技術の活用、医療や防犯でも!【最前線「自動運転×スマートシティ」 第1回】

世界各地、日本国内でも取り組み加速



世界各地でスマートシティ化に向けた取り組みが広がっている。国内でも取り組みは加速しており、国の「スマートシティ官民連携プラットフォーム」には2020年12月現在約180のプロジェクトが登録されている。







テーマは多岐に渡るが、自動運転に関するプロジェクトも多く見受けられる。大半は交通課題の解決に向けたプロジェクトだが、将来的にはさまざまな分野への応用に期待が持たれる。

スマートシティにおいて自動運転技術がどのように活躍するのか。具体例を交えながら解説していく。

■スマートシティとは?
スマートシティに欠かせない交通課題の解決

スマートシティに対し、明確に統一された定義は今のところない。国土交通省が2019年8月に発表した「スマートシティの実現に向けて」と題した中間とりまとめでは、「都市の抱える諸課題に対し、ICTなどの新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義している。

スマートシティ化を図る初期の取り組みでは、エネルギー問題に主体を置き環境負荷低減を図るプロジェクトが多かったが、近年では目的が多様化し、環境やエネルギーをはじめ交通や医療、福祉、教育といったあらゆる社会課題解決を目指す動きが活発化している。

いずれも多くの国や地域で共通する課題だが、交通に関わる課題は低炭素社会の実現に結び付くため早くから注目されており、また社会生活に欠かせない「移動」をつかさどることから、慢性化する交通渋滞の解消といった交通利便性の向上と合わせ多くの地域で解決すべき課題に挙げられている。

自動運転やMaaSデータを有効活用

この交通課題の解決において高い期待を寄せられているのが「自動運転技術」やMaaSだ。自動運転技術の導入は、サービス事業者の観点からは無人化によるコスト低減効果が大きなものとなるが、スマートシティの観点では運行のデジタル化や効率化の恩恵が非常に大きなものとなる。

無人で走行する自動運転車は原則コネクテッド化され、遠隔制御・遠隔管理されることになるが、その過程であらゆる交通情報がデータ化され、交通ビッグデータを生み出す。

このデータをあらゆる側面から活用し、社会課題の解決に結び付けていくことがスマートシティには求められているのである。

【参考】スマートシティについては「自動運転導入を目指している世界のスマートシティ計画まとめ」も参照。

■モビリティの自動運転化

人の移動においては、タクシーやバスなどに限らずあらゆるモビリティに自動運転技術が導入されることが想定される。

タクシーやバスにおいては、ドライバーの人件費を抑えることでより低価格でサービスを提供することが可能になり、公共交通の維持や競争力の強化を図ることができる。自動車メーカーにとっては悩みの種となるが、特に都市部では自家用車離れを促進することで交通渋滞を緩和し、道路全体の運行効率を高めることが可能になる。

また、移動ニーズに応じて超小型モビリティやパーソナルモビリティの開発・導入も進むものと思われるが、こうした新たなモビリティの一部にも自動運転技術が実装される可能性が高い。車いすタイプなどはすでに実用実証が始まっている。

速度や走行エリアなど、ODD(運行設計領域)に合わせた自動運転システムが開発され、センサーやソフトウェア、運行管理システムなどと一体的に後付けキットとして販売される時代が将来訪れる可能性は高い。

敷地内・施設内のみを低速で走行するモビリティ向けの簡易自動運転キットなど、こうしたものが普及することでスマートシティ内の移動の利便性が増すほか、個々の人の移動を可視化・データ化することで細かな行動・動態を知ることも可能になりそうだ。

【参考】超小型モビリティについては「超小型モビリティが、高齢者の移動に革新をもたらす」も参照。

■モノの移動も自動運転に

スマートシティでは、モノの移動も自動運転化されてしかるべきだ。モノの移動を担う自動運転車やロボットでは、施設内などでウェイターの代わりを担うロボットが実用化されているほか、主に歩道を走行する小型の宅配ロボットや、乗用車に近いサイズで道路上を走行する自動運転車などの開発や実証が進められている。

スマートシティにおける物流では、効率的なモノの移動や管理、サービスなどを実現するロジスティクスの導入が求められることになるが、モノの移動に自動運転技術を活用することで省力化・効率化を図ることが可能になる。

倉庫においてもさまざまなロボットやセンサーなどを活用したファクトリーオートメーション化を図ることで、物流のスマート化をいっそう促進することができそうだ。

スマートシティにおいては、例えば日常的に消耗品の配達を依頼している店に対し、発注側となる店の在庫管理システムと受注側となる企業のシステムがリアルタイムで結び付き、システムが在庫減を見越して自動で発注・受注し、無人倉庫から配送ロボットが品物を届ける――という完全無人サービスも実現することが可能になるかもしれない。

