ラストワンマイルとは? 課題解決に向け自動運転技術など活用

シェアサービスの応用も視野に


運輸業界が抱えるラストワンマイルの課題解決に向け、自動運転技術やMaaS(Mobility as a Service)分野の積極的な活用が検討されている。物流における宅配便や地方における高齢者の移動手段など、今後も必要とされるサービスの存続に向け、官民一体となったサービスや技術の実証実験が各地で進められている。社会実装も近い将来行われる予定だ。







ラストワンマイルの課題解決に向けどのような取り組みが行われているのか、現況をまとめてみた。

■ラストワンマイル(ラストマイル)の意味

ラストワンマイルはもともと通信業界で用いられていた言葉で、インターネット普及当初はすでに敷設されていた電話線を活用して通信を行っていたが、通信速度や容量を上げるため新たな手法が必要となり、光ファイバー網など新たなケーブルを各地の通信拠点や幹線からどのように各家庭まで引き込むかといった問題が浮上し、ラストワンマイル問題として取り沙汰されるようになった。直訳すると「最後の1マイル」となり、「1」を省いてラストマイルと言うこともある。

このラストワンマイルという言葉は、同様の問題を抱える業界にも転用されることになり、運輸業界では主に「物流」と「ヒトの移動」における課題に対して用いられている。物流におけるラストワンマイルは、各地方にある物流センターなどの最終的な配送拠点から、各家庭や専用ロッカー・宅配ボックスなど消費者に商品を受け渡すまでの区間を指す。また、ヒトの移動においては、駅などの交通拠点から自宅までの区間における移動手段を指す。

■ラストワンマイルに関する課題

物流業界では近年、インターネット通販などEC(電子商取引)利用者の増加により宅配便取扱数が激増しており、ドライバー不足などを背景に消費者にどのように荷物を受け渡すかといった問題が深刻化している。

国土交通省の発表によると、宅配便等取扱個数は2012年度に35億2600万個だったのに対し、2017年度には42億5100万個と5年間で約20%増加している。また、宅配便の再配達率は約15~20%で推移しており、これを労働力に換算すると年間約9万人のドライバーの労働力に相当するという。

労働力不足や配送料金における価格競争などで労働環境の悪化が懸念されているほか、再配達はCO2排出量の増加といった環境問題にまで発展している。

一方、ヒトの移動においては、特に過疎地でバスやタクシーなどが不足し、高齢者らの日常的な買い物や通院の足など近距離の移動サービスをどのように確保するかが課題となっており、駅や病院、スーパーなどから自宅をつなぐラストワンマイルの在り方が検討されている。

国土交通省はこうした課題解決に向け、2020年度をめどに自動運転を活用したラストワンマイルの移動サービスの実現を目指すこととしている。

■ラストワンマイルに関する取り組み
物流における自動運転導入に向けた動き

ラストワンマイルにかかる労働を無人化することで課題解決を目指す動きが広がっている。国内配送大手のヤマト運輸株式会社と株式会社ディー・エヌ・エーは2017年4月から約1年間にわたり、自動運転社会を見据えた次世代物流サービスの実現を目指すプロジェクト「ロボネコヤマト」を実施した。

第1段階として、ドライバーが荷物の発送や受け取りに関与せず、利用者自身が荷物を車両から取り出すサービスを実証したほか、2018年4月には、アイサンテクノロジー株式会社の協力のもと、同社の自動運転車両を用いて安全管理のためドライバーが座った状態での自動運転走行や、封鎖した公道上をドライバーレスの無人で走行する実証実験などを行った。

一方、ロボット開発や自動運転開発を手掛ける株式会社ZMPは、自動走行する宅配ロボット「CarriRo Delivery」の開発を進めている。2018年7月に発表した量産前モデルは、屋内外での走行が可能で、65×95×96センチメートルのサイズに最大50キログラムを積載できる。最高時速は6キロメートルで、5センチメートルの段差も乗り越えることができる。

スマホの注文画面のQRコードを読み取って積載されているロッカーのカギを解除する仕組みで、店舗での注文管理や各ロッカーへの商品積込をサポートする店舗用アプリやユーザー用アプリ、各ロボットの位置やステータスの管理をはじめ、緊急時の遠隔操作が可能な遠隔監視システムを用意している。

