ADAS/エーダス(先進運転支援システム)とは?読み方は?搭載車種は?自動運転ではない?

市販車への搭載加速、認知・判断・操作を支援



出典:テスラプレスキット

自動車メーカーから昨今発売される新車には、「自動ブレーキ機能標準装備」や「レーンキープアシスト搭載」といった機能が搭載されているのが珍しくなくなってきた。こうしたドライバーの運転を支援する機能は「ADAS」(エーダス)と呼ばれる。日本語では「先進運転支援システム」のことだ。

最近は自動運転技術に関するニュースが注目を集めているが、市販車に搭載される主力の機能としては、現時点ではまだまだこうしたADASが大半を示す。そしてADASの機能をさらに高度化していくと、いずれは自動運転機能に進化していく。


今回はこのADASに焦点を当て、最新情報をもとに、ADASの各機能や各自動車メーカーが展開しているADAS搭載車、自動運転との関係などを解説していこう。

<記事の更新情報>
・2024年8月29日:ADASとADの違いについて追記
・2024年8月29日:全体的に情報をアップデート
・2024年2月6日:Teslaのオートパイロットについて追記
・2023年11月23日:Honda SENSING 360+などについて追記
・2018年9月27日:記事初稿を公開

■ADASの読み方や定義

ADASとは「Advanced driver-assistance systems」の略称で、一般的に「エーダス」と呼ばれる。「アダス」と読むのは誤りだ。日本語では「先進運転支援システム」と略され、こうした機能を車両に実装することで、事故が起きる確率を減らしたり、運転手の運転の負荷を軽減したりすることが可能となっている。

ADASの機能を実現するためには、センシングシステムが欠かせない。センサーによってADASのシステムが車両周辺の状況を把握することで、ドライバーへの警告や運転操作の制御につなげることができる。

ちなみに「自動運転」というワードを略す場合は「AD」という略語が使用されることがあり、これは「Autonomous Driving」の略だ。


単語読み方意味
ADASエーダス先進運転支援システム
ADエーディー自動運転

■ADASの基本概念

クルマの運転には大きく「認知」「判断」「操作」の各動作が必要で、ドライバーは通常、目や耳で周囲の状況を認知し、加速や停止、右折などの判断を脳で行い、そして手や足を使ってハンドルやアクセルペダルなどを操作してクルマを制御する。

この「認知」「判断」「制御」のいずれかをアシストするのがADASだ。例えば、カメラやレーザーなどのセンサーで前方の車両を検知した際、ドライバーに警告を出したり加減速を制御したりする。ただし、制御を行う場合もあくまで運転の主体はドライバーであり、基本的にはドライバーの意思が優先される。ここが「自動運転」とは異なる点だ。

また、位置情報システムや通信機能を用いて交通情報をドライバーに伝えたり、ドライバーが居眠りしている可能性が高い場合に警告を出したりするシステムなども、安全な運転を支援するものとしてADASに含まれる。

■ADASと自動運転の違い

端的に言うと、ADASの機能は自動運転機能を構成する一要素だ。ちなみに自動運転レベル(※1〜5で示され、5が最上位)においては、レベル1〜2がADASに相当する。レベル1は「運転支援」、レベル2は「部分運転自動化」などと日本語では表現される。


出典:国土交通省

▼自動運転のレベル分けについて
https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf

前述した「認知」「判断」「制御」においてドライバーによる運転をサポートするのがADASだが、その機能が格段に向上して、周囲の障害物などを100%近く検知し、正しい判断を下し、正確な制御を行うレベルに達すれば、それは完全な自動運転技術となる。

最初からサポート目的で開発されているADASも当然あるだろうが、それはアプローチの問題であって、結果としてその技術の終着点に自律走行可能な自動運転車がある場合が多い。

ドライバーの運転を支援するADAS。その支援機能が100%に達すれば、もはや手動の運転操作はいらなくなるということだ。

【参考】ちなみにADASを搭載した自動運転レベル1やレベル2の車両もこれまでは「自動運転機能を搭載」などと宣伝されることがあったが、国土交通省はこうした呼び方には誤解を生じる恐れがあるとして、今後は「運転支援」という呼び方を使うようメーカー側と合意をしている。詳しくは「「自動運転」の使用、レベル3以上のみ 国とメーカーが方針 ドライバーの誤解防止へ」も参照。

