自動運転とは?(2024年版) レベル別の実用化・開発状況・業界動向まとめ

レベル4サービスは世界各国で本格化



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出典:Waymo公式ブログ

日進月歩の成長を続ける自動運転業界。日本のホンダ自動運転レベル3の市販車を発売し、メルセデスもレベル3機能の提供をスタートさせた。アメリカ中国ではレベル4自動運転タクシーが街中を走行し始めている。

こうした状況の中、この記事を読んでいる人の中には、日本そして世界における自動運転技術がどこまで進んでいるのか、どのような企業が将来有望なのか、整理して理解したいと考えている人も少なくないはずだ。市場が拡大しているだけに、包括的に現状を理解するのはなかなか難しい。


この記事では自動運転に関する基礎知識のほか、2024年時点の情報をもとに、ADAS(先進運転支援システム)に相当する「自動運転レベル1」と「自動運転レベル2」を含め、自動運転各レベルの開発・実装状況を解説していく。

記事の後半では自動運転に関する事故のほか、自動運転配送ロボットの開発状況についても国別に説明していく。業界の動きがめまぐるしい自動運転業界に注目だ。

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<記事の更新情報>
・2024年3月15日:業界動向について追記
・2024年1月3日:自動運転レベルの説明について追記
・2023年12月14日:自動運転の事故の情報を追記
・2023年11月16日:自動運転に関する事故の情報を追記
・2023年10月18日:「自動運転」の英語表記などについて追記
・2023年10月16日:SAEによる自動運転レベルの基準内容について追記
・2023年8月24日:自動運転レベル1〜5の搭載台数予想データやレベル3の展開状況を更新
・2023年4月19日:市場調査や自動配送ロボの開発情報を追加
・2023年1月6日:各自動運転レベルの最新情報を更新
・2022年8月1日:記事初稿を公開

■そもそも「自動運転」の定義は?

自動車・モビリティ業界において「自動運転」というワードを使った場合、それは自動車(シャトルやバスを含む)の無人走行や配送ロボットの無人稼働などのことを指す。「自律走行」「無人走行」などを言う言葉で表現されることもある。


英語では「Autonomous」「Self-driving」などのワードが使われる。自動運転タクシーは「Autonomous Taxi」などと表現されるが、「Robot Taxi」といった呼称が使われることもある。

【参考】関連記事としては「自動運転、英語で何と書く?技術用語はどう表記?」も参照。

■「自動運転レベル」とは?

自動運転レベルは0〜5の6段階に分類され、手動運転に相当する0→5に進むに従って運転支援・自動運転の程度が上がっていく。自動運転レベルは、アメリカの「自動車技術会」(SAE)が示した基準が使われており、国土交通省の公式サイトでもレベル分けについての解説を読むことが可能だ。

レベルごとの呼称は複数あるが、自動運転ラボで主に用いている呼称は以下の通りだ。SAEの基準の日本語訳に相当する。


  • 自動運転レベル1:運転支援
  • 自動運転レベル2:部分運転自動化
  • 自動運転レベル3:条件付き運転自動化
  • 自動運転レベル4:高度運転自動化
  • 自動運転レベル5:完全運転自動化

▼自動運転のレベル分けについて|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf

出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)
出典:自動車技術会

SAEが示した基準の元データ

SAEが示した基準の内容は、以下のURLから確認できる。内容は2021年4月にアップデートされている。

▼SAE Levels of Driving Automation Refined for Clarity and International Audience
https://www.sae.org/blog/sae-j3016-update

自動運転レベルのビジュアルチャートも合わせて公開されている。以下がその画像だ。

出典:SAE公式サイト(※クリックorタップすると拡大できます)

なお、原文の日本語参考訳として2022年3月18日に改訂されたものが、ウェブサイトにて無償公開されている。以下からアクセスできる。

▼翻訳版のダウンロード(※アンケートへの回答が必要)
https://questant.jp/q/8ZJW8X8K

【参考】関連記事としては「自動運転レベル、誰が決めた?」も参照。

■自動運転レベル1

レベル1は市販車でスタンダード化

自動運転レベル1(運転支援)は、車両制御のうち「縦方向」または「横方向」いずれかのサブタスクをシステムが限定領域において実行する。言い換えると、アクセル・ブレーキ操作による「前後(加速・減速)」の制御、もしくはハンドル操作による「左右」の制御のどちらか一方の操作補助をシステムが担う。

