官民連携で取り組み加速!【最前線「自動運転×スマートシティ」 第2回】

羽田では自動運転バスの定常運行がスタート



国の音頭のもと、スマートシティ化に向けた取り組みが全国で加速している。取り組みの多くは交通課題の解決に向けた事業を盛り込んでおり、MaaS(Mobility as a Service)をはじめ自動運転技術の導入を目指す動きも活発だ。







この記事では、国の「スマートシティモデル事業(プロジェクト)」に選定されたエリアの中から、明確に自動運転の導入を図る事業を盛り込んだプロジェクトをピックアップし、紹介する。

■スマートシティモデルプロジェクトとは?

先進的技術をまちづくりに生かすスマートシティの早期実現に向け国土交通省が2019年度にスタートした事業で、全国の牽引役となる先駆的な取り組みを行う「先行モデルプロジェクト」と、国が重点的に支援を実施することで事業の熟度を高め、早期事業化を促進する「重点事業化促進プロジェクト」がある。

先行モデルプロジェクトは、2019年度に15事業、2020年度に7事業がそれぞれ選定された。一方の重点事業化促進プロジェクトは、2019年度に23事業、2020年度に5事業が選定され、スマートシティ化に向けた取り組みを加速している。

【参考】スマートシティプロジェクトについては「スマートシティプロジェクト、国交省が追加選定!自動運転やMaaSの取り組みも」も参照。

■Uスマート推進協議会(栃木県宇都宮市/2019年度先行モデルプロジェクト)
出典:国土交通省

宇都宮市では、整備を進めているLRT(ライトレールトランジット)を軸にAI運行や自動運転などのモビリティと5Gや生体認証といったホスピタリティ、地域新電力やバーチャルパワープラントなどのエネルギーを掛け合わせ、誰もが自由に移動でき、便利で楽しく過ごせるクリーンなまち「地域共生型スマートシティ」の実現に取り組んでいる。

2019年度に先行モデルプロジェクトに選定され、宇都宮大学や早稲田大学、KDDI、群馬大学と連携し、観光地の大谷地域で自動運転が可能なグリーンスローモビリティによる地域内の回遊促進と、ビッグデータの活用による人流データの収集分析の実証実験を実施した。

2020年度は観光型MaaSプロジェクトの構築に向けた実証実験を行い、2021年度以降もグリーンスローモビリティなどの実装に向けた取り組みを推進していく。

自動運転は、スマート・モビリティサービス構築に向け、地域内交通へのシステム実装による効果や技術の進歩を踏まえ、フィーダー交通などへの導入について2023年度以降に検討していく方針だ。

▼取り組み詳細
https://www.mlit.go.jp/scpf/projects/docs/smartcityproject_mlit(1)%2004_utsunomiya.pdf

■毛呂山町スマートシティ協議会(埼玉県毛呂山町/2019年度先行モデルプロジェクト)
出典:国土交通省

毛呂山町は、人口減少時代における行政サービスの維持や暮らしやすさの向上を目標に、既存産業と公共サービスにICT技術などの積極的な導入を進めている。

計画では、自動運転バスの社会実装や自動運転ドローンによる農業支援、デジタルガバメントの実現、既存産業の技術の世代交代等を通じて新産業の集積を推進することとし、自動運転バスは公共交通のないニュータウンから最寄り駅まで運行させる予定だ。

2019年12月にLPWA(Low Power Wide Area)通信によるバスロケーションシステム実証実験に着手したほか、2020年3月には自動運転バスの実証も行っており、11人乗りのバスで往復2.6キロの公道を走行している。

▼取り組み詳細
https://www.mlit.go.jp/scpf/projects/docs/smartcityproject_mlit(1)%2005_moroyama.pdf

■柏の葉スマートシティコンソーシアム(千葉県柏市/2019年度先行モデルプロジェクト)
出典:国土交通省

柏市の都市計画に基づき2000年から273ヘクタールに及ぶ区画整理事業が始まったエリアで、国際キャンパスタウン構想など早くから持続可能性や都市再生の取り組みを進めている。スマートシティ化に向けた取り組みでは、民間型データプラットフォームや公共型データプラットフォームの構築や分野横断型のサービス創出などに取り組んでいる。

自動運転関連では、駅を中心とする地域内移動の利便性向上を目指し、2019年11月から5カ月間の長期にわたり、つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅から東京大学柏キャンパス間の約2.6キロの一部区間において、自動運転バスによる営業運行実証を行った。

