日本におけるライドシェア規制の現状と特区制度まとめ

遠い解禁、一方で国家戦略特区で実証加速





国内では依然として事実上禁止されている有償ライドシェア。業界団体や一部の自治体が反対を表明する一方、新経済連盟のように規制撤廃を働きかける動きや、実証実験に取り組む企業・自治体の姿も散見されるようになった。







国内におけるライドシェアは今後どのような道をたどるのか。現状の法環境や取り組み状況などを調べ、その行く末を見通してみよう。

【参考】新経済連盟の取り組みについては「新経済連盟、ライドシェアや配送シェアで「法環境整備を」と意見書」も参照。

■ライドシェアとは?

ライドシェアは、直訳すると「ライド=乗る」を「シェア=共有」することで、一般的には「相乗り」や「配車サービス」を指す。自家用車の所有者と自動車に乗りたい人を結び付ける移動手段だ。

純粋な相乗りサービスの「カープール型」やバンを用いて多人数が乗車できる「バンプール型」、ヒッチハイク型の相乗りサービス「カジュアルカープール型」、海外で主流となっている有償ライドシェアサービス「TNCサービス型」に分類することができる。

近年特に騒がれているのがTNCサービス型で、事業主体自らは運送せず、スマホアプリなど自らが運営するプラットフォームにおいて一般ドライバーと乗客を仲介し、一般ドライバーが自家用車を用いて有償の運送サービスを提供する。中国のDiDi(ディディ)や米Uber(ウーバー)などがこれにあたる。

ここ10年ほどで一気に市場が開拓された分野で、これまで大手ライドシェア事業者は未上場で時価総額10億ドルを超えるユニコーン企業の常連だったが、米ライドシェア業界2位のLyft(リフト)が2019年3月に米ナスダック市場に上場。ウーバーも2019年内の上場を予定するなど、大きな動きを見せている。

■市場規模:2018年時点で7兆円規模

ライドシェアの市場規模は、リサーチステーション合同会社が2019年1月に発表したレポートによると2018年時点で613億ドル(約7兆円)規模で、2025年には3倍以上に拡大する見込みという。

また、日本で認められているコストシェア型ライドシェアの国内市場も今後拡大が期待されており、調査会社の富士経済によると、カープール型ライドシェアの国内市場(仲介手数料ベース)は、2018年の1億円見込みから2030年には131億円まで拡大すると予測している。

【参考】ライドシェアの市場規模については「日本は置き去りのライドシェア世界市場、2025年に20兆円超え」も参照。

■日本におけるライドシェア規制
有償ライドシェアは道路運送法で規制

日本において自家用自動車を有償で運送の用に供することは「道路運送法第78条」に規定されており、災害のため緊急を要する場合と、市町村や特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、公共の福祉を確保するため区域内の住民の運送などを行う場合を除き禁止されている。

このため、国土交通大臣の許可のない自家用自動車は有償で運送できないというのが現在の状況だ。実際に、米Uber社の日本法人が2015年2月、福岡市でTNCサービス型ライドシェアの実証実験を行ったところ、「道路運送法に抵触する可能性がある」と判断され、行政指導が行われた例もある。

2016年5月には、京都府京丹後市が公共交通空白地有償運送として「ささえ合い交通」事業をスタート。NPO法人「気張る!ふるさと丹後町」が実施主体となり、地元住民が所有する自家用車を利用し、ウーバーのアプリを用いて即時配車する事業を行っている。

2016年8月には北海道中頓別町においても「なかとんべつライドシェア(相乗り)事業実証実験」が行われている。

コストをシェアするカープール型は規制対象外

一方、カープール型については、2017年に閣議決定された規制改革実施計画において「自家用自動車による運送について、それが有償である場合には、旅客自動車運送事業に準じた輸送の安全や利用者の保護に対する期待感を利用者一般が有していることが、自家用自動車の有償運送を登録又は許可にかからしめる理由であることを通達により明確にするとともに、登録又は許可を要しない自家用自動車による運送について、ガソリン代などの他に一定の金額を収受することが可能な範囲を通達により明確化する」旨の計画が策定されるなどしたことを受け、考え方を整理した通達が国土交通省から2018年3月に出された。

通達によると、サービスの提供を受けた者からの給付が「好意に対する任意の謝礼」と認められる場合や、「金銭的な価値の換算が困難な財物や流通性の乏しい財物など」によりなされる場合、また、ボランティア活動として行う運送において、実際の運送に要したガソリン代や有料道路使用料、駐車場代のみを収受する場合は許可などを要しないこととしている。

■日本における特区制度

政府は、地域や分野を限定することで大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度「国家戦略特区」を2013年に制定している。その後、2015年の諮問会議で安倍晋三首相が「過疎地などでの観光客の交通手段として自家用車の活用を拡大する」旨の発言を行い、翌2016年に一部改正法が成立。自家用有償運送の主な運送対象として、特区では訪日外国人をはじめとする観光客が盛り込まれた。

なお、実施主体はあくまで市町村や特定非営利活動法人で、運転者は二種免許または大臣認定講習を必要としている。旅客から収受する対価は、実費の範囲内とし、国家戦略特別区域会議の意見を聴くものとしている。

