トヨタの自動運転システム「ショーファー」を徹底解剖!どんな技術?

東京オリンピックでお披露目なるか


出典:トヨタ社プレスリリース

トヨタ自動車の自動運転開発におけるキーワード「ショーファー(自動運転)」と「ガーディアン(高度安全運転支援)」。トヨタはこの二つのアプローチ方法により、自動運転システム技術やドライバーの能力、運転環境の難しさという三つに大別した研究分野で開発を進めている。

日本ではややなじみが薄い言葉かもしれないが、トヨタがショーファーに込める理念は、自動運転に対するトヨタの考え方そのものだ。今回はこのショーファーに焦点を当て、同社の自動運転開発に迫っていく。







■ショーファーの語源は?

「ショーファー」は英語で「chauffeur=お抱え運転手」を意味する。この名が示すとおり、トヨタが開発を進めるショーファーは、自動運転システムがお抱え運転手となり、ドライバーに代わって自家用車などの運転タスクを担う全自動運転システムを指す。

■ショーファーの自動運転レベルは?

このショーファーの能力が低い場合は、ドライバーが運転環境を監視し、制限された自動運転システムをドライバー自身が補うことになる。これは、自動運転レベル2(部分運転自動化)に類似した状態だ。

ショーファーの能力が向上すると自動運転レベル3(条件付き運転自動化)に類似した状態となり、ドライバーはフォールバック(システム障害などの際に機能を制限するなどして稼働を続行させること)の実行にのみ責任を負うこととなる。

さらに高度化すれば、自動運転レベル4(高度運転自動化)~レベル5(完全運転自動化)に類似した状態となり、ドライバーによる関与なしに車両だけですべての運転操作を完全に処理することが可能となる。

【参考】自動運転レベルの定義については「自動運転レベル0〜5まで、6段階の技術到達度をまとめて解説」も参照。

トヨタはこのショーファー技術を、運転者による監視やフォールバックがなくてもあらゆる状況下で安全な運転を可能にする自動運転レベル4以上を目標に開発を進めているが、運転環境の複雑性から、いかに高い性能を車両が備えていたとしても、完全に事故を防ぐ衝突回避のシステムは存在しないとするスタンスだ。

そこで、政府の規制や責任にかかるリスク、社会の寛容さ、技術的な可能性といった観点などを踏まえ、社会で許容される一般的なドライバーの能力よりも安全な技術水準を一つの条件に据え、自動運転システム開発を行っているようだ。ショーファーの実現により、高齢者や障がいのある方など、誰もが移動を楽しめるモビリティ社会の構築を目指している。

■ショーファーとガーディアン

なお、このショーファーと異なるアプローチで開発を進めているのが「ガーディアン」だ。ドライバーによる手動運転を前提とした技術で、自動運転車が人を守る度合いを示す高度安全運転支援技術を指す。例えば、ドライバーの運転ミスや道路上のクルマ、障害物、他者による交通ルールの無視といった外的な要因に対し、ガーディアンの能力が高ければ高いほど、さまざまな形態の衝突から保護されることになる。

自動運転におけるトヨタの開発指針は、人とクルマが気持ちの通ったパートナーのような関係を築く「Mobility Teammate Concept(MTC)」という理念に込められている。

MTCのもと、技術の進歩に伴い身体が不自由な人など安全運転が困難な場合を含め、個々のドライバーの能力に基づいて車両による支援の適応と範囲を拡大していくこととしており、自動運転技術の恩恵も享受しながらも、自分で運転したい時には安全で自由に運転できるようガーディアンモードの技術による運転のサポートを受け、高速道路や長距離旅行などの状況で一息つきたいときにはショーファーモードを選ぶなど、ドライバーが選択できるよう開発を進めている。

運転環境の厳しさがドライバーの能力を超え、衝突を回避する必要が生じた場合、自動でガーディアンモードを起動し、この状態を潜在的に解消するように機能する。一方、運転に困難を生じない平時では、ショーファーモードによる自動運転が可能となり、一定の条件下で運転者の負担を軽減する―といったイメージで、ショーファーは完全自動運転システム、ガーディアンは従来のADAS(先進運転支援システム)を進化させたもので、ショーファーの冗長システムとしての役割も担うものとなる。

■ショーファーの開発進捗は?

