トヨタのコネクティッド分野に関する事業を展開するトヨタコネクティッド株式会社（本社：愛知県名古屋市／代表取締役社長：山本圭司）の第24期（2023年4月〜2024年3月）決算公告が、このほど官報に掲載された。
売上高は前期比16.7％増の701億6,071万円、当期純利益は前期比65.5％減の25億8,312万円であった。売上高は増加しているにもかかわらず、純利益は大幅減という結果になっている。将来的な先進コネクティッド系サービスの展開に向け、研究開発費がかさみ利益を一時的に圧迫している可能性もありそうだ。
なお過去3期の売上高と純損益の推移は、以下の通りとなっている。
＜売上高の推移＞
・第22期：591億5,777万7,000円
・第23期：601億1,228万1,000円
・第24期：701億6,071万円
＜純損益の推移＞
・第22期：49億4,048万4,000円
・第23期：74億9,514万1,000円
・第24期：25億8,312万7,000円
【参考】関連記事としては「トヨタの自動運転戦略（2024年最新版）」も参照。
記事の目次
■決算概要（2024年3月31日現在）
賃借対照表の要旨（単位：千円）
▼資産の部
流動資産 59,447,289
固定資産 7,195,720
・有形固定資産 759,219
・無形固定資産 953,158
・投資その他の資産 5,483,342
資産合計 66,643,010
▼負債の部
流動負債 55,612,990
・賞与引当金 741,495
・役員賞与引当金 32,317
・製品保証引当金 47,299
・その他 54,791,875
固定負債 658,208
・退職給付引当金 356,598
・役員退職慰労引当金 20,944
・その他 280,666
負債合計 56,271,199
▼純資産の部
株主資本 10,371,811
・資本金 650,495
・資本剰余金 650,495
・・資本準備金 650,495
・利益剰余金 9,070,821
・・その他利益剰余金 9,070,821
純資産合計 10,371,811
負債・純資産合計 66,643,010
損益計算書の要旨（単位：千円）
売上高 70,160,710
売上原価 60,488,390
売上総利益 9,672,319
販売費及び一般管理費 4,853,042
営業利益 4,819,277
営業外収益 528,641
営業外費用 201,168
経常利益 5,146,750
特別利益 2,727
特別損失 1,302,655
税引前当期純利益 3,846,822
法人税、住民税及び事業税 1,575,170
法人税等調整額 △311,475
当期純利益 2,583,127
■章男会長の発案により発足した事業
トヨタコネクティッドは、1996年にトヨタ自動車の国内企画部に業務改善支援室（チームCS）が発足したことから始まった。その後、2000年にトヨタの顧客向けITを推進する戦略ビジネスユニットとして「ガズーメディアサービス株式会社」が設立され、会社組織となった。
ガズーメディアサービスは、当時トヨタ自動車営業本部課長であった豊田章男氏（現：トヨタ自動車会長）と友山茂樹氏（現：トヨタ自動車Executive Fellow）が、ITと自動車事業が融合する時代が来ると予見し、「ITによってお客様との接点を作る」との思いで立ち上げたものになる。
2002年にはガズーメディアサービスがトヨタのテレマティクス事業を統合、人とクルマと社会を有機的に結ぶテレマティクスサービス「G-BOOK」が誕生した。2003年に「デジタルメディアサービス株式会社」、2008年に「トヨタメディアサービス株式会社」に社名変更した。現在の「トヨタコネクティッド株式会社」に社名を変更したのは、2017年だ。
■MaaSやコネクティッドなど4つの事業を推進
トヨタコネクティッドは、4つの事業を展開している。1つ目はMaaS事業で、新たなモビリティサービス創出に向けたビッグデータ活用基盤の構築やソリューションの開発・提供を行っている。
【参考】関連記事としては「MaaS（マース）とは？次世代交通の象徴として注目」も参照。
2つ目はコネクティッド事業で、車両データを活用したコネクティッドサービスの開発・提供を行う。クルマがトヨタスマートセンターと通信でつながり、24時間365日、安心・安全、快適・便利なコネクティッドサービスを提供している。
現在のサービス名は「T-Connect」で、緊急時に専門のオペレーターにつながる「ヘルプネット」や、警告灯点灯時に車載機またはスマホアプリ「My TOYOTA＋」に知らせが来てeケアコールセンターに接続し、走行を続けられるかなどのアドバイスを受けることが可能になる「eケア」などを展開している。
3つ目はディーラーインテグレーション事業だ。コネクティッドと連携し、セールスからアフターサービスまでをトータルサポートするITソリューションを開発・導入している。最後はデジタルマーケティング事業で、ウェブサイトの制作やデータ分析、Eコマースなどさまざまなマーケティングソリューションの提供を行う。
■SCSKと協業し東南アジアでもサービス展開
トヨタコネクティッドは2024年2月に、電動車両を利用したカーシェアリング実証を愛知県蒲郡市で行った。人・環境・社会にやさしい新しいモビリティサービス「エシカルMaaS」を実現するための実証となり、「まちなかモビリティ」と題し蒲郡市のサーキュラーシティ推進の実証事業の一環として実施するものであった。
同年3月には住友商事グループに属するシステムインテグレーターであるSCSKと、安心・安全なモビリティ社会実現に向け、車両のコネクティッドサービス分野における「販売」「開発」「研究」「データ利活用」の4領域で協業を開始することを発表した。トヨタコネクティッドの後付けデバイスを活用したフリートマネジメントサービスと、SCSK のモビリティサービスを組み合わせ、東南アジア地域での交通社会の安心・安全向上のため、地域特性に合わせたサービス開発・展開を行っていく計画だ。
売上高は拡大しているトヨタコネクティッドだが、純利益が減少していることで、研究開発や設備投資に資金を投入していることが考えられる。その成果として、今後、どんなサービスがリリースされるか、注目していきたい。
※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。
【参考】関連記事としては「トヨタコネクティッド、また増収増益！純利益51％増の74億円超」も参照。