先進モビリティ株式会社が開発した自動運転システム搭載の事業用車両バスを使用し、セーフティドライバー同乗のもとシステムが車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行するレベル2(※国の呼称における「運転支援」)相当で実証を重ね、レベル4(※国の呼称における「自動運転(限定領域)」)以上を見据えた走行性・安全性を評価した。

新たな自動運転バス車両の開発も想定しており、同実証実験終了後も新車両を導入し、継続的に実証行っていく方針だ。

▼取り組み詳細
https://www.mlit.go.jp/scpf/projects/docs/smartcityproject_mlit(1)%2006_kashiwanoha.pdf

【参考】柏市内における自動運転実証については「東大柏キャンパス含む区間で自動運転バス実証!柏ITS推進協議会が実施」も参照。

■「VIRTUAL SHIZUOKA」が率先するデータ循環型SMART CITYコンソーシアム(静岡県/2019年度先行モデルプロジェクト)
出典:国土交通省

静岡県では、3次元点群データを活用してサイバー空間に仮想3次元県土「VIRTUAL SHIZUOKA」を構築し、各種コンテンツと連携・利活用を促進することで、自動運転をはじめとした新技術による社会的課題の解決やスマートな循環型の地域づくりを目指す取り組みを進めている。

県は「しずおか自動運転ShowCASEプロジェクト」のもとダイナミックマップ基盤と2017年に協定を締結し、県管理道路の3次元点群座標データのオープンデータ化に早くから着手している。構築した3次元点群データからダイナミックマップを作成し、柔軟に自動運転サービスの導入を促進していく方針だ。

自動運転導入に向けては、都市部では移動自体を楽しむサービスや渋滞回避を可能とする交通システムの構築、効率的な大量輸送、郊外ではラストマイルサービスの提供や既存交通を補完する端末交通サービスの実現、過疎地域では自動運転車両の共同所有や病院や買物施設などへの移動支援をそれぞれ想定している。

実証では、袋井市に実験フィールドを設け、自動運転車両の開発や電磁誘導標、急速充電設備、ソフトウェア、情報通信といった関連機器の企業間連携による実証実験を実施しているほか、沼津市や下田市、松崎町などでもバス型やタクシー型、超小型のモビリティ導入に向け、自動運転やAIデマンドシステムなどの公道実証を進めている。

▼取組詳細
https://www.mlit.go.jp/common/001341978.pdf

【参考】静岡県の取り組みについては「静岡県×自動運転、プロジェクト継続!トヨタWoven Cityも着工へ」も参照。

■高蔵寺スマートシティ推進検討会(愛知県春日井市/2019年度先行モデルプロジェクト)
出典:国土交通省

春日井市は、初期の居住者が高齢化している高蔵寺ニュータウンに自動運転を含む新たなモビリティサービスを導入し、高齢化社会における車以外での外出促進と運動機会やコミュニケーション機会の増加を図り、ニュータウンの魅力向上と持続可能なまちの実現を図る取り組みを早くから進めている。

2017年度に歩行支援モビリティサービスや遠隔型自動運転、名古屋大学COIによる「ゆっくり自動運転」、自動運転デマンド交通の実証などを実施し、自動運転分野における取り組みを加速させている。

スマートシティ化に向けた計画では、自動運転導入に向けたバス専用レーンの整備やラストマイル自動運転の長期実証、MaaSアプリを活用した相乗りタクシーのオンデマンド対応、名古屋大学が提案するソフトウェアプラットフォーム「交通社会ダイナミックマップ」の活用などを予定している。

▼取組詳細
https://www.mlit.go.jp/scpf/projects/docs/smartcityproject_mlit(1)%2011_kouzouji.pdf

■羽田空港跡地第1ゾーン整備事業(東京都大田区/2019・2020年度重点事業化促進プロジェクト)
出典:国土交通省

羽田空港隣接地の京浜臨海部に位置する羽田空港跡地第1ゾーンでは、BIM(Building Information Modeling)を活用したデータの統合・可視化・分析が可能な空間情報データ連携基盤を整備し、先端的技術の協調領域とすることで、さまざまな実証に適したテストベッドの形成を目指す取り組みを進めている。

モビリティ関連では、自動運転バスや車いすなどのスマートモビリティをはじめ、自動配送ロボットや清掃ロボットなどのスマートロボティクス、AI観光案内ロボットなどのスマートツーリズムの導入に向けた実証を進めている。

