【最新版】トヨタのe-Palette(イーパレット)とは? MaaS向けの多目的EV自動運転車

命運握るコンセプトモデル





e-Palette=出典:トヨタプレスリリース

次世代のモビリティの在り方を象徴するモデルとして、トヨタ自動車が2018年に発表した「e-Palette」。転換期を迎えつつある自動車社会において同社の命運を握る「カギ」と言っても過言ではない存在で、無限の可能性を秘めたコンセプトモデルとしてさまざまな活用方法が各所で模索されている。

トヨタの命運を握るe-Paletteの全貌を探ってみた。







■トヨタのe-Palette(イーパレット)の概要
e-Palette(イーパレット)の概要:MaaS向けの多目的EV自動運転車

トヨタの豊田章男社長は、2018年5月に発表された2018年3月期決算説明会の席で「自動車をつくる会社からモビリティ・カンパニーにモデルチェンジする」と宣言し、モビリティサービスの領域に事業の軸を移すこととしているが、これを実現するコンセプトモデルが「e-Palette(イーパレット)」だ。

イーパレットは、移動や物流、物販など多目的に活用できるモビリティサービスを目指したMaaS(Mobility as a Service:移動のサービス化)専用次世代EV(電気自動車)のコンセプトカー。2018年1月に米ラスベガスで開催された「CES 2018」で初公開された。

Autonomous Vehicle(自動運転車)とMaaSを融合させた、トヨタによる自動運転車を利用したモビリティサービスを示す造語「Autono-MaaS」を具現化する存在として、電動化、コネクテッド化、自動運転化が図られている。

豊田社長はイーパレットについて、CES 2018のスピーチの中で「これまでのクルマの概念を超えて、お客さまにサービスを含めた新たな価値を提供できる未来のモビリティ社会の実現に向けた大きな一歩」と述べている。

トヨタがモビリティサービス領域に軸足を移し、本格着手すべく大きな一歩を踏み出したのは2016年だ。同年4月にコンテンツ連動型サービスの提供などを行う子会社「トヨタコネクティッド」を北米に設立し、自動運転車をはじめさまざまなコネクテッドサービスに必要な「モビリティサービスプラットフォーム」をつくる会社を目指すこととしている。

このプラットフォームや自動運転技術を最大限生かすためのモデルがイーパレットなのだ。

e-Palette(イーパレット)の特徴・機能:他社製自動運転キットを搭載可能

CES 2018で展示したイーパレットは全長4800ミリ×全幅2000ミリ×全高2250ミリのサイズで、低床・箱型デザインにより広大な室内空間を確保している。荷室ユニット数に応じて全長4~7メートルほどの異なるサイズの車両を用意可能で、バリアフリーデザインによるフラットかつ広大な空間に、ライドシェアリング仕様をはじめホテル仕様、リテールショップ仕様といった、サービスパートナーの用途に応じた設備を搭載することができる。

また、これまでトヨタが培ってきた安全性の高い車両制御技術を用いて開発した車両制御インターフェースを自動運転キット開発会社に開示する。これにより、自動運転キット開発会社は、自動運転キットの開発に必要な車両状態や車両制御などをMSPF(モビリティサービスプラットフォーム)上で公開されたAPI(Application Program Interface:プログラミングの際に使用する関数)から取得することができ、自動運転制御ソフトウェアやセンサー類など自社開発したキットを搭載することが可能になる。

また、車両制御インターフェースは、外部からのサイバーセキュリティ対策に加え、自動運転キットからの車両制御指令コマンドの安全性を一定のルールに基づき確認する高度安全運転支援機能(ガーディアン)を備えており、さらに、MSPF上に整備されたOTA(Over The Air:無線通信によってソフトウェアの更新を行うこと)環境を用いて、自動運転キット上のソフトウェアを常に最新の状態に更新することができるという。

e-Palette(イーパレット)の位置付け

トヨタ自動車は2019年2月6日の2019年3月期第3四半期(2018年4月1日~12月31日)の決算発表で、「MaaS戦略のアプローチ」と題した資料を公表している。この中で異なるサイズ感のMaaS車両を3種類紹介している。

そのうちの一つがe-Palette(イーパレット)で、小型・中型・大型のうち、大型車両に該当する。小型車両に当たるのがEV形式の「MaaS EV」で、中型車両がHV方式の「MaaS Sienna」だ。

MSPFの活用:さまざまなサービスに対応したモビリティサービスプラットフォーム

MSPFは、トヨタがこれまでライドシェアなどのモビリティサービス事業者と提携する際に、開発・提供していた車両管理システムやリースプログラムといった個別の機能を包括したプラットフォーム。モビリティサービス分野の成長を見越し、既存のトヨタスマートセンターやトヨタビッグデータセンター、金融・決済センターの上位にMSPFの構築を推進していくことを2016年10月に発表しており、将来にわたって幅広い活用を推進していくこととしている。

ライドシェアやカーシェア、保険会社、タクシー事業者など、提携する事業者はこのプラットフォーム内の機能をサービス内容に応じて利用することで、より便利で細やかなサービスを提供することが可能になるという。

イーパレットは、車両に搭載されたDCM(データコミュニケーションモジュール)から車両情報を収集し、グローバル通信プラットフォームを介して、トヨタビッグデータセンターに蓄積する。その車両情報に基づき、車両をリースや保険などの各種ファイナンス、販売店と連携した高度な車両メンテナンスなどと合わせて提供するとともに、MSPF上で車両状態や動態管理などサービス事業者が必要とするAPIを公開する。

また、自動運転キット開発会社が、自社の自動運転キットの利用やソフトウェアのメンテナンス更新といった自動運転に関するモビリティサービスをMSPF上で提供することで、サービス事業者は安全なモビリティを利用することができ、自ら自動運転キットを選ぶこともできるようになる。

