Uber、日本で自動運転タクシーを展開へ Google車両使用か

進むグローバル化、日本が「激戦地」に?



配車サービス大手の米Uber Technologiesでモビリティ・ビジネスオペレーションを担当する上級副社長のAndrew Macdonald(アンドリュー・マクドナルド)氏が読売新聞のインタビューに対し、数年以内に日本国内で自動運転サービスを展開する意向を示したそうだ。


パートナー企業などの詳細は報じられていないが、おそらくWaymoをはじめとした各社と広く手を結び、柔軟に広域展開を図っていくのではないだろうか。国内開発勢やプラットフォーマーとしては脅威となり得る存在だ。

ウーバーの参入は、国内企業にどのような影響を及ぼすのか。同社の事業戦略とともに考察してみよう。

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■自動運転Uberタクシーが日本へ

副社長が数年以内に参入目指す意向

マクドナルド氏は、モビリティ&ビジネスオペレーション部門でシニアバイスプレジデントを務め、ライドシェア自動運転タクシーなど世界 各地のモビリティ事業を率いている人物だ。同氏は読売新聞の取材に対し、「地方交通や高齢者の足として自動運転の活用が期待されており、日本政府も強い関心を持っている」とし、数年以内にサービス展開を目指す意向を示したという。


後述するが、ウーバーはWaymoをはじめとした自動運転開発企業と手を組み、自社プラットフォームへの自動運転モビリティの導入を加速している。

自動運転タクシーの実用化は米国と中国が抜きんでており、日本はやっと実装基盤が整い始めた段階に過ぎないが、それでも世界的に見れば先進的であり、かつタクシー市場そのものが活発だ。Waymoが初の海外進出先に日本を選択したように、海外開発勢から見れば有力市場に位置付けられている可能性が高い。

世界展開を視野に収める開発企業の多くにとって、この魅力的かつ未知の日本市場への進出を考慮する際、世界を網羅するウーバーのプラットフォームは非常に有力だ。日本における配車サービスシェアはトップではないものの、世界スタンダードとなりつつあるプラットフォームへの信頼感・安心感はやはり大きい。

広いネットワークと知見に優位性

北米で自動運転タクシーの知見を蓄え始めたウーバーは、その優位性をさらに高めつつある。このウーバーが日本における自動運転サービスに参入すると、国内開発勢やプラットフォーマーにどのように影響を及ぼすのか。


日本交通系で国内配車アプリシェアナンバーワンのGOは、新モビリティサービスへの早期対応を迫られる可能性が高い。既存のタクシー配車で圧倒的シェアを誇っていても、将来自動運転タクシーへの移行が進めば進むほどシェアを奪われる可能性が高まっていくためだ。

自動運転タクシーは、将来既存タクシーやライドシェアを代替するサービスとなる。現行技術では人間のドライバーに劣るものの、そう遠くない将来一定エリア内においてはタメを張る水準まで達することが想定される。

この自動運転タクシー市場において、プラットフォーマーとして競争力を高めるには当然ながら自動運転開発企業とのネットワークが必要となるが、グローバル展開済みのウーバーは、より多くの開発企業と手を結びやすい環境にある。

世界に名だたる開発企業を引き連れて日本市場に参入されれば、自動運転タクシー分野におけるシェアを持っていかれる。この自動運転タクシーのシェアが、徐々に既存タクシーのシェアを侵食していく――ということだ。

すでにGOはWaymoと手を組むなど対策済みと言えるが、S.RIDEなど他社もうかうかしていられない。未来のシェア獲得競争はすでに始まっているのだ。

自動運転開発企業も競争激化で戦々恐々?

一方、国内の自動運転開発企業も危機感を募らせることになりそうだ。前述したように、ウーバーが同事業に本格着手すれば、海外の有力開発企業の国内参入が促進される。ウーバーが呼び水・引き金となって海外企業が日本に押し寄せれば、国内開発勢としてみればたまったものではない。

自らがウーバーとパートナーシップを結べば良いのでは?――とする見方もありそうだが、独占契約を結ばない限りウーバーは複数社と手を結ぶため、新規参入は避けられない。

開発競争により技術の進歩が速まる可能性があるものの、日本進出を目論む海外開発企業は基本的に他国で多くの実績を積み重ねているトップ集団だ。走行実績がモノをいう自動運転開発において、経験値の差を埋めるのは容易ではない。