■ADASの構成要素・機能

ADASにはどのような機能があるのか、ADASを構成する各要素を紹介する。

クルーズコントロール

アクセルペダルを踏み続けることなく、セットした一定速度を維持する機能。先行車両との車間制御機能を合わせ持ったシステムはアダプティブ・クルーズ・コントロールと呼ばれ、自動ブレーキ機能なども備えている。

衝突被害軽減ブレーキ(前方障害物衝突防止支援システム)

ドライバーの漫然運転などで発生する前方の車両や歩行者、障害物などとの衝突事故の低減を目的としたシステム。

カメラやレーダーなどのセンサーにより前方の障害物を検知し、自車との距離や相対速度などを勘案した上で衝突の危険性がある場合には、ドライバーへの警告やブレーキ制御を行う。

世界的に全ての自動車で、衝突被害軽減ブレーキを搭載する流れになりつつある。

車線逸脱防止支援システム(レーンキープアシスト)

ドライバーの不注意などによる車線からの逸脱防止を目的としたシステム。

道路上の白線の画像解析により車線に対する自車の位置と角度を計算し、逸脱の可能性を判定する。逸脱の可能性がある場合には、ドライバーへの警告やハンドルにトルクを与えて回避操舵を行う。

同様のシステムに、車線の中央付近を維持するようにハンドル操作する車線維持支援システムもある。

駐車支援システム(パーキングアシスト)

駐車場にクルマを停める際に、ハンドルやペダルの操作支援や、周囲の状況をドライバーにわかりやすく伝えるシステム。

クルマの後方や側方、あるいは全周囲をモニターに映し出す機能や、一定の手順に従ってハンドルやブレーキなどを制御し、自動的に駐車する機能などがある。

ブラインドスポットモニター

運転席側や助手席側、後方を含む車外に位置する他のクルマや歩行者などを監視・検出し、ドライバーの死角を補うシステム。

レーダーなどのセンサーによりドアミラーなどに移らない位置にいる他のクルマなどを検知し、車線変更や右左折時の際にドライバーに警告し、接触事故などを防止する。

カーナビゲーション

全地球測位システム(GPS)や道路交通情報通信システム(VICS)などにより位置情報や交通情報を入手し、安全で効率的なルートを提示するほか、交通安全支援システム(DSSS:Driving Safety Support Systems)により周辺の交通状況を配信し、渋滞末尾への追突防止や出会い頭の衝突防止など支援する。

また、従来の機能に加え、クラウドを介して各車両の走行情報を蓄積するなどコネクテッド化の一端を担うケースや、他のADASと連動するケースなどが今後増加するものと思われる。

車両間通信システム(車車間通信・路車間通信システム)

車両同士が無線通信によって情報をやり取りし、安全運転を支援するシステム。信号機情報や規制情報などインフラからの情報を路側機から得る路車間通信もある。

道路標識認識システム

カメラで速度制限や進入禁止、一時停止などの交通標識を読み取り、その情報をディスプレイに表示し、制限速度の超過などをドライバーに警告するシステム。

居眠り運転検知システム

カメラ画像から測定したドライバーの瞬きや表情などをAI(人工知能)を用いて解析し、眠気を感知すると警告音や振動などで注意を促すシステム。

また、ハンドルの操舵状況からドライバーの疲労度を計測するシステムや、警告音などでドライバーの快適性を損なうことなく覚醒状態を維持させるための眠気制御システムの開発なども進められている。

このほかにも、自動速度制限装置や急な坂道を下る際の走行を制御するヒルディセントコントロール、横風安定処理システム、タイヤ空気圧監視システムなど、ADASにはさまざまな支援機能が含まれる。

■各自動車メーカーの独自ADAS

続いて、各自動車メーカーの独自ADASについて説明する。

【日本】トヨタ自動車:トヨタセーフティセンス

予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense(トヨタセーフティセンス)」の開発を進めており、現在自動ブレーキ、ハンドル操作サポート、車線はみ出しアラート、追従ドライブ支援機能、自動ハイビーム、標識読み取りディスプレイ、先行車発進アラームなどを備えている。また、切り返し機能も搭載した駐車支援システムも実用化されている。

