MaaSとは?2020年代に実用化!意味や仕組みまとめ

日本各地で実証が進む、元祖サービスはWhim



交通業界に吹き荒れるMaaS旋風は、2020年に入ってなお勢力を強めているようだ。各地で自治体主導の実証や民間企業による実用化が進むなど、自動車業界のみならず、交通サービス提供事業者全体を巻き込み大きな話題となっている。







MaaSは現在の交通体系を一変させるほどの可能性を有する新たなサービスで、MaaSの文字を目にする機会も徐々に増えてきているものの、まだまだなじみは薄い。

今後急速に開発が進み、サービス展開されることが予想されるMaaSについて、概念や諸外国の取り組み、日本国内の状況などを取りまとめてみた。

記事の目次

■MaaSとは?
MaaSの読み方

「Mobility as a Service」の略で、マースと読む。直訳すると「サービスとしてのモビリティ」で、移動のサービス化を意味する。

MaaSの概念

比較的新しい考え方のため定義にばらつきがあるが、一般的には自動車や自転車、バス、電車など、さまざまな交通手段を個別の移動手段としてではなく1つのサービスとして捉え、シームレスにつなぐ新たな移動の概念を指す。

2015年のITS世界会議で設立された「MaaS Alliance」によると、「MaaSは、いろいろな種類の交通サービスを需要に応じて利用できる一つの移動サービスに統合すること」と定義している。

従来、移動するための「モノ」に過ぎずそれぞれが独立している自動車やバス、電車、飛行機などの各交通主体を、移動するためのサービス・コンテンツとして取りまとめ、統一されたプラットフォームに乗せることで、利用者に効率的な移動の選択肢を与え、予約や決済などを統一することで利便性をもたらす統合型の移動サービスだ。

発展系として、近年では観光や飲食、医療、不動産など交通事業以外の産業を結び付け、付加価値を創出していくことも重視されているようだ。

MaaS実現に必要なこと

MaaSの実現には、各交通事業者の協力体制が必須となるのは言うまでもないが、特にデータ連携の在り方が重要になる。

MaaSにおいては、まず鉄道やバスの運行情報をはじめ、タクシーの位置情報、道路の交通情報などの移動・交通に関する大規模なデータをオープン化し、特定のプラットフォーム上で連携させることが必要となる。

また、地域情報などの関連分野のデータや、利用者の行動履歴や支払い履歴といったパーソナルデータなど、付随する膨大なデータの取り扱いをはじめ、協調領域・競争領域のデータ区分やデータ連携の方法など、MaaS陣営ごとに明確なルールを定める必要があるほか、他のMaaSとも連携しやすい形式を採用することが肝要になってくる。

データ連携を巡っては、国土交通省が設置したMaaS関連データ検討会が2020年3月、「MaaS関連データの連携に関するガイドラインVer.1.0」を発表し、データ連携の方向性を示している。

【参考】MaaS関連データの連携に関するガイドラインについては「国交省、「MaaS関連データの連携に関するガイドラインver.1.0」を策定」も参照。

他方、現存する移動サービスに固執せず、地域の特性に応じて新たなモビリティの導入を検討することも重要となる。既存のバスやタクシー事業の自動運転化をはじめ、カーシェアやパーソナルモビリティなど、費用対効果を見定めながらラストワンマイルを意識したモビリティサービスの導入なども視野に入れ、エリア内の移動を最適化しなければならない。

各モビリティの交通結節点となるターミナルや小拠点となるデポの配置など、地域の都市計画や交通政策と結び付けた設備の再編なども必要になりそうだ。

■MaaSのレベル

MaaSのレベルは、一般的に0〜4の5段階で分類される。

MaaSレベル0:統合なし

レベル0は「統合なし」で、それぞれの移動主体が独立したままサービスを提供する旧来のものを指す。乗り換えなどの利便性向上は図られているものの大半の交通機関が独立運営されている状態だ。

MaaSレベル1:情報の統合

レベル1は「情報の統合」で、料金や時間、距離など各移動主体に関するさまざまな情報が統合されて利用者に提供されている段階を指す。レベル1の段階への到達は各国でさまざまな企業がウェブサイトやアプリなどを使って実現させ始めている。

