百度(Baidu)自動運転開発の年表!アポロ計画推進、中国で業界をリード

無人自動運転サービスもスタート



出典:背景画像はBaiduプレスリリース、Daniel Cukier / Flickr (CC BY-ND 2.0)より

自動運転分野で一気に頭角を現した中国。その中国において、並み居る有力スタートアップに譲らず自動運転の開発シーンをリードし続ける企業がある。IT大手のBaidu(百度)だ。その勢いは世界トップクラスと言っても過言ではない。

この記事では、自動運転分野におけるBaiduの取り組みを年代順に追っていく。







■Baiduの概要

Baiduは2000年に検索エンジンプラットフォームとして設立されたIT企業だ。検索エンジンとしては、グーグルに次ぐ世界2位の規模を誇る。

マップサービスやクラウドサービスなど同業他社と同様のサービス展開を図りながらAI(人工知能)開発能力を高め、モバイルエコシステムやAIクラウド、そしてインテリジェントドライビングなどの領域に事業を拡大している。

自動運転分野では、特に2017年の「プロジェクトアポロ」の存在が大きく、ここから開発とサービス実装が一気に加速していくことになる。

■2015年:北京で自動運転実証に着手

Baiduは2015年、自動運転分野の研究開発への大規模投資を開始し、同年12月に北京の高速道路と都市道路で自動運転車の実証実験を行った。自動運転の研究開発は2013年に開始したとしているが、取り組みを本格化させたのはこの年からと思われる。

AI開発に力を注いできたロビン・リー会長は、「AI技術と機械学習技術は既存のビジネスに役立つとともに、将来のビジネスにも役立つと考えてきた。そのためAIへの投資を続けてきたが、自動運転車への応用が非常に期待できることが分かった」とし、同社が開発する自動運転車について「半自動運転ではなく、ドライバーの操作を完全に代替する車輪付きのコンピューターになる」と話した。

翌2016年9月には、米カルフォルニア州の自動運転実証免許を取得するなど、取り組みの幅を広げているようだ。

■2015年:ダイムラーと車載用ソフトウェアの開発で提携

Baiduは2015年、独ダイムラーと車載用ソフトウェアの開発で提携を交わした。もともと車載インフォテインメントシステムなどの分野で自動車メーカーとの協業はあったが、2017年のプロジェクトアポロ始動後は、独BMWや米フォード、スウェーデンのボルボ・カーズなど、コネクテッド技術やAI、自動運転分野における協業が加速していくことになる。

ダイムラーとも2018年に自動運転やコネクティビティーの分野で提携強化を図っていくことが発表されている。

■2017年4月:プロジェクトアポロ発表

Baiduは2017年4月、オープンソフトウェアプラットフォームを活用した「Project Apollo(阿波羅)=アポロ計画」と呼ばれる新しい計画を発表した。

自動運転技術の研究開発は底が深く、無人運転を実現するには長期的な設備投資と人的投資が必要となる。そこで、幅広い分野のパートナーと共同で技術開発を進めるオープン戦略を採用し、業界全体の開発を加速させる方針だ。

BaiduはAIやビッグデータ、各種ソフトウェアなど自社テクノロジーをプラットフォームを通じてオープンにし、将来の自動車業界で重要な役割を果たす確固たる基盤を築くとしている。

プラットフォームでは、車両プラットフォームやハードウェアプラットフォーム、ソフトウェアプラットフォーム、クラウドデータサービスを含むソフトウェア、ハードウェア、サービスソリューションに至る完全なセットを提供するとしており、環境認識や経路計画、車両制御、オンボードオペレーティングシステムなどにおける開発・テストツールを提供する。

また、車両とセンサーの分野においては、高い相乗効果と互換性を備えたパートナーを選択して共同提携し、プロジェクト参加者における研究開発のしきい値をさらに下げ、技術の急速な普及を促進することを推奨する。