ちなみにトヨタの高級ブランドLexus(レクサス)においては、2024年時点では「Lexus Safety System +」が最新鋭のADASだ。

【参考】関連記事としては「トヨタと自動運転」も参照。

【参考】関連記事としては「レクサスと自動運転」も参照。

【日本】日産自動車:プロパイロット2.0

日産は、一定条件を満たした上で高速道路で手放し運転ハンズオフ)が可能となるプロパイロット2.0(ProPilot 2.0)を2019年5月に発表している。2019年秋発表の新型スカイラインに搭載され、日産のADASの進化形として注目を集めている。

プロパイロット2.0を作動させて走行中に運転手が警報に反応しない場合、システムが車両を緊急停止させて専用オペレーターに自動接続する「緊急停止時SOSコール」という機能も搭載していることも特徴とされている。

【日本】ホンダ:ホンダセンシング

出典:Ian Muttoo / Flickr (CC BY-SA 2.0)

安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダセンシング)」には、衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能、歩行者事故低減ステアリング、車線維持支援システム、アダプティブ・クルーズ・コントロール、先行車発進お知らせ機能、標識認識機能、後方誤発進抑制機能、オートハイビームなどが備わっている。

ホンダは2023年11月に新ADASとして「Honda SENSING 360+」(ホンダ・センシング・サンロクマル・プラス)を発表している。2024年に中国で「ACCORD(アコード)」から適用をスタートさせ、その後、グローバルでの展開を計画していると発表された。

Honda SENSING 360+の主な機能としては「ハンズオフ機能付高度車線内運転支援機能」「レコメンド型車線変更支援機能」「カーブ路外逸脱早期警報」「降車時車両接近警報」「ドライバー異常時対応システム」が挙げられる。

【参考】ホンダセンシングについては「ホンダの新ADAS「Honda SENSING 360+」の実力は?」も参照。

【日本】SUBARU:アイサイト

アイサイトには、プリクラッシュブレーキアシストや全車速追従機能付きクルーズコントロール、アクティブレーンキープ、誤発進抑制制御、車両のふらつき警報などの機能を備えている。スバルはこのアイサイトをさらに進化させ、一般道でのレベル2を目指す方針であることが報道されている。

【アメリカ】テスラ:オートパイロット

テスラは「オートパイロット」と呼ばれる運転支援システムを開発している。道路状況に応じて車線変更などを提案する「ナビゲート・オン・オートパイロット」という機能のほか、同じ車線内でハンドル操作や加速、ブレーキ操作を一部自動で行う機能も特徴とされている。2019年3月には赤信号で交差点に進入した場合に警報が鳴る機能も実装された。

テスラはこのほか「FSD」(Full Self-Driving)というソフトウェアをオプションで提供している。FSDは将来的には自動運転化を目指しているソフトウェアだが、現在は機能はADASレベルにとどまっている。FSDに関しては呼称に関して誤解を招くといった批判が一部であるほか、事故につながる懸念が指摘されることもあり、高度なADASであることは間違いないが、まだまだ課題が多いのも現状だ。

ちなみにテスラの公式サイトではオートパイロットについて、以下のように説明されている。

オートパイロットの高度な安全性と便利な機能は、車の運転で最も負担の掛かる部分をアシストするよう設計されています。オートパイロットは新機能を導入し、既存の機能を改善しながら、お客様のテスラの安全性と性能を向上し続けます。

オートパイロットは、同じ車線内でハンドル操作、加速、そしてブレーキを自動的に行います。

現在の機能はドライバー自身が車を監視する必要や責任があり、完全自動運転ではありません。(出典:https://www.tesla.com/jp/autopilot

【アメリカ】GM:SuperCruise

米大手自動車メーカーのGMが展開するADASは「SuperCruise(スーパークルーズ)」だ。2020年までに同社のCadillacの全モデルに展開する計画を発表しており、搭載する運転支援システムの技術も常時底上げしていく方針だ。

【ドイツ】VW:IQ.DRIVE

ドイツの自動車メーカー大手フォルクスワーゲン(VW)は2018年12月、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転システムなどを総称するブランドとして「IQ.DRIVE」を発表している。同社が開発する先進技術を搭載させ、ADASから自動運転へとシステムを進化させていく形となる。

