自動運転車、トヨタ自動車の開発コンセプトや事業展望を紐解く

目指すのは交通事故死傷者ゼロの社会



自動運転技術の開発を進める日本のトヨタ自動車は、自社の公式ホームページで自動運転車に関する方向性や事業計画の一部を公表している。この記事では、「トヨタ×自動運転」をテーマに、トヨタ自動車の自動運転車開発のコンセプトを紐解く。


■トヨタはなぜ自動運転の開発に取り組むのか?

トヨタ自動車は自動運転開発の方向性において、まず「クルマを自動化させること」ではなく、自動運転を一般に広めていくことで「便利かつ楽しい移動を、誰もが享受できる社会を作り出すこと」を究極の目標に据えている。

そのためにまずは「安全性の向上」を何より重視し、研究や開発、実証実験などを進めていく方向性を示している。そしてトヨタ自動車は、毎年世界中で百数十万人が交通事故などで亡くなっている現状を改善するために「交通事故死傷者ゼロ」の長期目標を達成することを目指し、自動運転の開発を進めていくという。

【参考】トヨタ自動車を含む世界の主要メーカーの自動運転車の実現時期などについては、「自動運転車の実現はいつから? 世界・日本の主要完成車メーカーの展望に迫る|自動運転ラボ 」を参照。

■個人個人の変化や状態に対応する自動運転車に

トヨタは自動運転における「人」と「車」のあり方について、「個人個人の変化や状態をクルマが検出し、安全運転をサポートすることを目指しています」としている。


トヨタ自動車が販売する自動運転車には統一した規格があるものの、その車両に乗る運転手はそれぞれ異なる「個人」だ。トヨタ自動車はこの「個人個人」に自動運転車側が対応を最適化させ、自動運転車がよりその運転手に寄り添った存在になることを目標に掲げている。

■地球と社会に優しい自動運転車を作るために

トヨタ自動車が自動運転車開発のコンセプトに掲げていることは、安全性の向上のほかにもある。それは地球環境に自動車が与える影響を最小限にするということだ。

自動運転によるスムーズな交通が実現すれば、排出ガスは削減され大気の状態は改善する。騒音も減る。交通事故の死者を減らすこととともに、こうした環境に優しい自動運転車の開発を進めることで、企業として社会と地球に貢献していきたい考えだ。

■一般的なドライバーの運転よりも安全な車に

トヨタ自動車は自動運転車の開発において、「オートメーテッド」と「オートノマス」という2つの言葉をそれぞれ定義して使用している。「オートメーテッド」は運転手(人)がほぼ運転に関わらない自動運転車のことを、「オートノマス」はシステムが全ての自動運転を担う自動運転車のことをそれぞれ指している。


その上で、オートノマスで走行する自動運転車に求められることとして、「社会で許容される一般的なドライバーの能力よりも、安全である必要があります」としている。車の走行は非常に複雑な環境においてリアルタイムにさまざまな判断を迫られる。トヨタ自動車は「事故を防ぐ完全な衝突回避のシステムは、存在しえないといえる」とした上で、こうした考え方で自動運転車開発を進めていくという。

【参考】少し上記と趣旨は異なるが、自動運転に関する定義としてはアメリカの自動車技術会(SAE)の自動運転レベルなどがある。詳しくは「自動運転レベル0〜5まで、6段階の技術到達度をまとめて解説|自動運転ラボ 」を参照。自動運転に必要な技術については「自動運転に必須の7つの先端技術 認識・予測技術や位置特定技術、AI技術…|自動運転ラボ 」を参照。

■自動運転の社会的な課題はあるものの…

トヨタ自動車は自動運転に関連する今後の課題として、交通設計や道路整備などのインフラ面、サイバーセキュリティ、個人情報の保護、社会システムなどを挙げている。自動運転に関しては、地域によっても受容度が異なることも課題として挙げている。そんな中、トヨタ自動車は「安全性の向上」に特に注力し、社会実証なども進めながら今後も自動運転の開発を推進していく見込みだ。


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