GO、”人間の運転手”いらずの「自動運転タクシー」を容認 Google製の車両配車へ

タクシー事業者やドライバー組合の反発必至か



自動運転業界をリードするグーグル系Waymo。その初めての海外進出先が日本になりそうだ。Waymoと国内配車アプリ大手GO、日本交通の3社がパートナーシップを結び、東京都内でWaymoの自動運転実証に着手するという。


今年一番のビッグニュースと言っても過言ではなく、今後の取り組みに大きな注目が集まるところだが、一つだけ懸念もある。タクシー業界の反応だ。自動運転タクシーの実用化は、ドライバーの職が失われる側面もある。

日本交通、そしてGOを率いる川鍋一朗氏は、タクシー業界をけん引するリーダーでもある。ドライバーの組合などからの反発はないのだろうか。

今回の協業の中身とともに、自動運転モビリティに対するタクシー業界の反応を探ってみた。

編集部おすすめサービス<PR>
車業界への転職はパソナで!(転職エージェント)
転職後の平均年収837〜1,015万円!今すぐ無料登録を
タクシーアプリなら「GO」(配車アプリ)
クーポン超充実!「実質無料」のチャンスも!
新車が月5,500円〜!ニコノリ(車のカーリース)
維持費コミコミ!頭金は0円でOK!
自動車保険 スクエアbang!(一括見積もり)
「最も安い」自動車保険を選べる!見直すなら今!
編集部おすすめサービス<PR>
パソナキャリア
転職後の平均年収837〜1,015万円
タクシーアプリ GO
クーポンが充実!「乗車無料」のチャンス
ニコノリ
新車が月5,500円〜!頭金0円でOK!
スクエアbang!
「最も安い」自動車保険を提案!

■WaymoとGO、日本交通の協業の概要

2025年に東京都内で有人実証着手

出典:GOプレスリリース

WaymoとGO、日本交通の3社は、Waymoの自動運転技術「Waymo Driver」のテストを東京都内で実施するため、戦略的パートナーシップを締結した。自動運転タクシーの導入により、課題として顕在化している人口減少や労働力不足に対応した移動手段の改善を図っていく構えだ。


プロジェクトは段階的に進めていく。初期フェーズは2025年に東京都心から開始する予定で、日本交通の乗務員がWaymoの車両を運転し、Waymoの自動運転技術を東京の公道に導入するための実証を行う。

おそらく、レベル2から着手し、その後段階的にレベル3レベル4状態へと引き上げていくものと思われる。

Waymoが北米以外の国で本格実証に着手するのは初めてで、左側通行をはじめとした異なる道路環境・運転文化への対応が必須となる。

Waymoによると、2025年初頭にWaymo Driverを搭載したジャガーの「I-PACE 」を東京に送り、日本交通が車両の管理とサービスを監督する。両社は密接に協力し、Waymo車の操作について日本交通のチームをトレーニングする。


当初は日本交通のドライバーが車両を手動で操作し、港区、新宿区、渋谷区、千代田区、中央区、品川区、江東区など、日本の首都の主要エリアの地図作成を進めていく。

東京での初期段階を通じて、Waymo Driverの開発を加速させる貴重な経験が得られ、シミュレーションを通じてAI搭載ドライバーが新しい環境に適応する方法を評価できるようになるという。

▼GO、Waymo、日本交通 2025年より東京における自動運転技術のテストに向けて協業
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000286.000030664.html
▼Partnering with Nihon Kotsu and GO on our first international road trip|Waypoint
https://waymo.com/blog/2024/12/partnering-with-nihon-kotsu-and-go-on-our-first-international-road-trip

Waymoはサービス提供エリア以外でも積極的に実証

Waymoは、自社が通常運行しているエリアとは運転文化や条件が異なる地域においても以前からWaymo Driverを走行させているようだ。

まず、Waymo Driverを搭載した少数の車両を新しいエリアに持ち込み、非公開のもと人間の専門ドライバーが車両を手動制御し、Waymo Driverに稼働エリアのコンテキストを提供する。

Waymo Driverがそのエリアの地形を理解すると、車両は自動運転を開始できる。実証中、専門ドライバーが運転体験に関するフィードバックをエンジニアリングチームに提供し、新エリアでの運転に伴う独特のニュアンスを報告する。同時に、エンジニアリングチームは仮想レプリカで Waymo Driverのパフォーマンスを評価し、どの程度一般化できるかを測定する。

