ライドシェアの主なトラブル事例・問題・事件まとめ

反対論者が声高に叫ぶ理由は?





解禁の是非が問われ続ける有償ライドシェア。現状、海外でも賛否が分かれる一方、その市場規模は大きな伸びを見せ続けている。







社会認知度と受容性の高まりが市場に反映された結果だが、それではなぜライドシェアは解禁されないのか。反対論者が声高に叫ぶライドシェアの問題とは何か。

今回は、ライドシェアにまつわるトラブル事例などをもとに、ライドシェアが抱える問題を明らかにしてみる。

■事例①ドライバーによる強盗や殺人、女性被害も

ライドシェアにおいて最も不安視・問題視されているのが、ドライバーの資質ではないだろうか。当然のことだが、発生した事件の大半はこれに起因する問題だ。

衆議院国土交通委員会でライドシェアに関する質問がなされた際の答弁などによると、海外では、2014年に米ロサンゼルスで、米ライドシェア大手のウーバーのドライバーが乗客を誘拐し、性的暴行を加えたとして逮捕されている。同年、米ボストンでは、女性客が目的地は異なる人目のつかないところに連れていかれ、ウーバーのドライバーに性的暴行を加えられた事件も発生している。インドのデリーでも同様の事件が起こっており、この際は同市を含むインド国内の複数の地域でウーバーは営業停止になったようだ。

2016年には、米カリフォルニア州で、十代の少女がウーバーに乗客として乗車中、ドライバーによって性的暴行を受けた。少女は酒に酔っていたとする情報もあり、帰宅が遅いことを心配した家族がウーバーのアプリで現在位置を確認し、警察に通報したという。ウーバーの広報担当は被告をドライバーから永久に除外すると述べる一方、同社によるドライバーのバックグラウンドチェックはクリアしていたことも認めているという。

事件はウーバーだけではない。中国ライドシェア最大手の滴滴出行(DiDi Chuxing)でも、2018年5月と8月に立て続けに女性が殺害される事件が発生しており、同社は2度の事件を受け、同じ方向に向かう乗客が相乗りする「ヒッチ」サービスについて、当初予定していた一時停止ではなく無期限で凍結すると発表した。

DiDiではこのほか、ライドシェアを利用した女性客の様子を、運転手が無許可で盗撮ライブ配信していたこと事件なども報道されている。

女性が被害にあうケースが多く見受けられるが、こういった事案に対応したライドシェアサービスも誕生している。2016年創業の米スタートアップ企業「Safr」は、原則女性向けのサービスを展開しており、ドライバー・乗客双方に相手の性別を限定する「男女選択権」が与えられているという。

また、シンガポールの配車大手Grab(グラブ)は、ドライバーの登録に面接を要するなど厳密な審査を課しているほか、車載レコーダーの設置や、緊急事態があった際にワンタップで緊急ダイヤルにつながる「EMERGENCY」ボタンをアプリに搭載するなど、安全対策に力を入れているようだ。

■事例②ドライバーの飲酒運転や薬物

ドライバーの資質の問題は、乗客に向けられた犯罪行為に限らない。飲酒運転をはじめ、違法薬物に手を染めているドライバーもいるようだ。

2018年の年末には、カナダのオンタリオ州で、ウーバーのドライバーが利用客を乗せようとしているところを酒気帯び運転の疑いで現行犯逮捕される事件が発生している。

こういった問題はウーバー側も早くから懸念しており、さまざまな観点から対策に乗り出しているようだ。2018年には、スマートフォンの使用方法から運転手が酒に酔っているかどうかを見分けることができるシステムについて、ウーバーが特許申請していることが明らかにされている。

アプリのAI(人工知能)によってさまざまな角度からスマホユーザーの情報を知るためのアルゴリズムを用い、スマホを操作する際の入力ミスの頻度やボタンの押し間違え、歩くスピードや車を手配するまでの時間などから情報を収集し、ユーザーの酩酊具合を確かめることができるという。

【参考】ウーバーの特許申請については「ウーバー、スマホの持ち方で飲酒運転判別 ライドシェア業界動向」も参照。

■事例③ドライバーの労働待遇問題

ウーバーなどのプラットフォーマーが個人ドライバーと提携し、サービスを提供するライドシェア。ドライバーは通常個人事業主に相当するが、プラットフォーマーと雇用関係にあるのかどうかなど、地位や待遇について問われるケースも頻発している。

2018年7月には、ウーバーの元ドライバー3人が失業保険の受給資格を求めて起こした裁判で、米ニューヨーク州労働委員会が受給資格を認定する裁決を下した。同様の訴訟は各地で起こっており、その判断は各州で分かれているようだ。

フォーブス誌によると、米国では10以上の州が配車サービスのドライバーを失業保険の対象外としており、その他の多くの州の法律にも配車サービスの従事者に通常の被雇用者と同じ権利を与える根拠となる条文は存在しないという。

労働者の管理や乗務状態の監視、業務に関するトレーニングなど雇用者が被雇用者に対しどこまで権限を持って管理しているかが判断材料となっているが、ニューヨーク州の判決では、実態としてドライバーがウーバーの強い管理下に置かれているものとする判断を下した結果だ。

【参考】ドライバーの地位をめぐる訴訟については「ライドシェア大手ウーバーの登録運転手、アメリカで失業保険の受給できることに」も参照。

■事例④ドライバーの技術や知識不足

専業のタクシードライバーなどとは異なり、副業のような形で働くドライバーも多いライドシェア。過去の違反歴や犯罪歴、運転歴などを審査したうえで採用されていても、ドライビング技術が未熟な場合や、道案内に不慣れな場合もあるという。