代表例としては、前走車に追従するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)や衝突被害軽減ブレーキ、LKA(レーン・キープ・アシスト)などの個々の機能が相当する。

衝突被害軽減ブレーキは、軽トラックや輸入車など一部を除く新型車への搭載義務化が始まっており、ほぼ標準装備となっている。日本自動車工業会の統計資料「2022 日本の自動車工業」によると、衝突被害軽減ブレーキとペダル踏み間違い急発進抑制装置の搭載率は以下のように推移している。

出典:2022 日本の自動車工業(https://www.jama.or.jp/library/publish/mioj/ebook/2022/MIoJ2022_j.pdf

■自動運転レベル2

市販車における主力製品に

自動運転レベル2(部分運転自動化)は、車両制御のうち縦及び横方向両方のサブタスクをシステムが限定領域において実行する。レベル1では縦と横方向どちらか一方だったが、両方可能とするのがレベル2だ。

例えば、ACCで縦方向の制御を支援しつつ、LKAで横方向の制御も支援し、同一レーン上での走行をトータルで支援する――といった感じだ。

【参考】レベル2については「【最新版】自動運転レベル2の要件や定義、機能を解説」も参照。

この機能が高度化すると、一定条件下で運転中にハンドルから手を離す「ハンズオフ」(※「ハンズフリー」という呼ばれ方がすることもある)運転が可能になる。あくまで運転支援機能であり、自動車制御に関わる責任は依然ドライバーが担うものだが、運転における負担を軽減することができる技術だ。

ハンズオフ機能はレベル2における1つの到達点であり、従来のレベル2と区別して「高度レベル2」「レベル2+」「レベル2.5」などと表現されることもある。

【参考】ハンズオフ機能搭載車については「「手放し運転」が可能な車種一覧(2022年最新版) ハンズオフ機能とは?」も参照。

ハンズオフ搭載車は、国内メーカーでは日産の「ProPILOT2.0」をはじめ、ホンダ「Honda SENSING Elite」、トヨタ「Advanced Drive」、スバル「アイサイトX」など、出揃い始めている。今後、搭載車種も徐々に拡大していく見込みだ。

▼Advanced Drive|トヨタ
https://toyota.jp/safety/scene/highway/index5.html
▼プロパイロット 2.0|日産
https://www2.nissan.co.jp/SP/TECHNOLOGY/PROPILOT2/

なお矢野経済研究所が2022年8月に発表した「自動運転システムの世界市場に関する調査」によれば、2021年の実績ベースにおいて、自動運転レベル2の技術を搭載した車両台数は約1,493万台、ハンズオフなどレベル2を高度化したレベル2プラスは約86万台となっている。レベル2の搭載車は2030年には約3,675万台まで増える見込みだという。

出典:矢野経済研究所(※クリックorタップすると拡大できます)

【参考】矢野経済研究所の調査結果については「ADASか自動運転技術の搭載車、2030年には3.4倍の8390万台に 「レベル2/2+が市場牽引」」も参照。

■自動運転レベル3

レベル3ではアイズオフが可能に

自動運転レベル3(条件付き運転自動化)は、一定条件下において全ての運転操作をシステム側が行うが、システムが作動継続困難と判断し、ドライバーに運転交代要求(テイクオーバーリクエスト/TOR)を発した際は、ドライバーは速やかに運転操作を行わなければならない。

【参考】テイクオーバーリクエストについては「自動運転とTOR」も参照。

自動運転の初歩の段階で、自動運転システムと手動運転が混在するレベルとなる。自動運転システム作動時は、ドライバーは周囲の監視義務を免れることができ、ハンドルから手を離すハンズオフをはじめ、車両前方から目を離すアイズオフ運転(※アイズフリーという呼ばれ方がすることもある)も可能になる。

自動運転システムが作動可能な「ODD」(運行設計領域)はシステムごとに異なり、例えば「晴天下における高速道路上において時速80キロ以下で走行中」などそれぞれ設定される。

【参考】関連記事としては「自動運転とODD」も参照。

ODDから外れる際や、ODD内であっても何らかの理由でシステムが作動継続困難と判断した際、システムからドライバーにテイクオーバーリクエストが発される。ドライバーはこのリクエストに迅速に応答しなければならないため、自動運転中であっても睡眠などの行為は厳禁となる。

