップすると拡大できます)
出典:経済産業省プレスリリース
■世界で加速するレベル4実用化

海外に目を向けてみると、自動運転レベル4の車両を開発し、公道での実証を行っている企業は多数ある。

自動運転タクシー関連の取り組み

米Google系の自動運転開発企業であるWaymoは、アリゾナ州フェニックス郊外2018年12月に世界初の自動運転タクシー商用サービス「Waymo One」を開始した。2019年末ごろから一部ユーザーを対象にドライバーレスのサービスを導入し、2020年10月ごろには対象を一般ユーザーに拡大している。続いて2021年8月からはカリフォルニア州サンフランシスコでもドライバーレスタクシーサービスを開始、ロサンゼルスでも開始予定となっている。

米GM傘下のCruiseは2021年6月にカリフォルニア州からドライバーレスでの自動運転タクシーのサービス許可を取得し、サンフランシスコで自動運転タクシーサービスを展開している。現在はフェニックスとテキサス州オースティンでもサービスを提供しているようだ。

中国では自動運転ベンチャーWeRide(文遠知行)がレベル4の自動運転タクシーサービスの開発に注力しており、中国と米国の両方で自動運転テストの許可を取得した世界で初の企業となっている。

トラックやシャトルの無人化も

自動運転タクシーのほか自動運転トラックの開発も進んでおり、2022年12月には、中国系スタートアップのTuSimple(図森未来)が米国の公道で自動運転トラックの完全無人オペレーションに成功している。

欧州では、2021年11月にフランスの自動運転スタートアップ企業であるEasyMileが欧州で初めて公道における自動運転レベル4の走行許可を得ている。

また自家用車に関しては、ドイツの高級車メーカーであるメルセデス・ベンツは、自動運転レベル4の機能を搭載した自家用車を2030年までに実現する考えを、今年に入り明かしている。

■永平寺町に続く自治体や企業は?

今回永平寺町でレベル4の自動運転走行が許可されたことにより、実用化が進む米中に負けず劣らず取り組みが加速していくきっかけになりそうだ。

自治体での取り組みとしては、茨城県境町で2020年から自動運転バスの公道での定期運行が全国に先駆けて始まっているが、自動運転レベルは2となっている。今後レベル3、4と進化していくこともあるかもしれない。

また乗用車では、ホンダがレベル3の市販車である新型「レジェンド」を世界で初めて2021年3月に発売した。同社は2022年6月に、交通混雑地帯で初のレベル4の実証実験を行うことを発表している。運転手不在の自動運転配車サービスを2020年代半ばにはスタートさせたい意向で、実証には米GMなどと共同開発した車両を使用するようだ。

日本での自動運転レベル4に関する取り組みに、引き続き注目していきたい。

【参考】関連記事としては「自動運転レベル4、国内初認可!運転者を必要とせず」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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