計画では、同年7月にクローズドな環境で機能を実装し、徐々に開放していく。2020年までに高速道路や都市道路における自動運転を実現するとしている。

■2017年9月:自動運転プロジェクト支援に向けファンド設立

Baiduは2017年9月、自動運転事業を対象に投資する「アポロファンド」の設立を発表した。基金の総額は100億人民元(約1,650億円)超で、3年間でスタートアップをはじめ100を超えるプロジェクトに投資していくこととしている。

■2018年4月:アポロ1周年 パートナー企業は100社超に

Baiduは2018年4月、北京でテクノロジーカンファレンスを開催し、アポロアライアンスの規模が100社を超えたことなどを発表した。

この日までにアポロはバージョン1.5、2.0、2.5とアップデートを重ね、カメラベースの視覚認識ソリューションでセンサーに係るコストを従来比90%削減可能にしたほか、ビジュアルデバッグツールや高精度マップデータコレクター、クラウドシミュレーターなどより効率的な開発ツールの公開も開始している。

アポロでは、2018年末までに金龍客車がレベル4自動運転バス、Neolixが無人配送ロボットの量産段階に入っている。

■2018年6月:通信分野でChina Mobileと戦略協定締結

2018年6月、BaiduとChina Mobileはデジタルホームやスマート端末、自動運転分野において協力展開していく包括的戦略協力協定に署名した。

自動運転関連では、Baiduは同年10月、「China Mobile 5G Autonomous Driving Alliance」に参画し、同年11月にプロジェクトアポロにChina Mobileを招待するなど相互連携を深め、5G-V2Xやエッジコンピューティングなどの技術や製品の連携を推進している。

■2019年3月:AI人材の育成に向け開発キットをリリース

Baiduは2019年3月、天津大学とAI人材の育成に向け戦略的提携を交わした。調印式に続いて学生向けのレクチャーも行われ、この中で自動運転開発キット「Apollo開発キット」を公開した。同大では2018年4月からBaiduによるAIディープラーニングレクチャーが行われており、戦略的提携により取り組みをいっそう強化していく。

開発キットは、ワイヤー制御車両シャーシからハードウェアセンサーまでの統合ソリューションを提供する。最終的な製品構成フォームは、純粋な電気無人ワイヤー制御シャーシに高度でスケーラブルなハードウェア構造プラットフォーム、マルチセンサーキットで構成されるという。

また、Baiduは2019年4月にも北京航空航天大学と共同で同国初の自動運転大学院プログラムの確立に向け学校運営を行っていくと発表している。

自動運転関連の教育に向けたリソースとプラットフォームを提供し、「自動運転」修士号を創設するなど高度な専門技術を持った人材育成を目指すとしている。

大学における自動運転の研究開発を促進するとともに、次代を担うAI人材の育成を積極的に進めているようだ。

■2019年7月:北京市からT4ライセンス取得

Baiduは2019年7月、北京市から取得が最も難しい自動運転免許「T4ライセンス」が付与されたと発表した。同ライセンスの取得は中国初で、より複雑な環境下で都市道路を自動運転できるようになるという。

T4取得には、北京市の自動運転テストコース「Yizhuang Autonomous Driving Test Field」で5,000キロ以上走行実証を重ね、102のシーンカバレッジテスト全てに合格するほか、車両の能力評価テストを通過するなど厳しい認定基準があるという。

北京市で2018年中に行われた各社の実証では、走行距離ベースでBaiduが全体の9割を占めるなど圧倒しており、アポロ自動運転システムの技術レベルの高さと勢いを感じさせる。

なお、同市の2019年における実証レポートによると、2019年中には13社計73台の車両が計約88万キロを走行しており、このうち52台、約75万キロをBaiduが占めている。

Baiduは2019年末までに長沙や滄州など23都市で走行実証を行っており、総走行距離は300万キロを超えたとしている。

■2020年4月:自動運転タクシー「ApolloGo Robotaxi」サービス開始

Baiduは2020年4月、湖南省長沙市で一般客を対象に自動運転タクシーサービス「ApolloGo Robotaxi」を開始した。セーフティドライバー同乗のもとサービスを提供する形で、同年8月に河北省滄州、同年9月に北京市とエリアを拡大している。