セカンダリアクティビティには議論の余地あり

自動運転中にドライバーに許容される行為「セカンダリアクティビティ」については、道路交通法上は「第71条第五号の五」に定められた携帯電話用装置などの利用を制限する条項を適用しないこととされている。カーナビやスマートフォンなどの操作が認められる一方、法的に明確に許容されたセカンダリアクティビティはこの範囲にとどまる。

おそらく、実用化が始まったばかりのレベル3を運用する上で、安全性を重視してその他のセカンダリアクティビティについてはしばらく明示せず、知見を積み重ねてから一定の指針を明示するものと思われる。

読書や簡単な食事・仕事など、問題ないと思われる行為も、現場の判断で違反となる可能性があるため、しばらくは注意が必要だ。

【参考】レベル3のセカンダリアクティビティについては「自動運転レベル3でできること」も参照。

レベル3に関する法的動向

日本では、レベル3走行を可能とする改正道路交通法と改正道路運送車両がそれぞれ2020年4月に施行され、公道走行が可能となった。世界でも、ドイツ韓国などが法改正済みで、日本同様レベル3が認められている。米国は各州の判断による。

▼道路交通法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105
▼道路運送車両法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000185

国連関係では、自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で2020年6月、レベル3に関する自動運転システムの要件について国際基準が成立した。自動運転システムは「高速道路などにおける時速60キロ以下の渋滞時などにおいて作動する車線維持機能に限定」とされ、対象も乗用車限定となっている。また、付随要件としてミニマルリスクマヌーバーやドライバーモニタリング、サイバーセキュリティ確保の方策、作動状態記録装置の搭載などが求められている。

この基準は順次改正されており、2021年11月に対象車種がバスやトラックなどにも拡大されたほか、2022年6月には上限速度が時速130キロに引き上げられ、乗用車に限り車線変更も可能とすることとされている。

【参考】レベル3の国際基準については「自動運転、国連が上限時速130キロに緩和!車線変更も容認」も参照。

レベル3の市場規模は?

前出の矢野経済研究所の調査によると、レベル3の搭載車種は2021時点の実績で100台となっており、2025年には40万台、2030年には625万台まで規模が増えるという。

レベル3搭載車種は?

一般乗用車へのレベル3搭載は、ホンダが2021年3月にリース販売を開始した新型「LEGEND」で幕を開けた。LEGENDに搭載されるトラフィックジャムパイロットは、高速道路渋滞時において最大時速50キロ以下の範囲で自動運転を可能としている。

▼Honda SENSING Elite|新機能詳細|トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)/緊急時停車支援機能
https://www.honda.co.jp/factbook/auto/LEGEND/202103/P07.pdf
▼トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能) エンジニアトーク|Honda
https://www.honda.co.jp/tech/articles/auto/EngineerTalk_TJP/

新型LEGEND=出典:ホンダプレスリリース

ホンダに続いたのが、メルセデス・ベンツだ。同社は2022年5月までに「Sクラス」とSクラスのEV(電気自動車)版「EQS」に有料オプションの形でレベル3システム「DRIVE PILOT」を搭載可能にした。最初にドイツ国内で展開し、2023年8月時点ではアメリカの一部州でも搭載に関する認可が下りている。

ボルボ・カーズは、条件付自動運転機能「ライドパイロット」を米カリフォルニア州で先行導入する計画を発表している。近い将来発売するBEV(完全電気自動車)にサブスクリプションとして提供する予定で、正式な時期は未定だ。

BMWや韓国の現代(ヒョンデ)もレベル3の展開に積極姿勢を示している。今後、続々とレベル3搭載車が市場投入され、世界各地で乗用車における自動運転レベル3が実現していくことは確実だ。

ちなみにホンダに関しては、ソニーとの合弁会社のソニー・ホンダモビリティが、2025年前半から受注を開始するEVに自動運転レベル3を搭載させることを目指している。

【参考】ホンダのレベル3については「ホンダの自動運転戦略」も参照。

■自動運転レベル4

レベル4はドライバーレスを実現

レベル4(高度運転自動化)は、一定条件下において全ての運転操作をシステム側が行い、作動継続が困難な場合もドライバーやオペレーターなどの介入に期待しないレベルを指す。ODD内においてドライバーを必要としない自動運転を実現させ、万が一ODDを外れる際も安全に車両を停止させるなどドライバーを必要としない高度な自動運転となる。レベル4については「ドライバーフリー」という呼ばれ方をすることもある。

