海外でも大規模計画が続々【最前線「自動運転×スマートシティ」 第4回】

海外プロジェクトでも日本企業が活躍!?



国内でスマートシティ化に向けた取り組みが加速しているが、欧州を筆頭に先行する海外でも大小さまざまなプロジェクトが進行している。







この記事では、自動運転技術の導入を視野に入れた海外スマートシティプロジェクトをピックアップし、紹介していく。

■UAE:ドバイ
出典:Smart Dubai公式サイト

UAE(アラブ首長国連邦)のドバイも国全体のデジタルトランスフォーメーションを推進し、スマートシティ化と自動運転技術の導入に積極的だ。

最新のロードマップ「SMART DUBAI2021」では、スマートリビング、スマートエコノミー、スマートガバナンス、スマートモビリティ、スマート環境、スマートピープルを掲げており、スマートモビリティの分野では自動運転やシェアリングサービスによってスムーズな移動や輸送の実現を図るとしている。

自動運転技術や公共交通、シェアサービスによって生産性や効率性を高め交通渋滞を軽減するとともに、スマートパーキングやスマート料金、スマート信号機などを導入してモビリティエクスペリエンスの向上を図る方針だ。

最新技術を有する企業の誘致や技術の導入を促進し、ドバイ交通局(RTA)は自らもこうした技術の社会実装を積極的に推し進めている。また、RTAは2030年までに無人の自動運転交通を達成する目標を掲げ、自動運転に関する世界会議や技術を競うコンテスト「Dubai World Congress for Self- Driving Transport」を主催し、民間の開発を加速している。

すでに自動運転バスや自動運転タクシーなどの実証を進めているほか、空飛ぶクルマ(エアタクシー)の実証なども盛んで、ドバイ警察は2018年から米HOVERSURFの空飛ぶバイク型ドローン「Hoverbike」の導入に向けた取り組みを進めている。また、自動運転技術を活用した「動く交番」の開発を進めるなど、柔軟にアイデアを取り込み、社会実装を図っていく構えのようだ。

中東ではこのほか、サウジアラビアの「NEOM(ネオム)」やアブダビの「マスダールシティ」など、大規模なスマートシティ計画も進行中だ。

■シンガポール

国有面積が狭い都市国家シンガポールは、国を丸ごとスマートシティ化する「スマートネーション」戦略を進めている。人口密度の高さから渋滞の慢性化や環境悪化などが問題視されており、交通分野でMaaSや自動運転の導入を目指す動きも活発だ。

出典:Smart Nation Singapore公式サイト

2015年から国内の研究機関や大学が公道実証を開始し、2016年には米スタートアップのnuTonomy(2017年にAptivが買収)が公道走行許可を得るなど、民間の参入も相次いでいる。同国内に自動車産業はなく、かつ国の取り組みや限られた走行エリアなど実証環境が整っているため、海外勢の進出も盛んなようだ。

日本勢では、2018年にパイオニアが同国で自動運転技術の開発を手掛けるMooVitaと3D-LiDARセンサーを搭載した自動運転シャトルバスの走行実証実験を開始しているほか、2019年には、WILLERのシンガポール子会社が同国テクノロジー企業のSingapore Technologies Engineeringと共同で植物園内での自動運転バスの有償運行サービスに着手している。

■米国:オハイオ州コロンバス
出典:SmartColumbus公式サイト

コロンバスは、低所得家庭の乳児の死亡率改善といった独自目標を掲げ、自動運転の導入を含む交通システムの改善に取り組んでいる。

これは、スマートモビリティをはじめとした新技術を導入し、独自のユニークな交通・運輸課題の解消を目指す米運輸省主催の都市間コンペ「スマートシティ・チャレンジ」による計画。コンペでは同市が優勝し、医療機関の受診を円滑に行うことができるよう、マルチモーダルアプリや管制型のコネクテッド信号機、統合交通データシステム、医療機関の予約プラットフォームなどの導入に取り組むとしている。

同コンペでファイナリストに残ったオレゴン州ポートランドも、住民間の技術格差改善を目指し自動運転技術の導入を検討し、WaymoやLyftなどとの提携を進めているという。

■ドイツ:ベルリン
出典:Smart City Berlin公式サイト

自動車産業が盛んなドイツでは、首都ベルリンが「スマートシティ・ベルリン」構想を打ち出し、早くからスマートシティ化に取り組んでいる。

モビリティ関連では、ドイツ鉄道やダイムラーを中心にMaaS(Mobility as a Service)構築に熱が入っているほか、自動運転バスの実証を2017年に大学病院施設内、2019年には公道に拡大し、社会実装に向けた取り組みを加速している。

欧州有数の自動車メーカーが集まるドイツ。国の方針によっては自動運転の実用化が急加速する可能性を秘めており、引き続き注目したい。

■オーストリア:ウィーン
出典:Seestadt Aspern公式サイト

ウィーンでは、大規模な都市開発プロジェクト「Seestadt Aspern」が進められている。スマートシティプロジェクトの一環で、郊外の飛行場跡地を活用し、オフィスや2万人規模の住居などを建設する計画という。

