自動運転と法律・ガイドライン、日本の現状まとめ

道交法や道路運送車両法に続き道路法も



道路交通法の改正などにより、2020年は自動運転を実現する法律が動き出す年となった。公道実証環境も年を追うごとに整い、技術の社会実装を加速させている。







自動運転に関する法律やガイドラインにはどのようなものがあるのか。2020年12月時点における最新状況をまとめてみた。

■道路交通法
自動運転時のスマートフォンやカーナビの使用が可能に

手動運転がメインとなるが、条件付きで自動運転を実現するレベル3に対応するため、2020年4月に改正道路交通法が施行された。

▼道路交通法|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105

改正法では、自動運行装置を使用した運転も従来の運転に含めることとしたほか、作動状態記録装置が不備な状態での運転を禁止するとともに、データの保存も義務付けている。

また、自動運転時のドライバーには、同法第71条第五号の五に定める携帯電話用装置やカーナビなどの画像表示用装置の利用を制限する条項を適用しないこととした。自動運転システムが正常に作動している限り、ドライバーはスマートフォンの使用やカーナビなどの操作を行うことが可能となった。

このほか、自動運転システムが作動する条件から外れた際は自動運行装置を使用した運転が禁止され、ドライバーは迅速に運転操作を引き継がなければならないことも定められている。

■道路運送車両法
自動運行装置を規定

道路交通法と同様、道路運送車両法も2020年4月に改正法が施行され、保安基準対象装置に自動運行装置が追加された。

▼道路運送車両法|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000185

自動運行装置は、「プログラムにより自動的に自動車を運行させるために必要な、自動車の運行時の状態及び周囲の状況を検知するためのセンサー並びに当該センサーから送信された情報を処理するための電子計算機及びプログラムを主たる構成要素とする装置」であり、「運転者の操縦に係る認知、予測、判断及び操作に係る能力の全部を代替する機能を有し、かつ、当該機能の作動状態の確認に必要な情報を記録するための装置を備えるもの」と規定された。

また、従来の分解整備を「特定整備」に改め、事業として行う場合に認証が必要な「分解整備」の範囲に自動運行装置も加えられたほか、自動運行装置などに組み込まれたプログラムの改変による改造などに係る許可制度を創設し、許可に関する事務のうち技術的な審査を独立行政法人自動車技術総合機構に行わせることとしている。

【参考】道交法と道路運送車両法の改正については「【解説】自動運転解禁への道路交通法と道路運送車両法の改正案の概要」も参照。

■道路法
自動運行補助施設を新たに追加

道路に関する一般法である道路法も改正案が2020年2月に閣議決定され、施行期日を令和2年11月とする政令も閣議決定された。

▼道路法|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=327AC1000000180_20201125_502AC0000000031

自動運転関連では、自動運転車の安全な運行を道路インフラ側から補助する「自動運行補助施設」が道路の附属物、及び道路の占用の許可に係る工作物、物件または施設として追加された。

道路管理者が自動運行補助施設を設置した場合は、その性能や設置した道路の場所などを公示しなければならないほか、民間事業者が設置した場合は占有物件となり、構造に支障を及ぼさない場合は車道上の設置も認めることとしている。

自動運行補助施設としては、車両に取り付けた磁気センサーモジュールで走路に敷設された磁気マーカーの磁力から自車位置を高精度に計測する「磁気マーカーシステム」が代表例として挙げられている。

今後、車両と道路インフラが通信するV2I(路車間通信システム)を活用した自動運転システムの導入も本格化していくことが予想されるため、自動運行補助施設の設置も次第に増加していくことが考えられる。

■電波法なども改正の動き

第5世代移動通信システム「5G」の普及を見据え、同じ周波数の電波を共同利用しやすくする仕組みの導入に向け総務省が電波法の改正案を取りまとめているほか、自動車損害賠償保障法等にも改正に向けた動きがあるようだ。貨物自動車運送事業法や道路運送法なども含め、自動運転に関連する法律の改正はまだまだ続きそうだ。

■自動運転車の安全技術ガイドライン

自動運転車の導入初期段階において車両が満たすべき安全要件として、レベル3とレベル4の自動運転システムを対象に国土交通省が2018年9月に発表した。

▼自動運転車の安全技術ガイドライン
https://www.mlit.go.jp/common/001253665.pdf

自動運転車が満たすべき車両安全の定義を「許容不可能なリスクがないこと」、つまり運行設計領域(ODD)において防止可能な事故が生じないことと定め、この定義に基づいて自動運転車が満たすべき車両安全要件を設定し、その安全性を確保することとしている。

