日産の自動運転・運転支援技術を徹底解説!プロパイロットの凄みは?

無人移動サービス「Easy Ride」にも注目



日産自動車は2020年10月現在、「自動運転レベル2」(部分運転自動化)の技術を市販車に搭載している。「プロパイロット2.0」だ。高速道路でのハンズオフ運転を可能にする機能で、2019年9月から搭載がスタートしている。







自動運転技術を活用としたサービスとしては、「自動運転レベル4」(高度運転自動化)相当の無人移動サービス「Easy Ride」の開発にディー・エヌ・エー(DeNA)とともに取り組んでおり、実際の試乗実験なども実施している。

「技術の日産」と言われる日産の最新動向を紹介しよう。

■日産が開発している技術一覧

日産は「ニッサン・インテリジェント・モビリティ」という取り組み・ブランド戦略のもと、「インテリジェント・ドライビング=自動運転」「インテリジェント・パワー=EV(電気自動車)」、そして「インテリジェント・インテグレーション=コネクテッド」の3つの柱に沿って開発を進めている。

この記事ではこのうちの「自動運転」に焦点を当てて解説していくが、まず大前提として、日産の現在の自動運転技術は「レベル2」に相当し、運転支援技術と理解する方が適切だ。ただ限りなくレベル3に近い技術に進化しつつあり、今後の技術開発が期待される。

こうした前提で、自動運転・運転支援に関連してくる日産の技術を紹介していこう。コネクテッド技術も合わせて紹介する。

ProPILOT 2.0(プロパイロット):高速道路上の同一車線でハンズオフが可能に

日産は2019年5月に「プロパイロット2.0」を発表している。このプロパイロット2.0については、高速道路の複数車線をナビシステムと連動して設定したルートを走行し、運転手が常に前方に注意して道路・交通・自車両の状況に応じ直ちにハンドルを確実に操作できる状態にある限りにおいて、同一車線内でハンズオフが可能となる運転支援システムと説明されている。

車両に設置してある7個のカメラに5個のレーダー、GPS(全地球測位システム)のほか、3D高精度地図データ(HDマップ)などを活用して自車位置の把握を行いながら、周囲の車両の動きをリアルタイムで検知することなどで、ハンズオフでの滑らかな運転が可能になるという。プロパイロット2.0は2019年9月に日本で発売されるスカイラインに搭載された。

Brain-to-Vehicle:脳波測定による運転支援技術

Brain-to-Vehicleは脳波測定技術を活用し、ドライバーの次の運転操作のタイミングやドライバーが持つ違和感を把握する。リアルタイムにクルマの制御に活用することで思い通りに、よりエキサイティングなドライビングを提供する将来的な技術だ。

ドライバーがヘッドセットを着用して計測した脳波をシステムが解析・判断して自動運転に適用するほか、マニュアル運転時には、ドライバーが操作を開始する0.2〜0.5秒前にクルマが運転操作を開始し、ドライバーはシステムのサポートを意識することなく、スムーズに走行できるという。

Invisible-to-Visible(I2V):ドライバーに見えないものを可視化

Invisible-to-Visible(I2V)は、建物の裏やカーブの先など、通常見ることができない場所をドライバーの視野に投影する技術だ。リアルとバーチャルの世界を融合した3Dインターフェースを通じ、車内外のセンサーが集めた情報とクラウド上のデータを融合する形で実現する。

SAM:事故などの道路情報を蓄積し、全てのクルマと共有

シームレス・オートノーマス・モビリティ(SAM)は、NASAと共同開発を進めているコネクテッド技術だ。

このシステムについて日産は、「すべての無人運転車両が、事故・路上の障害など不測の事態に直面した際に、人が介入し遠隔でコントロールするとともに、クラウドに情報を集め全てのクルマをつなぐことにより、クルマを安全に誘導し、無人運転車両が効率的に移動することのできるモビリティを実現します」と説明している。

緊急操舵回避支援システム:緊急時、障害物がない方向へ自動でハンドルを操作

緊急操舵回避支援システムは急ブレーキでは事故を回避できないと判断した際にドライバーの操作を補い、「衝突を回避しよう」という意思を支援する将来技術だ。

衝突しそうな対象物を見つけた際はECU(車載コンピュータ)が対応を判断するが、時間的に余裕がある場合には警告音とライトで警告を出し、ドライバーの操作が不十分であると判断すると、緊急ブレーキが作動して衝突回避操作を支援する。

それでも衝突が避けられない場合にはハンドルを切って避ける必要があるが、その際車線区分や周囲の車の位置や速度、歩行者の有無などを瞬時に識別し、適切な回避を試みる。

インテリジェント・ライドコントロール:揺れを抑えて自然な乗り心地を向上

路面の凹凸に対し、エンジンとブレーキを制御してクルマの不快な動きを抑制し、快適な乗り心地を提供するシステム。

ドライバーが感じない程度の微弱なブレーキを自動的にかけることで衝撃緩衝効果を生み出し、揺れを抑える。

プロパイロット・パーキング:駐車時に必要なすべての操作を自動制御

日産が開発している「プロパイロットパーキング」技術は、スイッチ操作をするだけで、システム側が駐車時に必要なすべての操作を自動制御してくれる技術だ。

高解像度カメラを使ったリアルタイム画像処理技術と車両周囲の12個のソナー情報を組み合わせて、自動制御を実現する。以下がこの技術で使用されるカメラとソナーだ。

出典:日産公式サイト

プロパイロットパーキングでは具体的には、「ステアリング」「アクセル」「ブレーキ」「シフト」「パーキングブレーキ」が自動制御の対象となる。並列・縦列などの駐車シーンや何度も切り返しが必要な難しい場所でも対応可能としている。

日産の公式サイトによれば、電気自動車(EV)「アリア」「リーフ」がプロパイロットパーキングに対応している。

■日産はいつ自動運転を実現する?