【ドイツ】BMW:BMW Personal CoPilot

ドイツの自動車大手BMWは自動車業界の中で、先進運転支援システムや自動運転システムの開発で存在感を示している。そんなBMWが開発するADASが「BMW Personal CoPilot」で、速度制限アシストや駐車支援機能、車線の逸脱防止機能などが搭載されている。

【参考】関連記事としては「BMWの自動運転技術や戦略は? ADAS搭載車種や価格も紹介」も参照。

■ADAS関連の製品を開発する企業

ルネサス エレクトロニクス:ADAS向けマイコンを開発

スマートカメラやサラウンドビュー、レーダーなどに適したマイクロコンピュータの開発を手掛けているほか、手軽にADASや自動運転の開発を開始することができるスターターキットなども提供している。

Sky:車載ECUでADAS開発を支援

ADASをはじめとする車載ECU(電子制御ユニット)開発やカーナビゲーションシステムなど、さまざまな組込みシステムの開発を行っており、スマートカメラや周辺監視システムなどの走行安全系ECUや、データ通信モジュールや緊急通報システムなど情報系ECUなど幅広く手掛けている。

ZMP:ADASデータの計測・分析ツールを提供

市販車ADASの公道走行テストなどで活用するデータ計測サービス「RoboTest」、及びRoboTestで収集したデータや保有データへのタグ付けや分析、解析作業を総合的にサポートするプラットフォームサービス「RoboDataPlatform(ロボ・データ・プラットフォーム)を発表している。

こういった関連サービスも含めると、ADAS市場の裾野は相当広い。

■【まとめ】ADASの世界市場は2025年に2兆3000億円に

ADASは自動運転の開発と密接に結びついており、完成車メーカーや部品メーカー以外にも多くの企業が関わっている成長分野だ。

富士キメラ総研が2018年3月に発表した「車載電装デバイス&コンポーネンツ総調査 2018(上巻)」によると、ADASの世界市場は2017年に1兆円の大台を突破し、2025年には2兆3000億円の規模に達すると予測している。

また、車載カメラやセンサーなどを使用してドライバーの状態を検知するドライバーモニタリングシステムも、2025年には2016年比の6.1倍となる1014億円に膨れ上がると試算している。

また調査会社のJ.D.パワージャパンが2019年11月に発表した「2019年日本自動車テクノロジーエクスペリエンス調査」でもADASがここ2年で急速に普及していることに触れられており、「車線逸脱警告システム」の搭載率は74%、「死角モニタリング/警告システム」は50%に上っているという。

自動運転技術の向上とともにADAS機能も向上し、標準化や義務化の流れもますます加速していくものと思われる。

■関連FAQ

    「ADAS」とは?

    ADASとは「Advanced driver-assistance systems」の略称。日本語では、「先進運転支援システム」と訳される。0〜5の6段階に分類される自動運転レベルにおいては、「レベル1」もしくは「レベル2」に該当する。詳しくは「自動運転レベルとは?」を参照。

    「ADAS」の読み方は?

    一般的には「エーダス」と呼ばれる。「アダス」と読むのは誤り。

    「ADAS」の役割や具体的な機能は?

    ADASでは、運転手の「認知」「判断」「制御」のいずれか、もしくは複数を支援する。あくまで運転の主体は人であり、運転の主体がシステムである「自動運転」とは明確に異なる。具体的な機能としては、クルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱防止支援システム、駐車支援システム、道路標識認識システム、居眠り運転検知システムなどが挙げられる。

    各自動車メーカーが展開するADAS機能の名称は?

    トヨタは「Toyota Safety Sense」「Lexus Safety System」、日産は「ProPilot」、ホンダは「Honda SENSING」、スバルは「アイサイト」を展開している。海外の自動車メーカーでは、GMの「SuperCruise」、BMWの「BMW Personal CoPilot」、テスラの「AutoPilot」「FSD」などがADASに相当する。

    ADASの将来的な市場規模は?

    ADASの世界市場はすでに1兆円を突破し、2025年には2兆3,000億円規模まで膨らむとされている(富士キメラ総研/2018年3月)。まだしばらくは自動運転市場よりもADAS市場の規模が大きい時期が続くが、いずれは自動運転市場がADAS市場を抜くと考えられている。ADASが進化して自動運転機能となり、自ずとADASの市場が縮小していくからだ。

(初稿公開日:2018年9月27日/最終更新日:2024年9月18日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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