ショーファーは最先端かつ信頼性の高いソフトウェアエンジニアリング手法を用いて設計されており、世界中の何百万マイルもの道路で収集されたデータに基づいて高度な機械学習アルゴリズムでトレーニングを続けている。

米経済誌のForbesによると、豊田章男社長は2016年のパリモーターショーにおける記者発表で「完全自動運転を実現するためには、シミュレーションを含め142億キロメートルのテスト走行が必要」と述べており、米国を拠点にAI(人工知能)開発などを手掛ける「Toyota Research Institute(TRI)」のテストコースなど活用しながらさまざまな交通環境を踏まえた走行実験を進めている。

TRIはショーファーとガーディアンの開発に向け、2017年3月に初の自動運転実験車を公開している。レクサスLS600hLのドライブ・バイ・ワイヤ技術のインターフェースを実装し、助手席にもステアリングやアクセル・ブレーキペダルを設置。複雑な運転環境において、ドライバーによる運転とシステムによる運転をどのように安全かつ効果的に切り替えるかなどを研究している。

2018年1月に公開した自動運転実験車「Platform 3.0」では、米Luminar社製の200メートル先の監視が可能なLIDARシステムを搭載し、前方のみの認識が可能だった従来の実験車から外周360度の認識が可能な仕様に変更したほか、短距離LIDARを車両の下部の全周に配置し、低く小さい対象物も検知できるように改良を施している。

また、CES2019で発表した最新型の自動運転実験車「TRI-P4」は、過去の実験車両からカメラやLiDAR(ライダー)などのセンサー類やコンピューター類をさらに強化させた。2018年はガーディアンの開発に力を入れていたようだが、この新型実験車両でショーファー、ガーディアン両方の開発を加速していく方針だ。

■ショーファーの実現時期は?

ショーファーの実現時期などは明らかにされていないが、CES2018で発表したモビリティサービス専用EV(電気自動車)コンセプトカー「e-Palette Concept」に、将来ショーファーを搭載する予定だ。

e-Paletteは移動や物流、物販など多目的に活用できるMaaS(Mobility as a Service)向けの車両で、2020年代前半に米国を始めとしたさまざまな地域でサービス実証を目指すほか、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックで一部機能を搭載した車両をお披露目する予定となっている。

早ければ、東京五輪の舞台でガーディアンやショーファーの技術の一片を垣間見ることができるかもしれない。

■自動車専用道でのレベル3は2020年に実現へ

なお、トヨタは自動車専用道路において自動運転レベル3相当を可能にする「Highway Teammate」を2020年の実現を目指し開発を進めている。高速道路における走行中に、システムが交通状況を評価して判断を下し、必要な操作を行うもので、高速道路への合流やレーンチェンジ、車線・車間維持、分流などが機能として含まれている。

2020年代前半には、一般道路での自動運転を可能にする「Urban Teammate」の実現を目指すこととしている。一般道路で「Highway Teammate」同様の機能を利用可能にするもので、車両周辺の人や自転車などを検知可能にするほか、地図データや交差点、交通信号の視覚データなどを利用し、その地域の交通規制に従って走行するように開発を進めている。

■TRIが開発加速 東京五輪で一大発表なるか

「Highway Teammate」や「Urban Teammate」がショーファーと同一のものなのか、あるいはショーファーの一形態なのか、といったことなどは判明していないが、開発理念などを考えれば全くの別物になる可能性は低そうだ。少なからず、自動運転4以上に相当する「Urban Teammate」を2020年代前半に実現させる予定であることは判明しており、大きな脚光を浴びる東京五輪の舞台で一大発表する可能性も高い。

ガーディアン、ショーファーとも開発スピードを加速させるTRI。そしてワールドワイドパートナーとして東京五輪を支えるトヨタ。この大舞台で、自動運転業界における金メダルを日本にもたらすような発表があるのか。そういった観点からも注目したい。







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