こうした作業を通じて得た新しい学習と洞察により、Waymo Driverの機能とサービスエクスペリエンスを継続的に改善しているという。何年にも渡り数十の都市で運転したことで、センシングテクノロジーをはじめとしたWaymo Driverのパフォーマンスが向上し、新しい場所へ安全に導入できるようになったとしている。

この応用学習・知識により、新エリアへのWaymo Driver導入速度が速くなり、システムに教えなければならない新しい状況が少なくなる。

今回の東京進出は、Waymoにとって大きな試金石となる。これまでの北米とは、通行ルールも道路幅も道路標識も異なる。他の自動車ドライバーや自転車などの挙動も異なる部分があるだろう。

都心部は混雑しているとはいえ、他国と比べれば交通秩序は比較的高い。異なる道路環境を学ぶのに日本はもってこいなのかもしれない。

Waymo/Googleの自動運転戦略(2024年最新版) ロボタクシーの展開状況は?

自動運転タクシー導入で日本交通やGOは業績アップ?

日本交通にとって、自動運転サービスの導入はコスト削減による経営基盤の強化につながる。タクシー業界において、営業費用に占める人件費の割合は7割強に上るためだ。自動運転車導入によるイニシャルコストと遠隔監視員などのランニングコストはかかるが、長い目で見ればドライバーレスによる人件費削減効果が大きくなるのは明らかなのだ。

また、配車サービスを手掛けるGOにも大きなメリットが発生する可能性がある。通常のタクシーと自動運転タクシーの手数料割合に差異が生じるかはわからないが、将来的にはコスト安めの自動運転タクシーの手数料割合が増す可能性がある。さらに、タクシー事業者運営から切り離されれば直営することもできる。

タクシー事業者をはじめ、モビリティプラットフォーム企業にとって自動運転サービスはドル箱事業になり得るのだ。

■タクシー業界とドライバー組合それぞれの方針

全自交は有人・無人の比率法制化を検討

ここからが本題だ。日本のタクシー業界は自動運転タクシーを受け入れるのか。タクシー配車アプリで圧倒的シェアを誇るGOは、日本交通とディー・エヌ・エー (DeNA)による合弁のテクノロジー企業だ。そして、GOと日本交通の代表取締役会長を務める川鍋一朗氏は、全国ハイヤー・タクシー連合会の会長も務める業界のボス的存在だ。

タクシードライバーの視点で考えると、自動運転タクシー導入によるドライバーレス化で人間のドライバー需要が減少し、雇用を脅かされることになる。ただちに職を失うことになるわけではないが、技術が向上するとともに徐々に自動運転タクシーの割合が増していくことは間違いない。長い目で見れば、職業ドライバーの多くが存在価値を失うのだ。

ハイヤー・タクシー産業に従事する労働者で構成する労働組合「全国自動車交通労働組合連合会(全自交)」は過去、取り組むべき政策課題の一つに「自動運転時代の到来を見据え、雇用を守りぬくための検討」を挙げていた。

今後自動運転技術が実用化されることを踏まえ、中長期的課題として雇用を守るための対策を検討する――というものだ。自動運転はまだまだ安全性に不安があり、ソフトウェアのエラーなどによって一斉に輸送能力がダウンすることも想定されることを懸念し、有人運行車両と無人運行車両の比率を法制化するなど将来に向けた検討が必要としている。

自動運転はあくまでもドライバー不足を補う手段に過ぎず、接客・接遇サービス、バリアフリー対応、災害や悪天候、マシントラブルやシステムトラブルなどを考慮すれば、完全自動運転が実用化されても有人タクシーは必ず必要になるというスタンスだ。

若い世代のドライバーや、これからタクシー業界に就職する未来の仲間の不安を解消するため、完全自動運転の実現後もしっかり雇用が確保されるよう法整備も含めた検討を呼び掛けるとしている。

自動運転タクシーの実用化を否定するものではないが、人間のドライバーの必要性をしっかりと訴えていく構えのようだ。

GO社長が語る「ライドシェアとの向き合い方」 上場理由の一つに「川鍋会長の影響力排除」

自交総連は反対の姿勢貫く?