【参考】宅配ロボットについては「自動運転の宅配ロボット(デリバリーロボット)取組事例まとめ!」も参照。

■医療分野でも自動運転技術の導入が進む

医療機関や福祉施設における車いす型の自動運転モビリティの導入を進める動きが活発化しているようだ。

WHILLは2020年11月、慶應義塾大学病院と患者を搬送する自動運転システムの実証実験を開始した。自動運転車いすを含むパーソナルモビリティを導入することで、患者は病院スタッフのサポートを要することなく目的地まで移動することが可能になり、患者の負担軽減や安全性の向上とともに病院スタッフの負担軽減を同時に達成する目的だ。

パナソニックも同様に国立循環器病研究センターと2020年12月からロボティックモビリティ「PiiMo」を活用した移動支援機能の有効性検証に関する共同研究を開始している。

総合病院など施設が広大で案内が必要なケースや患者の負担が大きいケースなどに特に有効だ。

【参考】WHILLの取り組みについては「WHILLの自動運転車椅子、病院内での実証実験がスタート!成果に注目」も参照。

こうした技術を導入すれば、施設側は患者の移動の自由を確保しながら各患者の動向をしっかりと把握することが可能になる。入院患者にとっては、移動手段が確保されることによりメンタル面で良い影響が出る可能性も考えられる。モビリティに各種装置を備え付ければ、患者のバイタルを確認することもできそうだ。また、医療機器をはじめとした院内におけるモノの移動などにも自動運転技術を役立てることができる。

スマートシティにおける「医療」という課題に対し、スマートホスピタル化を図る取り組みが加速しているが、そこに自動運転技術を加えることでいっそうのスマート化を達成することが可能になりそうだ。

【参考】医療分野における自動運転技術の活用については「自動運転・MaaSは「医療」にも貢献する」も参照。

■警備業務をロボット化

スマートシティでは、警備業務に自動運転技術を導入することで防犯能力を高めることができる。現在、施設内を見回る警備ロボットの実用実証が進んでいるが、道路や歩道を走行可能な警備ロボットを導入することでスマートシティ内全体を網羅することが可能になる。

警備専用の車両やロボット以外にも、まちなかを走行する自動運転モビリティに搭載されたカメラ映像をリアルタイムで警備サーバーに収集することで、不審者などを検知することもできる。不審者の検知は、防犯カメラで採用されているAI検知システムが役立ちそうだ。

情報処理サービスなどを手掛けるプライムサーバントの市民参加型記録活用システム「CETRA」がこのイメージに近い。CETRAは一般乗用車に搭載されたドライブレコーダーを動く防犯カメラとして地域防犯や犯罪捜査に活用する次世代型防犯システムで、事件や事故が発生した際、近くを走行していた車両から必要な範囲の映像のみ警察などの関係機関に提供するという。

自動運転車は基本的に高性能なカメラを搭載しているため、こうした取り組みに向いているものと思われる。また、スマートシティにおいては、さまざまな情報収集の観点からまちなかにカメラなどのセンサーを設置する例が多い。プライバシーの問題など課題もあるが、こうしたデータとともに有効活用することでエリア内の安全を高めることができそうだ。

【参考】警備ロボットについては「自動運転の警備AIロボット11選!空港で街で当たり前の時代へ」も参照。

■スマート農業に欠かせない自動運転技術

スマートシティは人が密集する都市部だけの話ではない。田畑が広がる地方都市においても取り組みが始まっており、スマート農業分野との相性も良い。

農業分野では、トラクターやコンバインなどの農機具の自動運転化が進展しており、一定の農作業を無人で行う研究開発が加速している。

また、コンピュータを用いた営農管理システムの普及も進んでおり、圃場管理や肥培管理をはじめ、作付け計画や作業記録といったさまざまな要素がデータ化されている。農業のデジタル化だ。

将来的には、農作業の自動運転化に加え選別や出荷などを行う工程もオートメーション化を図り、発注情報をもとに無人でロボットが出荷・配送を行う仕組みが確立するかもしれない。農業都市におけるスマートシティの1つの在り方だ。

【参考】農業×自動運転については「「無人農業」「スマート農業」で自動運転技術はどう貢献?」も参照。

■【まとめ】応用進む自動運転技術が多方面で活躍

スマートシティの1つのポイントとして、データの利活用が挙げられる。さまざまな情報をデータ化することでビッグデータを生み出し、それをいかに活用して社会課題の解決や利便性の向上につなげていくか――といった観点だ。

スマートシティにおいて、自動運転技術は要素技術の1つに過ぎないかもしれないが、移動に利便性をもたらし、非常に多くの交通・移動データを生成する役割と、医療や農業などと結びつくことで各分野のスマート化を促進する役割があるのだ。

道路交通車両における自動運転技術の開発は次第に応用が進み、今後多方面で導入が進んでいく可能性が高い。こうした応用事例にもしっかり注目していきたいところだ。

>>特集目次

>>第1回:技術の活用、医療や防犯でも!

>>第2回:官民連携で取り組み加速!

>>第3回:トヨタWoven Cityが革新牽引

>>第4回:海外でも大規模計画が続々

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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