【最新版】トヨタの自動運転車、戦略まとめ 実用化はいつから? AIやコネクテッドカーの開発状況、ロードマップも

東京オリンピックでレベル4車両披露



トヨタ自動車の豊田章男社長=トヨタ社ニュースリリースサイト

今、自動車業界では自動運転化やコネクテッド化、電動化などの技術が進化し、次世代スタンダードの構築に向け異業種を巻き込んだ新たな局面を迎えている。多くの関連企業や子会社を持ち、日本国内にとどまらず世界を代表する自動車メーカーのトヨタ自動車も、大変革の時代を生き抜くためにさまざまな戦略を打ち立て、競争力強化に向けた取り組みを加速している。

トヨタが考える自動運転戦略はどういったものか、また実用化のタイミングはいつごろを予定しているのかなど、多岐に渡るさまざまな情報を今一度集約してみた。


記事の目次

■トヨタの開発コンセプト
自動運転分野:人とクルマが助け合う関係を構築

トヨタは自動運転に関し「Mobility Teammate Concept(MTC)」という考え方に基づいて開発を進めている。「人とクルマが同じ目的で、あるときは見守り、あるときは助け合う、気持ちが通った仲間のような関係を築く」というトヨタ独自の考え方で、自動運転技術開発における究極の目標は、クルマを自動化させることではなく、自動化を広めることで安全で便利、そして楽しい移動を誰もが享受できる社会をつくり出すこととしている。

研究開発においては、ドライバーの全運転タスクを軽減するなど、人による運転を前提としない「ショーファー(自動運転)」と、人が運転することを前提に衝突の可能性がある場合などに運転を支援して人を守る度合いを示す「ガーディアン(高度安全運転支援)」の2種類のアプローチで開発を進めている。

AI(人工知能)分野:安全性の向上を第一に

トヨタがAI研究を強化するために米国に設立した「Toyota Research Institute(TRI)」を拠点に、①「事故を起こさないクルマ」 をつくるという究極の目標に向け、クルマの安全性を向上させる②幅広い層に運転の機会を提供できるよう、クルマをより利用しやすいものにする③モビリティ技術を活用した屋内用ロボットの開発に取り組む④ AIや機械学習の知見を利用し、科学的・原理的な研究を加速する―という目標を掲げ、研究に取り組んでいる。


2018年3月には、自動運転技術の先行開発分野での技術開発を促進するため「TRI-Advanced Development(TRI-AD)」を東京に設立したほか、ベンチャーキャピタル(VC)ファンドを設立し、有望なベンチャーの育成にも力を入れており、自動車産業関係者だけではなくさまざまなステークホルダーとの連携を重視している。

パーツ分野:グループ再構築の動きが活発化

トヨタのクルマづくりは、トヨタ単体のみならず多くのグループ企業が支えているが、大変革の時代を勝ち残るためグループ全体の事業を再構築する動きが活発化している。グループ内の連携強化とともに集中と選択を図り、限られた資源を有効活用してグループ全体での競争力を向上させる狙いだ。

2018年4月には、用品・特装事業を手掛けるトヨタテクノクラフト、ジェータックス、トヨタモデリスタインターナショナルの子会社3社を統合し、新会社「トヨタカスタマイジング&ディベロップメント」を設立した。2018年6月には、トヨタの主要な電子部品事業をデンソーに集約する方向で検討を開始することに合意し、2019年末をめどにトヨタの広瀬工場の電子部品の生産をデンソーに移管。2022年以降には電子部品の量産開発機能を集約し、両社で分散している開発ロケーションの一本化を検討することとしている。


また、デンソー、アイシン精機、アドヴィックス、ジェイテクトの4社は、自動運転・車両運動制御を担う統合ECUソフトウェア開発の合弁会社設立に向けた検討を進めることに合意し、2019年3月をめどに合弁会社を設立する見込みだ。これとは別に、デンソーとアイシン精機の2社で電動化のための駆動モジュールの開発・販売に向けた合弁会社を同時期に設立する検討も進めている。

連携方針:外部企業との提携や協業も必要

従来の自動車づくりはグループ内で完結していたが、高度な自動運転に必須となるセンサーや半導体などの分野では、高い専門性を持ったグループ外の企業との連携も欠かせない。2017年5月には、米半導体メーカーのNVIDIA社との協業が発表され、AIによるハードウェアとソフトウェアのテクノロジーの提供を受けることが発表された。