今後は日産が「自動運転レベル3」相当の技術をいつ市販車に搭載するのか気になるところだが、いまのところは明確にされていない。一方でホンダはレベル3の機能を2020年内に市販車に搭載することを目指している。日産がこうした競合メーカーにどう対抗していくのか注目だ。

ちなみにプロパイロット機能については、今後発売する全ての新型車に標準装備するということが報じられている。まずは自動運転レベル2の技術の搭載に力を入れていくことが考えられる。

Easy Rideについては、2020年2月にみなとみらい地区で3回目となる実証実験と試乗会を実施した。自動運転タクシーとも呼べるサービスで、社会実装には法改正も必要になると考えられ、当初は2020年代早期にサービス提供を本格化する目標が掲げられていたが、いまのところは実現していない。

■日産の関連ニュース
完全自動運転コンセプトカー「NISSAN IMx」を世界初公開

2017年10月開幕の第45回東京モーターショー2017で、将来の「ニッサン インテリジェント モビリティ」を具現化したゼロエミッション クロスオーバーコンセプトカー「NISSAN IMx」を初公開した。

乗員全員がリラックスしたまま好きな場所へ移動することが可能な「プロパイロットドライブモード(PDモード)」や、ドライバーの前にステアリングが現れる「マニュアルドライブモード(MDモード)」など、自動運転も手動運転も楽しめるコンセプトだ。

日本初のセルラーV2X実証実験開始

日産とコンチネンタル・オートモーティブ・ジャパン、エリクソン、NTTドコモ、沖電気工業、Qualcomm Technologies(クアルコムテクノロジーズ)が2018年1月、セルラーV2Xの実証実験を開始すると発表した。

セルラーV2Xは車両とあらゆるものをつなぐ通信技術で、5GHz帯を用いたセルラーV2Xの直接通信技術の通信距離、信頼性、低遅延特性を評価するとともに、LTE-Advanced(LTE-A)ネットワークと通信を相互補完する効果を確認する。

DIDI AUTO ALLIANCEに参加 世界最大の車両オペレータープラットフォーム構築へ

ルノー・日産自動車・三菱自動車は2018年4月、中国最大のモバイル交通プラットフォームを手掛ける滴滴出行(ディディチューシン)が設立した「DiDi Auto Alliance」にパートナーの1社として参加することを発表した。

ライドシェアリングに関するアライアンスで、スマートモビリティを促進するとともに、バリューチェーンに沿ったパートナー企業が一体となり、新エネルギーによる自動車産業を推進することでビジネスモデルに革新をもたらし、世界最大の車両オペレータープラットフォームになることを目指す。

Googleと次世代インフォテインメントシステムで提携

ルノー・日産自動車・三菱自動車は2018年9月、同アライアンスの車両にGoogle社のAndroidオペレーティングシステムを搭載し、高度なインフォテインメントやドライバー向けアプリケーションを複数のブランドと車種で展開するため、技術提携を結んだことを発表した。

Googleマップによるターンバイターン表示のナビゲーションや、Google Playストア上の豊富な自動車用アプリケーションのエコシステムの利用、内蔵のGoogle アシスタントを活用した音声による電話・メールへの応対、メディアの操作、情報検索や車両機能の管理が可能となる。搭載は2021年からを予定している。

日産自動車とルノー、グーグル系ウェイモと独占契約を締結

日産自動車とルノーは2019年6月、自動運転開発を手掛けるグーグル系ウェイモ(Waymo)と、無人モビリティサービスに関する独占契約を締結したことを発表した。これは日本において無人運転の乗客・配送向けサービスの提供の可能性を探るためのもので、今後、市場分析や共同調査を進めていくという。

ウェイモは自動運転タクシーの商用サービスを2018年12月からアメリカ国内の一部地域で提供しており、ウェイモと日産の技術を結集した自動運転タクシーが日本国内を走行する日も近いかもしれない。

無人運転移動サービス「Easy Ride」第3回目の実証実験実施

ディー・エヌ・エーと共同開発を進める新しい交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」の実証実験を2020年2月にみなとみらいで開催した。

同実証実験は、DeNAのタクシー配車アプリの専用配車端末である「MOV CALL」を通じてEasy Rideを呼び出す方法で実施された。乗車予約をするとレシートが発行され、Easy Rideが到着すると助手席の顔認証用カメラで乗客が車両に到着したことを認識し、後部座席のドアが自動で開く仕組みだ。

サイバーセキュリティ技術の確立のための新タッグ

2020年7月、日産・ルノー・三菱の3社連合開発研究施設と、イスラエルのセキュリティ企業Cybellumが戦略的デザイン業務提携を発表した。自動運転の実現にセキュリティ技術の向上は避けて通れない道だ。

Cybellumの車両リスク分析ソリューションは車載ECU(電子制御装置)やほかの車両ソフトウェアの脆弱性を自動で探知できる。車両全体のリスクアセスメントの実施に注力していくという。

■【まとめ】「技術の日産」は今なお健在

ルノーや三菱自動車とともに巨大なアライアンスを維持しつつも、独自開発や異業種とのパートナー戦略にも余念がない。プロパイロット2.0搭載車種の拡大が目下の目標となりそうだが、自動運転レベル3をいつ市販車に搭載するのかについても注目が集まる。

「Invisible-to-Visible(I2V)」や「SAM」、「Brain-to-Vehicle」など技術開発にも余念がない。「技術の日産」は今なお健在だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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