北京、上海、深セン・・・中国の自動運転タクシー最新事情まとめ

有料の無人自動運転サービスも登場



この数年間で自動運転大国として一気に頭角を現した中国。自動運転タクシーなどのサービス実証は各市に波及し、社会実装に向けた取り組みが盛んに行われている。







この記事では、中国における自動運転タクシーの取り組み状況を都市別に解説していく。

■中国各市の取り組みの概要

中国では、政府の方針のもと省や直轄市などが個別にルールを策定し、自動運転車の公道実証の認可を行っている。州ごとに認可を出している米国と同じようなイメージで、仮に北京でライセンスを取得しても、他市では一からテストを受けなければならない。

自動運転開発企業は、公道実証に向け各市が設置したテスト向け閉鎖コースで走行し、自動運転性能の認可を受ける必要がある。閉鎖コースの整備は上海市が2016年に先陣を切り、その後、有力都市が競うように開設を進めた。各市は閉鎖コースの設置後、段階的に自動運転走行が可能なエリアを広げていく方針を打ち出している。

例えば、上海市は面積2平方キロメートルにおよぶテストコースを設置し、閉鎖エリアを拡大した後、2019年に一般公道を含む100平方キロメートルに及ぶエリアを開放していく当初計画を打ち出している。

■北京市:百度が有料サービス、Pony.aiが実証

自動運転実証に関する中国政府の報告書によると、北京市では2020年末までに道路200本、総延長約700キロが公道実証に開放されており、14社計87台に走行ライセンスを発行している。

各社の公道走行を合算した総走行距離は、2018年に約15万キロ、2019年に約89万キロ、2020年に約117万キロと伸びており、大半は百度(バイドゥ)が占めている状況だ。

自動運転の難易度に応じて4段階に分けられた走行試験のうち、最高難度の「R4」に進んでいるのは百度1社で、それに次ぐ「R3」もPony.aiやトヨタなど一部企業に限られているようだ。

Pony.aiは2018年6月にスタートアップとして初めて北京市から自動運転の走行ライセンスを取得した。ライセンスとなるナンバープレートも難易度に応じて5段階に分けられているが、同社は10日間で上から3番目の「T3」を取得したようだ。

百度は2020年8月に一般ユーザーを対象とした自動運転タクシーサービスを開始し、その後セーフティドライバー不在の無人による自動運転車の公道実証許可も得ている。2021年5月には、北京首鋼園区で有料サービスを開始した。

なお、百度はこのほか、南京市や大連市などでも公道実証や自動運転タクシーのサービス実証を進めている。

■上海市:AutoXやDiDiらが実証

上海市交通委員会によると、同市は2020年末までに国内トップクラスとなる総延長約560キロの公道で自動運転走行を可能としている。自動運転車の走行ライセンスは、22社計152台に発行している。Didi Chuxingの子会社を筆頭に、上海汽車の商用車メーカー、トヨタにも発行されているようだ。

自動運転タクシー関連では、AutoXが2019年に上海市嘉定区と戦略的提携を結び、同区内に自動運転モデル地区を設けてロボタクシー事業を展開する方針を発表した。2020年に上海ビッグデータセンターを構築し、夏には一般ユーザーを対象とした自動運転タクシーサービスを開始している。

2019年8月に上海政府から公道走行ライセンスを取得したDidi Chuxingは、同市嘉定区でパイロットプログラムを開始し、2020年6月に正式にオンデマンドによる自動運転タクシーサービスを開始している。

■深圳市:AutoXが無人サービス開始

経済特区に指定されている広東省深セン市では、AutoXが2017年に同市政府と戦略的提携を交わし、2018年に同市に本社を設立するとともに自動運転実証に着手している。

2020年に正式な公道走行ライセンスを取得し、同年12月にはセーフティドライバー不在の無人による自動運転タクシーサービスの提供を、一部ユーザーを対象に開始した。2021年には無人タクシーオペレーティングセンターを建設し、無人サービスを本格化させている。

また、自動運転関連の法や規制、運用ルールなどが未整備なため、中国政府などは2020年、早期パイロットプログラムを実施する権利を深センに付与し、経済特区として有効な実証を積み重ねやすくする支援案を提案したようだ。

【参考】AutoXの取り組みについては「AutoXの自動運転タクシー、深圳で「安全要員なし」で!交通当局が許可」も参照。

■広州市:WeRideが実証

広東省広州市では、Pony.aiが2018年に自動運転タクシーのフリートを立ち上げ早期実証に着手している。WeRideも2019年に広州でタクシー事業を手掛けているBaiyun Taxiとジョイントベンチャー「WeRide Robotaxi」を設立し、同年11月に一般客が乗車可能な自動運転タクシーの試験運用を開始している。WeRideはその後、2020年7月に無人自動運転のライセンスを取得し、実証を進めている。

市の取り組みとしては、2019年に同市南沙区に自動運転試験基地を建設する計画が発表されている。投資額は96億元(約1,600億円)に上るという。2021年1月には、市中心部の市街地区域の公道も開放し、自動運転実証が可能なエリアを拡大している。

同市ではこのほか、百度が広州黄埔区と連携し、自動運転MaaSプラットフォームを2021年3月に公開している。自動運転タクシーや自動運転バスなどの移動モビリティに加え、無人販売車や清掃車なども配備されているようだ。

Didi Chuxingも2021年3月、自動運転開発を手掛けるDiDi Autonomous Drivingと同市花都区の戦略的パートナーシップのもと、広州での自動運転技術と商用アプリケーションの研究開発に投資する計画を開示した。

