トヨタのAutono-MaaS事業とは? 自動運転車でモビリティサービス

最初の専用車両、2021年に導入か


2018年10月のソフトバンクとの共同記者会見に臨む豊田章男社長=出典:トヨタ自動車プレスリリース

近年、MaaS(Mobility as a Service)を意識した戦略を強めているトヨタ自動車。豊田章男社長は、2018年5月発表の決算説明会の席で「自動車をつくる会社からモビリティ・カンパニーにモデルチェンジする」と宣言しており、今後もこの傾向は続くものと思われる。

この近年の動きを象徴するかのように、2018年以降「Autono-MaaS」という言葉が耳目に触れるようになってきた。トヨタが言う「Autono-MaaS」とは何か。そしてどのような取り組みを行っているかを調べてみた。







■Autono-MaaSの概念

「Autono-MaaS」は、「Autonomous Vehicle(自動運転車)」と「MaaS(モビリティサービス)」を融合させた、トヨタによる自動運転車を利用したモビリティサービスを示す造語だ。

米ラスベガスで2018年1月に開かれたCES 2018で、MaaS専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept(イーパレット・コンセプト)」が初公開されたが、このときのプレスカンファレンスのスピーチで豊田社長が「イーパレットはAutono-MaaSビジネスアプリケーションに対するトヨタのビジョンを示した一例」と述べており、このときが初出と思われる。

モビリティサービスについては「電動化技術、トヨタコネクティッドによるモビリティサービスプラットフォーム、TRIによる自動運転技術が、私たちの将来のモビリティサービス、モビリティ事業に向けたビジョンにおける非常に重要な構成要素」としている。

MaaSはもともと、すべての交通手段による移動を1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ概念だが、トヨタは「MaaS=モビリティサービス」と広義に捉えており、自動運転により新たに生み出される移動サービスや、付随して生まれる新たな価値などを指しているものと思われる。

CES 2018以後、米ライドシェア大手のUber Technologies(ウーバー)へ出資した際や、ソフトバンクと共同で新会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」を立ち上げた際などに「Autono-MaaS」を用いている。

■Autono-MaaSの具体的な取り組み
トヨタの自動運転技術:ショーファーとガーディアン

トヨタの自動運転開発に対するアプローチは、単に自律走行可能な車両を開発するのではなく、「ショーファー(自動運転)」と「ガーディアン(高度安全運転支援)」と名付けた2種類のモードに焦点をあて、ドライバーと機械が一体となるようなシステム開発をはじめ、交通環境との調和を含めた安全な運転環境の構築を目指している。

ショーファーは完全自動運転システム、ガーディアンは手動運転を前提とした従来のADAS(先進運転支援システム)を進化させたようなシステムだ。

例えば、運転環境の厳しさがドライバーの能力を超え、衝突を回避する必要が生じた場合、ガーディアンモードが自動で起動し、危険な状態を潜在的に解消するように機能する。一方、運転に困難を生じない平時では、ショーファーモードによる自動運転が可能となり、一定の条件下で運転者の負担を軽減する―といったイメージだ。

ガーディアンは他社製の自動運転システムによっても操作が可能で、自動運転システムを監視する手段としてガーディアンを利用することもできる。これにより、各モビリティサービス会社がどのような自動運転システムを使用しても、そのシステムの障害に備えた予備システムとしてガーディアンを活用できることとなる。

e-Palette: Autono-MaaSを体現するコンセプトカー

「Autono-MaaS」を具現化する存在として、電動化、コネクテッド化、自動運転化が図られているe-Palette。ライドシェアリング仕様をはじめ、ホテル仕様、リテールショップ仕様といったサービスパートナーの用途に応じた設備を搭載することが可能で、移動や物流、物販など多目的に活用できる次世代のモビリティサービス車両に位置付けられている。

初期パートナーとして、米EC大手のAmazon.com(アマゾン)、中国ライドシェア大手のDidi Chuxing(ディディ)、米ファストフードチェーン大手のPizza Hut(ピザハット)、米ウーバー、マツダがそれぞれ参加しており、サービスの企画段階から実験車両による実証事業に至るまで共同して進めていく予定だ。

2020年代前半にさまざまな地域でのサービス実証を目指すとともに、2020年には一部機能を搭載した車両で東京オリンピック・パラリンピックのモビリティとして大会に貢献することとしている。

【参考】e-Paletteについては「トヨタのe-Paletteとは? MaaS向けの多目的EV自動運転車」も参照。

ライドシェア事業者との協業:最初の「Autono-MaaS」専用車両2021年導入

トヨタは2016年5月、ウーバーとライドシェア領域における協業を検討する旨の覚書を締結し、戦略的出資を行うこととした。2018年8月には5億ドル(約550億円)を出資し、両社の持つ技術を搭載したライドシェア専用車両をウーバーのライドシェアネットワークに導入することとしている。

