
米EV(電気自動車)大手テスラの車両は、実際の道路の風景に溶け込むような画像が描かれた「ニセの壁」をきちんと検知できるか──といったテスト動画が話題になっている。
米国人YouTuberがテスラのADAS(先進運転支援システム)「Autopilot」の衝突回避実験を行ったことに端を発したもので、その実験ではテスラのEV「Model Y」に搭載されたAutopilotはニセの壁にだまされ、車は停止せずに壁に盛大に突っ込んでしまった。
その後、別なテスラ車のオーナーがAutopilotよりも性能が高い有料オプション「FSD(Full Self-Driving)」を搭載した車両で同様のテストを行った。その結果、FSDの搭載車両ではニセの壁に突っ込まずにしっかりと車両は壁の手前で自動停止した。
つまり、テスラオーナーはきちんと追加費用を払ってFSDを搭載すれば、車載カメラとシステムがニセの壁にだまされず、しっかりと自動ブレーキが作動するというわけだ。
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■「ニセの壁」のYouTube動画が話題に
ニセの壁に関するテストを最初に行ったのは、米国のエンジニア系YouTuberのMark Rober氏だ。

テスラのAutopilotを搭載したModel Yでニセの壁を検知できるかテストすると、冒頭触れたように、テスラ車はニセの壁に突っ込んでしまった。
【参考】関連記事としては「テスラの車載カメラ、「偽の壁」に騙され、盛大に突っ込む」も参照。
■FSDでテストしてみると…
この動画が話題になったあと、別なKyle Paul氏という人物が、AutopilotではなくFSDを搭載したModel Yを使用し、同様のテストを行った。このテストではFSDはシステム上で壁の存在を直前まで認識できなかったが、最後はきちんとニセの壁の手前で車両は見事、一時停止した。

次にPaul氏は、同様にFSDを搭載したテスラの電動ピックアップトラック「Cybertruck(サイバートラック)」でテストを行った。その結果、Cybertruckは早めにニセの壁の存在に気がつき、徐々にスピードを緩め、壁の手前でしっかり車両を停止させた。
Cybertruckの方が搭載されているFSDの方がバージョンが新しく、壁に気付くのが早かったようだ。
■テスラが解決すべき課題は?
2つの実験結果を比べると、AutopilotよりFSDの方が物体を正確に認識でき、安全性が高いということになる。
ちなみにテスラは、「自動運転の目」と言われているLiDARを採用せず、基本はカメラだけで自動運転を実現しようとしていることで知られている。ただし、同社のこのアプローチについては疑問を投げかけている人も多い。
例えば中国の新興EV(電気自動車)メーカーであるLi Auto(理想汽車)の代表も「夜の中国で運転するなら、LiDARを使うことになるだろう」と語ったことがあった。中国ではテールランプ(尾灯)が故障中の車両が結構多くあり、カメラだけでは前を走行するそれらの車両を認識することが難しいからだという。
いずれにしても、最初に公開された壁に突っ込んだYouTube動画をみるかぎり、テスラが解決しなければならない課題はまだあることは確かだ。
【参考】関連記事としては「テスラの自動運転技術・Autopilot/FSDを徹底分析」も参照。