ミリ波レーダーとは? 自動運転車で果たす役割は? 開発企業は?

79GHz帯レーダーの登場で役割が変わる


自動運転において目の役割を果たすセンサー類。次々と新技術が開発される車載カメラやLiDAR(ライダー)に比べ、ミリ波レーダーの話題は意外と少ない印象を受ける。







ミリ波レーダーは他のセンサーに比べ、天候に左右されにくく遠方のものを検知する性能に優れている反面、形やサイズなどの詳細を識別するのは苦手で、電波の反射率の低いものや近距離検知にも対応しづらいというのが従来の特徴だった。しかし、この明確な特性が現在変貌を遂げようとしているのだ。

今回はミリ波レーダーに焦点を当て、自動運転における役割や進化の中身に迫ってみよう。

  1. LiDARとは? 自動運転車のコアセンサー
  2. LiDARのMEMS式とSolid State式、特徴や違いを解説
  3. 【最新版】自動運転の最重要コアセンサーまとめ
  4. 自動運転に関する専門用語まとめ LiDAR、MaaS、ダイナミックマップ…
■ミリ派レーダーとは?

ミリ波は、周波数にして30GHz(ギガヘルツ)から300GHz、波長にして1ミリメートルから1センチメートルまでの電波で、電波の中でも光に近い周波数帯であり、比較的光に近い性質を有している。直進性が非常に強く、雨や霧、雪といった耐環境性に優れ、長波に比べ遠くまで伝送できないが情報伝送容量が大きい特徴を持つ。

このミリ波をセンサーとして応用したのがミリ波レーダーで、離れた対象物との距離や速度、角度を測定することができる。1997年に欧米と共通の周波数を利用する免許不要の無線システムとして76GHz帯小電力ミリ波センサー(レーダー)が制度化され、日本においても法制化の審議が行われた。主に自動車における前方障害物との衝突事故回避装置の実現を目的としており、ここから車載レーダーの開発と実用化が急速に進んだ。

動作原理としては、シンセサイザーでミリ波の信号を生成し、TXアンテナから電波を送信する。この電波が対象物により反射し、戻ってきた電波をRXアンテナで受信する。この信号を計算に使用するIF信号に変換して、対象物との距離などに変換する。

短波長のため高い精度で検出でき、最小で0.1ミリメートル単位の動きを検出することが可能なほか、電波の波長に依存する無線アンテナの長さにおいても、ミリ波は非常に短波長のためアンテナを小型化できる。

車載用のほか、自動車の交通量を計測するトラフィックモニタリングやドローンへの搭載、周囲を監視する防犯センサーなどに用いられている。価格は数万円が相場のようだ。

■自動運転におけるミリ派レーダーの役割

76GHz帯のレーダーは、主に車両の前方100~200メートル程度までの障害物を、距離分解能1~2メートル、視野角20度程度で検知する前方監視用長距離レーダーとして主に利用されている。特に高速道路上で先行車両に対し距離と相対速度を自動制御し、運転者に利便性を提供するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)システムとして、1999年に初めて市場に導入されて以来順調に普及が進んでいる。

2003年からは前方監視プリクラッシュシステムや前方監視追突軽減ブレーキシステムを搭載した車両が一部の自動車メーカーから市場に投入され、その後、複数社が同様のシステムを採用したことにより、衝突被害軽減のためのミリ波レーダーシステムの普及が進んだ。

近年では、監視範囲を前方だけでなく自車周辺に拡大することで、衝突軽減や予防効果を高めた安全運転支援システムの実用化が進んでいる。

なお、ミリ波レーダーが長距離を観測するのに対し、短中距離を観測するためにカメラやLiDARなどが併用されているが、ミリ波ではない24GHz帯狭帯域のレーダーシステムもあり、後方プリクラッシュシステムや前側方、後側方監視システムへ用いられている。

■ミリ波レーダーの進化
79GHz帯導入でミリ波レーダーが高分解能化

従来の76GHz帯レーダーの弱点を補うため、現在開発が進められているのがより優れたセンシング能力を発揮できる79GHz帯高分解能レーダーだ。

検知エリアの拡大や分解能の向上のためには、使用する周波数帯域幅を広げることが必要にあるが、日本では使用可能な帯域幅が0.5GHzに制限されているため、従来の76GHz帯レーダーでは必要な分解能が得られなかった。