ドライバーが不要となるメリットを生かし、移動サービスや輸送サービス用途に導入を図る動きが活発だ。開発車両は、手動運転装置を備えたモデルや同装置を備えず自動運転に特化したモデルなどさまざまだ。

なお、現実的には多くのレベル4サービスでオペレーターが遠隔監視・操作システムなどを活用して適時監視や操作介入を行っている。技術的に発展途上であることと安全面を重視しているためだ。このため、多くのレベル4サービスは実質レベル3~3.5といった感じだが、ここではレベル4として取り扱う。

【参考】関連記事としては「自動運転レベル4、いつから解禁?」も参照。

Waymoを筆頭に自動運転サービスが続々誕生

出典:Waymo公式サイト

レベル4サービスはすでに実用化されている。公道においては、米Waymoが米アリゾナ州で2018年12月、セーフティドライバーを同乗する形で有償の自動運転タクシーサービスを開始したのがはじまりだ。翌年にはセーフティドライバーが乗車しない完全無人化を達成し、名実ともにレベル4を達成している。

米国では、カリフォルニア州でもWaymoとGM・Cruiseが自動運転タクシーのサービス実証を始めるなど、エリア拡大が活発化し始めている。

中国では、百度(Baidu)を筆頭にWeRide、AutoX、Pony.aiなどの開発企業が北京や上海、深センなどの都市でサービスを開始している。一部サービスでは無人化・有料化も実現している。

自動運転シャトル関連では、仏NavyaとEasyMileが大きく先行しており、世界各地で高い導入実績を誇る。

米国、中国では自動運転トラックの開発も盛んで、Waymoをはじめ、TuSimple、Plusといった新興勢が続々と台頭し、量産化を視野に入れた取り組みを加速している。

【参考】自動運転トラックについては「自動運転トラックの開発企業・メーカー一覧(2022年最新版)」も参照。

また、イスラエルMobileyeは、コンシューマー向けのレベル4車両を2024年にも中国で発売する計画を明かしている。一般自家用車におけるレベル4がどのように導入されるのか、要注目だ。

【参考】Mobileyeの取り組みについては「自動運転で未知の領域!「市販車×レベル4」にMobileyeが乗り出す」も参照。

なお、米コンサルティング企業のMarketsandMarketsの調査によると、2021年の自動運転タクシーの市場規模は617台という。現在、100台規模のフリートを構想する企業も出始めており、こうした数字は今後飛躍的に伸びていくことが予想される。

レベル4に関する法的動向

国内では、レベル4によるドライバーなしの運行を「特定自動運行」と定義し、従来の「運転」と区別する内容を含んだ道路交通法の改正案が2022年の通常国会で可決され、2023年4月に施行された。この特定自動運行に関する運用ルールを細かに整備されたことで、レベル4の社会実装が可能になった。

ちなみにこの法改正を受けて、福井県永平寺町で自動運転レベル4の移動サービスの展開が始まっている。無人を前提としたモビリティが移動サービスを提供しているが、電磁誘導線に沿って自動運転を行う「誘導型」の仕組みであるため、WaymoやCruiseと同水準のレベル4とはまだ言えない。

ドイツも、世界に先駆けてレベル4に対応した法案が2021年5月に連邦議会で可決されている。この動きは今後世界各国に広がっていくことは間違いない。早期にレベル4環境を整えた国には、世界の開発企業が集結する可能性があり、こうした点からも今後の動向に注目したいところだ。

【参考】レベル4に関する法整備については「自動運転、2022年は世界で「レベル4」の法整備加速」も参照。

レベル4の市場規模は?

