中国・百度、自動運転の大本命に!吉利と最新EV車両製造へ

IT系企業がついに自動車製造へ、業界地図大幅更新か



出典:Jon Russell / Flickr (CC BY-SA 2.0)

中国IT大手の百度(バイドゥ)は2021年1月17日までに、浙江吉利控股集団(Geely/ジーリー)と戦略的パートナーシップを締結し、インテリジェントEV(電気自動車)を設計・生産する新会社を設立すると発表した。

自動運転開発分野において、IT・テクノロジー系企業が開発した自動運転システムを搭載する車両の生産を自動車メーカーに委託する例は多いが、今回の提携は百度が自社グループとして直接自動車の生産に着手することを意味する。







自動車業界への大きな一歩を踏み出した百度の取り組みを追ってみよう。

■吉利との提携内容
百度が新会社を経営、吉利は製造技術を提供

新しいベンチャーに対し、百度はインテリジェントな運転機能、つまり自動運転システムを提供する。一方の吉利は、自動車の設計や製造に関わる専門知識を提供する。新ベンチャーは、子会社として百度が経営権を握るようだ。

百度のロビン・リーCEO(最高経営責任者)は「過去10年間、世界クラスの自動運転サービスのポートフォリオを構築するためAI(人工知能)に多額の投資を行ってきた。中国EVは世界最大の市場になり、EVの消費者は次世代の自動車にインテリジェントなものを要求している」とコメントしている。

なお、百度と吉利は2019年に戦略的提携を交わし、自動運転やコネクテッド技術などAIを中心とした分野で協力関係を構築している。

IT・テクノロジー系企業による自動車業界の変革

百度の新事業は、IT・テクノロジー系企業が実質直営で本格的に自動車製造に乗り出す初の事例になるものと思われる。

すでに自動運転タクシーサービスを展開している米Waymo(ウェイモ)は、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)などから供給された自動車に自動運転システムを搭載する工場を保有しているが、ベースとなる自動車そのものの製造は自動車メーカー任せだ。

近々では、米Apple(アップル)が自動車メーカーと水面下で協議を進めていることも報じられているが、こちらも自動車の生産は自動車メーカーが行うものと思われる。

製造技術の専門性の高さから「餅は餅屋」がスタンダードとなっているが、EV化・自動運転化により自動車そのものの構造が変化の兆しを見せ始めているのも事実で、専用プラットフォームを自ら構築する動きが今後加速する可能性がありそうだ。

なお、自動運転開発企業では、米Amazon(アマゾン)傘下のZoox(ズークス)が2020年12月にロボタクシーをお披露目し、自社生産することを発表している。

■百度のこれまでの取り組み

百度は2017年、自動運転車の開発や実用化に向けソフトウェアプラットフォームをオープンソース化するプロジェクト「Project Apollo(阿波羅)=アポロ計画」を発表し、翌2018年に正式にスタートした。以後、世界中の自動車メーカーや部品メーカー、半導体メーカーらが参画している。

自動車メーカーでは、中国勢のほかトヨタやホンダ、フォード、フォルクスワーゲン、ダイムラー、BMW、ボルボ・カー、PSAグループ、ヒュンダイなどが参画している。

プロジェクト開始後、まもなくして中国バスメーカーの金龍客車と自動運転バスの量産化を開始することを明らかにしている。2018年には、ボルボ・カーとレベル4搭載EVの共同開発を進めることや、フォードがアポロ計画のもと開発を進めた車両の実証を北京で行うことなどが報じられている。

金龍客車のレベル4自動運転バスは、その後2020年に重慶のテストルートで乗客を乗せた形で実用実証が始まっている。レベル4自動運転バスとしては中国初の取り組みという。

2019年には、第一汽車集団(FAW)との提携のもと量産型の自動運転タクシーを開発し、中国内の実証で活用している。2020年末ごろからアポロを搭載した一汽のSUV量産に乗り出すことなども報じられた。

2020年8月には、シンガポールの半導体企業フレクストロニクスと自動運転向けの車載コンピューティングプラットフォームの量産を開始することも報じられた。

2020年9月開催の年次技術会議「Baidu World2020」では、第5世代の自動運転キットをリリースし、自動運転の要件を満たす量産車がまもなく発売されると報告している。

【参考】第一汽車との取り組みについては「百度と一汽、自動運転車を2020年末に量産へ レベル4相当の技術搭載」も参照。金龍客車との取り組みについては「中国初!自動運転レベル4バスをデビューさせた百度 走行監視は遠隔で」も参照。

自動運転タクシーはドライバーレスへ

百度による自動運転タクシーの本格的な実証は2019年にスタートし、2020年4月には、湖南省長沙市で一般乗客を対象とした実証にも着手した。

これまでは、北京や長沙、広州、重慶、滄州などの各都市でセーフティドライバー同乗のもとサービス実証を重ねていたが、2020年9月に長沙、12月に北京で運転席無人の自動運転車の公道実証許可を得たことを発表し、ドライバーレスによる本格的なレベル4サービスへの道を開いている。

中国内では、百度のほかに配車サービス大手のDidi Chuxing(滴滴出行)やAutoX、WeRide、Pony.ai、Momentaといったスタートアップが自動運転タクシーの実証を進めており、実用化に向けた開発・実証競争は激化の一途をたどっている。

いずれも高度な技術を有しているが、将来的な多都市展開を考慮すると、百度の開発ネットワークが功を奏し、一気に勢力を拡大する可能性も考えられそうだ。

【参考】自動運転タクシーに関する取り組みについては「自動運転タクシー、中国で「運転席無人」 続々!百度、北京で公道実験許可」も参照。

■【まとめ】業界におけるIT・テクノロジー企業の躍進を象徴

百度が自前で自動運転車を生産可能な体制を構築すれば、既存の自動車メーカーにとって脅威となる恐れがある。自動運転技術が普及した将来の自動車業界において、IT・テクノロジー系企業がどのような存在となっているか、業界地図の変化の一端が今回の取り組みから垣間見える気もする。

また、アポロ計画においては、海外展開についてどのようなビジョンを持っているかも気になるところだ。今しばらくは巨大市場である中国が対象となるが、参画する各社が自国にアポロの技術を導入することなども考えられる。

Waymo同様、独自の自動運転システムが世界各国の自動車と結びついていくような展開を見せるのか、要注目だ。

【参考】自動運転タクシーについては「無人タクシー(ロボットタクシー)完全解説!自動運転技術で走行」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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