テスラ、自動運転・ADASの年表!開発はどのように進んでいる?

将来の自動運転をFSDで実現する戦略



出典:背景画像はテスラプレスキット/Heisenberg Media/Flickr (CC BY 2.0)/Flickr / Ennoti (Public Domain Mark 1.0)

EV(電気自動車)大手として世界に名を馳せる米テスラ。イーロン・マスクCEO(最高経営責任者)のリーダーシップと強烈なキャラクターのもと、自動運転業界を賑わせる存在としても有名だ。

ADAS「Autopliot(オートパイロット)」や「Full Self-Driving(FSD)」といったシステムをアップデートし、将来の自動運転につなげていく戦略は、これまでどのような軌跡をたどってきたのか。







この記事では、オートパイロットの誕生から現在に至るテスラの取り組みを時系列で紹介していく。

■2014年10月:オートパイロット誕生

テスラは2014年10月、デュアルモーターを搭載した最新のモデルSに、オートパイロットを可能にする標準ハードウェアを導入すると発表した。ソフトウェア更新で将来さまざまなアクティブセーフティ機能を提供可能としている。

このハードウェアは、前方レーダーと車の周囲16フィート(約5メートル)を感知する12個の長距離超音波センサー、前方監視カメラ、高精度のデジタル制御電動アシストブレーキで構成され、交通標識の検知やレーンキープアシスト、アクティブクルーズコントロールを可能にする。

この刷新はオートパイロットの最初のステップに過ぎず、今後も新しい機能を開発し、無線ソフトウェアの更新(OTA)によって最新の機能を提供していくとしている。

なお、この時点ではすべてのADAS機能は実装されておらず、数カ月かけてアップロード・実装していくとしていた。

■2015年10月;「バージョン7.0」リリース

テスラは、2015年10月、最新のソフトウェア「バージョン7.0」をリリースした。これにより、モデルSオーナーは各ADAS機能を利用可能になった。

各車両からリアルタイムでデータを収集・フィードバックすることでシステムが継続的に学習し、機能を改善していく方式を採用している。現在の自動運転開発に通じる技術・考え方だ。

この時点では、イスラエルのモービルアイが開発パートナーに名を連ねている。その後、テスラ車の事故をきっかけに関係が悪化したと報じられており、2016年7月にパートナーシップを終了した。

テスラのイーロン・マスクCEO=出典:Flickr / Daniel Oberhaus (CC BY 2.0)
■2016年1月:Summonベータ版をリリース

テスラは2016年1月、ソフトウェア「バージョン7.1」で自動駐車や車両の呼び出しを可能にする「Summon(サモン)」機能のベータ版をリリースした。

Summonは「召喚」を意味し、自宅などの私有地において降車した後に駐車スペースへ自動駐車する機能や、乗車の際に玄関前まで車両を呼び寄せることができるという。

この機能は、2019年9月のアップデートで「Smart Summon」として実用実証的にリリースされたが、その前段となる技術はすでに2016年の段階で実装され始めていた。

■2016年10月:第2世代のハードウェアを全車種搭載へ

テスラは2016年10月、現在生産しているすべてのモデルにオートパイロット向けのハードウェアを搭載すると発表した。

第2世代となる新たなハードウェアは、最大250メートルの範囲で車の周囲を360度可視化する8台のサラウンドカメラと、これを補完する12基の超音波センサーなどで構成され、以前のシステムの約2倍の距離を検出可能にしている。

オンボードコンピューターは前世代の40倍以上の計算能力を備え、ビジョン、ソナー、レーダー処理ソフトウェア用にテスラが開発した新しいニューラルネットを実行するという。

この段階では、モービルアイに代わりNVIDIAのソリューションが使用されていたが、テスラはAIチップも自社開発を進め、2019年までに自社製品に切り替えている。

■2018年10月:オートパイロットにナビゲーション機能追加

テスラは2018年10月、最新のソフトウェア「バージョン9.0」の中で「Navigate on Autopilot」機能を提供すると発表した。

オートパイロットによるアクティブなガイダンス機能で、ドライバー監視のもと、車線変更の提案や高速道路のインターチェンジのナビゲート、出口の利用など、高速道路の入り口から出口までオートパイロットで車を誘導する。