自家用車の所有を抑制し、公共交通の利用を推進するほか、自動運転技術の導入にも前向きで、ウィーン市交通局は仏Navya(ナビヤ)の自動運転シャトルで駅と市街地間約2キロのルートを低速運行する実証に着手している。

また、自動運転車などの運行を円滑にするため、独シーメンス系のSiemens Mobilityが開発した路車間通信システム(V2I)の導入に向けた取り組みも進めている。

■アイルランド:クレア州シャノン
出典:ジャガー・ランドローバー・ニュースリリース

アイルランドでは、非営利団体「Future Mobility Campus Ireland(FMCI)」が英自動車メーカーのジャガー・ランドローバーと連携し、自動運転をはじめとした将来のモビリティ開発を促進する大規模なテストベッド施設「SMART CITY HUB」の開設に着手することを2020年11月に発表した。

エコシステムを構築し、自動車業界をはじめ各種研究機関や自治体間のコラボレーションやイノベーションを促進していく。総面積は不明だが、スマートジャンクションとコネクテッドカーパークなどを含むハブ施設が公道12キロに及ぶことが明かされており、規模の大きさをうかがわせる。

テストベッドには、全体に複数のセンサーを配置し、高精度のロケーションシステムやデータ管理・制御センター、自動運転式駐車場などを建設する。テスト車両も配備し、多くの研究機関の参加を募っているようだ。

イメージとしては、トヨタのWoven Cityに近いのかもしれない。トヨタが住居を含む都市を一から作り上げるのに対し、SMART CITY HUBは自動車の将来技術の実証に特化した空間を作り上げる印象だ。ともに実証を加速するエリアとして、今後の計画に要注目だ。

【参考】SMART CITY HUBについては「英ジャガー、自動運転を試験する「スマートシティHUB」開設へ」も参照。

■中国:深セン

先端技術国家を目指す中国は、2010年ごろにスマートシティのパイロット地区として深センと武漢を選定して以来、各市でスマートシティ化の取り組みを推し進めている。

特にIT系企業が集積する深センでは、開放された公道実証エリアで多くのテクノロジー企業やスタートアップが実証を重ねている。

2020年末には、実用実証を進めるAutoXがドライバーレスの無人自動運転タクシーの公道トライアルを開始しており、着々と技術や経験値を高めている。また、テンセントが同市臨海部の埋め立て地で「Net City(ネット・シティ)」計画を立ち上げた。2平方キロメートルほどのエリアに自社施設や住居などを建設し、一部区間は自動運転車などの走行専用道路にする方針のようだ。

【参考】AutoXの取り組みについては「AutoXの自動運転タクシー、深圳で「安全要員なし」で!交通当局が許可」も参照。

また、2017年には、国家プロジェクトとして新たなスマートシティ構想を打ち出し、上海や北京、重慶など主要6都市近郊に次世代都市を構築する取り組みも進めている。

北京の南西に位置する雄安新区では、2,000平方キロメートルに及ぶ開発面積を予定しており、道路をはじめまちの至るところに設置したセンサーデータを生かし、自動運転やスマートホームなどの実用化を目指す方針だ。北京市と雄安新区を結ぶ全長97キロの高速道路も、片側8車線のうち2車線を自動運転専用レーンとする計画が報じられている。

【参考】テンセントの取り組みについては「「島」ごと自動運転特区に?そうすれば実験場にもショーケースにもなる」も参照。中国の取り組みについては「日本は中国を見習うべきか…自動運転の環境整備、躊躇一切なし」も参照。

■ベトナム:ハノイ郊外
出典:BRG公式サイト

ベトナムの首都ハノイ郊外では、272ヘクタールの区域でスマートシティプロジェクトが進行しており、日本企業も多数参加しているようだ。

2020年11月には、住友商事、NTTコミュニケーションズ、東京電力パワーグリッド、日本電気(NEC)、博報堂、三菱重工エンジニアリングが共同事業化の検討に向けコンソーシアムを組み、開発を推進していくことを発表している。新たなスマートシティでは、自動運転バスの導入も検討されているようだ。

ベトナムではこのほか、北部のフンイエン省で進められているスマートシティプロジェクトにおいて、ヤマハ発動機が同国内企業と協業し、電動小型車両を活用した自動運転システムの共同開発を目的に実証実験を行っているようだ。

【参考】ヤマハ発動機の取り組みについては「ヤマハ発動機、ベトナムで自動運転システムの実証実験」も参照。

■【まとめ】自動運転がスタンダードな存在に

スマートシティプロジェクトは、地域が抱える課題をデジタルトランスフォーメーションの概念を取り入れて解決を図っていくことが本来の主旨となり、交通課題を抱える多くの地域で自動運転の導入が検討されている。

この数年で自動運転技術の社会実装が鮮明となってきたため、新たに同技術の導入を開始するプロジェクトも今後増加していくものと思われる。人やモノの移動をつかさどる重要技術であることから、スマートシティにおいてはスタンダードなものへと存在感を高めていく可能性が高そうだ。

>>特集目次

>>第1回:技術の活用、医療や防犯でも!

>>第2回:官民連携で取り組み加速!

>>第3回:トヨタWoven Cityが革新牽引

>>第4回:海外でも大規模計画が続々

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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