2018年7月から2019年2月までの間、同モデルを用いた日本初となる宅配ロボットによるデリバリーサービスの実証実験を、株式会社ローソン、慶應義塾大学SFC研究所の協力のもと実施している。

また、自動配送ロボットを開発するスタートアップ・株式会社Hakobotも2018年5月に産声を上げている。2018年11月には、同社のアドバイザーを務める堀江貴文氏主催のイベント「ホリエモン祭 in 名古屋」で自動配送ロボットの実証実験用の初号機が披露された。

ロボットの詳細は明かされていないが、GPSなどの位置情報を元に自己位置を特定し、センサーや画像認識などにより周囲を把握しながら走行する自動配送ロボットで、実証実験を重ねて早期実用化を図ることとしている。

物流サービスにおけるMaaS分野の取り組み

佐川急便は、北海道内の有限会社HEYタクシーと提携し、佐川急便旭川営業所で扱う荷物をHEYタクシーのドライバーが乗客利用が比較的少ない日中を利用して個別配送するという「貨客混載」の仕組みを導入している。

人手不足に悩む物流業界にとって貨客混載に対する期待は大きく、タクシー側も新たな収益源として事業の柱になる可能性もあることから、導入に積極姿勢を示す事業者も多そうだ。

また、シェアリングサービスを活用した動きも活発化し始めている。海外ではライドシェアの要領で荷物の運搬を請け負うシェアリングサービスなどがあるほか、日本国内では株式会社docomap JAPANが運送業界における空車情報を全国のトラックで共有するプラットフォームを展開。また、CBcloud株式会社は荷主とドライバーをマッチングするアプリ「PickGo」を手掛けており、運送業の効率化を図っている。

地方の足確保へ 国交省や経産省主導で実証実験進む

ヒトの移動におけるラストワンマイルは、国土交通省や経済産業省主導のもと、限定された地域において自動走行技術を搭載した小型モビリティを使った新たな移動サービスの提供を目指し、各地で実証実験が行われている。

国土交通省は、中山間地域における人流・物流の確保のため道の駅などを拠点とした自動運転サービスの実証実験に取り組んでおり、ビジネスモデルの在り方など協議を進め2020年までの社会実装を目指している。

2017年度は技術的な検証を実施する地域指定型5カ所、主にビジネスモデルを検討する公募型8カ所の計13カ所で実証実験などを実施。自動運転レベル4(高度運転自動化)で自律走行可能な株式会社ディー・エヌ・エーの6人乗りバスや、専用空間でレベル4、混在交通下ではレベル2(部分運転自動化)で走行する先進モビリティ株式会社の20人乗りバス、ヤマハ発動機株式会社の7人乗り乗用車、アイサンテクノロジー株式会社の4人乗り乗用車を使用し、住民らの移動のほか、食料品の配送実験や一般車と自動運転車が円滑に通行するための道路構造の要件の検証などを実施した。

【参考】道の駅を活用した実証実験については「道の駅を自動運転サービスの拠点化に 国交省が検討、DeNAなどが実証実験」も参照。

また、ディー・エヌ・エーは、スマートモビリティの車体開発を手掛ける仏ベンチャー企業EasyMile社の無人運転バス「EZ10」を利用した交通システム「Robot Shuttle(ロボットシャトル)」を各地で展開している。

最大12人が乗車できるEVで、あらかじめ作成した地図データをもとに走行ルートや速度、停車位置などを設定し、自動で走行する。ラストワンマイルの近距離移動を目的としており、2016年8月に商業施設の敷地で行われた実証実験を皮切りに、大学キャンパスや動物園、道の駅など10カ所以上で走行し、延べ5000人以上が利用している。

■自動運転技術による無人化進む 事業モデル構築で実現に向け前進

自動運転車やロボット配送など無人化を図る動きが主流だが、今後はシェアリングサービスの観点などを生かした新たなサービスも進化する可能性が高い。また、技術面の確立と同時に、ビジネスとして成立する事業モデルの構築が必要となる。そういった意味では、ヤマトやディーエヌエーのように民間主体で行っている取り組みなどは特に実現性が高そうだ。

また、ラストワンマイルをめぐっては、自動運転関連以外でも、物流面において受取専用ロッカーや店舗受け取りサービス、玄関先に設置する宅配ボックスなどさまざまな対策が行われており、早期解決に向けてはサービスの受容者側の協力も重要であることも付け加えておく。







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