前出の矢野経済研究所の調査によると、前述の矢野経済研究所の調査データによれば、レベル4の搭載車両数は2030年に約72万台に達すると予想されている。2025年までは0台という予想だ。これは、移動サービスとしてはレベル4の車両が使われても、市販車として一般向けに展開される車両ではレベル4の展開は遅くなる、といった将来予測と言えよう。

■自動運転レベル5

レベル5は高い壁、一部企業が果敢に実現目指す

レベル5(完全運転自動化)は、ODDに限定されることなくあらゆる状況下で無人運転を実現するレベルを指す。道路の種別や速度、エリアなどに捉われず、手動運転が可能な状況をすべて自動運転がカバーすることになる。

【参考】レベル5については「【最新版】自動運転レベル5とは?定義などの基礎知識まとめ」も参照。

突発的な悪天候や道路工事・事故などで一時的に走行できなくなった際も、状況が回復するまで安全に停止したり、走行可能な別ルートを探したりして運行を継続する。原則として、遠隔監視含め人間の手を煩わせない仕様となる。

現在の技術水準では一般的に達成は困難とされており、レベル5開発を公言する企業は少ない。米国では、EV大手テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)が完全自動運転実現を早くから公言している。テスラの場合、デジタルマップを使った完全自動運転ではなく、人間のように「目」の役割を果たすセンサーだけで完全自動運転を実現しようとしている。

ちなみに国内では、2021年設立のスタートアップTURINGがテスラ超えを掲げ、2025年を目標にレベル5のEV開発を進めている。

■いずれは「レベル6」の世界もやってくる?

ちなみに、現時点で自動運転レベルは0〜5の6段階で定義されるが、もしかすると「レベル6」もいずれは定義されるかもしれない。自動運転ラボは以下の記事でその予測について触れた。

自動運転レベル5では「自動車」が完全自動運転を実現するが、レベル6では「管制センター」が全ての車両を遠隔で自動運転させることがあり得るかもしれない。そうすれば、「個」の自動車が完全自動運転をするよりも、交通全体を最適化し、より渋滞などを少なくしていけるはずだ。

ただし、こうした世界の実現には、莫大な計算が可能なスーパーコンピュータ、そして超高速な通信が可能なネットワークが必要不可欠になる。

■自動運転関連の事故

自動運転車の販売は自動運転タクシーの実用化が進む中で、自動運転関連の事故に関するニュースも増えてきた。商用化が進むと社会で活躍する自動運転車の絶対数が増えるため、事故件数も増える。ただ、事故の絶対数が増えても「事故率」はまた別の話だという考え方をもって、事故に関するニュースに触れたいところだ。

日本国内での自動運転車の2023年の事故としては、「日本初のレベル4」として注目を集めている自動運転レベル4の無人移動サービスが起こした接触事故が注目を集めた。4人が乗っている自動運転モビリティが無人の自転車に接触したという事故で、けが人はいなかったものの、原因究明などのために運行が一時停止された。

11月には、ソフトバンク子会社のBOLDLYが委託を受けて運行していた自動運転シャトル「MiCa」が、接触事故を起こした。負傷者はいなかった。

アメリカにおける事故としては、GM傘下Cruiseの自動運転タクシーが、女性を下敷きにして引きずるという事故が2023年に起きた。この事故の前にもCruiseの自動運転タクシーはたびたびトラブルを起こしており、Cruiseは自社の全車両をリコールし、米国内で展開している自動運転タクシーの運行を全て停止した。(カリフォルニアでは当局から運行停止命令が出た)

海外での事例

  • 2016年2月:Googleの自動運転車が路線バスと衝突
  • 2016年5月:Uberの車両で部分自動運転モード中に死亡事故
  • 2018年3月:Uberの車両が自動運転中に歩行者と死亡事故
  • 2018年3月:TeslaのEVが2件目の自動運転モード中の死亡事故
  • 2023年10月:Cruiseが女性を下敷きにする事故

国内での事例

  • 2019年8月:名古屋大学が所有する「ゆっくり自動運転」車両が接触事故
  • 2020年3月:BOLDLYの自動運転バスが都内で物損事故
  • 2020年8月:産総研の実証実験で接触事案、運転手の判断ミスが要因
  • 2020年12月:再起動忘れが原因で自動運転バスがガードレールに接触
  • 2021年8月:東京五輪の選手村でトヨタのe-Paletteが接触事故を起こす
  • 2023年1月:大津市内で乗客が座席から滑り落ちる事故が発生
  • 2023年10月:「日本初のレベル4」の移動サービスで接触事故が発生
  • 2023年11月:福岡市で実証運行中の「MiCa」が接触事故

■自動運転市場の今後は?