Waymoが進出を目指している時点ですでに過酷な競争は確定しているが、Waymo一社であればサービス提供エリアを外して事業展開し、経験を積み重ねることもできる。しかし、複数社がこぞって参入してくると、同一エリアでの競争を避けづらくなる。

ウーバーがどのような戦略で日本進出を図っていく算段なのか。その戦略は注視しなければならないだろう。

■ウーバーの自動運転タクシー事業

Waymoとともにオースティンで新たな取り組みに着手

出典:Waymo公式サイト

ウーバーは2023年5月、Waymoと自動運転車による配車・配達に向け複数年にわたる戦略的パートナーシップを締結したと発表した。同年10月には、アリゾナ州フェニックスで展開中のWaymoの自動運転タクシーをウーバーアプリで配車可能にした。

2025年には、テキサス州オースティンでサービスインしたWaymoの自動運転タクシーをウーバーが独占配車する取り組みも開始している。

オースティンと、2025年中にサービスイン予定のジョージア州アトランタでは、Waymoは自前の配車アプリを展開せず、ウーバーアプリのみに任せているのだ。

オースティンでは、さらに一歩踏み込んだ取り組みを進めている。Waymoの自動運転車両の管理施設を整備し、車内清掃や日常的な点検、消耗部品の交換といった保守業務を行っているという。

自動運転システムの遠隔監視や操縦などはWaymoが担っているが、日常的な車両管理をウーバーが担当しているのだ。

従来のプラットフォーマーの観点で言えば、マッチングサービスを中心に、オプションとして移動サービスに関するビッグデータを提供する――といったテクノロジー主体の事業展開だったが、こうした枠から大きく踏み出し、新たな分業体制を構築しようとしているようだ。

自動運転戦略を再構築中?

こうしたチャレンジは、実はウーバーにとっては既定路線なのかもしれない。ライドシェアのマッチングで名を馳せたウーバーだが、同社は早い段階で自動運転技術に注目し、無人サービスで収益最大化を図っていくビジョンを描いていた。

マッチングサービスにおける収益はプラットフォーム利用料や仲介手数料、広告料などに留まるが、無人の自動運転サービスを自社展開できれば収益構造を大きく改善することができる。

イニシャルコストは増大するが、ギグワーカーらに支払っていた運賃相当も自社収益となるため、中長期目線で利益率の大幅向上が見込めるのだ。こうした未来を見据え自動運転の自社開発を進めていたが、開発長期化に伴う資金繰りなどを背景に事業売却を判断した経緯がある。

しかし、ライドシェアの上位互換となり得るポテンシャルを持つ自動運転サービスを諦める選択肢はなく、開発企業とのパートナーシップ構築に動き出した。その成果の一つがWaymoとの提携だ。

ただ、単純にモビリティサービスの一つとして自動運転タクシーをプラットフォームに導入するだけであれば、ウーバーにそれほど大きなメリットは生まれない。ギグワーカーに支払っていた運賃相当が、開発事業者に渡るに過ぎないためだ。

ウーバーとしては、自動運転サービスへの関与を高め、自社利益を増大化していく必要がある。その第一歩が、今オースティンで始まったのではないだろうか。

Waymoのような開発企業サイドも、現場作業をすべて自社で担うのは容易ではない。広域展開すればするほど現場の負担も増す。であれば、自動運転システムに関する専門的な作業は自社で担い、一定のノウハウのもと委託できそうな作業は他社に委ねる分業を考慮してもおかしくはない。

将来的には、自動運転システム・自動運転車の提供をソリューション化し、世界各地の交通事業者らが主体となって自動運転サービスを展開できるような形態を目指している可能性もある。直営には限界があるため、交通事業者らが主体となって自動運転サービスを展開し、Waymoは他社に委ねられないシステムの保守やアップデートなどを担う――といった形態だ。旧Navyaの事業イメージだ。

一方のウーバーは、マッチングサービス、いわゆる仲介業が主体だったが、交通事業者としてのノウハウを蓄積し、直営の自動運転サービスを展開していく腹積もりかもしれない。

ウーバーがこうした事業を構想しているのであれば、日本のプラットフォーマーも事業のアップデートを図り、マッチングサービスを踏み越えた事業展開・サービス提供を行っていかなければならない時代が訪れることも考えられそうだ。