■成都市:百度がスマートドライブプロジェクトを発表

四川省成都市は2020年に百度とタクシーサービス導入に合意している。2021年4月には、同市で開催された自動運転商用アプリケーションカンファレンスで百度が5Gを活用したスマートシティ及びスマートドライブプロジェクトを展開することを発表した。

総投資額は6億元(約100億円)規模で、開発区にコネクテッドカーモデル区を設置し、約30キロに渡って道路をスマート化させ、V2I(路車間通信)技術を駆使しながら自動運転の商用化に向け実証を進める方針のようだ。

なお、同市では2019年にアリババ傘下の物流企業・菜鳥網絡(Cainiao Network)が自動運転パークを稼働し、物流分野における無人搬送・配送の実証も進めているようだ。

2020年6月には、Didi Chuxingもオンデマンドロジスティクスサービスを開始することを発表している。近い将来、自動運転車による配送サービス実証も始まるかもしれない。

【参考】Cainiaoの取り組みについては「アリババ傘下の物流会社・菜鳥網絡、自動運転パークの稼働開始」も参照。

■武漢市:百度が実証、自動運転テーマパークも開業

湖北省武漢市では2018年に商用自動運転ミニバスの運行がスタートしており、2019年には百度やHaylion Technologies、DeepBlue Technologyに自動運転の公道走行ライセンスが付与されている。

2020年10月には、東風汽車がAutoXやYuanrong Qixing、Uisee Technologyなどとともに自動運転タクシーのパイロットプロジェクトを立ち上げ、少なくとも200台の自動運転車を導入する計画が発表されている。2021年2月には42台の車両が導入され、武漢経済開発区の22の停留所を起点にサービスを開始したようだ。

また、2021年1月には、中国初となる自動運転車をテーマに据えたテーマパークが開業した。百度や東風汽車などの自動運転バスやタクシー、無人移動販売車、清掃車などが走行しているという。今後の展開に要注目だ。

【参考】東風汽車の取り組みについては「中国で自動運転車200台以上の大量投入計画!東風汽車のプロジェクト始動」も参照。

■長沙市:百度が実証

湖南省長沙市では、百度が2019年9月に一部ユーザー限定で自動運転タクシーの実証実験を開始し、2020年4月には、中国初と言われる不特定多数の一般ユーザーを対象にした自動運転サービスを開始した。

同年夏には走行エリアを拡大し、タクシー乗り場13カ所が試験的に設けられたという。

■滄州市:百度が実証、有料無人サービスを開始

河北省滄州市では、百度が2019年に自動運転車用のナンバープレート30枚を取得して公道実証に着手し、2020年夏に自動運転タクシーの実証を開始している。

2021年3月には、無人の公道走行許可と商用サービス許可を取得した。各メディアによると同年4月、市街地の一部エリアにおいて夕方から夜間にかけての時間帯に限り有料の無人サービスを開始したようだ。

■蘇州市:MOMENTAが実証

江蘇省蘇州市では、蘇州相城高速鉄道新都市と2018年に戦略的パートナーシップを交わしたMOMENTAが実証を重ねており、2020年10月に自動運転タクシー「MomentaGO」のリリースを発表している。

2022年にはセーフティドライバーなしのサービスに着手し、2024年までにすべての車両で無人化を図る計画を打ち出している。

【参考】MOMENTAの取り組みについては「中国で続々!Momenta、レベル4自動運転タクシーを10月から試験運行」も参照。

■雄安新区:先行開発エリアで実証進む

国家戦略のもと最先端のスマートシティ、自動運転シティとして建設が進められている北京市郊外の雄安新区では、先行開発されたエリアに自動運転車専用レーンが設けられており、すでに百度などが自動運転車や小型無人配送車などの実証を進めているようだ。

■中国政府の動向

中国政府は2015年5月発表の「中国製造2025」の中で重点分野の1つに自動車産業を位置付け、EV化やインテリジェント化(自動運転化)、国際化などを図っていく方針を打ち出した。

2020年2月には「スマートカーイノベーション発展戦略」を発表し、2025年までの自動運転に関する計画を公表した。省庁横断的な取り組みで、自動運転開発や認証体系の構築、法規制などを網羅した内容となっている。

2025年までにレベル3を一定規模で生産するほか、レベル4は特定環境下で製品化されることを目標に据えており、具体的な数値目標は示されていない。

なお、2019年に工業信息化部が発表した「新エネ自動車産業発展計画」では、2025年までにレベル3を新車販売の30%、レベル4は限定区域内で商用化を実現することとしている。

同年4月には、交通運輸部が「自動運転に適合した公道付属設備に関する技術規範」を示し、自動運転に対応する信号や標識・通信設備といったインフラ、高精度地図などのデジタルインフラを含め、求められる機能の標準を定めた。

2021年1月に工業情報化省が発表した「暫定ガイドライン」では、走行可能エリアを高速道路に拡大していく計画や、自動運転タクシー、自動配送車両などの実証を推進していく方針を打ち出している。

北京市は同年5月までに有料自動運転タクシーの実証を行う政策先行エリアを決定し、ニュータウン内の計画区域などに加え高速道路も新たに追加している。

■【まとめ】米国にすでに肩を並べている印象の中国

中国政府の方針のもと、開発企業のみならず各市も競って自動運転実証を加速している。開発・実用実証で先行していた米国にすでに肩を並べている印象で、この勢いが続けば米国を抜き去る可能性も考えられる。

自動運転開発と実用実証は米国、中国ともにスタートアップが中心となっているが、数年後には自動車メーカー直系の自動運転サービスも本格化する見込みだ。その頃には勢力図がどのように変わっているのか、今後の動向に引き続き注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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