Mobileyeの年表!Intelが買収、チップ開発&自動運転タクシー事業も

最新EyeQ5も実装進む



出典:背景写真はいずれもIntel News Roomより

ADAS(先進運転支援システム)市場を席巻し、自動運転分野でも年々存在感を高めているイスラエル企業のMobileye(モービルアイ)。特にインテルの子会社となってから自動運転分野における取り組みを加速しており、サプライヤーとしての地位を固めつつもモビリティプロバイダーとして新たな道を歩み始めている印象だ。

この記事では、モービルアイの歴史を年代順になぞり、今後の展望に迫ってみる。







■モービルアイの概要

モービルアイは単眼カメラを主体としたADASソリューションの開発・製品化で知られるADASサプライヤーだ。多くの自動車メーカーのADAS技術を水面下で支えており、これまでに25を超えるOEMと手を結び、6,000万台以上の車両にモービルアイのソリューションが採用されているという。

ADAS開発企業として揺るぎない地位を誇る同社は、近年自動運転開発にも積極的で、高性能チップをはじめとしたソリューションの提供にとどまらず、有力な自動運転開発プレイヤーとして存在感を高めている。

なお、年表上2004年から10年余りの空白ができるが、その間はADASサプライヤーとしての成長期間となる。自動運転開発に向け本格始動した2016年以後に重点を置き、同社の取り組みを紹介していく。

■1999年:モービルアイ創業

モービルアイ創業者のアムノン・シャシュア氏はエルサレムのヘブライ大学でコンピューターサイエンスを教えており、自動車に関するプレゼン中に「2台のカメラで車両を識別できるか」といった質問を受けた。その際、シャシュア氏は「1台のカメラで実行できる」と回答し、これをきっかけに1台のカメラでビジョンシステムを構築するコンセプトが生まれた。

このコンセプトをもとに、1台のカメラとプロセッサ上のソフトウェアアルゴリズムを組み合わせて車両を検出するビジョンシステムをベースに、交通事故防止に寄与するソリューション開発に向け1999年に創業したのがモービルアイだ。

以後、長きに渡って単眼カメラを活用したADAS開発・製品化を進め、徐々に自動運転分野への進出を図っていくことになる。

■2004年:最初のシステムオンチップを開発

モービルアイは2004年、同社初のシステムオンチップ(SoC)を発表した。現在につながるデバイス「EyeQ」シリーズの第1世代の誕生だ。第1世代では、前方衝突警告やレーンデパーチャーワーニング、インテリジェントハイビームコントロール、交通標識認識などの機能を備えている。

2005年にはチップの開発や製造でSTマイクロエレクトロニクスとパートナーシップを結び、開発力と製品化に向けた取り組みを加速しており、2008年に本格的な量産化を開始している。

なお、第2世代のEyeQ2では、カメラのみでアダプティブクルーズコントロールや渋滞時走行支援機能なども可能にしたほか、EyeQ3は衝突被害軽減ブレーキなどレベル2技術を実装可能なものとしている。

第4世代のEyeQ4はレベル3に対応しており、中国EVメーカーのNIOが2018年に量産化を開始した「ES8」に初採用された。20を超えるドライバー支援機能を搭載し、ファームウェアはOTA(無線アップデート)により常に進化し、最新の状態を保つことができるという。

最新のEyeQ5はレベル4~5の自動運転に対応しており、BMWが2021年中に発売予定のレベル3EV「iNEXT」に搭載されるほか、中国吉利汽車(Geely)の高級車ブランドLynk & Coの新モデルにも採用されることが発表されている。

■2016 年:マッピングテクノロジー「REM」をリリース

モービルアイは2016年、自動運転車向けのマップを生成する技術「REM(Road Experience Management)」を発表した。車載カメラの映像をクラウドに収集・蓄積する技術を核とし、世界全体に渡るスケーラブルなマップを作製・更新することを可能にする。

REMテクノロジーを搭載した車両は、走行中にカメラが取得したデータを匿名化して自動的に収集し、REMが関連情報をタグ付きのデータポイントに分類し、低帯域幅で小さなデータパケットによってクラウドに送信する。クラウドでは、各車両から送られたデータを集約・整理し、道路インフラのアウトラインを独自アルゴリズムで定義する仕組みだ。