【参考】オースティンにおける自動運転タクシーサービスについては「UberとGoogle、「テスラの城下町」で無人自動運転タクシーの配車開始」も参照。

UberとGoogle、「テスラの城下町」で無人自動運転タクシーの配車開始

Aurora InnovationやWeRide、Avrideとも提携

ウーバーはWaymoのほか、自動運転開発事業を売却した相手であるAurora Innovationや中国WeRide、スタートアップの米Avrideなどともパートナーシップを結んでいる。

WeRideとのパートナーシップでは、同社の自動運転タクシーをウーバーのプラットフォームに統合し、2024年12月までにUAE(アラブ首長国連邦)でサービス展開する計画を発表している。また、WeRideの新規株式公開(IPO)自に合わせウーバーが同社へ出資も行っており、さらなる世界展開を見据えている可能性も高そうだ。

Avrideとは、2024年10月に複数年にわたる戦略的提携を発表している。Avrideの自動配送ロボットと自動運転タクシーを導入する計画で、数週間以内にオースティンでUber Eatsのデリバリーにロボットを導入し、年内にテキサス州ダラスとニュージャージー州ジャージーシティにも拡大していくとしている。自動運転タクシーは、2025年後半にダラスでサービスインするという。

Aurora Innovationとの事業は明確なロードマップが示されていないが、ウーバーとAurora Innovationはそれぞれトヨタとパートナーシップを交わしている。その縁で、トヨタを交えながら日本で自動運転タクシーを――といった流れが出てくれば大きな話題になりそうだ。

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■日本国内における自動運転タクシーの動向

日産とティアフォーが開発継続中

国内企業で、類似サービス含め自動運転タクシー開発を手掛けるのは、ホンダ日産、ティアフォーだ。このうち、ホンダはパートナー企業のGM、Cruiseが撤退したため事業がとん挫した。

日産は、オンデマンド配車サービス「Easy Ride」の実証を2018年から積み重ねており、2027年度に地方を含む3~4市町村で車両数十台規模の自動運転サービス提供を目指す計画を掲げている。

横浜市内の実証では、一定エリア内に23の乗降地点を設け、複数ルートを運行する実証を行っている。乗降地点間を柔軟に移動できる疑似自動運転タクシーサービスと言える。

2025年3月には、新たに自動運転システムを統合したセレナで遠隔監視+保安員のみの実証に着手している。

ティアフォーは2024年5月、東京都内で自動運転タクシーを実用化する計画を発表した。2025年に東京都内の3カ所、2027年までに都内全域でサービスを展開する計画で、既存の交通事業者と共存できるサービス形態を目指す構えだ。

【参考】ティアフォーの取り組みについては「東京に自動運転タクシー!トヨタ車で11月事業化へ ティアフォー発表」も参照。

東京に自動運転タクシー!トヨタ車で11月事業化へ ティアフォー発表

日本交通とGOが主導権握る?

日本交通とGOは、Waymoとパートナーシップを結び東京都内でのサービス展開に向け2025年中に実証に着手する計画だ。実用化時期は未定だが、Waymoの自動運転車を輸送し、日本交通のドライバーが乗車してマッピング作業などを進めていくという。

なお、日本交通はティアフォーとも提携しているほか、GOは日産のEasy Rideにも間接的に関わっている。Easy Rideは日産とDeNAが立ち上げた事業で、GOはDeNAと日本交通系のモビリティ事業を統合した企業だ。

そう考えると、国内における自動運転タクシー事業はGOが主導権を握っている――と言っても間違いではなく、ウーバーが参入するころにはすでに基盤を築き上げている可能性もありそうだ。

【参考】日本交通・GOの取り組みについては「GO、”人間の運転手”いらずの「自動運転タクシー」を容認 Google製の車両配車へ」も参照。

GO、”人間の運転手”いらずの「自動運転タクシー」を容認 Google製の車両配車へ

■【まとめ】新たな業界勢力図が形成

Waymoの日本市場進出で情勢が大きく変わり始めたが、そこにウーバーも参入すれば競争はいっそう激化することは間違いない。自動運転開発企業、プラットフォーマー、交通事業者を巻き込む形で新たな業界勢力図が形成されそうだ。

おそらく、同様の動きは今後世界各地に広がっていく。自動運転技術・サービスのグローバル化が進む中、日本市場は初期激戦地の一つとして業界の注目を集めることになるのかもしれない。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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