富士キメラ総研:レベル4・5は2020年見込み9万台から2045年に2,051万台に

富士キメラ総研は、2022年8月に「2022 自動運転・AIカー市場の将来展望」を発表した。生産台数ベースで、レベル2の車両は2020年見込みの3,608万台から2045年には6,166万台まで増加すると予測している。レベル3は同3万台から2,847万台、レベル4・5は同9万台から2,051万台にそれぞれ増加すると予測している。

レベル3以上では運転主体が部分的に自動運転システムになるため、法規制や事故時の責任問題などの課題が多く、これらがクリアとなってくる2030年以降に普及段階に入るとの予想だ。

なお注目市場として、LiDARが2022年見込み129億円から2045年3兆5,375億円、DMS(Driver Monitoring System)が2022年見込み664億円から2045年9,349億円と予測している。DMSについては、欧州では2024年に搭載が義務化され、北米では2026年までに搭載が推奨されることから、市場が拡大するとみているようだ。

▼『2022 自動運転・AIカー市場の将来展望』まとまる(2022/8/3発表 第22085号)|富士キメラ総研
https://www.fcr.co.jp/pr/22085.htm

Report Ocean:2028年に63億ドルまで拡大

Report Oceanが2022年11月に発表した最新予測によると、世界の自動運転車市場は2021年に約17.4億ドルとなり、2022〜2028年のCAGR(年平均成長率)は20.3%以上になるようだ。2028年の市場規模は、63.4億ドルに達すると予測している。

アジア太平洋地域において、厳しい安全規制の実施や安全で効率的で便利な運転体験に対する需要の高まりにより、市場シェアにおいて世界の主要地域になるという。新興国における可処分所得の増加や技術的進歩などにより、アジア太平洋地域全体の自動運転車市場に有利な成長見通しを生み出し、同地域が最も高い成長率を示すと予想している。

▼自動運転車の市場規模は2028年に63.4億米ドルに達する見込み-最新予測|Report Ocean
https://newscast.jp/news/8474254

リサーチステーション:自動運転列車の世界市場規模は2030年に123億ドル

自動運転列車についての市場調査レポートも発表されている。リサーチステーションのレポートによると、世界市場規模は2022年に83億ドル、2030年に123億ドルとなり、CAGRは5.1%に達する見込みだという。

自動運転に関して、クルマだけでなく列車でも開発が進んでいることが分かる。

▼自動運転列車(Autonomous Train)の世界市場規模、2030年に123億ドルに達する見通し【市場調査レポート】|リサーチステーション合同会社
https://www.dreamnews.jp/press/0000273306/

■自動運転配送ロボットの現状は?

続いて、各国で自動運転配送ロボットを開発している主な企業について説明していこう。

【参考】関連記事としては「自律走行ロボットの種類は?(2023年最新版)」も参照。

日本の主な開発企業は?

出典:経済産業省

自動運転ベンチャーのZMPは、自動運転技術を応用した宅配ロボット「DeliRo(デリロ)」を開発しており、このロボットと、ユーザー用・店舗用アプリやITサービスをパッケージ化して提供している。日本郵便と共同での公道走行実証の実績がある。

ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏が取締役を務めるHakobotも、自動運転配送ロボットを手掛けている。自動走行ユニット「Hakobase(ハコベース)」のみで自動運転実装が可能で、荷室はカスタマイズ可能となっているのが特徴だ。

2022年4月設立のスタートアップ企業LOMBY(ロンビー)は、屋内外で走行可能な自動配送ロボットを開発している。2023年3月にはスズキと共同開発契約を締結し、ラストマイル物流の課題解決に取り組んでいくことを発表した。また自動配送ロボベンチャーのLexxPlussは、約14.5億円の資金調達を実施し、米国市場に進出することを2023年3月に発表している。

パナソニックも自動配送ロボットの自社開発に取り組んでおり、2022年5〜7月には楽天や西友と公道走行による配送サービスを、日本で初めて茨城県つくば市で行った。

米国の主な開発企業は?

