【ZMP特集#1】「機は熟した」自動運転実用化へ デモは卒業、商業化へ—AI自動運転最前線・イノベーション・自動車革命

東京オリンピック開催の2020年に照準


「デモは卒業、商業化へ」。自動運転ベンチャーZMPの代表取締役社長、谷口恒氏は企業や報道陣など招いて2018年7月に開いた「ZMPフォーラム」の壇上、拳を強く握りしめながら何度もこの言葉を繰り返した。連載初回では谷口社長のスピーチを基に、ZMPの事業戦略とビジョンに迫る。







ZMPは2001年の創業以来、「Robot of Everything」というミッションを掲げてきた。ミッションの副題は「人が運転するあらゆる機械を自動化し、安全で楽しく便利なライフスタイルを創造する」。ロボティクスを通じてどう社会に新たな価値を生み出せるかを追求し続けてきた。

そしてZMPは今年、2013年から提唱し続けている自動運転タクシー構想について、実用化に向けて大きく舵を切った。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催時に合わせての自動運転実現に照準を定めるZMP。谷口社長の開会挨拶から、その知られざる開発史と開発の最前線に迫ってみよう。

■自動運転の「目」と「頭脳」を並行開発

開会挨拶に臨んだ谷口氏は「デモは卒業、商業化へ」と映し出されたスクリーンを背に、「ベタで昭和な感じのキーワードですが」と笑顔で断りを入れた上で、人間共生型ロボットを開発する世界初のベンチャー企業としての歩みや今後のビジョンを語った。

先端技術に対する飽くなき知的好奇心からか、壇上で話す谷口社長はときに楽しそうにみえ、ときにその真剣な眼差しから強い覚悟が透けて見えた。

ZMPは、自動運転・自律移動の「目」と「頭脳」の自社開発を並行して手掛け、いまは目を超高感度ステレオカメラシステム「RoboVision(ロボビジョン)」、頭脳を基本ソフト「IZAC(アイザック)」に担わせている。この2つを搭載したのがこれから紹介する「RoboCar(ロボカー)」だ。

自動運転の「目」となるRoboVisionと「脳」となるIZACについて説明する谷口社長=撮影:自動運転ラボ
■ちっちゃなRoboCarに、大きな意味

2009年、ZMPはミニカーの出荷を開始した。その名も「RoboCar 1/10」。このミニカーの発表が、ZMPを日本を代表する自動運転ベンチャーたらしめた最大の出来事だったとみている有識者も多い。なぜか。

それはこのRoboCar 1/10が、自動運転車が公道実験をする前のシミュレーターとしての役割を果たし、日本の自動運転開発史の前進に大きく貢献したからだ。

小さく自動運転を成功させて、一般サイズの車両にその技術を搭載していく——。この流れは日本を含む世界のメーカーから支持され、自動車部品大手の独コンチネンタルでは若手エンジニアの教育に使われるほどの信頼を集めた。

RoboCarは現在、自動運転技術開発プラットフォームとして既にシリーズ化され、ZMPを代表するプロダクトの一つになっている。詳細の説明は次以降の連載に譲るが、今回のフォーラムではその最新モデルも発表され、注目を集めた。

■CarriRo Deliveryが果たす役割

このRoboCarと一緒に使われることで、物流・配送において大きな相乗効果を生むプロダクトもZMPは手掛けている。それが「CarriRo Delivery(キャリロデリバリー)」という宅配ロボットだ。

公道ではRoboCarが配送を担い、車が使えない場所ではCarriRo Deliveryが活躍すれば、全ての工程をロボットで完結させることができる。工場・倉庫などで台車型の物流支援ロボットとして利用される「CarriRo(キャリロ)」も含め、どちらもZMPの自動運転技術が搭載されている。

今回のフォーラムではCarriRo Deliveryの最新モデルも発表された。実サービスに向けて、デザインやユーザインターフェース(UI)などをフルモデルチェンジし、サイズの小型化によって走行環境への適応力も向上させた。

フォーラム開催中、CarriRo Deliveryを含むさまざまなプロダクトの技術についての展示もあった=撮影:自動運転ラボ
■谷口社長、陸に続いて「空」も見据える

開会挨拶でZMPの開発史と今後のビジョンに触れた谷口社長。谷口社長は、自律型無人航空機の開発を手掛けるエアロセンス株式会社の代表取締役も兼任しており、スピーチでは「今後は三次元移動の舞台となる『空』にも着目し、滑走路なしでより早く遠くまで飛ばせるようにする構想もある」と力強く語った。

ニーズのあるところ全てでサービスを展開していく——。陸のみならず空もフィールドに、谷口社長は「移動のトータルソリューション」を提供する考えだ。

【参考】エアロセンス株式会社は、ソニーとZMPが共同で設立した会社で、それぞれの強みを活かして自律型無人航空機の開発などを進めている会社だ。ドローンを使った測量サービスや高い場所の点検サービスを提供している。詳しくは「ソリューション—エアロセンス株式会社」も参照。

■機は熟した…さぁいざ商業化へ

今回のZMPフォーラムでは、スタッフ全員がZMPの自動運転構想がデザインされたTシャツを着用していた。東京芸術大学がデザインし、谷口氏が細部にこだわって監修したという。こうした細部へのこだわりも、ZMPを日本そして世界が着目する企業に育て上げた理由の一つだと感じた。

「今、ちょうど時期が熟している」。谷口氏は開会挨拶の最後にこう語った。「色々なご縁とこのチャンスや機会を最大限にいかし、AIや自動運転技術によって社会に貢献し、全て商業化する」

日本の自動運転開発の一翼を担うZMP。その最前線を6回連載で取り上げる。

(※編注:RoboCar、RoboVision、IZAC、CarriRoはZMPの登録商標です)

>>【ZMP特集】予告編(目次)

(閲覧中)【ZMP特集】(1)「機は熟した」自動運転実用化へ

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