MaaSレベル2:予約、決済の統合

レベル2は「予約、決済の統合」で、ワンストップで発券や予約、支払いなどが可能となる段階だ。利用者はスマートフォンなどのアプリケーションで目的地までのさまざまな移動手段を一括比較し、複数の移動主体を組み合わせたまま予約や決済などができるようになる。

MaaSの取り組みが加速する中、情報のデジタル化やキャッシュレス決済を導入する交通機関も着実に増加しており、MaaSアプリから予約・決済が可能となる場面も増えている。

今のところ、アプリから各交通事業者の決済画面に飛んで個別に決済する手法が多いようだが、将来的には複数の予約・決済を一括で行うシステムが浸透するものと思われる。MaaSを通した交通事業者同士の協業関係の深化が求められるとともに、決済関連事業者には新たな商機が生まれそうだ。

MaaSレベル3:サービス提供の統合

レベル3は「サービス提供の統合」で、原則としてエリア内のあらゆる移動サービスの予約や決済をはじめ、サービスそのものが一元化された状態を指す。

このレベルでは、エリア内における柔軟な移動を実現するサブスクリプションサービスも導入可能となる。月定額制で、さまざまな移動サービスが乗り放題になるイメージだ。

各移動サービス本来の利用料金に差があるため、一部を除く移動サービスの定額制や複数の料金メニュー設定、エリア限定定額サービスなどさまざまな導入方法が考えられるが、予約や決済などは完全に統合され、MaaSアプリからワンストップで全ての移動サービスが利用可能になる。

MaaSレベル4:政策の統合

最高度のレベル4は「政策の統合」となり、国や自治体、事業者が、都市計画や政策レベルで交通の在り方について協調していく段階を指す。交通結節点となるターミナルの配置など、インフラの再編も含め交通体系の在り方を模索していくレベルとなる。

【参考】MaaSレベルについては「MaaSレベルとは? 0〜4の5段階に分類」も参照。

■MaaSの市場規模

インドのコンサルティング企業「ワイズガイ・リサーチ・コンサルタント」によると、MaaSの世界市場は2017年に241億ドル(約2兆7000億円)規模だったが、2025年に2304億ドル(約25兆円)規模まで拡大するという。8年でおよそ10倍になるという推測だ。

【参考】ワイズガイの調査結果は「MaaS市場、8年で10倍 2025年に25兆円規模 インド企業が予測」も参照。

また、三菱総合研究所が2018年11月に発表したレポートによると、世界の自動車関連市場は現在の650兆円から2050年に1500兆円まで増大し、このうち900兆円がMaaS関連になると試算している。増加分のほぼ全てがMaaS関連となるような印象だ。

一方、矢野経済研究所が2019年2月に発表した国内MaaS市場調査によると、サービス事業者売上高ベースで2018年は845億円(見込み)のところ、2030年には6兆3600億円に達すると予測し、2016年から2030年のCAGR(年平均成長率)は44.1%で推移するとしている。

【参考】矢野経済研究所の調査結果については「MaaSの国内市場規模、2030年には飲食市場上回る6兆円台に」も参照。

富士経済が2020年3月に発表したMaaSの国内市場調査によると、2030年のMaaS市場は2018年比3.5倍となる2兆8658億円になると予測している。

数字に差はあれど、各社ともMaaS市場が大きく成長していく見立てで、将来のモビリティ事業がMaaSを中心に展開されていくことを示している。

【参考】富士経済の調査結果については「2030年には3.5倍に!MaaSの国内市場、あと10年で3兆円間近に」も参照。

■MaaSがもたらすメリット
都市や地方における交通変革

公共交通機関やカーシェアなどによる効率的な移動が可能になることで、個人の自家用車による移動が減少し、都市の交通渋滞緩和に期待が持たれる。また、自動車による排気ガスの減少により、都市の大気汚染、温室効果ガス排出が抑制されるほか、自家用車保有台数が減少することで駐車場面積を減らすことができ、跡地の有効活用も可能になりそうだ。

赤字で公共交通の存続そのものが危ぶまれている地方においては、自動運転導入による省人化やルーティングの最適化を図るAIシステムの導入などとともにMaaSを検討することで、持続可能な交通環境を再整備することが可能になる。

