Foxconnが将来、自動運転EVの「世界の工場」になる未来

EVプラットフォーム「MIH」始動、新興EV企業と協業も



出典:Robert Geiger / Flickr (CC BY 2.0)

EMS(電子機器受託生産)世界最大手のフォックスコン・テクノロジー・グループ(鴻海科技集団)が、新興EV(電気自動車)メーカーとの協業を次々と発表している。

パソコンや携帯電話向けの電子機器製造受託で世界のトップに上り詰めたフォックスコンは、さらなる成長に向けEV(電気自動車)分野に注目し、自動車産業にイノベーションをもたらそうとしているようだ。







自動車分野におけるフォックスコンの動向を探ってみた。

■フォックスコン・テクノロジー・グループの概要

「フォックスコン・テクノロジー・グループ(鴻海科技集団)」は台湾に本社を構えているEMSの世界最大手企業グループだ。

グループ内企業としては、2016年に日本のシャープを買収した「鴻海(ホンハイ)精密工業」があり、同社がグループ内において実質的なトップであることから、グループ全体を指して「ホンハイ・グループ」と呼ばれることもある。

ただし、グループ名としては「フォックスコン・テクノロジー・グループ」が正式名称であるため、この記事でグループ全体を指す場合は「フォックスコン」を用いることにする。

フォックスコンでは現在、世界20カ国以上に生産・サービス拠点を持ち、グーグルやアップル、インテル、マイクロソフト、アマゾン、サムスン、任天堂、ソニーなど、世界に名だたるテクノロジー企業と取引を行っている。

近年は、EV、デジタルヘルス、ロボットの3つの新産業と、AI(人工知能)、半導体、新世代通信技術の3つの新技術分野への投資を積極的に進めているようだ。

■EV分野での取り組み
EVメーカーとパートナーシップ続々

フォックスコンのEV分野への進出は、2020年に一気に進んだようだ。2020年1月に日経アジア版が、フォックスコンとFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)がEV開発に向け提携すると報じた。両社は中国でEVを製造するベンチャー設立に向け協議を進めるとしている。

2021年1月には、中国の浙江吉利控股集団(Geely Holdings)と戦略的パートナーシップを交わし、EVやスマート制御システム、自動車エコシステムなど、自動車産業や移動サービス事業者などに向け新しいワンストップサービスを提供していく合弁を設立すると発表した。

ICT業界の分業モデルを導入し、既存の自動車業界モデルを超え革新的で効率的な製造サプライチェーンシステムとビジネスモデルへの変革を加速し、EV化やインテリジェンス化を支援していくとしている。

同月には、中国EVメーカーのBYTONとも戦略的パートナーシップを結び、新モデル「M-Byte」の生産に向け協力していくことも発表されている。2022年第1四半期までに量産を始める計画だ。

2021年2月には、米EVメーカー・Fisker(フィスカー)との提携を発表した。「Project PEAR(パーソナル・エレクトリック・オートモーティブ・レボリューション)」を通じて、フィスカーブランドのEVを共同製作し、2023年第4四半期までに大量生産・発売する計画としている。

EV向けオープンプラットフォーム「MIH」発表

2020年10月には、EVソフトウェア・ハードウェアのオープンプラットフォーム「MIH」を自社グループの技術イベントで発表した。オープンな技術仕様を通じて、あらゆる分野からのパートナー参加のもと、EVソフトウェア、ハードウェア、コンポーネントのエコシステムを共同で構築する計画だ。

従来の自動車産業は開発コストの高さや開発期間の長さが参入障壁となっていたが、MIHにより新規参入を促進し、新たな産業を形成していく構えのようだ。

MIHには、ホイールベースや地上高、バッテリーパック、シャーシサスペンションなどニーズに合わせて柔軟に対応可能なモジュール仕様と、軽量設計を実現するワンピース成型、機械構造と電子構造をシームレスに統合する信頼性の高いEEAアーキテクチャ、プラットフォームに自動運転システムを統合できるオープン性などを備えているという。

日本企業のティアフォーやAWSも協力

自動運転関連では、エッジコンピューティング技術を有する台湾のADLINKと、英国・中国に拠点を持つミドルウェア開発を手掛けるAutoCore、そして自動運転開発を手掛ける日本のティアフォーがアライアンスに加わり、自動運転システムの構築・提供に協力している。

なお、3社は2020年7月に自動運転車やロボットの開発に役立つ自動運転用ミドルウェアとアプリケーションのイノベーションを目指し提携を交わしている。

フォックスコングループも、バッテリーの急速充電技術をはじめ、クラウドAIバッテリー管理システムや高密度バッテリー、貴金属を使用しない新プロセス、ソリッドステートバッテリーR&Dといった各技術を公開しているようだ。

2020年11月には、アマゾンのAWSと協力し、車両ネットワーキングソフトウェアとハードウェアの統合を実現すると発表した。将来的には、カーネットワーキングソフトウェアとハードウェアの統合をはじめ、クラウドオープンプラットフォームの開発や運用、保守を含むMIHオープンプラットフォームの技術サポートを提供する。

同年12月には、台湾の自動車ランプ大手メーカーDibao Industrialとの戦略的パートナーシップが発表されるなど着々とメンバーは広がっている様子で、2021年2月時点における参加企業は600社を超えている。

第1弾となるEVキットのツールプラットフォームは2021年1月にリリースされ、2月に予約開始、4月に納品予定という。

■EVで変革する自動車産業

EV化の波を背に、フォックスコンは自動車産業への本格進出を図っていることはもはや間違いない。

内燃機関による従来の自動車と比較し、EVはシンプルな設計で車両を完成させることができる。語弊を招きそうだが、ラジコンに近付く感覚だ。エンジン関連の無数の部品が不必要となり、モーターに置き換わる。自動車を動かす燃料は電気が代替し、バッテリー駆動となる。

インホイールモーターによって4つの車輪を独立させて駆動することもできれば、バッテリーの配置次第で車内レイアウトを大きく変更することも可能になる。ボディ剛性や制御技術など従来通り必要とされる技術ももちろん多いが、自動車の製造工程や手法にイノベーションが起こるのだ。

内燃機関が主流の時代は、「機械」としての技術レベルの高さから自動車業界への新規参入は難しかったが、21世紀に入EV新興メーカーが次々と台頭し始めている背景には、こうした理由が存在するのだ。

自動車が機械からコンピュータへと変貌し、従来の製造工程・手法が変化し始めているのを敏感に察知し、ICT分野で培った製造技術などをEV分野で生かすフォックスコンの戦略は、一見大胆なものに思えるが、新たな自動車産業を見据えた正攻法と言えそうだ。

■【まとめ】自動車製造の流れが大きく変わる

次々と台頭する新興EVメーカーだが、自社生産設備を整えるには莫大なコストと時間を要する。このため、従来の自動車メーカーと協業するケースも珍しくない。

ここにフォックスコンが乗り出すことで、自動車製造の流れが大きく変わる。パソコンやスマートフォンを受託製造するのと同様の感覚で、EVを製造する日が近い将来訪れるのかもしれない。

EVがベースとなる自動運転車も然りだ。将来の自動運転市場はフォックスコンが「世界の工場」となり、業界地図を大きく更新する可能性も否定できないだろう。

【参考】関連記事としては「自動運転業界、「ODM型」が潮流に」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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