自動運転も前進!成立した「スーパーシティ法」とは?

サンドボックス制度創設、国や自治体のデータ活用も





スーパーシティ実現に向けた国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案、通称「スーパーシティ法案」が2020年5月27日、参院本会議で可決、成立した。新たな規制緩和のもと、自動運転をはじめとした先端技術の社会実装に向けた取り組みを加速させていく狙いだ。

スーパーシティ法はどのような規範なのか。そもそもスーパーシティとはどのようなものを指すのか。改正法の概要とともに解説していこう。







▼国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g20109005.htm

■スーパーシティとは?

スーパーシティは、AIや自動運転、IoTといった第4次産業革命における最先端技術を活用し、未来の暮らしを先行実現する「まるごと未来都市」と位置付けられている。

まるごと未来都市は、自動運転や再生可能エネルギーといった個別分野限定の実証実験的な取り組みではなく、幅広く生活全般をカバーする取り組みであることや、一時的な実証に留まらず、2030年頃に実現され得る生活の先行実現に向け社会に実装される取り組みであること、住民目線でより良い暮らしの実現を図るものであることを合わせ持ったものと定義されている。

自動運転技術をはじめとした移動や物流、キャッシュレス決済などの支払い、行政、医療や介護、教育、エネルギー、環境、防犯、防災など、さまざまな領域が横断的に連携し、社会実装を前提とした取り組みを住民目線に基づいて進めていくイメージだ。

世界各地で、社会のあり方を根本から変えるような都市設計、いわゆるスマートシティ化を図る取り組みが進められているが、多くは個別の領域への先端技術実装を目指す取り組みとなっており、また技術開発側の目線で事業が進められていることから、生活全般にわたる分野横断的な取り組みを住民目線で進めることを核としている。

出典:内閣府の「スーパーシティ」構想について
■国や自治体などに対し保有データの請求が可能に

このスーパーシティに向け、従来の国家戦略特区制度を基礎としつつ、より迅速・柔軟に域内独自で規制特例を設定できるよう法制度を整備したものが今回の改正国家戦略特区法だ。

改正法では、複数の先端的サービス間でデータを収集・整理して提供するデータ連携基盤の整備事業を法定化し、事業の実施主体が国や自治体などに対し保有するデータの提供を求めることができるようにしたほか、複数の先端的サービス事業の実現に不可欠となる複数分野の規制改革を同時かつ一体的に実現できるよう、特別な手続きが整備された。

具体的には、実施主体が先端的区域データ活用事業活動の実施に活用するため、国の機関や公共機関などが保有するデータを必要とする際、内閣総理大臣に対しデータの提供を求めることができる。

内閣総理大臣は、以下の各要件のいずれにも該当すると認められる際は、遅滞なく当該データを実施主体に提供することとしている。

  • 当該データの収集が国家戦略特区データ連携基盤整備事業及び先端的区域データ活用事業活動の効果的かつ効率的な実施に不可欠であること
  • 当該データの提供が他の法令に違反または違反する恐れがないものであること
  • 当該データの提供により、公益を害しまたはその所掌事務もしくは事業の遂行に支障を及ぼすおそれがないものであること

関係地方公共団体の保有するデータなども同様で、当該関係地方公共団体の長などに対しデータの提供を求めることができる。

■新たな地域限定型のサンドボックス制度を創設

特区担当大臣や地方の首長、事業者などによる区域会議は、先端的区域データ活用事業活動の実施に際し、住民その他の利害関係者の意向を踏まえた区域計画案を添えて内閣総理大臣に対し新たな規制の特例措置の整備を求めることができるものとした。

内閣総理大臣は、当該規制の所管大臣に新たな規制の特例措置の検討を要請することとし、規制所管大臣は、特例措置を講ずるか否かについて特区諮問会議の意見を聴いた上で遅滞なく通知・公表するものとしている。

これは、高度で革新的な近未来技術に関する実証実験を迅速・円滑に実施する新たな地域限定型のサンドボックス制度の創設を意味する。

従来の国家戦略特区では、区域計画の決定においては区域会議が作成した計画案を直接総理が認定し、特例の設定に当たっては、個別に関係省と協議して規制特例を設定していた。

一方、スーパーシティでは、区域計画は住民の合意を得てから総理が認定する仕組みとなったほか、基本構想で定められた事項に関しては、地方事務に係る政省令は条例によって特例措置を実現できるものとし、国の事務の分権やその他の規制特例においては、新たな規制の特例措置を追加することで、複数の特例措置を一括かつ迅速に実現できるようにしている。

■接続仕様(API)をオープン化するルールを整備

情報システム相互の連携を確保するための基盤に係る規格の整備及び互換性の確保に関する援助として、国は先端的技術利用事業活動を実施する主体の情報システムと、実施に活用されるデータを保有する主体の情報システムを相互連携するための基盤を整備するものに対し、基盤に係る規格の整備や互換性の確保に関する情報の提供、相談、助言その他の援助を行う。

都市間でバラバラなシステムが乱立するのを防止し連携を強化する狙いで、各都市のAPIを内閣府のAPIカタログ上で公開し、地域の開発者用サイト構築を支援することとしている。

