
2025年6月にサービスインしたテスラのロボタクシー。運行エリアはテキサス州オースティンに限られ、まだ安全オペレーターが同乗する形でのサービスとなっているが、早半年が過ぎた。進捗状況はどのような感じになっているのか。
米メディアなどを拝見すると、「テスラのロボタクシーは人間の4倍事故を起こす」――といったものが散見される。大きな期待が寄せられる一方で、その安全性には疑問符がつくのか。
テスラのロボタクシー事業の現状に迫る。
【参考】関連記事としては「自動運転車の事故、日本・海外の事例まとめ」も参照。
記事の目次
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■テスラのロボタクシーの運行状況
7カ月間で14件の事故

NHTSA(米道路交通安全局)が集計しているクラッシュレポートによると、2026年1月15日までにテスラから寄せられた自動運転車による事故報告は17件あった。このうち3件は重複する事故のため、事故件数としては実質14件となる。
事故発生場所はすべてテキサス州オースティンで、2025年7月3件、9月4件、10月1件、11月1件、12月1件、1月4件となっている。
場所別では、車道8件、交差点3件、駐車場3件となっている。衝突した対象物は、その他固定されたオブジェクト4件、バス1件、SUV2件、ポール・街路樹1件、大型トラック1件、動物1件、その他2件、乗用車1件、自転車運転者1件となっている。
事故時の挙動別では、直進中4件、停止中5件、バック中2件、右折中1件、左折中1件、その他1件となっている。
損害・負傷者別では、物的損害・負傷者なし10件、軽傷入院者1件、負傷者なし2件、入院不要の軽症患者1件となっている。
ODDや詳細な状況などについては、すべて機密情報として非開示とされている。日本における自動運転バスの事故・事案と同様、大半は少しだけ接触してしまったレベルの事案で、もらい事故と思われるものも多い。
しかし、負傷者が出る事故も2件発生している。入院者が出た事故は、交差点におけるSUVとの衝突(2025年7月25日)で、双方とも右折中に衝突したようだ。軽症者が出た事故も同日に発生しており、固定されたオブジェクトに衝突した事故となっている。
【参考】関連記事「自動運転の事故「24時間以内に報告を」 米NHTSAが発表」も参照。
5.7万マイルに1回事故が発生?
テスラのロボタクシーサービスが始まったのは2025年6月22日で、前述したNHTSAの集計期間(2026 年 1 月 15 日)まで約7カ月間走行したことになる。この期間のロボタクシーの総走行距離は不明だが、テスラの2025年第4四半期決算の資料で、2025年12月までに有料運行したロボタクシーの累計走行距離が60~70万マイル(約96~113万キロ)に達したことが公表されている。
また、米メディアの多くは1月半ばまでの累計走行距離を80万マイル(約129万キロ)と推定している。これをもとに算出すると、テスラのロボタクシーは5.7万マイル(約9万キロ)に1回事故を起こしている計算となる。
負傷者発生事故に限定すれば40万マイルに1回
一方、NHTSAの集計をもとにテスラが公表しているデータによると、北米における重大事故/軽微な事故の発生頻度は、テスラのFSD(Supervised)が530万マイル/156万マイルに1回、テスラのアクティブセーフティシステムが217万マイル/72万マイルに1回、アクティブセーフティシステムなしが85万マイル/28万マイルに1回、北米全体の平均が66万マイル/22万マイルに1回となっている。
このデータと単純比較すると、テスラのロボタクシー(5.7万マイルに1回)は、FSDはおろか一般平均にも遠く及ばないことになる。一般ドライバーの4倍多く事故に遭遇している計算だ。
おそらく、集計基準の違いが背景にある。ロボタクシーの集計結果は、縁石などにわずかに接触し自動運転システムが異常を通知したりすればカウントされる水準と思われる。一方、後段の集計は警察に通報が行われ、負傷者が出た水準の事故と思われる。
では、ロボタクシーの事故・事案14件から軽微と思われるものを除き、けが人が発生した2件を対象に集計基準を近づけて改めて計算してみよう。そうすると、テスラのロボタクシーは40万マイルに1回事故に遭遇したことになる。