2018年5月には、この特区制度を活用した初の事業として、兵庫県養父市で地元住民の自家用車を用いた有償ライドシェアが始まった。市内タクシー事業者やバス事業者、観光関連団体、地域自治組織らが「マイカー運送ネットワーク」を設立し、タクシー事業者が対応困難な大屋・関宮地域で登録ドライバーによる短距離輸送を行っている。マイカー運送ネットワークはNPO法人化し、「やぶくる」の名称でサービスを実施している。

■日本における実証実験
広島県×三次市×マツダ:コネクテッド技術活用しライドシェア見越した実証実験スタート

マツダは広島県および三次市と連携のもと、コネクティビティ技術を活用し、将来のライドシェアを見据えた移動サービスの実証実験を開始したことを2018年12月に発表した。

地域移動サービスで用いる運行管理システムや利用者用アプリの開発を進め、実証実験で得られたデータを蓄積して次世代コネクティビティ技術や自動運転技術と組み合わせたライドシェアサービスの開発を目指すこととしている。

荒尾市×三井物産:相乗りタクシー実証実験を実施

熊本県荒尾市は2019年1月から2月にかけ、三井物産などとともにAI(人工知能)を活用した相乗りタクシーの実証実験を実施した。実証実験には地場系のタクシー会社「荒尾タクシー」が協力し、同社の乗務員が運転するタクシーに市民ら利用者が相乗りする仕組みだ。

タクシー事業が縮小傾向にある中、タクシー車両を有効活用することで路線バスを補完する新たな公共交通体系として商業化を含めた導入の可能性を探る目的。スマートフォンやAIなどを活用し、複数の利用希望者のマッチングを行って1台のタクシーへの相乗り実証などを行ったという。

【参考】荒尾市の取り組みについては「熊本県荒尾市、三井物産などと相乗りタクシーの実証実験開始」も参照。

鹿児島県与論町×Azit:与論島でライドシェアサービス実証

モビリティベンチャー企業の株式会社Azitは2018年6月、タクシーが8台しかないとされる鹿児島県の与論島で観光客を対象としたライドシェアサービスの実証実験を同年8月に実施することを発表した。

ヨロン島観光協会と協力して事業を進めることとしており、同社が開発したドライブマッチングアプリ「CREW」を活用し、島民の自家用車を活用してライドシェアサービスを展開する仕組み。

2019年2月には、「CREW」の定常的な提供を2019年4月以降に開始することでヨロン島観光協会などと合意したことも発表しており、自家用車に加え地域のタクシーも配車可能にする計画という。

【参考】Azitの取り組みについては「MaaSプラットフォーム「CREW」、鹿児島の与論島で定常的提供」も参照。

天塩町×notteco:住民同士による長距離相乗り実証プロジェクト

移動手段不足の問題の解消を目指すプロジェクトとして、北海道天塩町とnottecoが2017年3月に相乗り交通事業に着手した。

同町から約70キロメートル離れた稚内市まで、住民同士が車の相乗りで移動できるようにする試み。

森ビル×Via:都心部でもオンデマンド型シャトルサービス検証

都市ディベロッパーの森ビル株式会社は、米ライドシェア企業Viaと連携し、ヒルズを舞台にオンデマンド型シャトルサービス「HillsVia」の実証実験を開始したことを2018年8月5日までに発表した。

利用料金を森ビル側で負担することで実質無償型とし、日本国内の法律を遵守する形で実証実験を行い、さまざまなデータを取得して都心におけるオンデマンド型シャトルサービスの有効性やまちの付加価値向上の可能性などを検証することとしている。走行エリアは六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズ、愛宕グリーンヒルズ、パレットタウンなどで、実験期間は1年間を予定している。

■【まとめ】ライドシェア実証進む 導入見越した体制づくりを

相乗りサービスの実証を含め、道路運送法にのっとった形で事業化した京丹後市や、特区のもとライドシェア事業に取り組んでいる養父市など、さまざまな動きが散見されるようになった。

一般ドライバーによる有償ライドシェアをめぐっては、安全性の問題や既存業界への利益圧迫などがたびたび指摘されているが、安全性に関しては新たなルールを導入することである程度クリアできる問題であり、後者に関しても、競争原理から言えばただただ既得権を守ろうとする動きにしか見えない。

タクシー業界でも、配車アプリやAIの活用などで進化を遂げている企業は存在する。仮にライドシェアが解禁されても、真っ向から勝負できる体制は整っているのだ。将来を見据えるならば、ライドシェアとともに自家用車による移動のシェアを奪うような戦略を打ち出した方が理にかなっているのではないだろうか。

世界的にもライドシェアの導入に慎重な国は少なからず存在するが、これは発展途上のサービス故の問題に直面しているのが主な理由であり、改善の余地は大いにあるはず。

MaaSやシェアリングエコノミーの観点からも、最終的にライドシェアは解禁される方向に向かっていく可能性が高い。時代は常に移り変わっていく。変化に対応できる社会づくりを進めてこそ、新しい時代を迎えられるのではないだろうか。

【参考】関連記事としては「ライドシェア企業、世界で300社突破 日本企業はゼロ?」も参照。







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