「3年以内に米国民の半数がロボタクシーに乗れる」モルガン・スタンレーが業界全体に買いシグナル

ロボタクシー産業が急成長フェーズへ



3年以内に、米国人の約半数がロボタクシーに乗れるようになる。モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)が、そう予測する最新レポートを2026年5月に公表し、「買い」とも見えるシグナルを発した。年間の自動運転ライド数は2025年の約1,500万回から、2030年には約7億5,000万回へ。およそ50倍の急拡大である。


レポートによれば、自動運転タクシー市場の拡大ペースは加速している。米国内のライド数は2026年末までに2倍を超える見込みだ。Waymo(ウェイモ)が約3,000台で先行し、Teslaテスラ)がテキサスで追う。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)も、ロボタクシー産業が急成長フェーズに入ったと特集で報じた。

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■3年で米国民の半数がロボタクシーに乗れる

3年以内に、米国人の約半数がロボタクシーサービスにアクセスできるようになる。モルガン・スタンレーは、そう見込んでいる。今の自動運転タクシー市場は、まだ一部の都市の話だ。それが数年で、国民の半分が手の届く範囲に入る。市場の景色が一変する予測である。

数字のインパクトは大きい。米国内の年間ライド数は、2025年の約1,500万回から、2026年末までに2倍を超える見通しだ。そして2030年には、約7億5,000万回に達するという。5年でおよそ50倍。ロボタクシー市場が、実証の段階を抜けて一気に拡大する局面に入ったことを示す数字である。

この急拡大を、ウォール街は冷ややかには見ていない。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、ロボタクシー産業が急成長フェーズに突入したと特集で報じた。投資の世界が、自動運転タクシー市場を有望な長期テーマとして本格的に注視し始めている。「買いシグナル」とは、この市場全体へ向けられた強気の視線にほかならない。


【自動運転ラボの視点】
約50倍という予測は、単なる利用回数の伸びではない。ロボタクシー市場が投資テーマとして成熟し、ウォール街が資金を本格的に振り向け始めた局面を映す。実証から商用へ、市場の重心が動いたと言える。

【参考】関連記事としては「ロボタクシー市場が巨大化 2030年に「今の10倍」へ」も参照。

ロボタクシー市場が巨大化 2030年に「今の10倍」へ

■Waymoが約3,000台で独走、ロボタクシーの勢力図

50倍という拡大を、誰が担うのか。ロボタクシー市場の勢力図を見ると、輪郭がはっきりする。


先頭を走るのはWaymo(ウェイモ)だ。約3,000台を投入し、サンフランシスコやフェニックスなどで運行する。台数でも実績でも、現時点で抜きん出ている。追うのはTesla(テスラ)である。テキサスで約600台を展開し、近く12州への拡大を目指す。Austin(オースティン)での小規模な開始から、DallasやHoustonへと運行範囲を広げてきた。

プレーヤーはこの2社にとどまらない。Amazon傘下のZoox(ズークス)は、独特な箱型の車両でロサンゼルスとラスベガスでの展開許可を待つ。配車最大手のUber(ウーバー)は、自社での自動運転開発から撤退した。いまはWaymoやZooxと組み、Uberアプリからロボタクシーを呼べる体制を整えている。開発を競う段階から、提携して実装を急ぐ段階へ。市場の構図が移りつつある。

モルガン・スタンレーは、この競争の行方も見通している。TeslaとWaymoの2社が、2032年までに米国の自動運転走行距離の約7割を握ると予測する。50倍の拡大は、先行する少数のプレーヤーが牽引する構図になりそうだ。

■なぜウォール街は強気なのか

なぜ、ウォール街はロボタクシー市場にこれほど強気なのか。根拠は、コストと安全をめぐる数字の改善にある。

まず展開の規模だ。モルガン・スタンレーは、2026年に米国の約33都市で商用の自動運転サービスが立ち上がると見込む。点だった展開が、面へと広がる年になる。さらに長期では、2032年までに自動運転車が年間およそ160億マイルを走り、米国のライドシェア走行距離の約3割を占めると試算する。市場に占める存在感が、桁違いに大きくなる。

安全とコストの数字も、商用化を後押しする。Waymoの走行データは、事故1件あたり約36万マイルに達するとされる。一方のTeslaは、コスト面で優位に立つ。1マイルあたりの費用は約0.81ドルで、Waymoの現行システムを下回る水準だ。安全性で先行する陣営と、コストで攻める陣営。両面で条件が整い、ロボタクシー市場が採算の取れる事業へと近づいた。これが、ウォール街の強気を支える土台である。

もっとも、強気は無条件ではない。モルガン・スタンレー自身、個別銘柄には慎重な姿勢も見せる。同社はTesla株のレーティングを中立に据え置いている。市場全体の成長性に賭けることと、特定の1社に賭けることは違う。この線引きを保ちながら、ウォール街はロボタクシー市場という長期テーマに資金を寄せている。

■「半数がアクセス」の時代に、日本はどこに立つか

米国が3年で人口の半数アクセスへ向かう。では、日本はどこに立っているのか。

日本でも動きは出始めている。2026年3月、Uberと日産自動車、英国の自律走行スタートアップWayve(ウェイヴ)の3社が、2026年末をめどに東京でロボタクシーのパイロットサービスを始めることで合意した。Uberにとって日本初の自動運転パートナーシップである。日産リーフをベースにした車両を使い、Wayveの自己学習型AIが走行を担う。配車はUberアプリが受け持つ。当初はセーフティドライバーが同乗する形だ。

先行する動きもある。Waymoは日本交通および配車アプリ「GO」と組み、2025年4月から東京都心の7区で公道走行テストを進めている。港、新宿、渋谷、千代田、中央、品川、江東の各区が対象だ。いまは運転席に人が乗り、地図づくりと挙動の調整を重ねている段階にある。国内勢では、自動運転スタートアップのティアフォー(TIER IV)が福井や茨城、東京・西新宿などで実証を続け、2026年内に複数都市での商用ロボタクシー開始を目指す。

ただし、米国との差は小さくない。向こうが「3年で半数アクセス」「年間7億5,000万回」を語る一方で、日本はようやくパイロットと実証の段階に立つ。商用サービスとして広がるのはこれからだ。「半数がアクセス」という言葉が日本で現実味を帯びるまでに、どれだけの時間がかかるのか。米国の急拡大は、その問いを日本の市場に突きつけている。

【参考】関連記事としては「日本政府、税金で「ロボタクシー乗り場」整備か」も参照。

日本政府、税金で「ロボタクシー乗り場」整備か

■まとめ:「3年で半数」が映すロボタクシー市場の転換点

3年で米国民の半数がロボタクシーに乗れる。モルガン・スタンレーが示したこの予測は、自動運転タクシー市場が実証の時代を抜け、商用スケールへ移る転換点を表している。

年間ライド数が2025年の約1,500万回から2030年に約7億5,000万回へ。およそ50倍という伸びの本質は、台数や回数の話にとどまらない。コストと安全の数字が改善し、ロボタクシー市場が投資テーマとして成熟したという点にある。ウォール街が市場全体へ向ける強気の視線は、そこから生まれている。

Waymoが先行し、Teslaが追い、Uberが提携で実装を急ぐ。米国市場がこの速度で動くなか、日本はようやく東京でパイロットの準備に入った。「半数がアクセス」という節目を米国が迎えるとき、日本はどこに立っているのか。その問いに答えを出していくことが、これからの数年の宿題になるだろう。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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