関連する協業:ライドシェアやビッグデータ解析などで各社と協業

米ライドシェア大手のUber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)とライドシェア領域における協業に向け2016年5月に検討を開始し、2018年8月には、トヨタが同社へ5億ドル(約550億円)出資するとともに、自動運転技術を活用したライドシェアサービスの開発促進・市場投入を目指し協業を拡大することを発表している。

また、2017年8月には、東南アジアの配車サービス大手Grab(グラブ)と配車サービスにおける協業を開始し、グラブが保有するレンタカー車両100台に、通信型ドライブレコーダーを搭載し、車両データの収集・分析などを進めているほか、2018年6月には10億ドル(約1100億円)を出資し、モビリティサービス領域の協業深化を図っていくことを発表している。

2018年5月には、データソリューション事業を手掛けるALBERT(アルベルト)と自動運転技術の先行開発分野における、ビッグデータ分析において業務提携し、約4億円を出資することを発表している。トヨタはこうした協業をもとにモビリティサービスの開発力やデータ分析力の高次元化を図っている。

【参考】アルベルトとの協業については「トヨタ、ビッグデータ解析のアルベルト社に4億円出資 自動運転のAI開発加速へ」も参照。

■e-Palette(イーパレット)を使った取り組み
初期パートナー:アマゾンやピザハット、ディディ、ウーバー、マツダが参加

より実用性の高い車両仕様の検討や、イーパレットを活用した新たなモビリティサービスを実現するMSPFの構築を推進するため、初期パートナーとして有力企業とアライアンスを締結している。

モビリティサービスパートナーとして、米EC大手のAmazon.com(アマゾン)、中国ライドシェア大手のDidi Chuxing(ディディ)、米ファストフードチェーン大手のPizza Hut(ピザハット)、米ウーバーが参加するほか、技術パートナーとしてディディとマツダ、ウーバーがそれぞれ参加し、サービスの企画段階から実験車両による実証事業に至るまで共同して進めていく予定だ。

2019年1月時点で公表済みの具体的な取り組みは確認できていないが、アマゾンやピザハットは配送・配達での利活用が考えられ、ディディやウーバーは配車プラットフォームとの連携や新たな移動サービスにおける利活用なども予想される。

MONET Technologies設立:ソフトバンクと協力、タッグでMaaS推進

トヨタとソフトバンクは2018年10月、新しいモビリティサービスの構築に向けて戦略的提携に合意し、新会社「MONET Technologies(モネテクノロジーズ)」を設立すると発表した。

モネは2019年1月に事業を開始しており、オンデマンドモビリティサービスやデータ解析サービス、Autono-MaaS事業を手掛けていく。

第1弾として、2018年度内にオンデマンドモビリティサービス領域において自治体や企業と連携した「地域連携型オンデマンド交通」や「企業向けシャトルサービス」を展開するほか、2020年代半ばまでにイーパレットによるAutono-MaaS事業を展開することとしている。

セブンイレブンやヤマトとの取り組み:将来e-Palette(イーパレット)活用も?

トヨタ自動車が自動運転車を使った新しいサービスを創造するため、ヤマトホールディングスやセブン—イレブン・ジャパンと共同開発への協議を開始したことが2018年6月に一部メディアで報じられている。

トヨタとセブン‐イレブン・ジャパンは同月にCO2大幅排出削減を目指した次世代型コンビニ店舗の共同プロジェクトを2019年秋より開始することを発表している。トヨタが新たに開発する燃料電池小型トラックや燃料電池発電機の導入が軸だが、将来的にイーパレットを活用した移動型コンビニなどの実現につながる可能性もある。

ヤマトホールディングスについても同様で、国内コンビニ事業、宅配事業トップの両社がイーパレットを導入した際の影響力は計り知れないものになりそうだ。

【参考】セブン・ヤマトとの協業については「トヨタの秘策….自動運転技術で「移動型」の無人コンビニ実現へ」も参照。

東京2020オリンピック・パラリンピックでe-Palette(イーパレット)お披露目

トヨタは、オリンピックおよびパラリンピックのワールドワイドパートナーとして、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会において①すべての人に移動の自由を(Mobility for All)、②水素社会の実現を核としたサステナビリティ(環境・安全)、③トヨタ生産方式を活用した大会関係者輸送支援―をテーマに据え、従来の車両供給の枠を超えたモビリティソリューションの提供を目指すこととしている。

この中で、イーパレットと付随する運行システムの提供を通じ、選手村での選手や大会関係者の移動を支援する方針だ。公式発表では移動以外への利用について言及されていないが、販売ブースや休憩スペースなど多目的に利用できることが「ウリ」なだけに、さまざまな場面で活用される可能性もありそうだ。

【参考】東京五輪での取り組みについては「トヨタが東京五輪で自動運転レベル4の車両披露 MaaS専用EV車e-Paletteも登場」も参照。

■2020年に向け利用促進 自動運転業界の起爆剤に

未来の自動運転社会の可能性を示唆するモデルであり、イーパレットでどのようなサービスが可能か?という疑問と回答は、そのまま自動運転の可能性として当てはめることができそうだ。

今のところ大々的に発表された事例はなく、水面下でさまざまな研究が進められている状況だが、2020年の東京五輪に向けて今後1年以内に動きが出てくる可能性は高い。

利便性の高いさまざまな新サービスが提案されることで、自動運転が創り出す新しい社会への理解や社会受容性が高まり、新たな参入に向けた機運も醸成されるなど業界全体の開発促進に結びついていくことも考えられる。

トヨタの協業含め、イーパレットの今後の動向は要注目だ。







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