■2019年4月:マスク氏が完全自動運転車の生産計画を発表

マスク氏は2019年4月に開催した技術説明会の中で、2020年半ばまでに完全な自動運転車を100万台以上生産すると発表した。

合わせて発表したロボタクシー構想では、自動運転を可能とするオーナーカーをリース方式で販売し、未使用の時間帯に自動運転タクシーとして稼働する案を発表している。

自動運転車の生産計画はビッグマウスで終わったが、ロボタクシー構想は自家用車が自動運転化する将来を見据えた斬新なアイデアだ。

■2019年9月:Smart Summon機能リリース

テスラは2019年9月、ソフトウェア「バージョン10.0」を発表し、拡張版オートパイロットの新機能として「Smart Summon」のベータ版の提供を開始した。

Smart Summonでは、専用駐車場や私有地において、駐車中の車両を目視できる離れた場所に車両を呼び寄せることができる。数十メートル離れた位置から操作可能という。

ユーザーの感想を見るとまだまだ粗削りな技術の印象があるが、駐車場内におけるレベル4技術として注目度は高い。

■2020年7月:自動運転ソフトウェアのライセンス化の方針

マスク氏は2020年7月、テスラの自動運転ソフトウェアをライセンス化し、他社が利用できるようにする方針をツイッターでつぶやいた。

なお、同月に中国で開催された「世界人工知能(AI)カンファレンス」の席上、マスク氏はレベル5(完全自動運転)について「近く実現するだろう」と語っている。

■2020年10月:FSDベータ版提供開始

テスラは2020年10月、一部のオーナーを対象に「Full Self Driving(FSD)」ベータ版の提供を開始した。名称こそ完全自動運転となっているが、現在有効となっている機能はドライバーの監視が必要なADASで、オートパイロットの高性能バージョンと言える。

技術の進化に合わせてOTAでアップグレードし、自動運転に徐々に近づけていく構えだ。また、対象者も徐々に拡大を図っている。

価格は当初の5,000ドル(約55万円)から現在1万ドル(約110万円)まで値上げしている。サブスクリプションでの提供も開始しており、車両に搭載済みのオートパイロットのパッケージによって、月額99ドル(約1万円)~199ドル(約2万円)と設定されているようだ。

■2020年12月:マスク氏「来年には完全自動運転を顧客に」

マスク氏は2020年12月、インタビューの中で「完全自動運転化を達成できる自信があり、来年にはテスラの顧客にそれを届けることができるだろう」と語ったようだ。

■2021年1月:マスク氏「FSDの安全度は今年人間を超える」

マスク氏は2021年1月早々、ツイッターで「FSDの安全度は人間による運転の平均値を今年上回る」とつぶやいた。

■2021年3月:DMVに「FSDに自動運転能力はない」旨説明

テスラは2021年3月までに、米カリフォルニア州の車両管理局(DMV)に対し、FSDには現時点で自動運転の能力がない旨を説明したことが明らかになった。ADASであることを改めて認めた格好だ。

なお、マスク氏のビッグマウスに対し、テスラはFSDを「より高度なドライバー支援機能のスイート」としており、各機能がADASであることを明言している。

「オートパイロット」や「Full Self-Driving」といった名称とマスク氏のビッグマウス、またアップデートによって将来的に自動運転機能を提供するという戦略が消費者の誤認を招いているのは間違いない。

誤解の解消に努めるのが先か、自動運転機能を実装するのが先か……テスラ内部で大きな悩みの種になっているような気がしてならない。

■2021年5月:レーダー不採用?LiDARに興味?

マスク氏は以前からLiDARに否定的で、カメラを主体としたセンサーシステムで自動運転を実現すると豪語しているのは有名だが、2021年5月にモデル3やモデルYのセンサーシステムからレーダーを外したことが報じられた。

また同月には、ルミナー製LiDARを搭載したテスラの試験車両と思われる車両がフロリダ州で目撃されており、大きな話題となっている。詳細は不明だが、自動運転の早期実現に向けマスク氏が心変わりした可能性も否めない。続報に注目だ。

■【まとめ】マスク氏に引っ張られ続ける開発力

オートパイロットやFSDという名称、そしてマスク氏の発言を「無視」すれば、テスラのADASは順調に進化を遂げており、Smart Summonといった自動運転に直結する独自技術を積極導入する先進的なEVメーカーとしての姿が鮮明になる。

問題は、マスク氏が描くビジョンにテスラの開発力がどこまで迫れることができるかだ。良くも悪くもマスク氏に引っ張られる形で最新技術の導入を推し進めていくのがテスラの魅力でもある。

2021年中の完全自動運転はさすがに無理がありそうだが、FSDをどこまで進化させられるのか、引き続き注目したい。

▼テスラ公式サイト(米国)
https://www.tesla.com/
▼テスラ公式サイト(日本)
https://www.tesla.com/ja_jp
▼イーロン・マスク氏のTwitterアカウント
https://twitter.com/elonmusk

※自動運転関連企業の取り組みを年表化した記事は、「タグ:年表」よりまとめて閲覧頂けます。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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