全国自動車交通労働組合連合会(自交総連)は、2024年度運動方針(案)の中で「自動運転技術は今後の労働条件や雇用に重大な影響を与えることから調査・研究を深めていく」としつつ、「どんなに自動化が進んでも安全確保や乗客対応・サービスにおいて運転者の役割が失われることはないとの観点から、営業車の完全自動運転・無人化には反対する」としている。

「営業車の完全自動運転・無人化には反対」が、営業車をすべて自動運転化することに反対なのか、完全自動運転の導入そのものに反対なのかどちらにも読めるが、恐らく後者と思われる。

全タク連は雇用に配慮しつつ実証に積極参加

一方、ハイヤー・タクシー事業者の団体である「全国ハイヤー・タクシー連合会」は、自動運転タクシーを受け入れ、上手に利活用していく姿勢を見せている。

2019年に発表した「タクシー業界において今後新たに取り組む事項について 」への「追加項目」で、自動運転技術の活用方策の検討を盛り込んだ。

国や自動運転技術開発企業と連携し、各種実証実験に積極的に参加するなど、自動運転技術における幅広い知見を深め、自動運転技術を活用した旅客自動車運送事業の在り方を検討する。

その上で、現行タクシーと共存する新たな環境作りを目指し、タクシー業界からの具体的な要望案をとりまとめる。具体的には、自動運転タクシー導入に向けた道路運送法改正に向けた具体的な議論において、運賃、需給、保安基準、車庫に関する規制などについて、実証実験の事例を参考にしながら行政に対する要望書を作成していく。

期待出来る効果と目標としては、自動運転レベル4~5が実現した際においてもタクシーを国民の移動手段として 明確に位置付けること、ドライバー不足の解消、人件費を中心とした運行費・運行管理費などの費用削減を挙げている。

川鍋氏は、2024年の年頭のあいさつで「令和4年、レベル4に相当する特定自動運行の許可制度の創設などを内容とする道路交通法の一部を改正する法律が成立したことを踏まえ、『自動運転車を用いた自動車運送事業における輸送の安全確保等に関する検討会』が国土交通省に設置された。全タク連からも技術環境委員長が出席し、自動運転車の安全確保について議論を進めてきた。同検討会は報告書を取りまとめ、本報告書を踏まえ国土交通省は旅客自動車運送事業運輸規則の改正を行ったところ。全タク連では、今後とも自動運転車の動向について注視していく」としている。

全タク連としては、現行タクシーとの共存を前提に据えながら、未来における自動運転タクシー導入への道をしっかり開いていく構えのようだ。ドライバーの雇用維持と自動運転によるコスト削減効果のはざまでしっかりとバランスを取っていく印象だ。

落としどころは自動運転タクシーの導入割合?

自交総連は自動運転に反対の姿勢を打ち出しているが、全自交は一定割合の導入は致し方なし――と考えている印象だ。そして、全タク連は一定の雇用維持に配慮しつつ、自動運転導入でコスト削減を図り経営基盤を強化していく構えだ。

こうして見ると落としどころはあるようだ。一定割合の自動運転タクシー導入を認めるが、雇用と既存サービスの維持を目的に有人ドライバーのタクシーも継続する――といったところだ。

自交総連がどこまで強硬に反対する意向なのか不明だが、反対しているだけでは何も変わらず、遅かれ早かれテクノロジーの波に飲み込まれることはわかっているはずだ。

また、レベル4自動運転タクシーも、人間のドライバーのように柔軟性を持つにはまだまだ時間がかかる。「すぐに普及することはない」という事実に合わせ、導入割合に関する協議を進めたほうが建設的――となる可能性も考えられる。

こうした点を踏まえると、業界のボス・川鍋氏のグループが自動運転実証に乗り出しても、特段の反発はないものと思われる。

■【まとめ】タクシー業界を巻き込みながら自動運転タクシーの取り組みは加速

国内勢では、ホンダやティアフォーが自動運転タクシー実用化に向けた取り組みを進めている。ホンダはひと悶着在りそうだが、今回のWaymo進出を受け各社がどのように動き出すかも興味深いところだ。

現状、ホンダもティアフォーもタクシー業界との協業・協調を前提としており、タクシー業界を巻き込む形でこの流れは続いていく。

まずは世界トップクラスのWaymoの自動運転が日本でどのように性能を発揮するのか。必見だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事