これに対し、79GHzレーダーは帯域幅が4GHzと超広帯域であり、高い分解能を持つことが可能となる。79GHzレーダーを利用した車載レーダーシステムは、従来に比べ中短距離の計測も可能となり、歩行者や自転車などの小さな対象物の分離・抽出性能が向上し、早期の発見が可能となるため、安全運転支援システムの性能向上に大きく寄与する。また、自車周辺の障害物との距離測定を高い距離分解能・精度で行えるため、衝突直前までの制御が可能となり被害低減にも役立つと考えられている。

79GHzは現在国際的に標準化が進められており、欧州などでは2019年にも79GHzのミリ波レーダーが搭載される予定という。

国内では、パナソニックが独自のデジタル符号化技術を適用することで高機能化したレーダー技術を、79GHz帯のミリ波レーダーに用いる開発を進めており、これにより交差点内の事故を未然に防ぐ検知センサーなどより安全なシステムが構築できるという。

また、ミリ波レーダーの開発に高い実績を持つデンソーテン(旧富士通テン)も、高分解能で広角検知を可能にする79GHz帯レーダーを開発したことを発表している。新レーダーは超広帯域なFMCW変調とセクター・アンテナによって構成され、高度な信号処理技術により実現したものという。

自動運転向けリアルタイム・ミリ波レーダー・シミュレーターの登場

ソフトウェア開発を手掛けるOTSLが2017年9月に、ミリ波レーダーを仮想的に3次元画像化し、照射範囲、角度、距離、反射強度、対象物との相対速度などの計算値をリアルタイムに可視化することができる「リアルタイム・ミリ波レーダー・シミュレーター」を発表し、提供を開始している。

ミリ波レーダーを搭載する自動車を仮想空間で走行させ、対象物となる追尾車や対向車、歩行者などの仮想モデルを移動させることで、より現実の運転状況に近いシミュレーションを可能にした。

このシミュレーターを利用することで、自動車メーカーはセンサーのモデル化により実車によるテスト走行を実施することなくシミュレーションで走行を再現し、自動運転の認識、制御などの確認、車両へのセンサ取り付け位置の検証を効率的に行える。また、システムサプライメーカーは、車載におけるセンサーの挙動を可視化することで、ミリ波モジュールの設計パラメータの検討、到達距離・認識領域の確認を効率化できる。センサーデバイスを開発する半導体メーカーは、開発中のデバイスをモデル化してシミュレーションし、高速に検証を行うことが可能になるという。

同社はLiDAR向けのシミュレーターも発表しており、2018年10月には赤外線、カメラ、超音波の各センサーに対応したシミュレーター3製品も新たに発表している。

【参考】OTSLのシミュレーターについては「OTSL、赤外線やカメラに対応した自動運転向けシミュレータの発売開始」も参照。

CMOS技術採用で小型化・低価格化、システムオンチップ化などを実現

微細化の進歩により動作性能が非常に高速化しており、ミリ波信号を取り扱えるようになってきたCMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)技術を活用したミリ波レーダーの開発も近年飛躍的に進化を遂げているようだ。富士通研究所は76~81GHzの広帯域に渡り世界最高速で周波数を変調できるCMOSミリ波信号源回路の開発を2016年10月に発表。これにより、車載レーダーシステムにおいて自転車と歩行者など速度の異なるターゲットの誤検知を防ぐ方式に対応し、相対速度で時速200キロメートルの検知が可能になるという。

また、半導体開発を手掛ける米テキサス・インスツルメンツも、CMOS技術を活用することによりレーダー・システムのサイズや消費電力、フォームファクタ、コストの最小化を実現している。

さまざまな周辺技術の進化により、ミリ波レーダーもまた進化を遂げているのである。

■ミリ波レーダーの弱点克服でセンサー間の主導権争いが混戦に

カメラやLiDAR同様、ミリ波レーダーも着実に進化を遂げている。2018年5月にはデンソーが米国のスタートアップ企業Metawave社に出資し、車載ミリ波レーダーの高性能化・小型化に向け開発を加速するなど、開発の手はまだまだ止まない。

半導体の進化によって効率的な回路設計が可能になったほか、周波数帯の解放によってミリ波レーダーのポテンシャルが引き出されたのは大きな進展であり、今後ADAS(先進運転支援システム)におけるミリ波レーダーの役割が一変する可能性もある。

カメラやLiDAR、ミリ波レーダーはそれぞれの特性の違いから併用がスタンダードになっているが、進化が著しいカメラやLiDARと同様ミリ波レーダーも着実に進化を遂げており、研究開発次第ではセンサー間の主導権争いが良い意味で混戦し続けるのかもしれない。

【参考】自動運転における各センサーについては「【最新版】自動運転の最重要コアセンサーまとめ LiDAR、ミリ波レーダ、カメラ」も参照。







関連記事