東京に自動運転タクシー!トヨタ車で11月事業化へ ティアフォー発表

すでにお台場で実証、「2027年都内全域」目標



出典:ティアフォープレスリリース

自動運転スタートアップである株式会社ティアフォー(本社:愛知県名古屋市/代表取締役社長:加藤真平)は2024年5月23日までに、特定条件下で完全自動運転を実現する「レベル4」水準の自動運転タクシーによるサービス実証を開始することを発表した。

東京・お台場の複数拠点間でサービス実証を行い、同年11月から交通事業者と共同で事業化を目指すという。2025年に東京の3カ所、2027年までには都内全域でサービスを展開する計画だ。公開されているYouTube動画では、トヨタ製車両が公道を走行する様子が紹介されている。


交通事業者と共同で事業化をするということは、自動運転技術を開発するティアフォーがサービスの提供者にはならないと見込まれる点は、注目すべき点だ。この分野で先行するアメリカ中国では、自動運転技術の開発から運行サービスまでを自社で完結して展開しているケースが目立つ。

日本ではタクシー事業者以外がタクシー事業を展開するのには法的ハードルがあり、ティアフォーなどのテック系企業のほか、トヨタやホンダがこの分野に単独で参入するためには、法改正などが求められる状況と言える。

【自動運転ラボの視点】
国のプロジェクトとして事業を展開する場合は、プロジェクトの参加者を巻き込んでサービスを展開する必要があるため、収益性を最優先事項とした完全なるビジネス目線でサービス開発を突き進めることができない。こうした状況では、民間のみの相対取引で利害を一致させ、スピード感を持った投資で競争力を高めていく海外の企業などとの差は広がるばかりになる、という視点も持っておきたい。

■2025年に都内3カ所、2027年に都内全域

ティアフォーは現在、お台場の複数拠点間でロボットタクシーによるサービス実証を進行中だ。同社は東京都の「令和6年度 臨海副都心における自動運転技術を活用したサービス構築に関するプロジェクト」に参画しており、その一環として都が主催する国際イベント「SusHi Tech Tokyo 2024」と連携し、来場者にロボットタクシーの体験を提供している。

今後もお台場エリア区画内でサービス実証を継続し、2024年11月からの事業化を目指して交通事業者との協議を進めていくという。将来的には、ロボットタクシーの運用エリアを拡大し、従来のタクシー配車が困難な時間帯や経路を主な対象に商用サービスを展開する計画だ。


2025年にはお台場を含む東京都内の3カ所で、さらに2027年には都内全域でのサービス提供を目標にしている。また、この計画にあわせてロボットタクシー事業に適した新型車両の開発・製造も行い、順次市場に投入していくという。

■国内トップクラスの自動運転実証・実装実績

ティアフォーの創業者CEO兼CTOの加藤真平氏=撮影:自動運転ラボ

2015年設立のティアフォーは「自動運転の民主化」を掲げ、オープンソースの自動運転OS「Autoware(オートウェア)」の開発や普及に力を注いでいる日本における自動運転技術開発のトップランナーの一社だ。

同社はこれまで、Autowareを用いた自動運転システムの手本となる複数のリファレンスデザインの構築を行ってきた。これらのリファレンスデザインをさまざまな車両に適用することで、共通のソフトウェアプラットフォーム上で複数のODD(運行設計領域)を定義することができるという。タクシー型リファレンスデザインを適用したJPN TAXI車両は、お台場や西新宿といった交通量の多い走行環境に対してもODDを定義できる水準に達している。

【参考】関連記事としては「自動運転のODD(運行設計領域)とは?(2024年最新版)」も参照。


なお、すでにバス型リファレンスデザインを適用した複数車種が、全国各地の自治体や公共交通に導入されている。カート型リファレンスデザインを適用した専用車両が、工場内自動搬送ソリューションとして多数の工場へ導入され、無人で稼働しているという実績もある。

■すでにホンダと日産も参入を表明

国内の自動運転タクシー開発については、ホンダがパートナーシップを組む米GM、Cruiseと協力し、2026年初頭にも東京都心部でサービスを開始する計画を2023年10月に発表している。サービス車両には、運転席などを備えない自動運転専用モビリティ「クルーズ・オリジン」を導入する。

また日産は、国内におけるドライバーレス自動運転モビリティサービスの事業化に向けたロードマップを2024年2月に発表している。2024年度に横浜・みなとみらい地区でセレナをベースとした自動運転車両で走行実証を行い、2025~2026年度にかけてみなとみらい地区や桜木町、関内を含む横浜エリアでセーフティドライバー同乗のもと20台規模のサービス実証を行う。2027年度には、地方を含む3~4市町村において、車両数十台規模のサービス提供開始を目指すという。

米国や中国では、すでに自動運転タクシーが商用化済みだ。自動運転タクシー開発で遅れをとっていた日本も、ティアフォーが自動運転タクシーサービスに参入することで急速に成長していきそうだ。

【参考】関連記事としては「ティアフォーの自動運転/Autoware戦略」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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