EV開発で包囲網!鴻海MIH、61カ国2,100社規模に 日本企業も多数

ティア1はじめサプライヤーも続々参画



出典:MIHニュース

台湾のFoxconn(鴻海)によるEV(電気自動車)ソフトウェア・ハードウェアのオープンプラットフォーム「MIH」の注目度が世界的に高まっているようだ。

2020年10月の設立から1年余りが経過し、日本をはじめとする世界各国から2,000社を超える企業が開発連合に加わった。かつてない規模のアライアンスが自動車業界に大きなイノベーションをもたらそうとしている。


この記事では、参画企業の中身とともに、MIHの概要や動向に迫っていく。

■世界61カ国から2,170社が参画

MIH(Mobility in Harmony)は、モビリティ業界における新たなコラボレーションを促進するオープンEVエコシステムだ。従来の自動車とは開発・製造工程が異なるEV領域において戦略的パートナーを結集し、ハードウェア・ソフトウェアの先端技術をオープン化することで次世代EVや自動運転、モビリティサービスアプリケーションの構築を推進していく。

多くのアライアンスメンバーがリファレンスデザインの実現とEV技術の標準化を通じ、オープンなEVプラットフォームを共同で作製することで、開発サイクルの短縮や参入障壁を下げるなど業界にイノベーションを起こしていく考えだ。

参画メンバーは、2021年12月11日時点で世界61カ国から2170社となっている。リアルタイムで増加を続けているようだ。


オープンプラットフォームの特徴としては、①柔軟にカスタマイズ可能なモジュール②軽量なワンピース成型③強力なEEAアーキテクチャ④自動運転技術――が挙げられている。

一部メンバー(コントリビューターメンバー)はワーキンググループに属し、パワートレインやモーター、VCU、トランスミッション、ボディ構造、SoCやセンサー、自動運転、ミドルウェア、OTAやセキュリティ、車載アプリケーション、ユーザーエクスペリエンスなど、各分野で専門的な研究開発を行うことができるようだ。

2021年1月には、第1世代となるEV開発者ツール「EVKit」の仕様を発表している。自動運転システム・ADASや動作制御に関するアーキテクチャをはじめ、モデルとなる車両の寸法やモーション・コントロール仕様などの技術仕様などが公開されている。

MIHの実現に向けて設立されたFoxtron Vehicle Technologiesは、詳細は不明だがすでに3台のコンセプトカーを発表しているようだ。同社は2021年7月、トラクションモーターシステムをはじめとしたモーター関連製品の開発や製造に向け、日本電産とジョイントベンチャー設立に向け協議を開始したと発表している。計画では、2021年末までに契約を締結し、2022年中に新会社を設立するとしている。


出典:MIHニュース
■MIHに参画する日本企業は?
国内ティア1サプライヤーをはじめ有力企業が参画

MIHに参画する日本企業は、正確な数は把握困難だが現地法人を含めると最低でも60社を超えている。

デンソーやジェイテクト、豊田通商といったトヨタグループの主要企業をはじめ、ルネサスやアルプスアルパイン、三菱電機、ブリヂストン、東芝、京セラなど、自動車関連で活躍する企業が名を連ねる。

メジャーどころでは、オムロンや旭化成、トレンドマイクロ、ACCESS、NTTアドバンステクノロジ、三菱商事、三菱製鋼、村田製作所、シャープディスプレイテクノロジーなども参画している。

サプライヤーも続々参画

このほか、サプライヤー関連では以下の企業が参画している。

  • アイカ工業(内装向けフィルム)
  • アーク(設計・エンジニアリング)
  • エノモト(半導体・電子部品)
  • エントラスト(切削・樹脂成型・プレス技術)
  • エフ・シー・シー(クラッチ)
  • 富士電機(パワーエレクトロニクス技術)
  • イリソ電子工業(コネクタ)
  • 伊藤忠プラスチックス(産業資材・電子素材)
  • イワタボルト(ネジ類)
  • カネカ(化学)
  • きもと(フィルム)
  • フォスター電機(音響機器・電子機器)
  • 日置電機(パワーエレクトロニクス)
  • LEADING EDGE ASSOCIATES(冷却システム)
  • 長瀬産業(内外装向け樹脂・素材・部品)
  • 新日本無線(電子機器、レーダーコンポーネント)
  • 日本精工(ベアリング)
  • 日本電産リード(計測・検査装置)
  • 日本理化工業所(絶縁システム・コイル製造装置)
  • ニチコン(コンデンサ・EV充電器)
  • 日本ペイント(自動車補修用塗料)
  • NISSHA(印刷・コーティング・金属加工)
  • 岡本硝子(光デバイス用ニューガラス・多層膜蒸着製品)
  • 三桜工業(ブレーキチューブ・燃料チューブ・燃料噴射レール)
  • 島津製作所(分析計測機器)
  • 三信電気(電子機器)
  • 積水化成(自動車部品・包装材料)
  • SMK(車載タッチパネル、コネクタ、リモコン、モジュール製品)
  • ソシオネクスト(SoCソリューション)
  • スミダコーポレーション(電子部品・モジュール)
  • 駿河精機(電子機器)
  • 日東電工(接着剤・補強材)
  • タムラ製作所(電子部品)
  • TDK(センサー・コンバータ)
  • 東海エレクトロニクス(電子デバイス)
  • 山一電機(コネクター・ソケット)
  • 安川電機(パワートレイン)
  • 三菱ケミカル(特殊コーティング・機能性樹脂)
  • 日本電波工業(水晶デバイス)