交通機関の効率化

移動主体が自家用車から公共交通などにシフトすることにより運賃収入が増加し、従来赤字運営していた路線などで経営環境の改善や税金の投入など公的負担の軽減効果が見込まれる。

また、鉄道を維持することが難しい地域で路線を廃止し、その分の運用・維持資金をオンデマンドバスや自動運転車に投資することで、より効率的な運営が可能になるケースもありそうだ。

MaaS導入によってモビリティサービスのプラットフォーム化・デジタル化が進むことで経営環境が変化するが、これをチャンスと捉え新たなビジネスモデルを構築していくことが肝要だ。

個人の利便性向上

電車やバス、飛行機など複数の交通機関を乗り継ぐ必要がある移動において、移動経路の検索や予約、乗車、決済までが1つのサービスで完結可能となるほか、ラストワンマイルを担う新たなモビリティの登場などにも期待が持たれる。

モビリティサービスの利便性向上によって、一家に一台、あるいはそれ以上ともいわれる自家用車所有率は低下し、高額な自家用車の購入費や維持費の負担がなくなり、その他の支出に充当する余裕が生まれる。

このほか、企業が従業員に支払う通勤手当の一律支給が可能になり、既定の通勤経路以外の交通経路の把握なども容易になるため、企業・従業員双方にとって経費清算手続きが簡略化されることなども考えられそうだ。

■MaaSのサービス事例
鉄道やバス、タクシー:公共交通の核として存在感を発揮

既存の鉄道やバス、タクシーといった公共交通を担う移動サービスは、MaaSにおいても中心的な役割を担うケースが多い。全国に張り巡らされた鉄道やバスなどの路線をベースにラストワンマイルを結び付けていく考え方が主流だ。

また、バスやタクシーの自動運転化によりコスト削減や安全性を高める取り組みも加速しているほか、オンデマンドバスの導入なども期待できる。

サイクルシェア:MaaSの中では身近な存在 手軽に近距離移動が可能

自転車の貸出所(サイクルポート)を複数設置し、自転車を自由に借り出し・返却できるようにした共同利用システム。導入当初は自転車やサイクルポートなどハード面の整備に重点が置かれていたが、スマホの浸透などとともにアプリ開発などソフト面が充実し、飛躍的に利便性が増してきている。気軽にラストワンマイルを担うモビリティとして注目だ。

カーシェア:市場拡大中 自動車メーカーの参入も

サイクルシェアの自動車バージョンで、事業者が会員に車を貸し出す仕組みを指す。利用者は、サービス事業者のもと自動車を所有せずに共有するような形で利用できる。市場は伸び続けており、矢野経済研究所の予測によると、国内の市場規模は2020年には2012年の約5倍となる300億円に達する見込みという。近年、自動車メーカーも本格参入している。

また、小規模カーシェア事業を可能にするプラットフォームサービスや、個人間カーシェアサービスなども登場しており、市場の拡大はまだまだ続きそうだ。

ライドシェア:急成長のライドシェアは海外で市場拡大中

移動に関するシェアリングエコノミーの中でも大きな市場規模を誇るライドシェア。車両そのものをシェアするカーシェアとは異なり、運転手のいる車に会員が同乗する仕組みで「移動」をシェアする。

事業者は、アプリなどを介して乗りたい人と乗せたい人を結び付けるマッチングサービスの提供など仲介がメインで、あらかじめライドシェア事業者に登録したドライバーが、自家用車を利用して顧客を送迎する旅客運送の性質も持つ。

国内では、道路運送法の規定により一般的有償サービスは現状規制されている。市町村やNPO法人などが公共の福祉確保を目的に実施するケースや、ガソリン代など走行にかかったコストをシェアするタイプは規制対象外となっている。

相乗り:タクシー相乗りで料金割り勘 サービス実証実験など進む

1台の乗り物に複数人数が一緒に乗り合わせることを意味し、一般の個人ドライバーと自動車をシェアするタイプと、タクシーの行き先が同じ客同士がタクシーに乗り合うタイプが考えられる。ライドシェアも同じ意味で用いられることが多い。

