MaaS Tech Japan、純損失1.6億円超に 自治体などの「交通DX」を支援

MaaSデータ統合基盤やMaaSプラットフォームを開発



出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

MaaSの社会実装を推進する株式会社MaaS Tech Japan(本社:東京都千代田区/代表取締役:日高洋祐)の第4期決算公告(2022年10月31日現在)が、このほど官報に掲載された。

当期純損失は前期から赤字額を62.7%増やし、1億6,258万円であった。決算公告の内容とともに、事業の詳細について紹介する。


■決算概要(2022年10月31日現在)
賃借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 236,747
固定資産 30,830
資産合計 267,577
▼負債及び純資産の部
流動負債 130,216
固定負債 56,350
株主資本 81,011
資本金 100,000
資本剰余金 290,000
資本準備金 192,500
その他資本剰余金 97,500
利益剰余金 △308,989
その他利益剰余金 △308,989
(うち当期純損失)(162,583)
負債・純資産合計 267,577

■自治体などに向けMaaSソリューションを提供

2018年設立のMaaS Tech Japanは「100年先の理想的な移動社会の基盤を構築し、移動社会を高みにシフトさせる」をビジョンに、移動に関する課題解決に取り組む企業・自治体に対して、MaaSの価値を最大化するプロダクト・ソリューションを開発・提供している。

なお同社のミッションは、「移動する人・移動させる事業者・移動の先にある目的を繋いで最適化するスキームとソリューションを社会実装する」となっている。

具体的には、プラットフォーム開発事業として、さまざまな交通データの統合分析を実現するMaaSデータ統合基盤「TraISARE(トレイザー)」と、TraSIAREをベースとしたMaaSプラットフォーム「SeeMaaS(シーマース)」を開発し、これらを活用したソリューションの提供を行っている。


出典:MaaS Tech Japan公式サイト
■MaaSデータ統合基盤「TraISARE」とは?

TraISAREは「Transport Information Store with Aggregator, Receiver and Encoder」の略で、鉄道やバス、タクシー、飛行機など交通に関する多様なデータをシームレスに共有し、分析・予測することを可能にした移動情報統合データ基盤だという。

これを活用することで、公共交通やモビリティサービスのあらゆるデータについて、どんなフォーマット・形式でもシームレスに統合・接続し分析することが可能になる。また、運行情報や需要データなどのリアルタイムデータを受け取り可視化・分析することができる。これによりユーザーや事業者は、この分析結果を事業に役立てることが可能になる。

さらに、蓄積データの統計処理や機械学習分析、シミュレーションに基づいて、計画やオペレーションの改善・最適化に活用できるという。

■MaaSプラットフォーム「SeeMaaS」とは?

SeeMaaSは、あらゆる移動データを統合・分析し、地域の移動課題解決と価値創出につながる、データに裏打ちされた交通施策を導くためのMaaSプラットフォームで、2022年6月にリリースされた。移動データの活用により、交通や環境、観光など多様な分野の取り組みを促進することができる。


このプラットフォームでは、経路検索から予約、決済までを行うMaaSアプリや、自治体や事業者の運行情報やICカードなどの情報、人口統計や施設利用などの移動関連情報といった、あらゆる移動データを統合する。

統合したデータを分析し、地域の移動実態や施策効果を詳細に可視化する。その結果、地域の特性に適応させたMaaSの実行や、観光振興・まちづくり・環境貢献などの取り組み、施策効果のモニタリングと、定量的な評価による継続的な施策改善が可能になるという。

出典:MaaS Tech Japanプレスリリース
■日本のMaaS実用化をバックアップ

MaaS Tech JapanはSeeMaaSの新機能として、交通手段を問わず人の移動と時間を示す人流データを連携できる機能を2023年6月から提供開始した。人流データと交通の移動実績データを使用し、公共交通の利用量と人の移動量を比較することで、公共交通の利用率が相対的に低い時間帯や地域を可視化し、潜在的な公共交通利用の需要分析などの具体的な施策検討を可能にするものだ。

またSeeMaaSは「福岡県モビリティデータ連携基盤構築等業務」に採択されており、同社は福岡県における交通政策立案や交通事業最適化の支援に取り組むことを、2023年6月に発表した。この業務に関連し、西日本鉄道と西鉄グループが運行するバスや鉄道での利用データの共同利用に関する契約を締結している。

同年7月には、マイクロソフトの日本のパートナー企業を対象にしたアワード「マイクロソフト・ジャパン・パートナー・オブ・ザ・イヤー 2023」において、「Automotive, Mobility & Transportation アワード」を受賞した。同社がこの賞を受賞するのは、3度目になる。

日本政府は都市・地方が抱える交通サービスの諸課題を解決することを目指し、日本版MaaSの推進を行っている。MaaS関連の取り組みを行う地方自治体も増えてきた。今後の日本のMaaS実用化においてMaaS Tech Japanの技術がどう貢献していくのか、注目だ。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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