出典:Nuro公式ブログ

代表的な開発企業は、Starship TechnologiesやNuroなどだ。Starship Technologiesはエストニア発の企業であるが、本社を米カリフォルニア州サンフランシスコに置いている。同社の宅配ロボは、すでに400万件以上の配送を行っているようだ。

Nuroは宅配ロボ「R2」を開発している。トヨタ系Woven Capitalからの出資を受けるなど経営は順調にみえたが、2022年11月には従業員の20%をレイオフ(一時解雇)することが明らかになっている。チーム規模を倍増させ、営業費用を大幅に増加させたことが要因のようだ。

米スタートアップのCartken(カートケン)は、自社開発の自動運転配送ロボを日本にも進出させている。2022年1月には、愛知県のイオンモール常滑で商品配送サービスの実証実験を行うことを発表している。

なおAmazonも宅配ロボ「Amazon Scout」の開発を行っていたが、公開テストを停止することが2022年10月に報じられた。プログラムが顧客ニーズに合っていないため、取り組みをゼロから再構築するというのが理由とされている。

欧州の主な開発企業は?

出典:e-Noviaプレスリリース

イタリアのe-Noviaが開発したコンパクトな2輪タイプの宅配ロボ「YAPE」や、ドイツで郵便・物流を担うドイツポストが開発した「Post BOT」などがある。

中国の主な開発企業は?

出典:JD.comプレスリリース

ECプラットフォームやフードデリバリー事業などを手掛ける美団(Meituan)は、2018年に初の自動配送ロボット「Xiaodai」を発表した。スタートアップのNeolix(新石器)は、2019年から宅配ロボの量産を開始している。

EC大手のアリババは、2020年9月にラストマイル配送用の宅配ロボ「小蛮驢(シャオマンリュ)」を発表した。同じくEC大手のJD.com(京東商城)も宅配ロボを手掛けており、2022年4月には上海で100台以上の稼働をスタートさせている。

■【まとめ】レベル4は本格的な拡大局面へ

自家用車においては、レベル2が2020年代の主力となる一方、レベル3搭載車も増加し、徐々にシェアを上げていくものと思われる。また、モービルアイのようにレベル4搭載を目指す動きも出ており、動向を注視したい。

レベル4サービスは世界的に拡大局面へと本格的に移行し始めた状況で、今後、米国・中国以外でもサービスインする例が続々と出てきそうだ。自動運転業界は1年間で大きく情勢が変わるため、引き続き各社・各国の動向に注目したい。

【参考】関連記事としては「自動運転、日本政府の実現目標」も参照。

■関連FAQ

    自動運転レベルとは?

    米自動車技術会(SAE)が策定した自動運転関連の技術区分で、自動運転化なしのレベル0から、完全自動運転を実現するレベル5まで6段階に分けられている。なお、自動運転レベルという名称が付されているものの、レベル1、レベル2は自動運転ではなくADAS(先進運転支援システム)で、レベル3以降が自動運転となる。

    ADASとは?

    ACCやLKAなど、ドライバーの手動運転を支援する技術を総称してADASという。あくまで運転を支援する役割であり、運転における責任はすべてドライバーが負うことになる。

    ODDとは?

    自動運転が可能となる条件のことで、高速道路や一般道といった道路条件、地理的境界線(ジオフェンス)内や山間部といった地理条件、天候などの環境条件、その他速度制限やインフラ協調の有無など各種要件で構成される。ODDがカバーする条件が大きければ大きいほど自動運転可能な条件が広がるため、各自動運転システムの能力を示す明確な指標と言える。

    ハンズオフやアイズオフって?

    ハンズオフはハンドルから手を離した運転、アイズオフは車両周囲から目を離す運転を指す。それぞれレベル2+、レベル3を象徴する表現と言える。レベル4では、ドライバーは運転操作から完全に解放されるため、ブレインオフと表現されることがある。また、レベル2をハンズフリー、レベル3をアイズフリー、レベル4をドライバーフリーと呼ぶこともある。

    自動運転関連の法律って?

    自動運転に関連する法律は、日本では道路運送車両法と道路交通法が挙げられる。車両が備えるべき要件や、道路交通ルールを整備した法律だ。従来の各法は人間による手動運転を前提とし、自動運転システムが存在していないため、自動運転の社会実装に向けては、自動運転システムの要件や無人運転に関するルールなどを整備しなければならない。このほかにも、インフラ協調システムの観点から道路法、通信の観点から電波法などが関わってくることもある。

    (初稿公開日:2022年8月1日/最終更新日:2024年3月15日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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