タクシーの相乗りは現在解禁に向けた実証などが加速しており、近い将来規制が撤廃される可能性が高そうだ。

シェアパーキング:駐車場を効率的に活用 独自アプリや制御装置で利便性増す

空き駐車場のシェアリングサービスで、モバイルアプリを通じて全国の空いている月極や個人の駐車場、空き地などを時間単位で貸し借りできるサービス。ゲート開閉式の駐車場などこれまで対応が難しかった駐車場も、独自の機器を取り付けることでキャッシュレス利用が可能になるサービスが登場するなど、利便性が増している。

また、店の軒先など、狭い空きスペースを有効に活用できる自転車向けの駐輪場シェアサービスなども登場している。

宅配・輸送・物流:配送大手から新規参入組まで幅広いサービス展開

MaaSは宅配や物流などにも及んでいる。国内配送大手のヤマト運輸とディー・エヌ・エーの2社が、次世代物流サービスの実現を目指すためのプロジェクト「ロボネコヤマト」に取り組んでいる。

希望する場所で宅配便を受け取ることができるオンデマンド配送サービスや、複数の地元商店の商品をインターネット上で一括購入し、まとめて届ける買物代行サービスなど、自動運転車を用いた実証実験などを行っている。

また、荷主と運送業者をオンラインで仲介して直接マッチングするサービス事業者や、買物・宅配代行サービス事業者など、多様なサービスが展開されている。インターネット通販の拡大など今後も需要が見込まれる領域のため、アイデア次第でさまざまな新規参入の形がありそうな分野だ。

飲食サービス:Uberが日本で事業展開 マッチングサービス事業者も

ビルの空きスペースと移動販売可能なフードトラックをマッチングするプラットフォーム提供事業者や、「Uber Eats(ウーバーイーツ)」のように提携レストランの料理を宅配する食品配達サービス事業者などが登場している。

また、飲食に限らないが、タクシーなどと連携して飲食情報や割引サービス、広告などを提供・配信する事業も今後広がりそうだ。

自動運転:MaaSとともに開発面で相乗効果

自動運転とMaaSは密接に関係しており、MaaSの活用により自動運転の開発が促進され、自動運転の実現によりMaaSの利便性も増す、といった相乗効果を持つ。

例えば、自動運転システムの開発には大量のデータが必要となり膨大なコストがかかるが、自動運転車を個人所有する場合と比べMaaSを活用することでデータを効率的に収集することができ、コストも分散される。また、MaaSによって提供される自動運転システムは、乗客1人当たりの走行コストを低下させることができ、新たな消費需要を生み出してシステムの安全性や利便性が向上していく好循環を生むことにつながる。

パーソナルモビリティや超小型モビリティ:さまざまなモビリティが登場

ラストワンマイルを担うモビリティとして、1人乗りのコンパクトなモビリティの開発や実証も盛んに行われている。

トヨタの「i-ROAD」のように公道を走行するモビリティをはじめ、歩道や施設内などの移動を前提としたモビリティなど種類は豊富で、現状、原動機付自転車(原付)扱いの電動キックボードの規制緩和を目指す動きも活発だ。

【参考】超小型モビリティについては「超小型モビリティが、高齢者の移動に革新をもたらす」も参照。

■MaaSの海外の導入事例
フィンランド:MaaS発祥の地、官民一体でプラットフォーム開発

MaaSを世界で初めて都市交通に実装したフィンランド。なかでも、MaaSの名付け親として知られるヘルシンキのベンチャー企業「MaaS Global(マース・グローバル)」社が2016年から提供しているサービス「Whim(ウィム)」の注目度が高い。

ウィムの利用者は、それぞれの利用形態に応じた料金プランを選択し、ウィムが提供する複数の交通経路から最適なものを選び、予約から乗車、決済まで一括して利用することができる。交通手段にはバスや電車などの交通機関のほか、タクシーやバイクシェアなどもあり、スマートフォンのアプリを提示するだけで利用できるという。

サービス開始前の交通利用状況は、公共交通が48%、自家用車40%などだったが、サービス開始後は公共交通が74%と大きく伸び、自家用車は20%と半減した。

取り組みの背景には、フィンランドの主要大学やタクシー協会、民間企業など100以上の団体・組織が参画するITSフィンランドや同国の運輸通信省などの強力な支援がある。オープンデータとオープンAPIのプラットフォーム開発・整備を担うほか、移動に関する情報検索や決済などのサービスの統合を進めている。また、輸送サービスに関する法律の一元化も図られ、規制緩和も進められているという。