無事、一般平均と自社のアクティブセーフティシステムなし車両をクリアした。一般乗用車よりは安全であることを証明した格好だ。
しかし、アクティブセーフティシステムありの72万マイル、FSDの156万マイルには依然として届いていない。集計基準に差があるにしろ、一段階上のFSD(Supervisedなし)相当のロボタクシーが、一般オーナーのFSD(Supervised)に劣る結果となっているのはどう受け止めればよいのか。
使用(運転)方法などに違いはあるにしろ、FSD(Supervised)をベースに改良を重ねたモデルがこの結果では、さすがのテスラ信者でも「テスラのロボタクシーは大丈夫なのか?」となるのではないだろうか。
車内無人の本格的なレベル4の実現は、まだまだ先のこととなるかもしれない。
【参考】関連記事「テスラ車の事故率、全米平均の「10%以下」 Autopilot稼働で大幅減」も参照。
トラブル事案は多数目撃されている
なお、テスラのロボタクシーについては、事故以外にも対向車線へのはみだしや速度超過、交差点での立ち往生、駐車場内のループ走行、意味不明なブレーキ、道路上に落ちている障害物を踏む……など、さまざまな事案が発生しているようだ。
事案・トラブルがまとまっているredditのスレッドも紹介しておく。
▼テスラのロボタクシーが起こしたトラブルなど|reddit
https://www.reddit.com/r/SelfDrivingCars/comments/1ljxd63/list_of_clips_showing_teslas_robotaxi_incidents/?tl=ja
■Waymoの自動運転タクシーの運行状況
Waymoは155万マイルに1回程度?
自動運転タクシーで先行するWaymoはどのような状況なのか。NHTSAの集計が始まった2021年7月から2026年1月までの間、Waymoの車両が絡んだ事故は計1,613件報告されている。
このうち、2025年6月16日から2026年1月15日にWaymoから報告があったインシデントレポートは520件に上る。おそらく重複する事案・事故も含まれているものと思われるが、精査するのが大変なため便宜上520件とする。このうち、軽傷以上の被害が出た件数は58件となっている。
また、この間の総走行距離も正確に算出することは難しい。Waymoは2024年から2025年にかけ、1週間当たりの走行距離を200万マイルと発表していたが、最新の報道では400万マイルに達したというものもある。
広域展開に向けた取り組みを加速していることを加味し、この7カ月間(約30週)は平均300万マイル走行したと仮定すると、9,000万マイルで520回事故が発生したことになり、17万マイルに1回となる。軽傷以上の事故件数58件で計算すると、155万マイルに1回だ。
テスラのロボタクシーは40万マイルだったので、あくまで大雑把な推計だがWaymoはテスラより4倍事故を起こしにくいと言える。
Waymo公称では135万マイルに1回
前述した概算が独り歩きしても困るため、Waymoの公称値も紹介しておく。フェニックスとサンフランシスコで5,000万マイル以上走行した結果、Waymo Driverと平均的なドライバーを比較すると重傷以上の結果を伴う衝突は90%減、エアバッグの作動を伴う衝突は82%減、負傷を伴う衝突は81%減となっている。
100万マイルあたりの事故率で見ていくと、重傷以上の事故は人間のドライバーが0.232%に対しWaymoは0.024%、負傷報告が行われた事故は人間3.968%に対しWaymoは0.739%、エアバッグが展開した事故は人間1.662%に対しWaymoは0.307%となっている。
負傷報告が行われた事故を1件当たりの走行距離に換算すると、人間は25万マイルに1回、Waymoは135万マイルに1回となる。意外と前述の推計値に近いようで安心した。
レベル4自動運転車は、一般的な人間のドライバーより安全であることが社会実装の大前提であり、最低条件と言える。米国では、まず負傷報告が行われた事故を25万マイルに1回未満に下げることが必須となる。
その上で、高い安全性を主張するのであれば、最低でも2倍以上の数字を実現したいところだ。テスラのロボタクシーは現在40万マイルに1回の計算だ。総走行距離がまだ少ないため数字は大きく変動しやすい。
今後、走行距離が大幅に伸びるにつれ、この数字を改善することができるのか、あるいは早計なエリア拡大などで改悪することになるのか。