こうして作製されたマップデータは、AVマップ「Mobileye Roadbook」にまとめられ、グローバルなマップデータとして自動運転車のローカリゼーションなどに活用される。

搭載車両が増加するほど世界におけるマップデータのカバー率が向上し、更新頻度も上がる。REMを活用したグローバルマップ作製プロジェクトには、米GMをはじめ独フォルクスワーゲン、独BMW、日産などが次々と参画し、現在ではADAS用カメラを搭載した数百万台規模の車両が日々自動でマップデータを収集しているようだ。

なお、REMを道路の舗装状態監視や都市計画調査などに役立てるデータサービスなども展開している。

■2016年7月:BMW、インテルと自動運転開発連合結成

モービルアイと米半導体大手のインテル、独BMWは2016年7月、自動運転車の開発・実用化に向け提携すると発表した。その後、開発グループには自動車部品大手の米デルファイやカナダのマグナ、フィアット・クライスラー・オートモーティブ(FCA、現ステランティス)などが加わるなど、一大連合となっている。

当初は2021年に自動運転を実用化する計画を打ち出していたが、続報がないため水面下で開発が続いているのか途切れたのかは定かではない。ただ、この提携は、モービルアイがADASサプライヤーから自動運転開発パートナーへの道をたどる第一歩となったほか、ここでのインテルとの提携が後の買収につながった可能性があり、その意味で非常に興味深い開発連合と言える。

■2017年3月:インテル傘下へ、買収額は約153億ドル

インテルは2017年3月、モービルアイを買収すると発表した。その額は約153億ドル(約1兆7500億円)と言われている。同年8月の発表では、モービルアイの発行済み普通株式の約84%を取得したとしている。

モービルアイは2014年にニューヨーク証券取引所への上場を果たしているが、これに伴い同年中に上場を廃止している。

モービルアイのコンピュータービジョンにおける専門知識がインテルの高性能コンピューティングとコネクテッド技術の専門知識を補完し、クラウドから自動車までの自動運転ソリューションを作製できるようになるとしている。両社の既存のテクノロジーをベースに自動車メーカーやティア1サプライヤー、半導体パートナーとの顧客関係を強化し、高度な運転支援や自動運転技術の開発を促進していく方針だ。

なお、インテルは2020年5月までにイスラエルのMaaSプラットフォーマー・Moovit(モービット)の買収も発表している。こちらも約9億ドル(約960億円)の巨額買収となっている。インテル・モービルアイの自動運転技術をモービットのプラットフォームに載せ、世界で自動運転タクシーなどの移動サービスを展開していく戦略だ。

【参考】インテルによるMoovit買収については「IntelのMoovit買収、自動運転タクシーの世界展開の布石か!?」も参照。

■2020年7月:アジア圏における自動運転タクシーの展開計画を発表

モービルアイは2020年7月、日本や台湾、ASEAN各国におけるロボタクシーソリューションの提供に向け、移動サービスや移動ソリューション開発を手掛ける日本企業、WILLERとパートナーシップを結んだことを発表した。

モービルアイが自動運転車両を提供し、WILLERが地元の市場や規制、ユーザーの好みに合わせてサービスを実証していく。2021年にも日本の公道で自動運転タクシーの実証実験を開始し、2023年のサービス実用化を目指す方針だ。

モビリティプロバイダーとしてのアジア戦略において、WILLERがパートナーに選ばれた格好だが、WILLERも独自にシンガポールなどで自動運転サービス実装に向けた先進的な取り組みを進めている1社だ。今後、両社のコラボレーションがどのように進展していくか要注目だ。

【参考】WILLERとのパートナーシップについては「WILLERとMobileye、自動運転タクシー「日本第1号」候補に!?」も参照。

■2020年9月:ドバイでの自動運転MaaSの計画を発表

モービルアイは2020年9月、アラブ首長国連邦を拠点とする複合企業Al Habtoor Groupとドバイで自動運転モビリティサービスの展開に向け戦略的コラボレーションを行うと発表した。