なお、マース・グローバル社は三井不動産との提携のもと日本進出を予定しており、2020年中にも千葉県柏市で実証を行う見込みとなっている。

【参考】関連記事としては「MaaSアプリ「Whim」とは? 仕組みやサービス内容を紹介」も参照。Whimの日本進出については「三井不動産、「Whim」を展開するMaaS Globalに出資」も参照。

ドイツ:ドイツ鉄道やダイムラーがプラットフォーム構築、国境またいだサービスも

ドイツでは、ドイツ鉄道がマルチモーダル型の統合モビリティサービスプラットフォーム「Qixxit(キクシット)」を実用化させている。交通手段の検索から予約、決済まで可能で、当初はドイツ国内に限られていたが、現在では飛行機や長距離バスなど国境をまたぐ移動のプランナーとしての使い勝手の良さが人気を集めているという。

また、自動車メーカーのダイムラーの子会社も、統合モビリティサービス「moovel(ムーベル)」を実用化している。都市の交通流を最適化するMaaSプラットフォームで、利用者は公共交通機関の航空券のほか、カーシェアリングやレンタルバイクなどの他のモビリティオプションの予約や支払いも可能となっている。

ダイムラーはその後独BMWと提携を交わし、2019年2月にカーシェア、ライドヘイリング、パーキング、チャージング(充電)、マルチモダリティの各領域で両社のサービスを統合・連携した5つの新会社の設立を正式発表し、サービス運用を移行している。

両社は2020年6月に自動運転開発の分野で協業を停止したものの、サービス分野の5社は引き続き存続しているようだ。

【参考】ダイムラーとBMWのサービス分野における提携については「欧州の双頭・BMWとダイムラーによる「リーチナウ」の可能性とは?」も参照。ダイムラーとBMWの協業については「英断か悪手か…?BMWとDaimler、共同自動運転開発を一時停止」も参照。

イギリス:フィンランドのマース・グローバル社のサービス拡大

フィンランド同様、ウェストミッドランドにおいてマース・グローバル社が2018年4月からウィムのサービスを開始している。同社は将来的にカナダやアメリカといった北米での展開なども考えているという。

■MaaSの日本の導入事例
JR東日本:モビリティ変革コンソーシアム設立、ワンストップサービスの確立目指す

2016年に技術革新中長期ビジョンを発表。この中で、利用者の軌跡や車両・設備のデータに加え、バスやタクシーといった交通機関、自動運転技術やシェアリングの進展が著しい自動車の位置情報などのデータなどとリアルタイムで連携し、乗客1人ひとりに応じた情報提供を目指すこととしている。

バスや自転車といった二次交通との高度な連携など、さまざまな移動手段を組み合わせたドアツードアの移動サービスの提供を目指し、2017年に「モビリティ変革コンソーシアム」を立ち上げて産学民の連携を推進している。

JR東日本としては、交通系ICカードSuicaと連携した「Ringo Pass」の実装を進めるほか、2019年には小田急電鉄とMaaS連携に向けた協議を開始している。

また、東京急行電鉄などとともに伊豆エリアでアプリ「Izuko」を用いた観光型MaaSの実証実験を開始している。東北では、宮城県・仙台市とともに、仙台圏における観光型MaaS構築に向けた連携を進めるなど、多方面に活躍の場を広げているようだ。

小田急電鉄:利便性向上に向けグループ内連携から他社連携へ拡大中

MaaS構築に向けたオープン共通データ基盤「MaaS Japan」をヴァル研究所と共同開発するなどいち早くMaaS分野への進出を本格化させた小田急電鉄は、2019年10月にMaaSアプリ「EMot(エモット)」をサービスインし、実証に着手した。

サービス開始時における機能は「複合経路検索」と「電子チケットの発行」に留まっていたが順次サービスを拡大しており、デジタル箱根フリーパスのサービス充実やデジタルチケットの譲渡機能を実装するなど、徐々に進化を遂げているようだ。