■2020年12月:北京市から無人走行ライセンス取得

Baiduは2020年12月に開催した「アポロ・エコロジカルカンファレンス」で、北京市から無人走行ライセンスを取得したと発表した。同年9月には長沙でも無人ライセンスの発行を受けており、これまでに5万2,000キロを走行済みという。

ApolloGoによる自動運転サービスも、ロボバス含め21万人以上の利用があったとしており、今後3年間でサービスエリアを30都市に拡大していく予定としている。

無人サービスは2021年5月までに北京市でサービスインしており、乗客から利用料金30元(約500円)も徴収しているという。運行エリアは2.7平方キロメートルで、タクシーの乗降ステーションも8カ所設置するなど一定の制限はあるものの、本格的なドライバーレス自動運転タクシーサービスとなる。

各都市が独自設定する走行ルールに左右されるが、許可が下り次第順次他都市へサービスを拡大していくものと思われる。

【参考】無人自動運転タクシーサービスについては「百度の完全無人自動運転タクシー、「中国全土制覇」の現実味」も参照。

■2021年1月:ジーリーとスマートカー製造企業設立

Baiduは2021年1月、吉利控股集団(Geely)の協力のもとインテリジェントEV(電気自動車)を設計・生産する新会社を設立し、スマートカー開発・製造で自動車業界に参入すると発表した。

スマートカーの設計や研究開発、製造、販売、サービスの業界チェーン全体に焦点を当て、自社のAIやインターネット技術をはじめアポロの主要な自動運転機能を活用し、スマートカーの在り方を新たに提案するスマートトラベル時代のイノベーターを目指すとしている。

【参考】スマートカー製造については「中国・百度、自動運転の大本命に!吉利と最新EV車両製造へ」も参照。

■2021年2月:5つの自動運転モデルを公開

広州黄埔区とBaiduは2021年2月、共同で自動運転MaaSプラットフォームを構築し、春祭りイベントに合わせて5つの自動運転モデルを公開した。

イベントでは、ロボタクシーやロボバス、ミニバス「アポロン」といった自動運転移動サービスに加え、無人の小売りや清掃、警備を行うロボットなども導入した。

■2021年4月:20都市の高速道路などをカバーする計画発表

Baiduは2021年4月、上海モーターショーの記者会見において自動運転分野における同社の最新の状況を発表した。同社のレベル4車両によるテストマイレージは1,000万キロを超え、2021年中にアポロのスマートドライビングエリアは20都市の都市道路と高速道路をカバーし、その後2023年までに100都市をカバーする計画という。

アポロ関連の自動運転車の生産は、2021年後半にピークを迎え、毎月新車が発売される予定としている。提携関係では、車載OSなどを含めると、これまでにアポロは世界の70を超える自動車ブランドと協力関係を構築し、600を超えるモデルにアポロのインテリジェント製品が搭載されているという。

■2021年6月:自動運転量産車「アポロムーン」初公開

Baiduは2021年6月、BAIC傘下のEVブランドARCFOXと共同開発した新世代のシェアサービス向け量産自動運転車「ApolloMoon(アポロムーン)」を世界初公開した。コストは48万元(約820万円)で、業界におけるレベル4モデルの平均コストの3分の1という。

最新のテクノロジーにより冗長性を高めるとともに、動的ID認証機能や後部座席の乗客のステータス検出、音声操作、車外に向けたステータス表示、スマートドアなど、移動サービス向けの各機能も盛り込まれている。

計画では、今後3年間で1,000台をフリート化する予定としている。

ApolloMoon=出典:百度プレスリリース
■【まとめ】飛躍するBaiduがWaymoを追い抜く?

アポロを通じた自動運転車の量産化、そして移動サービスの実装など、2017年以後の事業進展が驚異的だ。自動運転タクシーで先行する米Waymoはアリゾナ州からのエリア拡大にもたついており、今の情勢が続けば無人自動運転による移動サービスでBaiduがWaymoを追い抜くことも十分考えられる。

中国では、国策の後押しをはじめ、各都市が競うように自動運転の実用化やスマートシティ化を推し進めているのもアドバンテージとなる。2021年中にどこまでサービスを拡大するのか、改めて注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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