乗客への乗り心地を優先した運転を心掛け、ナビゲーション通りに運転することである程度解消できる問題だが、ナビよりも裏道を使った方が目的地に早く到着できるケースは非常に多いほか、時間帯によって混雑する道路を回避するなど、経験に基づく知識が役立つ場面も多々ある。

こういった道路情報について、乗客の方が詳しい場合、口論になるケースも相当数発生しているようだ。

■事例⑤未整備のライドシェア規制とウーバーの強気の世界戦略が各国で衝突

そもそも論だが、ライドシェアに関する法整備が追いついていない中、世界進出を積極展開したウーバーだが、各国の旅客運送に関わる法律に違反・抵触したケースも多いようだ。

タクシー不足が深刻化するフランスでは近年、観光サービス目的などの条件付きで規制緩和が図られ、その流れに乗じてウーバーもサービスを開始し、その後ライドシェアに相当する「UberPop」など事業を拡大すると、タクシー業界からの反発が一気に強まった。

仏政府は未登録のタクシー運転手がアプリを介して客と配車サービスのやり取りを行うことを禁止するなど規制を強めた。ウーバーは反発したものの、最終的に裁判所はウーバーに多額の罰金を科した。

欧州ではこのほか、ドイツでも2015年にフランクフルト裁判所がウーバーに対し旅客輸送法違反を理由に罰金命令や営業差止命令を出している。

アジアでは、韓国のソウル市政府が2014年、ウーバーのサービスを旅客輸送法に違反しているとして営業停止を要求したほか、ソウル地検もウーバーや同社CEOを起訴している。また、ソウル警察庁が、ウーバーの韓国事業を担当する支社長らをはじめ、関係するレンタカー業者らを、旅客自動車運輸事業法違反の容疑、いわゆる白タクに該当するとして立件する事件も起こっている。

マカオでは、マカオ警察当局と交通当局が2015年、配車アプリを使った白タクサービスを運営したとして、ウーバーのドライバー二人を検挙している。また、香港では、賠償責任保険への未加入など条件を満たさないドライバーが次々と逮捕されているようだ。

日本では、2015年2月にウーバーが福岡市でTNCサービス型ライドシェアの実証実験を行ったところ、「道路運送法に抵触する可能性がある」と判断され、行政指導が行われた例もある。

英ロンドンや仏パリ、香港など、タクシー需要に供給が追い付かない地域はライドシェア事業者にとって格好の餌場だが、これらの地域は旅客運送免許の取得に厳しい試験や高い金額を要したり、営業許可証の発行に上限を設けるなどしており、既存のタクシー業者らの権利意識が非常に高い。

緩い規制のライドシェアに自分たちの市場を荒らされることを嫌がる気持ちも理解できるが、旅客運送に対する規制そのものが現状に適しているかどうかを見定める必要もありそうだ。

■【まとめ】安全対策向上でライドシェアのハードルは一気に下がる

ライドシェアにまつわるトラブルをまとめると、ドライバーの資質に関する問題と労働待遇に関する問題、法律上の位置付けに関する問題の3つに大別できそうだ。

ドライバーの資質については、実際に重大な事件が発生していることから、書類や経歴の審査だけでは満たされていないケースがあるのは事実だ。ただ、公平を期すため、一日に世界で何千万、何億回と利用されている母数の多さと、新しいサービスにありがちな事件が大きく報道される影響も考慮しなければならない。

海外でライドシェアが急速に普及した一因として、各国のタクシー事業者の資質の問題を逆に挙げることができる。海外のタクシーで不当な金銭要求をされた話や、運転マナーがひどいといった話はよく耳にする。全ての国ではないにしろ、ライドシェアで問題視されているドライバーの資質と同様の事件は、タクシー業界でも頻発しているのだ。

話を戻すと、ライドシェアにおけるドライバーの資質の問題は、請負のような形でプラットフォーマーとドライバーが手軽に提携できるメリットの裏側に内在する問題とも言える。プラットフォーマーがどのような管理体制を敷くか、また国がドライバーにどのような資質を「義務」として位置付けるかといった点がまず求められることになる。

グラブの面接形式や、Safrの性別選択式ライドシェアなども有効な手段の一つで、こうした一つひとつのアイデアを積み重ねるとともに、ライドシェア向けの新たな規制を設けることも必要になってくるだろう。

法整備の問題については、各国それぞれの事情がありそうだが、既存のタクシー事業者らとの線引きや、上記安全対策を整えることである程度クリアできる問題だ。

日本国内に目を向けると、日本のタクシー業界は非常に優秀で、資質に問題を抱えるライドシェアに苦言を呈するだけのことはある。海外のタクシー事業者に比べ優位性があり、ライドシェアの導入によって一気にシェアを奪われることもなく、むしろサービスの差別化を図ることで共存体制を敷けるのではないだろうか。

仮にライドシェア事業者が安全対策をしっかりと整えた場合、反対論者が主張できるのは既得権を守ることだけに絞られ、説得力を一気に失うことになる。

MaaS(移動のサービス化)の観点からもライドシェアは有効な手段の一つであり、将来にわたって禁止し続けることは難しいサービスだ。

リサーチ事業を手掛けるリサーチステーション合同会社が2019年1月に公表したレポートによると、ライドシェアの世界市場は2018年段階で613億ドル(約7兆円)で、予測通りにいけば2025年には3倍以上となる20兆円規模に拡大するという。

経済的にも、この市場を無視するのは相応しくないと感じる。MaaSの波に乗り、この市場を逆に食ってやるといった気構えでライドシェアを迎え入れるためにも、安全対策を含めた新たな規制の枠組みづくりに早期着手したほうが良いのではないだろうか。

【参考】リサーチステーションのレポートについては「日本は置き去りのライドシェア世界市場、2025年に20兆円超え」も参照。







関連記事