【参考】小田急の取り組みについては「MaaSアプリに「周遊プラン」提案機能!小田急「EMot」で2020年内に導入へ」も参照。

トヨタ自動車:「my route」全国展開へ

トヨタは2018年11月、西日本鉄道とともに2018年11月に福岡県福岡市でMaaSアプリ「my route(マイルート)」の実証実験に着手した。2019年11月にはJR九州参画のもと福岡市と北九州市で本格実施を開始し、以後、サービス事業者を拡大しながら熊本県水俣市や神奈川県横浜市にエリアを広げている。今後、宮崎県宮崎市・日南市でもサービスを開始する予定だ。

モビリティ分野では、MaaS専用次世代EV「e-Palette Concept」の実用化に注目が集まる。移動サービスや移動販売など多目的な活用が可能で、自動運転システムもトヨタ製に限らず他社製を搭載することもできる。

1年延期となったが2021年の東京オリンピック・パラリンピックの舞台でも活用が見込まれており、改めて注目したい1台だ。

トヨタとソフトバンク:MONET Technologies設立でMaaS事業推進

トヨタ自動車とソフトバンクはを2018年9月、共同出資のもと「Autonomous Vehicle(自動運転車)」と「MaaS」を融合させたAutono-MaaS事業を手掛ける「MONET Technologies」を設立した。

企業や自治体のMaaS実現を支援する「MONETプラットフォーム」の本格運用や、MaaS向けの架装車両やキットを提供する「MONET MaaSコンバージョン」など、提供サービスは年々広がりを見せている。

2019年3月には、モビリティイノベーションを推進する企業横断型組織「MONETコンソーシアム」を設立した。加盟企業は2020年9月時点で600社を超えており、すでにオンデマンド通勤シャトルの実証実験など各社がコンソーシアムのもとさまざまな取り組みを展開している。

JR西日本:観光型MaaS「setowa」本格サービス展開へ

JR西日本は、せとうちエリアへの観光誘客拡大に向け2019年度に観光型MaaS「setowa」の実証に着手した。2020年9月から機能の拡充や操作性を改善し新たにサービスを開始する予定で、経路検索結果から各種移動サービス事業者の予約サイトやアプリへリンク連携してスマートフォンで予約・決済する機能や、周遊パスや話題のスポット紹介などサービス機能も充実していくようだ。

WILLER:国内3エリアで「WILLERS」展開

高速バスの運営から移動・観光eコマースの開発など事業領域を拡大するWILLERは、MaaSアプリ「WILLERS」をサービスインしている。

対象エリアは2020年9月時点でひがし北海道エリア、京都丹後鉄道沿線エリア、南山城村エリアとなっており、QRコードを活用したチケットレスの利用やさまざまな交通機関の事前予約などが可能だ。

■スマートモビリティチャレンジプロジェクト:国も新たなモビリティサービスを推進

経済産業省・国土交通省は2019年、新しいモビリティサービスの社会実装を通じた移動課題の解決及び地域活性化に目指す地域や企業を応援する「スマートモビリティチャレンジ」プロジェクトを立ち上げている。

初年度は、地域の交通課題解決に向けたモデル構築を推進する「新モビリティサービス推進事業」に19事業、新しいモビリティサービスの社会実装に取り組み事業計画策定や効果分析を行う「パイロット地域分析事業」に13事業がそれぞれ採択され、各地でMaaSをはじめとしたモビリティサービスに関する検討や実証が始まった。

2020年度は、先進パイロット地域に16事業、日本版MaaS推進・支援事業に38事業がそれぞれ採択されており、いっそうのMaaS浸透が図られる見込みだ。

【参考】国の取り組みについては「【資料解説】日本版MaaS実現へ、2025年度までの国の青写真」も参照。

■【まとめ】日本らしいMaaSの早期実現に期待

欧州を中心に発展を遂げてきたMaaSだが、ここにきて日本国内の取り組みが急加速しており、市場が急速に膨れ上がっている印象を受ける。国の推進体制と自治体の意向、そして民間の取り組みが効果的にマッチしているようだ。

各地でMaaSプラットフォームが立ち上がっているが、今後はデータ連携や新たな移動サービスの開発や導入、異業種との連携などがカギとなってくる。官学民一体となった取り組みに引き続き期待したい。

【参考】自動運転とMaaSは非常に関連性が強い。自動運転に関しては「自動運転に関する専門用語まとめ LiDAR、MaaS、ダイナミックマップ…|自動運転ラボ」も参照。

(初稿:2018年9月9日/最終更新日:2020年9月23日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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