ODDの設定

ODDは以下の①〜④などを基に、個々の自動運転車が有する性能や使用の態様に応じて設定することとしている。

  • ①高速道路や一般道、車線の有無といった道路条件
  • ②都市部や山間部、ジオフェンスの設定などの地理条件
  • ③天候や夜間制限などの環境条件
  • ④速度制限やインフラ協調の有無、保安要員の乗車要否といったその他の条件
自動運転システムの安全性

設定されたODDの範囲内にあるかどうかを確実に認識し、ODD内でのみ自動運転システムが作動するものであることや、制御系やセンサー系の冗長性を確保することでシステムの安全性を確保することが可能であることなどを求めている。

MRMやHMIなども

また、レベル3に対しては、運転権限の委譲に伴うフォールバック(縮退運転)やミニマル・リスク・マヌーバー(MRM)などの機能を、レベル4においても自動運転が継続困難となった際にMRMが設定されていることを求めている。

このほか、ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)やデータ記録装置、サイバーセキュリティ、無人自動運転移動サービスに用いられる車両の安全性、安全性評価などにも言及している。

【参考】安全技術ガイドラインについては「国土交通省、自動運転レベル3とレベル4に関する安全技術ガイドライン作成」も参照。

■自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準
自動走行システムの公道実証実験のためのガイドライン

適正かつ安全な自動運転の公道実証実験の実施を推進するため、警察庁が2016年5月に発表した。

▼自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/gaideline.pdf

現行法上、道路運送車両の保安基準を満たし、運転者が実験車両の運転者席に乗車して周囲の状況などを監視し、安全確保に必要な操作を行うことができれば公道実証実験は可能で、こうした実証時の安全確保措置やテストドライバーの要件、実験車両に係る各種データの記録や保存、事故の際の措置などについて義務や指針がまとめられている。

テストドライバーには、実証中に交通事故や交通違反が発生した際に運転者として責任を負うことになるためその自覚・認識を持つことをはじめ、自動走行システムの仕組みや特性への理解や緊急時操作の習熟などを求めている。

また、実施主体は、実証中に発生した交通事故や交通違反の事後検証を行うことができるよう、車両にドライブレコーダーやイベントデータレコーダーを搭載すべきとしている。

遠隔型システムの公道実証実験許可基準

レベル4においては遠隔型の自動運転技術の実証が求められることから、警察庁が遠隔型自動運転システムの公道実証実験に係る道路使用許可の申請に対する取扱いの基準を2017年6月に策定・発表した。

▼遠隔型自動運転システムの公道実証実験に係る道路使用許可の申請に対する取扱いの基準
https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/kouki/290601koukih92.pdf

正式に遠隔型自動運転も道路使用許可を受けて実施可能な許可対象行為とし、その取扱い基準を定めたものだ。なお、これに先立ち、国土交通省が同年2月に道路運送車両の保安基準に関する告示を改正し、車両内の運転者による操作を必要としない自動運転システムの公道実証実験を可能とする措置を講じている。

取扱い基準では、通信の遅延が生じ得ることや遠隔監視・操作者が把握できる周囲の状況が限定され得ることを踏まえた安全対策を盛り込んだ実施計画を求めているほか、遠隔監視・操作者が映像や音によって通常の運転と同程度に実験車両の周囲や進行方向の状況を把握できること、通信遅延が生じた際は自動的に実験車両が安全に停止すること、警察官など同乗のもと事前に走行審査を行うことなどを定めている。

ハンドルのない特別装置自動車も明記

2019年9月には、通常のハンドル・ブレーキと異なる特別な装置で操作する自動車(特別装置自動車)に関する取扱いを新たに盛り込んだ道路使用許可基準も発表している。

遠隔型、及び特別装置自動車については、安全確保の一環として当面は原則時速20キロを超えない速度を目安に最高速度として実施計画に盛り込むこととしていたが、2020年9月発表の最新版「自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準」においては、十分な猶予をもって安全に停止できる速度とし、通常の自動車の停止距離と同等の距離で停止することができる速度以下とするなど、部分的に改訂している。

自動配送ロボット(近接監視・操作型及び遠隔監視・操作型)公道実証実験手順

新型コロナウイルスの影響でさまざまな行動・サービスのコンタクトレス化を求める声が強まり、自動運転技術を活用した配送ロボットの開発を促進する機運が高まったことを受け、2020年4月に警察庁が宅配用ロボットなどに関わる公道実証の手順を発表した。

▼自動配送ロボット(近接監視・操作型及び遠隔監視・操作型)公道実証実験手順
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/202009robotjikkentejun.pdf

配送・宅配ロボットにおいても自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準を踏まえて実験計画案を作成することとし、近接監視・操作型の場合は監視・操作者が常に実験で使用するロボットの近傍で監視・操作することや、遠隔監視・操作型の場合は遠隔監視・操作者が映像や音によって実験車両の周囲や進行方向の状況を把握すること、実験車両が歩道などを通行する場合は、「搭乗型移動支援ロボットの公道実証実験に係る道路使用許可の取扱いに関する基準」も踏まえることとしている。

