自動運転、アジアの最新事情(2022年最新版)

日本、中国、韓国、台湾などの現状は?



世界各地で実用化に向けた取り組みが進む自動運転技術。アジアでは、中国を筆頭に開発が加速し、技術水準は先行する米国に肩を並べる域に達している。







この記事では、アジア各国の取り組み状況について解説していく。

■日本
レベル4改正法が衆院本会議で成立

日本では、2020年施行の改正道路交通法でレベル3の社会実装を可能にしたほか、2022年4月には新たな改正法案が衆院本会議で可決・成立し、レベル4実装への道を開いた。

新たな改正法は、ドライバーなしの状態で運行し、万が一の際も手動介入することなく自動で安全に停止可能なレベル4による運行を「特定自動運行」と定義し、従来の「運転」には該当しないものと位置付ける。特定自動運行を実施する者は「特定自動運行主任者」を指定することなどが盛り込まれている。

また、自動走行ロボット関連でも一定基準に適合したものを「遠隔操作型小型車」と定義し、届け出制で社会実装を図っていく構えのようだ。

自動運転関連の改正法は公布日から起算して1年以内に施行される。早ければ2022年度内の施行も考えられる。

▼道路交通法の新たな改正法案
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/208/pdf/t0802080522080.pdf

【参考】改正道路交通法案については「【資料解説】自動運転レベル4を解禁する「道路交通法改正案」」も参照。

レベル3はホンダが先陣
出典:ホンダプレスリリース

量産自家用車におけるレベル3では、ホンダが渋滞運転機能「トラフィックジャムパイロット」を搭載した新型レジェンドを2021年3月に発売し、世界の先陣を切った。

各国の規制による影響もあるが、思いのほか他メーカーは実装に手間取っている印象で、2022年にメルセデス・ベンツなどが追随する見込みだ。その意味で、早期に法律や高速道路のマッピングといった整備を進めてきた日本の功績は大きいと言える。トヨタや日産など、国内メーカーの動きにも要注目だ。

移動サービスでもレベル3実現
出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)

移動サービス関連では、福井県永平寺町などで遠隔型のレベル3サービスが2021年3月にスタートしている。同町では、「ZEN drive Pilot」と名付けられた遠隔監視・操作型のシステムが国土交通省から自動運行装置として認可され、廃線跡を活用した自転車歩行者専用道でセーフティドライバーなしの運行を行っている。

沖縄県北谷町でも町有地の通路(道路外)でレベル3相当の運行を行っているようだ。今後、こうした先行事例を発展させ、限定エリアにおけるレベル4実証が本格化する見込みだ。

このほか、実質レベル2運行ではあるものの、茨城県境町でBOLDLYなどがNAVYA ARMAを活用した定常運行を2020年11月から公道で行っている。実績は豊富で、法改正とともにレベル3、レベル4にステップアップする準備は整っている印象だ。

自動運転タクシー開発も徐々に激化
出典:ホンダプレスリリース

自動運転バスに比べると実証実績は少ないものの、自動運転タクシーの実用化に向けた動きも進んでいる。早くから取り組むZMPや日産などに加え、ティアフォーなども2019年に正式に開発に着手し、東京都内などの行動で走行実証を行っている。

ホンダもパートナーシップを結ぶ米GM・Cruise陣営とともに自動運転モビリティサービス事業に向けた実証を2021年に開始した。「クルーズAV」を用いて栃木県宇都宮市と芳賀町で公道実証を進め、日本の交通環境や関連法令などに合わせた自動運転技術を開発・検証していく構えだ。

このほか、モービルアイとパートナーシップを結ぶWILLRも2021年に国内で自動運転タクシーの実証実験を開始し、2023年にもサービスを展開する計画を発表している。

各社の動向に要注目だ。

自動走行ロボット開発も大幅加速
出典:パナソニック・プレスリリース

主に歩道を走行する自動走行ロボットの開発も2020年以降大幅に加速している。これまでZMPやHakobotなど開発プレイヤーは少数だったが、パナソニックやティアフォー、ホンダ、川崎重工業、京セラコミュニケーションシステムなど続々と同分野への参入を果たしている。

