ティアフォーの自動運転戦略まとめ Autowareとは?

国際業界団体を設立、世界戦略本格化


出典:ティアフォー

名古屋大学発の自動運転スタートアップである株式会社ティアフォー(本社:愛知県名古屋市/代表取締役社長:武田一哉)。設立から丸3年が経過し、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware(オートウェア)」を武器に活躍の場を世界に広げつつある。

自動運転分野では海外企業に押されがちの日本だが、この日本製のソフトウェアが世界に浸透し、自動運転の早期実用化の大きな礎となる日はそう遠くないのかもしれない。







Autowareは自動運転業界にどのような可能性をもたらすのか。そしてティアフォーはどのような戦略で世界に立ち向かっているのか。同社の取り組みを追ってみる。

■ティアフォーの沿革

ティアフォーは、同社の会長兼CTO(最高技術責任者)で東京大学准教授を務める加藤真平氏らを中心に2015年12月に創業された。加藤氏は当時、名古屋大学で自動運転関連の研究を行っており、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」の開発に携わっていた。このAutowareの自動運転システムのさらなる開発や普及を図るため、名古屋大学オープンイノベーション拠点を本拠地に事業化に至った。

2017年12月には、遠隔制御型自動運転システムの公道実験を国内で初めて実施し、自動運転レベル4(高度運転自動化)の無人運転に成功。近距離移動を目的とする完全自動運転の小型電気自動車 (EV) の開発など、自動運転技術の開発と実証実験を推進している。

2018年3月にKDDIとソニーなどが約30億円を出資したほか、トヨタなどの出資で運営される「未来創生ファンド」が10億円規模とみられる出資を実施したと報じられている。KDDIと同社は、次世代移動通信システム「5G」を活用した自動運転の実証実験を行い、ネットワーク整備など共同開発を進めていく予定。

2018年11月には、名古屋大学次世代モビリティ研究センターと日本交通、Japantaxiとともに、自動運転AI(人工知能)を搭載した「AIパイロット」をタクシー車両に設置し、自動運転社会に向けたデータ収集実験を共同で実施。実際に運行しているタクシーが3次元データ収集を行う場合を想定し、どの規模の空間データがどの程度継続的に取得できるのかなどを検証したという。

また、米シリコンバレーに活動拠点を設けるなど世界を見据える同社は、2018年12月にAutowareの標準化を推進する国際業界団体「The Autoware Foundation(AWF)」の設立を発表するなど、海外展開を本格的させている。

■ティアフォーの取り組み
Autoware:自動運転開発を促進するオープンソースソフトウェア

Autowareはティアフォー設立前の2015年8月、名古屋大学や長崎大学、産業技術総合研究所らで取り組んだ「市街地の公道での自動運転」のために開発されたものだ。その後、自動運転用途としては世界初のオープンソースソフトウェアとして公開され、大学の研究開発から企業の製品開発まで幅広く利用されるようになった。

交通量の多い市街地においても自車位置や周囲環境を認識でき、交通ルールに従った操舵制御の機能も搭載されている。車両や歩行者、車線、信号などの認識をはじめ、3次元(3D)位置推定や3D地図生成、経路生成、操舵制御、センサーフュージョン、キャリブレーション、ダイナミックマップ、シミュレーション、データロガーなどさまざまな機能を備える。

車両やセンサーなどの既製品を組み合わせるだけで自動運転システムを構築することができ、LinuxとROSをベースにしているため、インテル社のx86アーキテクチャのほか、Linuxが稼働する環境であれば利用可能だ。

車載化に向けた組込みシステムもイーソル社と共同開発しているほか、高速処理のためのGPGPU(GPUの演算資源を画像処理以外の目的に応用する技術)やFPGA(製造後に構成を設定できる集積回路)の利用、VRインタフェースの導入、インターネット上のデータベースとの通信など、自動運転システムを更に強化するプラットフォーム機能が含まれている。

AIパイロット:低速自動運転車向けの量産型システムユニット

AIパイロットは、ティアフォーが開発する自動運転技術を集約したシステムユニットだ。

商用施設内や市街地郊外の短距離移動、工場・倉庫内での物流搬送を支える低速自動運転車などに適しており、自動運転に必要となるLiDARやカメラ、IMU、GPS、コンピュータデバイス、各種ハードウェア、ソフトウェアをすべて一体化した量産型システムユニットで、2019年1月に本格的な販売を開始した。

事前にキャリブレーション済みのLiDARやカメラなどのセンサー類を一式まとめた筐体を車体ルーフに取り付け、自動運転ソフトウェア「Autoware」がインストールされたコンピュータデバイスと接続することで、短期間で自動運転車を構築することが可能となる。