REMを活用した道路舗装状態監視などのデータサービスをはじめ、2021年半ばには自動運転車の実証を開始し、その後2022年に遠隔操作技術などを用いた自動運転によるMaaS実証を行い、2023年のサービスインを目指す計画だ。

■2021年4月:自動運転システム「MobileyeDrive」の概要発表

モービルアイは2021年4月、自動運転配送車両の開発を手掛ける米Udelvとのパートナーシップを発表するとともに、EyeQ5に基づく最新の自動運転システム「MobileyeDrive」の概要を公表した。

MobileyeDriveはレベル4を可能にするフルスタックの自動運転システムで、13台のカメラをはじめ、3つの長距離LiDAR、6つの短距離LiDAR、6基のミリ波レーダーを搭載している。カメラによる認識システムとLiDAR・レーダーによる認識システムがそれぞれエンドツーエンドの自動運転機能をサポートすることで、極めて冗長性の高いセンシングを実現している。

UdelvはこのMobileyeDriveをベースに独自の遠隔操作システムや配送管理システムを統合し、2023年に商用化、そして2028年までに3万5000台以上のトランスポーターを生産する予定としている。

■2021年2月:Transdevとパートナーシップ

モービルアイは2021年2月、スマートモビリティ開発を手掛けるTransdev Autonomous Transport System(Transdev ATS)、商用車やモビリティソリューション開発を手掛けるLohr Groupと自動運転シャトルの実用化に向けパートナーシップを結んだと発表した。

モービルアイの自動運転システムを、Lohr GroupのEVシャトル「i-Cristal」に統合し、Transdevのモビリティサービスネットワークに乗せて欧州をはじめとする世界中の公共交通サービスに導入していく計画だ。

まずフランスとイスラエルで公道実証を進め、2022年までに生産に向けた技術設計を行い、その後2023年までに公共交通網に自動運転i-Cristalシャトルを配備する予定としている。

なお、モービルアイはフランスのパリで公共交通を運営するRATP(パリ交通公団)とも自動運転技術の導入に向け提携を結んでいる。

■2021年5月:トヨタのADAS開発ベンダーに選定

モービルアイは2021年5月、トヨタの複数のプラットフォーム向けのADAS開発ベンダーに独自動車部品大手ZFとともに選ばれたことを発表した。

EyeQ4を実装し、ZFのレーダー技術と統合された高度なカメラ技術をトヨタの主要なADASプラットフォームに提供していく内容だ。デンソーなど国内部品メーカーを中心に採用するトヨタとしては異例とも言える。

なお、モービルアイは2020年7月にも米フォードとの提携を強化し、製品ラインナップ全体において最先端ADASを提供していくことを発表している。フォードのADASのベースをモービルアイ製品に置き換えていくようだ。

また、2020年9月には、中国の吉利汽車(Geely)の高級車ブランドLynk & Coの新モデルにモービルアイの最新ADAS「Mobileye SuperVision」が搭載されることも発表されている。Mobileye SuperVisionは、360度の視界を確保するサラウンドカメラやナビゲーションテクノロジーなどを備えており、レベル2プラスに相当するハンズオフ運転を可能にするという。

既存のADAS分野においてもなお存在感を高めている印象だ。

■【まとめ】自動運転モビリティプロバイダーとして新たな道へ

ADASサプライヤーとして世界に名を知らしめたモービルアイは、2016年ごろを転機に自動運転分野への本格進出を開始したようだ。インテルのもと、自動運転開発に向けOEMと新たなパートナーシップを結ぶほか、モビリティサービス事業者とも積極的に手を結び、自動運転サービスを手掛けるモビリティプロバイダーとして新たな道を歩もうとしている。

日本をはじめとするアジア諸国、ドバイ、欧州など世界を舞台に自動運転サービス実用化に向けた取り組みを着実に前進させており、今後2年以内に一気に花を咲かせる可能性が高い。

明確な世界戦略のもと、どのような花を咲かせるのか。まずは各地で始まる実証の様子に注目したい。

【参考】関連記事としては「自動運転タクシーのフロンティア「Waymo」の年表」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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