また、国内半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスからも、2020年の実用化に向けて開発中の自動運転車に周辺認知や走行判断、車体制御を行う半導体ソリューションの提供を受けることが発表されている。

グループの強みを生かすだけでなく、外部メーカーや新興企業との連携により技術を蓄積し、相乗効果を生み出していく。異業種連携が欠かせない自動運転システムの構築においては、トヨタも例外ではないのだ。

またトヨタ自動車は2018年10月4日、ソフトバンクグループ株式会社(本社:東京都港区/代表取締役会長兼社長:孫正義)と共同記者会見を開き、自動運転車両を活用したMaaS事業の将来的な展開に向けて「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)株式会社」を両社で設立すると発表している。

事業の展開開始時期については「2018年度内」とされている。トヨタが開発するコネクテッドカー情報基盤「モビリティサービスプラットフォーム(MSPF)」とソフトバンクの「IoTプラットフォーム」を連携させることで、まずは「地域連携型オンデマンド交通」「企業向けシャトルサービス」などに取り組んでいく予定。

■自動運転車やサービス・技術などのローンチスキーム
2018年:現行の予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」「Lexus Safety System +」を進化

2015年に導入を開始した、緊急自動ブレーキなどを備えた予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」と「Lexus Safety System +」は、2017年度までにほぼすべての新型車に標準装備・オプション設定可能となった。

2018年からは進化した第2世代システムの導入が順次進められており、カメラやレーダーの性能向上やレーントレーシングアシスト機能の採用、ユニットの小型化による搭載性の向上などが図られている。

2020年:「Highway Teammate(ハイウェイ チームメイト)」実用化、東京五輪でレベル4お披露目

運転者の監視の下、高速道路への合流やレーンチェンジ、車線・車間維持、分流など、高速道路で自動運転をできるようにするハイウェイチームメイトを、2020年をめどに実用化する。高速道路入口のランプを通過し、目的地のランプで降りるまでの区間において、高精度地図情報や複数のセンサーなどにより周辺の障害物や車両を認識し、自動でルートやレーン選択、速度制御などを行うシステムだ。

また、東京オリンピック・パラリンピックでは、ワールドワイドパートナーとして従来の車両供給の枠を超えたモビリティソリューションを提供し、誰もが自由に移動できる未来のモビリティ社会の提案を目指す。具体的には、モビリティサービス専用次世代電気自動車「e-Palette」とその運行システムの提供、大会公式車両として燃料電池自動車「MIRAI」の提供、燃料電池バス「SORA」などにより大会全体を側面支援、自動運転レベル4(高度運転自動化)相当の実証実験やデモを行うなどし、世界各国に新たなモビリティの形を示すとともにトヨタの技術力をPRしていく。

2020年代前半:「Urban Teammate(アーバン チームメイト)」実用化へ 一般道でも自動運転を可能に

ハイウェイチームメイトを一般道でも利用可能にしたアーバンチームメイトの実用化を2020年代前半にも見込む。車両周辺の人や自転車などを検知可能にするほか、地図データや交差点・交通信号の視覚データを利用し、その地域の交通規制に従って走行するように開発している。

2030年:EV(電気自動車)販売550万台以上へ

クルマの自動運転化とともに開発や導入が進められているEV。HV(ハイブリッド車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池自動車)を含めた電動車の開発・展開を軸とした2020年代~2030年までの電動車普及に向けたチャレンジを公表しており、2030年に電動車販売台数を550万台以上、ゼロエミッション車であるEV・FCVは合わせて100万台以上を目指すこととしている。

「2020年までに年間販売台数150万台」という中間目標を2017年に前倒しで達成しており、欧米や中国がEV化へのシフトを強めている情勢などから、トヨタもEV化をより加速していく可能性は高い。

■コネクテッドカー戦略

2018年6月、全グレードに車載通信機(DCM)を標準搭載した新型クラウンとカローラスポーツの販売を開始し、コネクテッド事業を本格スタートさせた。これを皮切りに、今後国内で発売するほぼ全ての乗用車にDCMを搭載し、コネクテッド化を加速させる予定で、トヨタが構築したコネクテッドカー向けの情報インフラ「MSPF(モビリティサービス・プラットフォーム)」からさまざまなコネクテッドサービスが提供される。