コンサルタント関連の総合プランニングやHakata International、工業材料輸出入を担う島貿易、Dynabook Technology、NTT Taiwan Solutionsなどの名も見つかった。

台湾に現地法人や生産拠点を有する企業も多く、両国間の親和性も高い。こうした参入障壁の低さが、日本からも多くの企業が参画する要因となっている可能性がありそうだ。

また、従来の内燃機関による自動車から純モーター駆動となるBEVへと規格が代わっても、従来技術をそのまま転用・応用できる企業群が集まっている。業界の変革にいち早く対応し、新たなビジネスチャンスをつかむべく迅速に行動に移している印象だ。

自動運転技術はティアフォーが提供

自動運転関連では、ティアフォーが世界戦略を進める自動運転ソフトウェア「Autoware」の本格採用が決まっている。エッジコンピューティング技術を有する台湾のADLINKと、英国・中国に拠点を持つミドルウェア開発を手掛けるAutoCoreとともにMIHに加わり、自動運転システムの構築・提供を行っていく方針のようだ。

ティアフォーが2021年4月に開催したオンラインサミット「Tier IV SUMMIT 2021」においても、フォックスコン会長やMIHのCEOらがゲスト参加し、両社の展望などについて対談している。オープンプラットフォーム戦略を採用する両社のコラボレーションには今後要注目だ。

【参考】MIHとティアフォーの関係については「自動運転OS「Autoware」、FoxconnのMIHで採用か ティアフォーが開発」も参照。

■MIHに参画する海外企業は?

MIHに参画する中国・台湾以外の海外企業も増加の一途をたどっている。自動車メーカーでは韓国の起亜やインドのマヒンドラが名を連ねているほか、ティア1の独コンチネンタルやZFも参画している。

メジャーどころでは、米マイクロソフト、英Arm、韓国LGエレクトロニクス、米オン・セミコンダクター、米Oracle、ロシアKaspersky Lab、韓国サムスン電機、独シーメンス、オランダTomTom、米Dell Technologiesなどが集っている。

また、自動運転分野で活躍している企業も目白押しだ。ハンガリーのAImotive、米Autobrains、BlueSpace.ai、PIX Moving、Udelv、豪AppliedEVといった自動運転システム開発企業をはじめ、LiDAR開発を手掛ける米Velodyne LidarやイスラエルのInnoviz Technologies、豪Baraja、パーセプション技術開発を手掛ける米RecogniやAmbarella、音声認識技術を有する米Cerence、NVIDIAに買収された米DeepMap、AIエッジコンピューティング技術を有する米Blaize、サイバーセキュリティ技術を有する韓国AUTOCRYPTなどが参画している。

EV関連では、ソーラーカー(sEV)開発を手掛ける米Apteraをはじめ、米California Mobility Works、米Karma Automotive、ポーランドのElectroMobility Poland、バッテリー開発を手掛けるカナダのeLeapPowerなどが参画している。

このほかにも、半導体開発を手掛ける独Diotecや米Analog Devices、米GEO Semiconductor、解析ソフトウェア開発を手掛ける米ANSYS、コックピットシステムを開発する英SkyShips、ファブリック製造を手掛ける米Acme Mills、電子機器製造の米DuPont Electronics & Industrial、モビリティの設計開発を手掛けるATHENA Technolo-G、タイのサプライヤーAAPICO Hitech、ECU開発などを手掛けるコンチネンタル子会社のElektrobitなど、バラエティ豊かな布陣が整っている。

■【まとめ】世界各国から多彩なメンバーが集結

MIH発足当初は台湾・中国系企業が95%以上を占めていた印象を持ったが、現在では続々と世界各国から多彩なメンバーが集結し、開発力を大幅に高めている。

前例のない規模に膨れ上がっているが、EVや自動運転といった次世代モビリティに対する世界的な関心の高さを象徴しているのだろう。

参画企業はまだまだ増加する見込みで、MIHの動向に引き続き注目だ。

▼MIH公式サイト
https://www.mih-ev.org/en/index/
▼MIHメンバー一覧
https://www.mih-ev.org/en/members-directory/

【参考】関連記事としては「Foxconnが将来、自動運転EVの「世界の工場」になる未来」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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