今後、楽天や日本郵便をはじめとしたECや宅配事業者のほか、小売業が本格参入することで実証がいっそう加速する可能性が高い。

【参考】自動走行ロボットについては「新規参入相次ぐ!自動配送ロボット、国内プレーヤーの最新動向まとめ」も参照。

■中国
国を挙げてイノベーションを推進 自動運転は百度がリード企業に

中国は近年、中国製造2025や次世代AI発展計画など数々の政策のもとイノベーションを推し進めており、その成果は自動運転分野でも顕著に発揮されている。

AI関連では、自動運転、スマートシティ、医療、音声認識の4分野を重点分野に位置付けており、自動運転分野をリードする企業に百度(バイドゥ)が選定されている。百度は自動運転車向けのソフトウェアプラットフォームをオープンソース化するプロジェクト「Project Apollo=アポロ計画」を立ち上げ、国内外の多くの開発企業参画のもと、名実ともに自動運転開発を主導している。

自動運転タクシーは量産段階に
出典:百度プレスリリース

自動運転タクシーの開発では、百度をはじめDidi Chuxing(滴滴出行)、WeRide、Pony.ai、AutoX、Momentaといった有力企業が各地で盛んに実証を進めている。百度やAutoXなどはすでにドライバーレスの無人自動運転実証に着手しており、米Waymoに引けをとらない実用化域に達している。

また、百度はレベル4自動運転車両の量産化にめどを立てており、2021年時点で自動運転タクシーの量産モデル「Apollo Moon(アポロムーン)」の製造コストが日本円で約870万円を実現したという。需要の増加とともにさらなるコストダウンの余地はあるものと思われ、自動運転サービスの可能性を大きく広げていくことになりそうだ。

【参考】中国の自動運転タクシーについては「北京、上海、深セン・・・中国の自動運転タクシー最新事情まとめ」も参照。Apollo Moonについては「たった870万円!中国アポロの自動運転タクシー、製造コスト判明」も参照。

自動運転トラック開発勢も続々

中国では、自動運転トラックの開発勢も次々と台頭している。実用化域に達しているTuSimpleやPlusをはじめ、Qingtian Truck、TrunkTech、Westwell、Inceptio Technology、FABU Technology、SENIORなどスタートアップが続々と表舞台に立ち始めている。

米中を股に掛けた取り組みも目立ち、今後の動向に引き続き注目したい。

【参考】自動運転トラックについては「自動運転トラックの開発企業・メーカー一覧(2022年最新版)」も参照。

■韓国
2024年までに11万1,000キロをマッピング

韓国政府は未来自動車国家ビジョンの中でEV普及などとともに自動運転開発も戦略に盛り込み、インフラ整備などを加速させている。計画では、全高速道路を含む全長11万1,000キロの主要路線を2024年までにマッピング化し、V2Iシステムの整備も進めていく方針という。

自動車メーカーでは、現代(ヒュンダイ)が2022年にもレベル3を搭載した「Genesis G90」を発売する見込みのほか、起亜もレベル3システム「AutoMode」を搭載したEVを2023年までに展開する方針を発表している。

レベル4関連では、現代が米Aptivと設立した合弁Motionalに注目だ。米ラスベガスで2023年にも自動運転タクシーを実用化する方針で、サービス実証にも注力している。韓国での展開は今のところ具体化していないが、法整備に合わせてすぐにゴーサインを出せそうな技術力を有している。

【参考】現代の取り組みについては「現代自動車のEV、米で2023年から自動運転タクシーとして運行へ」も参照。

42dotやMORAIが台頭
出典:42dotプレスリリース

韓国では、スタートアップも着々と成果を出し始めているようだ。2019年設立の42dot(フォーティートゥドット)は、首都ソウルで自動運転タクシーサービスを2021年12月に開始しており、2022年には有料サービスも実施している。

仮想シミュレーション環境の開発を進める2018年設立のMORAIも資金調達を成功し、業界の開発を後押ししている。高精度地図データをデジタルツインに自動変換する技術を有しており、自動運転システムをテストする仮想シミュレーション環境を容易に構築することができるようだ。

自動走行ロボットの実証も加速
出典:ウーワ・ブラザーズ公式サイト

自動運転可能な宅配ロボットの開発も順調だ。フードデリバリーサービス大手Woowa Brothersや2017年設立のスタートアップNeubilityなどが特区制度を活用してソウル市内などでサービス実証に着手している。

