【ZMP特集#4】話す宅配ロボ CarriRo DeliveryとTiCA デモは卒業、商業化へ—AI自動運転最前線・イノベーション・自動車革命

品川インターシティでの実証実験成功


連載4回目では宅配ロボット「CarriRo Delivery」に焦点を当てる。東京都港区の商業施設「品川インターシティ」での実証実験の様子のほか、電通国際情報サービスのオープンイノベーションラボが開発する遠隔コミュニケーションデバイス「TiCA」にも注目だ。







私はカフェに取りに行ったコーヒーを届けようと、建物の中をゆっくり進んでいた。そのとき、目の前に「ヒト」がいることが分かった。「申し訳ありません。通して頂けますか」とお願いしたら、そのヒトは「ごめんなさい。少し待ってもらえますか」と答えた。私は「ゆっくりご準備ください」と答えてその場でじっと待ち、そのヒトが去った後ゆっくりとまた前に進んだ。

自動運転ベンチャーZMPなどが東京都港区の品川インターシティで行った自動走行宅配ロボット「CarriRo Delivery」の社会実験。会話能力も追加実装されたCarriRo Deliveryの視点でこの実験での一場面をとらえると、こうなる。

下記の動画の1分35秒付近を見てほしい。CarriRo Deliveryの進む先にいた「ヒト」とは、しゃがんでベビーカーを直している女性だ。CarriRo Deliveryはその女性とのコミュニケーションを見事に成立させ、宅配ロボットが社会の中で適応していけることを実証した。

ZMPのCarriRo Deliveryは既に実用に耐える基幹技術を獲得していると言える。そして追加実装された「TiCA」と呼ばれる遠隔コミュニケーションデバイスの有用性が、この社会実験で証明された。

■CarriRo Deliveryに秘める潜在可能性

CarriRo Deliveryは宅配ボックスを搭載し、自動運転の「目」とも呼ばれるLiDAR(ライダー)とカメラで周囲環境を360度認識しながら、最大時速6キロで自動走行するロボットだ。必要に応じて遠隔操作が可能であることも特徴とされている。

CarriRo Deliveryの丸みを帯びた形状は可愛らしく、子供の頃に遊んでいたおもちゃのようなチャーミングさもある。「ロボット」というと一般的には無機質なイメージを持つ人もいるが、そのイメージとは反対の可愛らしさだ。

2018年7月18〜20日に東京都内で開催されたZMPフォーラムで、CarriRo Delivery事業企画に携わる今西暢子氏は、これまでの実証実験と今後の展望について説明。「多くの宅配業者を支援し、買い物などの利便性向上のためにも、さらに可能性を広げたい」と意欲を示した。

今西氏は続いて、ZMPが宅配寿司大手「銀のさら」とともに2017年7月に実施した実証実験についても説明。深刻な人手不足が課題となっている宅配業界。宅配ロボットが集配施設から顧客宅までの「ラストワンマイル」で活躍することで、配達員不足を補い、消費者の利便性を高める——。CarriRo Deliveryのこのような活躍が宅配業界の課題を解決することにつながると期待されていると話した。

また、2017年10月には森ビル株式会社と共同で、六本木ヒルズ内の物流センターや店舗から森タワー内オフィスに書類などを配達する実験を実施したことも紹介した。

宅配寿司大手「銀のさら」との実証実験について説明する今西氏=撮影:自動運転ラボ
■TiCAが実現する音声コミュニケーション

冒頭で説明した社会実験は、こうして活躍するCarriRo Deliveryにさらに「音声とLEDによる対人コミュニケーション」などの機能を有した遠隔コミュニケーションデバイス「TiCA」を実装して実施された。

TiCAは、株式会社電通国際情報サービスのオープンイノベーションラボ(イノラボ)と東京大学の暦本研究室(暦本純一教授)が共同開発している技術だ。ZMPフォーラムではイノラボのチーフプロデューサーである森田浩史氏も登壇し、出席者にその技術の魅力を伝えた。

TiCAは、インターネットにつながることで能力を拡張させる「IoA(Internet of Abilities)」をコンセプトに据え、離れた場所にいる人間やロボットを対象にして開発されている。人でもロボットでも装着可能なウェアラブルデバイスとしてその任を果たす。

■救え「ランチ難民」!サービスに賛成「82%」

CarriRo DeliveryとTiCAの社会実験が行われた品川地域は日本有数のオフィス街で、近隣のオフィスで働く人は20万人と言われている。そのため品川では昼食時間帯はどの店も混雑し、「ランチ難民」がたくさんいる。

森田氏はこれらのことに触れた上で、実験地として品川を選んだ理由について「オフィスへのランチやコーヒーの宅配サービスに大きなニーズがあった」とした上で、人とロボットのコミュニケーション技術の検証にも大きく貢献したことを説明した。

森田氏は「多くの人は『TiCA』からの接触に戸惑いを覚えつつ、コミュニケーションが成立し、TiCAから感謝された時には喜びの感情が芽生え、みな好意的な印象を持ってくれた」と実験結果を報告。被験者や通行人に対して行ったアンケートでは、このサービスに賛成すると答えた人は実に82%にも上ったという。

ZMPとTiCAがタッグを組んで実施した今回の社会実験。近い将来、あなたも両社の技術力と英知の結晶に話しかけられる日がやって来る。

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