自動車技術会賞、自動運転やADAS領域から3件!日産は2論文で受賞

車両運動の探求や自己位置推定技術



自動車技術会(会長:坂本秀行)は2021年5月31日までに、「第71回自動車技術会賞」の受賞者を発表した。


自動車技術会賞は自動車工学や自動車技術の向上・発展を奨励することを目的とし、自動車技術に対する多大な貢献・功績を表彰するものだ。自動運転やADAS(先進運転支援機能)領域では、今回3件の受賞があった。

論文賞では、日産自動車の牧田光弘氏らの論文「乗員の快適性を向上させる車両運動の探求」と、東京大学の古瀬航氏らの「Lateral Localization via LIDAR-Based Road Boundary Extraction on Community Roads」が受賞した。

技術開発賞では、日産自動車の谷口洋平氏らの論文「高速道路複数車線の運転支援システムの開発」が受賞した。

■論文賞:乗員の快適性を向上させる車両運動の探求

自動運転時代には、自動車に乗っている人が快適さを感じる車両運動の研究が求められる。


同論文では、まず車両運動が乗員に与える影響を理解するために、ヒトの運動感覚認識をモデル化した新たな感覚評価関数を提案。次に、乗員の身体モデルと車両を接合し、乗員の運動感覚と車両挙動を連動させた解析をできるようにした。その結果、自動運転システムにおける車両運動特性の最適化を可能にしたという。

同論文での快適な車両運動設計における考え方は、高速道路での車線変更制御の安心感向上に貢献しているという。この方法論は広い応用性もあるとして、高い評価を受けた。

■論文賞:Lateral Localization via LIDAR-Based Road Boundary Extraction on Community Roads

自動運転や高度運転支援の実用化には、道路との相対位置を把握する「自己位置推定」が重要となる。しかし、生活道路では区画線が整備されていないため、車載カメラによる白線検知機能などが使用できないという課題があった。

同論文では、道路表面の傾きの変化に着目し、住宅地と道路の境界を網羅的に検出する機能を開発。その結果、生活道路を含む幅広い環境に適用可能な「横方向自己位置推定手法」を実現した。


この手法は、既存手法では検出できないタイプの道路境界も検出可能とし、駐車車両などの誤差要因が存在する状況での高い検出性能も有しているという。実際の生活道路での評価試験では、同論文で取得したデータの約99%の範囲で自律走行に必要な精度を満たした。

■技術開発賞:高速道路複数車線の運転支援システムの開発

このシステムは、車両に搭載した7個のカメラと5個のレーダー、12個のソナー、GNSS(全球測位衛星システム)、3D高精度地図データを組み合わせて使用することで、車両の前方だけでなく、左右や後方など周囲360度の情報と道路上の正確な位置を把握できるという。

同システムによって取得した情報を活用することで、ドライバーが常に前方に注意して道路・交通・自車両の状況に応じて直ちにハンドルを確実に操作できる状態にある限り、同一車線内でハンズオフを実現可能とし、ナビシステムの経路誘導と連携することで、高速道路上において出口までの走行を支援するという新たな運転支援技術を確立した。

■【まとめ】来年の自動車技術会賞の結果にも注目

歴史ある自動車技術会賞において、自動運転やADAS領域における研究開発結果に対してよりスポットライトが当たるようになりつつある。来年の自動車技術会賞ではどのような研究成果が表彰されるのか、引き続き注目したい。

今回の受賞内容の詳細は、以下のURLから確認することが可能だ。

▼第71回 自動車技術会賞
https://www.jsae.or.jp/PR/2021/PR21003/docu/shosai_71.pdf

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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