また、通信機器のサポートも用意されており、走行データをモバイル通信やWiFi通信でサーバーにアップロードすることや、自動運転に必要な3D地図データをティアフォーが提供するクラウドサービスからダウンロードすることも可能。さらに、あわせて提供する「T4 Account」を購入することで、年間のメンテナンスやテクニカルサポート、損害保険や自動運転中のリモートサービスも受けることができる。

サイズは幅848ミリ、奥行848ミリ、高さ362ミリで重量は9.8キロ。LiDARの視野角は水平360度、垂直30度となっている。

なお、AIパイロットは商社の株式会社マクニカが2018年9月に代理店契約を締結しており、研究開発や試験向け自動運転車の製造開発世界大手の米AutonomouStuff(オートノマスタッフ)の車両に搭載し、顧客に自動運転レベル4(高度運転自動化)相当の技術を搭載した車両を販売・提供している。

ティアフォーの開発車両:マイリーやロージー、ポスティー

アイサンテクノロジーと共同で2017年末までに製作したワンマイルモビリティのプロトタイプ初号機「Milee(マイリー)」が有名だ。ヤマハ発動機の電動ゴルフカートをベースにした4~5人乗り自動運転EV(電気自動車)で、ハンドルやアクセルなどのペダルを備えておらず、運転手が不要な自動運転レベル4(高度運転自動化)を実現している。

Autoware搭載のほか、アイサンテクノロジーの高精度3D地図技術をもとに、LiDARやカメラが周囲の物体検出や自車位置の特定、走行経路の策定、運転判断といった機能を行う。ECUには米NVIDIAのDRIVE PXプラットフォームを使用している。

車体には3Dプリンタ樹脂材が使用されており、重量は約700キロ。丸っぽく可愛らしいデザインに仕上がっており、最高速度は時速19キロに抑えられている。卵のような丸みを帯びたデザインも魅力的だ。

また、物流業務用に設計され、最高時速6キロに抑えた「Logiee(ロージー)」も開発しているほか、2019年1月に東京ビッグサイトで開催された第2回自動運転EXPOでは、ラストマイルデリバリーに向けた低速完全自動運転EV「Postee(ポスティー)」も発表している。

■海外における取り組み

世界各地へAutoware普及を図るべく、積極的に世界戦略を進めるティアフォー。米シリコンバレーにおける事業活動にも力を注いでいるようだ。

日本国内とは交通ルールなどの環境が異なる場所でAutowareの試験を進めるほか、欧州の自動車部品大手の自動運転チームがスピンアウトして創業した米Apex.AIと意気投合するなど、研究開発やAutowareの普及促進を図るうえでパートナーに恵まれやすい環境のようで、現地の自動運転スタートアップや新興企業などとAutowareのデファクト化に向けた走行実験なども積極的に行っている。

2018年12月には、自動運転OS「Autoware」の業界標準化を目指し、Apex.AIと英Linaroと共同で世界初となる国際業界団体「The Autoware Foundation(AWF)」を設立することを正式発表した。

AWFは、Autoware.AI、Autoware.Auto、Autoware.IOという3つのカテゴリの中で、Autowareに関する種々のプロジェクトを発足させ、発展させていくための非営利団体。豊富な機能を持つAutowareの組織化・整理を進め、参画企業とともにさまざまな検証を行っていく方針だ。

Autoware.AIは、2015年から続く従来のAutowareプロジェクトを踏襲するカテゴリで、主に研究開発用途として国内外で既に100社以上、30種類以上の自動運転車両に導入されている。

また、Autoware.Autoは、Autoware.AIを機能安全の観点から見直し、次世代のRobot Operating System(ROS)であるROS2フレームワークを用いて再設計された新しい車載用Autowareの開発に関するカテゴリで、Autoware.IOは、Autoware向けのさまざまなECUやアーキテクチャ、車両制御インタフェース、サードパーティ製ソフトウェア、ツール関係を取りまとめるカテゴリだ。

AWFのプレミアムメンバーには、ティアフォーやApex.AI、Linaroをはじめ、トヨタの開発部門であるTRI-ADや英Arm、米Velodyne LiDAR、韓国LG、中国のHuawei、米AutonomouStuffなどそうそうたる顔ぶれが並ぶ。このほかにも、米インテルや名古屋大学なども参画している。

■AWFの輪はどこまで大きくなるか

Autowareを通じて多くのパートナー企業と関係を構築している同社。自動運転の開発に手軽に着手できる環境が広がることで「自動運転開発」という高い壁を取り除かれ、ひいてはMaaS(Mobility as a Service)向けのサービスを企画するスタートアップなど多種多彩な企業が自動運転分野に参入し、業界を盛り上げることにつながるだろう。

今後AWFの輪がどのように広がり、どのような動きを見せるのか。また、AIパイロットなどの製品化も今後どのような展開を見せるのか。同社のスピード感あふれる事業展開の見せ場は続く。







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