現状、同国では自動走行ロボットは車両扱いのため公道実証のハードルが日本より高いようだが、今後法改正などあらゆる面で社会実装に向けた環境整備が進められそうだ。

【参考】自動走行ロボットの取り組みについては「韓国でも活用進む「自動宅配ロボ」!法改正で公道走行解禁へ」も参照。

■台湾
EV開発にイノベーションを起こすMIH発足
出典:MIHニュース

台湾では、Foxconn(フォックスコン)グループが立ち上げたEV開発向けオープンプラットフォーム「MIH(Mobility in Harmony)」に続々と企業が集まり、世界規模の一大勢力を形成している。

製造工程が大きく変わるBEVに焦点を当て、オープンな開発体制によって開発サイクルの短縮やコストの低下などを図っていく狙いだ。コンソーシアムにはすでに2,000社超が参加しており、自動車業界に近い将来大きなイノベーションをもたらす可能性がある。

自動運転技術はティアフォーが中心的な役割を担っており、エッジコンピューティング技術を有する台湾のADLINK、ミドルウェア開発を手掛ける英AutoCoreとともに自動運転システムの開発を進めているようだ。

▼MIH|Mobility in Harmony
https://www.mih-ev.org/en/index/

スタートアップ勢も台頭

スタートアップ関連では、Turing Driveが自動運転開発に力を入れている。低速自動運転モビリティの開発を手掛ける同社は、2017年に開催された桃園博覧会に自動運転EVバスを出展して以来、テーマパークやゴルフ場などで実証を重ねてきたようだ。

現在は首都・台北で公道実証段階を迎え、9月に一般乗客を交えたサービス実証に移行する予定という。

EVバス開発のTron Energy TechnologyもTuring Driveに自動運転車のプラットフォームを提供しているほか、2021年には仏NAVYAと自動運転アプリケーションの開発分野で覚書を交わしている。

財団法人工業技術研究院(ITRI)も研究開発に力を入れており、官民総出の取り組みが今後大きく進展していきそうだ。

■その他の地域
自動運転車対応指数1位のシンガポール

コンサルティング大手のKPMGが毎年発表している自動運転車対応指数の2020年版で1位に輝いたシンガポールは、国を丸ごとスマートシティ化する「スマートネーション」戦略によって自動運転社会に対応した環境整備を進めている。

同国内における自動車産業は乏しいが、自動運転シャトルを開発する仏EasyMileのような海外勢が進出し、整った環境のもと実証や実用化を推し進めているようだ。

日本からも、パイオニアが同国で自動運転技術の開発を手掛けるMooVitaとともに自動運転シャトルの走行実証実験を2018年に開始したほか、2019年には、WILLERのシンガポール子会社が同国テクノロジー企業のSingapore Technologies Engineeringと共同で自動運転バスの有償運行サービスに着手している。

▼自動運転車対応指数2020|KPMGジャパン
https://home.kpmg/jp/ja/home/insights/2021/03/autonomous-vehicles-readiness-index.html

【参考】WILLERの取り組みについては「日本のWILLER、シンガポール国立庭園で自動運転バスの実証実験」も参照。

東南アジア各国でも取り組みに熱

ベトナムでは、ヤマハ発動機が地元IT企業などとともに電動小型車両の自動運転システムの共同開発に向けた実証実験を行っているほか、日本工営も都市開発を手掛けるEcoparkなどと自動運転車両の走行実証試験をおこなっている。

一方、インドネシアでは、三菱商事とマクニカが自動運転実証実験を開始することを2021年に発表している。

【参考】インドネシアでの取り組みについては「三菱商事、インドネシアで自動運転実証!不動産開発最大手と協業」も参照。

道路交通ルールが煩雑なイメージが強い東南アジアだが、だからこそ自動運転技術の導入を契機に次世代交通を確立し、安全性と効率性を高めていくことが求められそうだ。

■【まとめ】日本も実用化フェーズに移行

実用化面で先行する中国を、日本・韓国が法整備を含め追いかけるような状況となっている。日本はレベル4法が成立し、着々と環境が整いつつある。

堅実かつ高度な技術を結集し、研究開発から実用化のフェーズに本格移行する時期がまもなく到来しそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転、日本政府の実現目標(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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