いずれにしろ、まずは自社のアクティブセーフティシステム(72万マイルに1回)やFSD(Supervised)(156万マイルに1回)を超えなければ格好がつかないだろう。
【参考】関連記事「Googleの自動運転車、人身事故率が「人間より73%減少」」も参照。
■テスラの最新動向
2026年にサイバーキャブの生産開始
テスラの2025年第4四半期決算資料によると、2026年にはクリーンエネルギーや輸送、自律ロボットを支えるために必要なインフラへのさらなる投資を行い、車両、ロボット、エネルギー貯蔵、バッテリー製造にわたる6つの新しい生産ラインの立ち上げを行うという。
2026年上半期に予定しているテスラ・セミとサイバーキャブの生産開始や、次世代ロードスターの生産開始に向けた準備も着々と進められているとしている。
最新バージョンのFSD(Supervised)のV.14 では、オーナーカーとロボタクシーの実世界データの両方でトレーニングされたエンドツーエンドの基盤モデルを通じてシステム向上を図っており、運転が困難なドライバーも個人用交通手段を利用できるようにするなど、道路移動における多くの潜在的危険からドライバーを解放する安全性と利便性の機能をさらに提供していくとしている。
自社のグローバルフリートは1日あたり500年以上に相当する継続的な運転データを収集でき、さまざまな地域や運転環境におけるロングテール、ファットテールなコーナーケースに対応できる機能を安全に展開・拡張していく。
ロボタクシーはOTAで進化を続けており、例えばGrok(AIコンパニオン)がナビゲーションコマンドに対応し、ハンズフリーでナビゲーションの目的地の検索や追加、編集ができるようになった。
また、Tesla Photobooth機能により、車内で写真を撮影し、Teslaモバイルアプリからダウンロード・共有することも可能になった。
12月には、オースティンで無人ロボタクシーの試験運用を開始したという。2026年1月に限定的に安全モニターの取り外しを開始し、オースティン都市圏におけるロボタクシーの車両とサービスエリアのさらなる拡大を進めていくとしている。
サンフランシスコでは、ベイエリアの配車サービスを10月にサンノゼ空港で開始しており、必要な許可を得し次第、ベイエリアの他の主要空港にも拡大する予定としている。
2026年中には、テキサス州ダラスやヒューストン、アリゾナ州フェニックス、フロリダ州マイアミ、オーランド、タンパ、ネバダ州ラスベガスでもサービスインする計画を掲げている。
【参考】関連記事「テスラのロボタクシー運行範囲、もうGoogleの2.7倍に」も参照。
カリフォルニア州当局からの無人走行ライセンスが指標に?
オースティンで車内無人の運行を始めたとしているが、総フリート数など不明な点が多く、その技術水準を客観的に推し量ることはまだ難しい。一つの指標になりそうなのは、カリフォルニア州における走行ライセンスだ。
カリフォルニア州においては、テスラはまだ有人走行ライセンスしか所持しておらず、無人走行はできない。テキサス州に比べカリフォルニア州は走行ライセンスの付与を厳格に行っているため、テスラがカリフォルニア州で無人走行ライセンスを取得すれば、ある意味客観的に同社の技術が一定水準に達したとみることができる。
2026年2月現在、同州で有人走行ライセンスを取得しているのはテスラを含む31事業者に上るが、無人走行ライセンスを取得しているのは、Apollo Autonomous Driving(百度)、Nuro、Tensor、Waymo、WeRide、Zooxの6事業者に限られている。
テスラがこの中に名を連ねることができるのか、注目したい。
■【まとめ】FSDのさらなる向上は必須
テスラのロボタクシーが人間の4倍事故を起こす……というのはミスリードで、実際は2倍近く安全という結果となった。しかし、通常版のFSDなどと比べると現状低い水準にあるのも確かで、今後、走行経験を重ねてどのような結果となるかに注目が集まるところだ。
いずれにしろ、さらなる向上を図らなければ安心感のある無人サービスは提供できない。2026年中にWaymoの水準に追い付くことができるか、必見だ。
【参考】関連記事としては「テスラの自動運転・運転支援(Autopilot|FSD|ロボタクシー)部門を徹底解説」も参照。












