
自動運転の目と呼ばれる「LiDAR」を開発する米Luminar Technologies(ルミナー・テクノロジーズ)が2025年12月に破綻した。神童と呼ばれたオースティン・ラッセル氏が2012年にわずか17歳で創業した同社は、大手自動車メーカーと次々に提携し、かつてはLiDAR開発の代表的な企業であった。
大口取引先であるスウェーデンのボルボ・カーズから契約を打ち切られたことが決定打になったようだ。ルミナーは2020年12月に米ナスダック市場に上場を果たしている。しかし株価は低迷を続け、最終的には上場時よりも約500分の1にまで下落していた。価値が99%も下落したのだ。
最新情報では、同社のLiDAR事業を米Quantum Computingに2,200万ドル(約35億円)で売却することに決めたという。ルミナーの成り立ちから衰退までの経緯を振り返ってみる。
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■創業者は「自動運転界のジョブズ」と呼ばれていた
ルミナー創業者でCEO(最高経営責任者)を務めたオースティン・ラッセル氏は1995年生まれで、16歳から名門スタンフォード大学で物理学の研究に取り組んだ。在学中に数多くの光工学分野のプロジェクトに参加し、その経験が現在のLiDAR開発に生かされることになる。米国の投資家ピータ・ティール氏が主催する若手起業家向け研究奨学金制度により大学を中退し、この研究奨学金を原資にルミナーを創業した。
ラッセル氏は、経済誌フォーブスによる2021年版の「世界長者番付」の「30歳以下のセルフメイド(自身で財産を築いた人)部門」に、保有資産24億ドル(当時のレートで約2,600億円)で第5位にランクした。フォーブスの「30 UNDER 30(30歳未満の特筆すべき30人)」に選出されたこともあり、一時は「自動運転界のジョブズ」とも呼ばれる存在であった。
ルミナーは2020年5月にスウェーデンのボルボ・カーズと提携し、同社のLiDARと検知技術を次世代型のボルボ車に導入していくことを発表した。そのほか、トヨタグループのTRI(トヨタリサーチインスティチュート)やフォルクスワーゲングループの「Autonomous Intelligent Driving(AID)」、Daimler Trucks、Mobileye、エアバス子会社、Pony.aiなど有力企業と次々にパートナーシップを結んだことでも話題になった。
2024年5月には、LiDARを取り入れない方式での自動運転車開発を行ってきた米EV(電気自動車)大手テスラが、ルミナーから210万ドル(約3億3,000万円)相当のLiDARを購入していたことが決算報告書により明らかになった。

■2024年に創業者が突然辞任
ルミナーの取締役会は2025年5月、ラッセル氏が同社の社長兼CEOおよび取締役会会長を即刻辞任したことを発表した。そして同月21日付でPaul Ricci氏をCEOに任命した。
同社のプレスリリースによると、これは取締役会監査委員会による「企業行動規範および倫理」に関する調査結果によるもので、今回の件が財務実績に影響を及ぼすものではないとしていた。ラッセル氏は引き続き取締役として在任し、新任CEOへの移行および技術面に関する支援を行うという内容であった。
ラッセル氏の退任理由については具体的な説明がなく、辞任を強いられたのか、自発的に辞任したのかは不明だ。またCEOの交代が発表された翌日には、取締役を務めていたJun Hong Heng氏も辞任していたことも判明した。
■ルミナーとボルボに何があった?
ルミナーはボルボ・カーズとの供給契約を2025年11月14日付で終了したことを発表した。
ルミナーは2022年に、ボルボからの需要に応えるため、設備や施設、人員に多額の先行投資を行っていたという。しかしボルボは2025年9月に、当初は標準装備とする予定だったルミナーのLiDARを今後はオプション扱いにすることを決定した。さらにコスト削減策として、今後の車両へのLiDAR搭載を棚上げすることもルミナーに伝えたという。
この変更により、ルミナーはボルボとの契約期間全体における想定数量が約90%減少した。そして2025年10月にルミナーはボルボに対して、2020年に両社が最初に締結した契約への違反とみなすことをボルボ側に伝えた。その後、ルミナーは規制当局への提出書類の中で、ボルボ向けセンサーの出荷を停止すると株主に通知した。
最終的には、同年11月にボルボが契約を解除する書簡をルミナーに送付した。ボルボは米メディアのインタビューで「この決定は、当社のサプライチェーンにおけるリスクエクスポージャー(リスクにさらされている度合い)を抑制するために下したものであり、ルミナーがボルボ・カーズに対する契約上の義務を果たせなかったことの直接的な結果です」と述べている。
■米企業が事業を買収
ルミナーは2025年12月15日、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法第11条(チャプター11)の適用を申請したと発表した。その後、半導体子会社をQuantum Computingに1億1,000万ドル(約174億円)で売却する計画を明かしている。
さらに2026年1月15日には、Quantum ComputingがLiDAR事業を2,200万ドルで買収するという提案についてルミナーが受領したという。Quantum Computingは2018年に設立され、量子コンピューティングのハードウェアおよびアプリケーションサービスを手掛けている企業だ。
創業者のラッセル氏が、ルミナーのLiDAR事業への入札を試みているという報道もあったが、同社の技術はQuantum Computingに引き継がれていくことになりそうだ。今後のラッセル氏の動向にも注目したい。
【参考】関連記事としては「自動運転界の「ジョブズ」が突然辞任!「神の目」開発に暗雲」も参照。