2020年9月に自動運転バスによる定常運行を開始したほか、2021年度にはパーソナルモビリティの自動走行やロボット管制システムの一部導入、物流・清掃・観光案内などのロボット導入を進めていく方針だ。

▼取り組み詳細(P3を参照)
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001356544.pdf

【参考】羽田空港跡地における取り組みについては「HANEDA INNOVATION CITYで、仏製自動運転バスが定常運行!」も参照。

■熊谷スマートシティ推進協議会(埼玉県熊谷市/2020年度重点事業化促進プロジェクト)
出典:国土交通省

熊谷市は、AI・IoTなどのデジタル技術を活用した暑さに負けない快適なまちづくりと、ポストコロナ時代のライフスタイル提案を見据えたスマートシティの実現に向けスマートシティ化に取り組んでいる。

自動運転関連では、群馬大学所有の自動運転システム搭載車を活用し、2020年11月に熊谷駅と熊谷ラグビー場を結ぶ1.4キロの区間で自動運転バスの隊列走行の実証実験を行っている。イベント開催などの需要増大時と平常時の需要に見合った配車や、複数路線間で車両やドライバーを融通することを可能にするシステムとして注目だ。

▼取り組み詳細
https://www.mlit.go.jp/scpf/projects/docs/smartcityproject_mlit(4)%2003_kumagaya.pdf

■うめきた2期地区等スマートシティモデル事業(大阪府大阪市/2019年度重点事業化促進プロジェクト、2020年度先行モデルプロジェクト)
出典:国土交通省

大阪市では、大阪駅前の大規模開発エリア「うめきた2期地区」や国際集客拠点を目指す夢洲地区において、最先端技術の導入・実証実験の実施を行いやすいグリーンフィールドの構築や、豊富なデータの利活用を実現するプラットフォームの整備などに取り組んでいる。

モビリティ関連では、交通弱者やインバウンドへの対応、ラストワンマイルの移動快適性の確保、万博開催・統合型リゾート(IR)開業(予定)などに向け、自動運転バスやパーソナルモビリティの導入に取り組む方針だ。

▼取り組み詳細
https://www.mlit.go.jp/scpf/projects/docs/smartcityproject_mlit(2)%2013_umekita.pdf

■スーパーシティ×自動運転

スマートシティ化を目指すプロジェクトとは別に、国は「スーパーシティ」実現に向けた構想を固めている。個別分野に留まらず生活全般にまたがる最先端技術の導入や、未来社会での生活を先行して現実する形で実証を進めることで「丸ごと未来都市」を目指す内容だ。

いわばスマートシティの上位版で、住民参画のもと2030年頃に実現される未来社会での生活を加速し実現する。さまざまな取り組みを促進するため、2020年5月には国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案、通称「スーパーシティ法案」が成立し、新たな規制緩和に向けた土台が築かれた。

スーパーシティ法案のもとでは、例えば道路交通法や道路運送車両法といった法規制の緩和を受け、自動運転の実用化に向けた実証を行うことができるほか、電波法などを含め関連法の規制緩和を一括許可する仕組みなども設けられている。

具体的にどのように運用されていくかは未知数だが、先端技術の実証を行う上で枷となる法規制の円滑な緩和とともに、一時的ではなく継続的に実用実証を可能とする環境づくりに高い期待が寄せられるところだ。

【参考】スーパーシティについては「自動運転も前進!成立した「スーパーシティ法」とは?」も参照。

■【まとめ】スマートシティとともに自動運転導入の動きも活発化

スマートシティモデルプロジェクト選定エリアの中には、もともと自動運転技術の導入に向けた取り組みを進めていた自治体も多く、自動運転とスマートシティの関連性や相性の良さがうかがい知れる。

こうした先行モデルを参考に今後もスマートシティ化を目指す動きは活発化するものと思われるが、こうした動きが自動運転の導入を目指す取り組みも促進する面がある。

自動運転バスなどはすでに実用実証の段階に入っており、2020年代半ばまでに一部エリアで無人運行が始まる見込みだ。1つの成功例をきっかけに他地域への波及が一気に進行することも考えられるため、各地域の先進的な取り組みをしっかりと応援したい。

>>特集目次

>>第1回:技術の活用、医療や防犯でも!

>>第2回:官民連携で取り組み加速!

>>第3回:トヨタWoven Cityが革新牽引

>>第4回:海外でも大規模計画が続々

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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