■スーパーシティに関心寄せる自治体54団体、企業も情報発信

スーパーシティ構想の検討を進めている自治体などから検討中のアイデアを募集したところ、2020年5月までに54団体から提出があったようだ。

工場跡地などの白地で新たに都市開発を進めるグリーンフィールド型が7件、既存のまちにおいて必要な再開発やインフラ整備などを行うブラウンフィールド型が47件となっている。

政府は本年度中に構想に意欲のある自治体などをあらためて公募し、選定する構えのようだ。

また、スーパーシティ構想の実現に向け、企業や各種団体が有する知見や先端技術を生かした取り組みを幅広く発信する「スーパーシティ・オープンラボ」では、ティアフォーやKPMGモビリティ研究所が情報を発信している。

オープンラボの情報は主にFacebook上で公開されており、ティアフォーは自動運転の基盤整備を通じたスーパーシティの構築について、KPMGはエアモビリティや「MaaS Aliance」などについて触れているようだ。

【参考】スーパ―シティ・オープンラボのFacebookページは「こちら」から。

スーパーシティの具体例

例えば、有名な観光地が点在しているものの観光地間の協力関係が弱く、また観光産業より実質所得が高いにもかかわらず光が当たらない製造業が存在するまちにおいて観光を起点とするまちづくりを進める場合、観光地を効率的に回遊する自動運転車の導入をはじめ、観光動線に加え製造業のモノ作り体験もアドオンしたMaaSの構築、域内全域における完全キャッシュレス化、伝統工芸や体験分野へのARやVR技術の導入、観光客向けにヘルケアウェアラブル端末をレンタル――などといった取り組みを行う。

スーパーシティ構想では、各事業で収集されるパーソナル情報や配車データ、観光地情報などをデータ連携基盤に集積させ、ビッグデータとして活用しながらMaaSやキャッシュレス、ヘルスケアなど各事業を連携させる――といった感じだ。

■スーパーシティ法案と自動運転・自律走行・自律飛行

新たな地域限定型のサンドボックス制度では、自動車の自動運転や無人航空機(ドローン)、これらに関連する電波利用など、高度で革新的な近未来技術に関連する過去に類例のない実証実験を迅速かつ円滑に実現できるよう、関連する道路運送車両法、道路交通法、航空法、電波法の4法を一括許可する仕組みなどが設けられた。

対象は以下の行為で、これらの実証が盛り込まれた区域計画が認定されれば、実証事業者として定められた者に対し認定技術実証区域計画の内容を記した書面が交付され、これをもって本来必要とされる使用許可や承認などが一部を除き自動的になされることになる。

  • 道路運送車両法第41条第1項の規定による技術基準の一部に適合しない自動車を運行の用に供する行為

同法第41条第1項では、原動機及び動力伝達装置や車輪、操縦装置、制動装置、自動運行装置など、保安基への適合が求められる各種装置について定められている。これに適合しない自動車を特殊仕様自動車とし、これに該当する車両を使った技術実証にあたっては、区域計画についてあらかじめ管轄する地方運輸局長や警察署長、国土交通大臣または総務大臣に協議し、同意を得なければならない。なお、41条第1項の規定は適用しないものとする。

  • 道路において遠隔操作を行いながら自動運転の技術を用いて自動車を走行させる行為のうち、道路交通法第77条第1項第4号に規定する行為に該当するもの

道交法第77条は道路の使用許可について定めたもので、区域計画に伴い実証を行う遠隔自動走行については、使用許可を受けたものとみなすとともに、その他所要の規定の整備を行うものとしている。

  • 航空法第132条各号のいずれかに掲げる空域において無人航空機を飛行させる行為、及び航空法第132条の2第5号から第10号までに掲げる方法のいずれかによらずに無人航空機を飛行させる行為

航空法第132条は飛行の禁止空域や飛行方法を定めたもので、区域計画に伴い実証を行う場合は、国土交通大臣の許可や承認がったものとみなすとしている。

  • 実験等無線局(電波法第4条の2第2項に規定する実験等無線局をいい、自動車自動運転関係電波技術、無人航空機遠隔操作自動操縦関係電波技術、特殊仕様自動車等応用関係電波技術または無人航空機応用関係電波技術の有効性の実証を行うためのものに限る)を開設し、これを運用する行為

電波法第4条は無線局の開設について定めたもので、この実証に係る区域計画が認定された際は、速やかに免許を交付するとともに、所要の規定の整備を行うものとしている。

■【まとめ】自動運転導入の目的を再確認し、地域一丸となって未来都市の形成を

自動運転の実用化に向けた単発の事業には適さないが、回遊性の向上や高齢者の福祉対策といった導入目的をまち全体の効用向上につなげ、住民参加のもと複合的に事業を推進していく際などにスーパーシティ法が活躍することになりそうだ。

自動運転の実用化は、自治体にとってはあくまで手段であり、目的ではない。目的を今一度見つめ直し、導入することでどのようにまちの利便性や魅力を高めていくかを再考する良い機会になるかもしれない。

一方、個人情報の取り扱いなどを危惧する声も根強く、ともすれば住民の同意を得られず計画がとん挫する恐れもありそうだ。スーパーシティ化ありきではなく、地域の合意形成を重視し、まちの未来のあるべき姿をしっかりと提示し、一丸となって取り組んでもらいたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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