【参考】公道実証実験に係る道路使用許可基準については「日本の警察は「自動運転」にどう向き合っている?」も参照。

■ラストマイル自動運転車両システムのガイドライン
ODD具体例を提示

移動サービスに用いられるラストマイル自動運転車両の開発や実用化、普及を促進するため、国土交通省が2020年7月に「ラストマイル自動運転車両システム基本設計書」を策定・発表した。

▼ラストマイル自動運転車両システム基本設計書
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001354517.pdf

自動運転移動サービスの走行環境を具体例としてまとめるとともに、安全基準への適合性確保に向け設計時に留意すべきポイントを規定している。

基本設計書では、ラストマイル自動運転を以下のように定義づけている。

  • ①自動運行装置搭載車両
  • ②ワンマイル程度の狭く限定された移動範囲を前提としたODD
  • ③主に物流や移動サービス、地域公共交通に用いられる

ラストマイル自動運転が共通して考慮すべきODDには、道路条件・地理条件、環境条件、走行条件、機能的走行空間を挙げ、個別具体的なODDとしては、自転車歩行者専用道のうちラストマイル自動運転車両が特別に通行できる道路や、自転車歩行者専用道内に事前に設定された走行経路などの例を挙げている。

外向きのHMIで周囲と情報共有

技術的要件としては、設計時の留意点として縦方向や横方向の車両運動制御、歩行者や自転車への対応、緊急車両への対応などのほか、周囲の交通参加者に自動運転車であることが明確となるよう外向きのHMIによって車両挙動に関連する情報提示をすることが望ましいとしている。

また、障害物への対応や制動時の減速度、自動運行装置の冗長性、サイバーセキュリティシステムに係る技術要件やプログラムなど改変装置に係る技術要件に適合することなども挙げている。

【参考】ラストマイル自動運転向けのガイドラインについては「【資料解説】ラストマイル自動運転車両システムのガイドライン、国交省が策定」も参照。

■限定地域での無人自動運転移動サービスにおいて旅客自動車運送事業者が安全性・利便性を確保するためのガイドライン
従来の有人業務を無人で行う仕組みが必要

限定地域におけるレベル4移動サービスにおいては、サービスを実施する旅客自動車運送事業者は運転者が車内にいる場合と同等の安全性及び利便性を確保することが求められる。このため、国土交通省は2019年6月、安全確保に向け対応・検討すべき事項における基本的な考え方として「限定地域での無人自動運転移動サービスにおいて旅客自動車運送事業者が安全性・利便性を確保するためのガイドライン」を発表した。

▼限定地域での無人自動運転移動サービスにおいて旅客自動車運送事業者が安全性・利便性を確保するためのガイドライン
https://www.mlit.go.jp/common/001295527.pdf

旅客自動車運送事業者、遠隔監視・操作者、運転者以外の乗務員のそれぞれにおける基本的な考え方を示すとともに、安全性・利便性の確保のために対応すべき事項として、運行を中断したときや事故によって旅客らが死傷したとき、天災などにより輸送の安全の確保に支障が生ずるおそれがあるとき、車両の重大な故障を発見したときなど、非常時の対応や連絡体制の整備などを挙げている。

このほか、運転者が運送実施のために行う運行情報の入力や運行中における車両位置の把握、回送板の掲出、早発の禁止、運賃及び料金の払戻しといった行為について、無人自動運転移動サービスにおいても行うことができるようにすることが必要としている。

【参考】限定地域における自動運転サービスガイドラインについては「ついに実現へ!レベル4の自動運転タクシー、限定地域での運行ガイドライン発表」も参照。

■【まとめ】レベル4実現に向けた法改正も?

今後待たれるのは、本格的なレベル4次代を見据えた法改正だ。茨城県境町などですでにレベル4相当の移動サービスが始まっているが、セーフティドライバーの同乗が必須となる。万が一の事故を未然に防ぐため常に周囲に気を配り、すぐに車両を制御可能な状態でいなければならない。これは実質的にハンズオフ運転に相当する。

セーフティドライバー付きで経験・実績を重ねたあと、満を持してドライバーレスによる自動運転サービスがスタートすることになるが、官民ITS構想・ロードマップ2020によると、遠隔監視のみの無人自動運転移動サービスの開始は2022年度ごろを想定している。

ロードマップの実現に向け、当面は特別措置で対応する可能性も考えられるが、さらなる法改正に向けた動きが2021年中に水面から顔を出す可能性もある。

まずは各地で実用化が進み、より多くの実績を積み重ねることに期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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