ルールを一時停止!自動運転は「規制の砂場」制度で劇的進化を遂げる

英国をモデルに日本でも2018年度からスタート





自動運転技術の進展には実証実験が不可欠だ。その実証実験の実施を妨げるさまざまな規制があると、技術の進化の「足かせ」となることがある。







しかし実はいまの日本にはこの足かせを一時停止する制度がある。2018年度に始まった「規制のサンドボックス(Regulatory Sandbox)」、いわゆる「規制の砂場」と呼ばれる制度だ。

この制度は一時的に規制の適用を停止するというもので、2019年7月時点ですでに8つのプロジェクトが認定され、新技術の実現に向け動き出している。ただ自動運転に関連するプロジェクトはまだいまのところない。

もしこの制度にで自動運転に関連するプロジェクトが認定を受ければ、日本における実証実験の環境がプロジェクトベースで急速に充実する可能性がある。今回は「規制の砂場」制度に秘める自動運転技術の進化の可能性に迫ってみた。

■「規制の砂場」制度の概要

規制の砂場制度は「規制のサンドボックス(Regulatory Sandbox)」とも言い、国内での正式名称は「新技術等実証制度」と言う。イノベーションの促進に向け、一時的に規制の適用を停止するなど、新たなビジネスの実験場の仕組みとして2016年に英国などで創設された。語源は、子どもが試行錯誤しながらさまざまな遊びや発見を創出する「砂場遊び」に由来する。

IoTやブロックチェーン、ロボットといった新たな技術の実用化や、プラットフォーマー型ビジネス、シェアリングエコノミーなどの新たなビジネスモデルを実施する際、現行規制との関係で困難である場合に、事業者の申請に基づき規制官庁の認定を受けた実証を行い、そこで得られた情報やデータを用いて規制の見直しに繋げていく制度だ。

新しい技術や内在するリスクを把握しづらい規制当局と、新技術の実現に際しどのような規制が関わってくるかつかみにくい事業者。こうした現状を打破し、新しい技術・ビジネスモデルを創出するため、「まずやってみる」という環境を構築し、社会実証の早期実現を図っていく狙いだ。

2019年7月時点で認定を受けたプロジェクトは、「IoT社会の実現に向けた高速 PLC(電力線通信)でつながる家庭用機器に関する実証」や「仮想通貨と法定通貨を同時決済可能なプロ向けの決済プラットフォームの構築」などというように、いずれも新技術の実現を目指す実証で、実証結果が楽しみな取り組みばかりだ。しかし、この中に自動運転関連の実証が一つもない。

国家戦略特区の中で自動運転などを対象に特区をサンドボックスにするといった取り組みが進められていることと、国家戦略特区制度自体が大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度のため、自動運転分野からの「規制のサンドボックス制度」への申請が盛んに行われていない可能性もあるが、地域・自治体などを巻き込まず単独で取り組みやすい制度のため、大手・中小・ベンチャー問わず、盛んにチャレンジしてイノベーションにつなげてもらいたいところだ。

【参考】国家戦略特区制度については「日本は中国を見習うべきか…自動運転の環境整備、躊躇一切なし」も参照。

■自動運転の進化に不可欠な「実証実験」

新しい技術の導入に際し、どの分野においても実証実験が必要であることは言うまでもないことだが、とりわけ自動運転分野における実証は重要だ。

道路交通を取り巻く自動運転は、たった一つの瑕疵が人命に直結する可能性もあり、カメラをはじめとしたセンサー類や制御判断を下すAI(人工知能)、通信セキュリティなど、何かが一つ欠けるだけで重大な事故を引き起こす可能性がある。こういったリスクを一つずつ解消していくためにも、実証に実証を重ね開発していかなければならない。

また、他車や歩行者をはじめとした道路交通環境は1分1秒ごとに変化する。日照量や天候、道路を転がる空き缶一つで状況は変わってしまう。こういった環境の変化を経験値としてため込み、予測能力を高めるためにも公道における実証走行は必須となる。「想定外」を可能な限り「想定内」に置き換えなければならないのである。

■どの企業が第1号認定企業に?

では自動運転領域ではどの企業が規制のサンドボックス制度の第1号認定企業となるだろうか。実証実験に現在力を入れている企業をピックアップし、予想を試みてみよう。

現在、国家戦略のもと自治体などと手を組み実証実験に力を入れている企業は、高精度3次元マップ作製などを手掛けるアイサンテクノロジーや自動運転スタートアップのティアフォーをはじめ、先進モビリティ、SBドライブ、DeNAなど、専門分野が明確な企業や新進気鋭のテクノロジー企業鵜が目立つ。ロボット分野では、ZMPが群を抜いている印象だ。自動運転ソフトウェアの開発に力を注ぐティアフォーは、海外での取り組みも目立つ。応用力が必要な分野だけに、新たな実証に名乗りを上げる可能性もあるだろう。

また、近年では新モビリティサービス推進事業としてMaaS(Mobility as a Service)開発に力を入れる先行モデルも選定され、実証の幅が大きく広がりを見せている。普遍的なMaaSシステム構築に向け、広域的なネットワークを持つJR東日本や乗換案内サービスを手掛けるジョルダンなどが手を挙げることも考えられる。トヨタ自動車とソフトバンクの合弁「MONET Technologies」も大きく動き始めており、新制度を活用した取り組みに着手する可能性も十分想定される。

自動車メーカーの動向も気になるところだ。日産自動車はDeNAとの「Easy Ride」実証などメディア露出の大きい取り組みにも参加しているが、トヨタ自動車をはじめホンダ、スバルなど、自動運転技術そのものの国内実証はあまり行われていない印象が強い。専用のテストコースを備えていることと、規制が緩い海外における実証のほうがスムーズに事業を進めることができるなど、考えられる理由はいくつか浮かぶが、日本独特の公道環境における大掛かりな実証も必要になるはずだ。

もしかすると、自動運転分野における規制のサンドボックス第1号として、自動車メーカーが名乗りを上げるかもしれない。

■【まとめ】特区制度との兼ね合いあるも、砂場活用プロジェクトの登場に期待

国家戦略特区が砂場を担っている面もあり、まだ「規制のサンドボックス」制度の利用に至っていないものと思うが、特区制度に比べ着手しやすい制度であるため、自動運転分野における同制度の活用例も今後出てくる可能性が高い。

「実証なくして実現なし」の世界。緩すぎる規制緩和には注文がつくだろうが、将来の技術革新に向け必要不可欠な制度だ。スピード感あふれる研究開発体制構築のためにも、事業者には制度の有効活用を、そして政府にはより充実した制度の新設を検討してもらいたい。







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