具体的には、トヨタのガーディアンシステムをウーバーの自動運転キットと融合させたライドシェア専用車両を開発するとしており、トヨタのミニバン「シエナ」が、最初の自動運転モビリティサービス「Autono-MaaS」専用車両として2021年に導入される予定だ。

また、2017年8月には、東南アジアで配車サービスを手掛けるGrab(グラブ)と同地域における配車サービス領域で協業を開始している。トヨタが開発した法人車向け通信端末「TransLog」をグラブが保有するレンタカー100台に搭載し、MSPFに収集された走行データを活用し、グラブ向けのコネクテッドサービスの開発を進めていくこととしている。

2018年6月にはグラブに10億ドル(約1100億円)を出資して協業を拡大しており、東南アジア全域におけるグラブレンタカーのコネクテッド化をはじめ、それらの車両からMSPFに収集される車両データを活用した走行データ連動型自動車保険、現在開発中のドライバー向け金融サービスやメンテナンスサービスなど、各種コネクテッドサービスを東南アジア全域に拡大する。

これにより、効率的な配車ビジネスを実現するとともに、将来の新たなモビリティサービスやMaaS車両の開発においても検討を開始することとしている。

いずれも将来のモビリティサービスを見越した動きであり、ライドシェアを「Autono-MaaS」活用に効果的な事業として位置付けている証左と言える。

モネ テクノロジーズ:ソフトバンクとタッグでAutono-MaaS事業化

トヨタとソフトバンクが自動運転や新しいモビリティサービスの実現に向け2018年9月に設立したのがモネテクノロジーズだ。2019年1月に合弁会社化して事業を開始しており、オンデマンドモビリティサービスやデータ解析サービス、Autono-MaaS事業を手掛けていく。

第1弾として、2018年度内にオンデマンドモビリティサービス領域において自治体や企業と連携した「地域連携型オンデマンド交通」や「企業向けシャトルサービス」を展開するほか、2020年代半ばまでにイーパレットによるAutono-MaaS事業を展開することとしている。

また、両社はウーバーやグラブにともに出資するなどライドシェア事業を一つの核として捉えている節があり、今後、モネとしてライドシェア事業者とともに大々的な取り組みを行う可能性も高いものと考えられる。

【参考】モネ テクノロジーズについては「トヨタ・ソフトバンク共同出資のMONET Technologies、事業開始 自動運転やMaaS分野」も参照。

モビリティサービス・コネクテッド分野の強化:新会社続々と設立

さまざまなモビリティサービスを展開する上で重要な領域となる「コネクテッド」分野において、2016年1月に米マイクロソフトと共同で「Toyota Connected」を米テキサス州に設立し、車両から得られる情報の集約や解析、解析結果の商品開発への反映など、ビッグデータ事業やコネクテッド領域の研究開発を進めている。

2018年3月には英国ロンドンを拠点とする「TOYOTA Connected Europe」も立ち上げ、カーシェアなどのモビリティサービスに必要なプラットフォームの提供やビッグデータの解析・活用を行っている。

国内では、2018年4月にトヨタフリートリースとトヨタレンタリースを統合して「トヨタモビリティサービス」を設立している。クルマに対するニーズが「所有」だけではなく、シェアリングなど使いたい時に使いたい分だけ利用する「利活用にも広がる中、従来の法人向け自動車リース事業などの強化に加え、モビリティ社会を見据えた新たなモビリティサービスの創造・提供に取り組むこととしている。

こういった一つひとつの取り組みが一つのプラットフォームに統合され、さらに自動運転技術が組み合わさることで「Autono-MaaS」事業はさらなる進展を見せるのだろう。

■新たなモビリティサービス創出に向け協業加速

「Autono-MaaS」は自動運転技術を活用したモビリティサービスを意味し、トヨタが今まさに歩みを進めている方向性そのものということがわかった。

現在はその第一歩として、ソフトバンクやライドシェア事業者との協業が示す通り、異業種と協力することで新しい技術やサービスの創出を模索している段階だ。

今後、イーパレットの実現が近付くにつれ、モビリティサービスもどんどん具体化・具現化していくものと思われる。

まずは2020年、イーパレットがお披露目される予定の東京五輪で、移動サービス以外の使い方も披露されるのか注目するとともに、パートナー企業の動向やライドシェア事業者との取り組みの進展にも期待したい。







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