中国政府はこのほど、株価が過去最高値から約93%下落している新興EV(電気自動車)メーカーNIOらに自動運転技術のテスト許可を与えた。
これにより、特定の道路においてレベル3の自動運転で試験走行が可能になり、ドライバーはハンドルから手を離すことができる。中国ではすでに10社以上の自動車メーカーがレベル2の自動運転車を商用化しているが、レベル3の自動運転車はまだ販売されていない。
今回の認可によりレベル3の自動運転車の実用化に弾みがつき、NIOの株価も回復基調になっていくか。
■レベル3テストが認可された企業は?
自動運転レベル3のテストが認可されたのは、下記の9社だ。中国が自動運転実用化計画のガイドラインを発表し、自動運転走行のテストを希望する企業から申請を受け付けてから8カ月後に下りた。このプログラムは、工業情報化部・交通運輸部・住宅都市農村開発部、公安部が監督する。
- NIO(上海蔚来汽車)
- BYD(比亜迪)
- 長安汽車
- GAC(広州汽車集団)
- SAIC(上海汽車集団)
- BAIC BluePark
- FAW Group(第一汽車集団)
- SAIC Hongyan(上海依維柯紅岩)
- Yutong Bus(宇通客車)
なお報道によると、この認可は米EV大手テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)が、完全自動運転システムをテストするために中国で自動運転タクシーを発売する可能性があると発言した直後に発表されたという。
マスク氏は2024年4月に中国を訪問した際に、テスラのADAS(先進運転支援システム)「FSD(Full Self-Driving)」を中国で本格展開する前のデータ収集として、FSDを搭載した自動運転タクシーを試験走行させることを提案したようだ。中国政府はFSDの普及についてすぐには認めていないというが、前向きな姿勢を示しているようだ。今回、中国企業9社がレベル3の自動運転テストを許可されたことにより、テスラも中国でFSDを普及させることが可能になっていきそうだ。
■注目のEVメーカー「NIO」の現在
今回認可を受けたNIOは、2014年に設立された新興EVメーカーだ。高級EVを中心に展開していたが、2024年5月には普及価格帯のEVのセカンドブランド「楽道(ONVO)」の立ち上げを発表している。同年9月にSUVの納車をスタートする予定だ。
自動運転開発も積極的に行っており、2023年12月に開催された年次顧客向けイベント「NIO Day」にて自動運転用車載チップ「NX9031」を初公開した。自動運転領域とコックピット領域でコンピューティングリソースを共有し、究極の安全性と効率性を確保するものだという。
同社は2018年9月に米ニューヨーク市場に上場した。株価は2021年1月に60ドルを超えたこともあったが、2023年以降は10ドルを切ることがほとんどで、2024年に入ってからは5〜6ドル前後となっている。今回のレベル3自動運転テストの認可取得により、株価は回復していくのだろうか。注目される。
■中国政府の認可が強力に後押し
今回認可されたBYDは中国のEV最大手、長安汽車やGAC、SAIC、FAWは大手自動車メーカーである。有力企業が続々とレベル3の自動運転開発に本格的に乗り出しているということだ。
自動運転レベル3とは、一定条件下においてドライバーに代わってシステムが全ての運転操作を行う状態のことを指す。ODD(運行設計領域)内で自動運転を実現するレベル3だが、ODDを外れる場合や、ODD内であっても自動運転の継続が困難とシステムが判断した場合、ドライバーに運転操作の交代が要求される。ドライバーは、この要求に応じ迅速に運転操作を行わなければならない。このため、レベル3はドライバーの存在が不可欠となるが、長距離移動の負担を大きく軽減する技術として導入が進められている。
レベル3走行テストの認可が下りたことで、中国の自動運転開発はますます発展するだろう。国家として自動運転の実装を推進する同国の今後が楽しみだ。
【参考】関連記事としては「世界初!完全無人自動運転サービス、中国が「首都で認可」」も参照。