コネクテッド機能その1:車両データによる充実の安心サービス

オペレーターサービスを車両データと連携することで、車両のトラブルの際に頼りになる「eケア走行アドバイス」では、クルマに異常が発生した際、車両データから車両の状態を診断し、オペレーターが車載マイクとスピーカーを通じてアドバイスを行い、販売店への入庫が必要な場合は、担当販売店や最寄りの販売店に誘導する。

また、車両データから車両の状態をセンターが常時診断し、トラブルが発生する前に担当の販売店から整備入庫などをすすめてくれる「eケアヘルスチェックレポート」、エアバッグの展開と連動し、衝突時の車両データから乗員のダメージを瞬時に解析して消防本部に送信する「ヘルプネット」を備えている。

コネクテッド機能その2: 走行データ連動型自動車保険プラン

DCMの標準搭載に伴い、従来の自動車保険に加えて走行データ連動型保険の適用が可能となる。MSPFに蓄積された走行ビッグデータから算出した「安全運転スコア」をスマートフォンでチェックすることもでき、このスコアに連動する走行データ連動型自動車保険プラン「トヨタつながるクルマの保険プラン」が、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社から発売される。

コネクテッド機能その3:DCM標準化でより便利になったオンラインサービス

AIのバーチャルエージェントが乗員の自然発話を聞き取り、ナビの目的地設定やオーディオの操作、機器の取り扱い説明などをおこなう「AI音声エージェント」、LINEアプリに愛車を「友だち」として追加し、クルマと会話することができる「LINEマイカーアカウント」、ナビシステムのプログラムや地図データを常に最新版に維持し、センター側にある最新の地図データとビッグデータ交通情報から探索して目的地への最適なルートを案内する「ハイブリッドナビ」の機能を使用できる。

例えば、LINEアプリのトーク機能で事前に行きたいところを伝えると、車載ナビの目的地にメモリーすることができ、目的地までの所要時間や距離を踏まえて、出発すべき時間や給油の必要性なども教えてくれる。

コネクテッド化を進める開発・サービス拠点「トヨタコネクティッド」

本格的なコネクテッドカー時代を迎えるにあたり、トヨタは2016年4月にコンテンツ連動型サービスの提供などを行う子会社「トヨタコネクティッド」を北米に設立。
2017年7月には、国内で車載情報サービスを手掛けていた「トヨタメディアサービス」をトヨタコネクティッドに社名変更し、これまで培ってきたクルマとITの最先端の技術・ノウハウを用いてコネクテッド戦略をグローバルに進める中核企業に位置付けた。

戦略企画、車載機開発、インフラ開発など、各機能を一つのカンパニーに集約し、コネクテッド商品の開発からビジネスイノベーション、新事業確立まで一貫した戦略を推進することとし、①全てのクルマをコネクテッド化し「つながるプラットフォーム」を構築②ビッグデータの活用を推進し、客や社会に貢献しながら「トヨタ自身のビジネス変革」を推進③あらゆる異業種、IT企業と連携し「新たなモビリティサービスを創出」―を目指す。

コネクテッド化に向けた協業

2016年6月にKDDIと共同で「つながるクルマ」のグローバル通信プラットフォーム構築を発表。2017年3月には、NTTとコネクテッドカー向けICT基盤の研究開発に関する協業に合意した。また、2017年6月には、LINE株式会社と協業基本合意書を締結。LINEが開発を進めるクラウドAIプラットフォーム「Clova」と、トヨタをはじめとする各社が推進する車載機器とスマートフォンアプリやタブレットアプリとの連携規格SDL(Smart Device Link)を活用した協業の可能性について検討を始めている。

【参考】トヨタのコネクテッドカーについては「LINEから操作可能に!? トヨタカローラがコネクテッドカーに変貌|自動運転ラボ 」も参照。

■自動運転技術開発に携わる拠点
トヨタ自動車先進技術開発カンパニー(日本):自動運転開発を束ねるビジネスユニット

先進安全先行開発部に先進安全分野の統括機能を集約し、自動運転・先進安全統括部として再編した先進技術開発カンパニーは、トヨタ全社・全部門において関係する技術の調査、開発、試験を調整するとともに、全ての組織のリソースと作業を統括し、世界規模で社内の自動運転技術開発の取り組みを主導している。

豊田中央研究所(日本):半世紀以上にわたりトヨタグループの事業展開に的確に貢献する研究所

幅広い分野の研究を手掛けており、世界の技術動向調査や新たな科学分野への挑戦を通じて、新事業につながる将来ビジョンを提示し、科学技術と産業の発展に寄与している1960年創立の研究所。これまでに、車両運動統合制御・状態推定技術や顔画像処理技術、ナイトビュー向け歩行者検出技術の開発などで成果を上げている。

TRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート/米国):自動運転研究開発の最前線を走る北米拠点

優秀なエンジニアが集うシリコンバレーなどを拠点に最先端の研究開発を進める。トヨタの研究体制強化を目指し、①クルマの安全性の向上②運転できない人の車の利用③屋外モビリティ開発技術を生かした屋内モビリティへの取り組み④AI(人工知能)およびマシンラーニング(機械学習)の技術を利用した科学研究・発見の強化―の4つの目標・課題に取り組んでいる。

TRI-AD(TRI-Advanced Development/東京):自動運転ソフト開発に向けた新たな国内拠点

自動運転技術の先行開発分野での技術開発を促進するため2018年3月に設立された新たな開発拠点。エンジニア1000人規模の体制を敷き、TRIとの連携強化やトヨタグループ内の人材育成、研究から開発まで一気通貫のソフトウェア開発の実現を図っている。米Google(グーグル)で自動運転車開発に携わった経歴を持つDr. James KuffnerがCEOを務めている。

トヨタ・モーター・ノース・アメリカ リサーチ&デベロップメント(TMNA R&D/米国):北米における統括事業体の研究開発部門

北米におけるエンジニアリングおよび研究・開発活動の原動力となっており、主に車両開発、先進技術研究・車両の評価と衝突安全性の3つの分野に取り組んでいる。

トヨタ先進安全技術研究センター(CSRC:Toyota Collaborative Safety Research Center/米国):先端安全技術の開発拠点

大学や病院、研究機関、連邦機関との連携のもと、先端安全技術の開発と実用化を目的とした安全研究プロジェクトに焦点を当てた研究を行っている。研究分野には、予防安全・衝突安全の統合、安全にかかわる人間の経験に関する調査、ドライバーの状態検知とビッグデータ、安全性分析が含まれる。

2021年までの5カ年計画では、コネクテッド化や自動運転技術の社会的受容性に関する研究などを進める方針だ。

トヨタコネクティッド(日本・米国):日米拠点に事業集約したコネクテッド関連の開発拠点

シームレスなコンテンツ連動型サービスの提供、顧客・ディーラー・販売代理店・およびパートナーに向けた最先端のデータ分析による製品開発サポートの提供という2つの主要分野に取り組んでいる。また、AIやロボット工学に関する研究やTRIの支援などを含む、トヨタの業務全般にわたるさまざまなデータやコンピュータサイエンスサービスも提供している。テキサス州のほか日本にも拠点を置いている。

トヨタIT開発センター(Toyota Info Technology Center/日本・米国):先進IT技術でイノベーションを起こす研究開発拠点

次世代モビリティ社会研究、クラウドインフラアーキテクチャー、インテリジェントコンピューティング、ネットワーク、システム&ソフトウェアの5部門で構成されており、次世代クラウドプラットフォーム研究、AIを用いた分散処理・解析基盤研究、車用通信ネットワークの知能化研究などのプロジェクトに取り組んでいる。カリフォルニア州と日本に本社を置く。

なお、2019年3月末までに、同社の研究開発業務をコネクティッドカンパニーに融合することが発表されている。

欧州トヨタ自動運転車研究所(TRACE/欧州):諸大学と提携する欧州の研究開発拠点

欧州の専門家と自動運転車のコンピュータビジョンの分野で協力しており、ルーヴェン・カトリック大学、ケンブリッジ大学、チェコ工科大学プラハ校、マックス・プランク大学ザールブリュッケン校、スイス連邦工科大学チューリッヒ校と提携。物体検知、強力で精密なトラッキング、全体状況分割および分類にかかる最先端のラーニングアルゴリズムの研究などに取り組んでいる。

■自動運転とコネクテッド、そしてライドシェア

自動運転車とコネクテッドカーの開発だけではなく、ライドシェア領域にもトヨタ自動車は手を伸ばしている。2018年8月には、自動運転技術を活用したライドシェアサービスの開発促進などを目的に、世界最大手のライドシェア企業ウーバー・テクノロジーズとの協業を拡大することに合意し、5億ドル(約560億円)の出資も決めている。

この変革期にトヨタグループを率いる第11代・豊田章男社長の手腕で、トヨタは新たな時代を勝ち抜く日本企業に昇華する。


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