
高まり続ける物流需要を背景に、世界的にドライバー不足が深刻化している。国内の業界は、働き方改革に伴う物流の2024年問題に直面し、事業変革への対応を迫られている真っ只中だ。
その救世主として期待されているのが自動運転技術だ。ADAS(先進運転支援システム)導入による運転負担軽減や隊列走行、自動運転レベル4(高度運転自動化)による無人化で現状を打破し、新しい物流システムの早期構築が求められている。
国内では、高速道路におけるレベル4輸送の取り組みが本格化するなど、物流DXの波が次々と押し寄せている。自動運転トラックに関する最新動向に触れていこう。
・2025年7月1日:取り組み情報をアップデート。掲載企業を追加
・2025年1月22日:いすゞ勢の新東名での実証実験やT2の取り組みなどを追記
・2024年8月30日:自動運転トラック事業をやめた企業について記載
・2019年2月6日:記事初稿を公開
記事の目次
- ■自動運転トラックの利点・メリット
- ■海外の自動運転トラック開発企業
- ボルボ・トラックス:AuroraやWaabiとパートナーシップ
- ダイムラー・トラック:2027年に米市場でレベル4実用化
- ヒョンデ(ヒュンダイ):レベル3トラックの走行実証実施
- フォード:レベル4のコンセプトモデル発表
- Plus:米国や中国、欧州でもパイロットプログラム着手
- Kodiak Robotics:自動運転ソリューションのサブスクも計画
- Gatik:いすゞやNXグループも出資 将来日本市場にも進出?
- Aurora Innovation:商用輸送サービスを開始
- Pony.ai:後続車無人隊列走行の実証に着手
- KargoBot:DiDiから独立 コックピットレスの大型無人トラック開発
- DeepWay:アポロの技術でレベル4大型トラック開発へ
- Einride:EV×自動運転の高効率運行を実現
- Stack AV:動きないもののポテンシャルは高い?
- 頭角を現すスタートアップが続々登場
- ■自動運転トラック事業をやめた海外企業
- ■日本の自動運転トラック開発企業
- ■日本における物流と自動運転、実現のロードマップは?
- ■【まとめ】日本でも高速道路レベル4が加速中
- ■関連FAQ
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■自動運転トラックの利点・メリット
まず自動運転トラックの利点・メリットを説明していく。
ドライバー不足の解消
EC(電子商取引)需要の高まりなどを背景に輸送需要は増加の一途をたどっている。近年は収まりつつあるもののEC業者間の「送料無料」サービス合戦のしわ寄せも物流業界を直撃し、ドライバーを取り巻く環境は悪化するばかりだ。
働き方改革に伴う物流の2024年問題を背景に、物流業界は深刻化するドライバー不足への対策・変革を迫られている。
その解決策の1つが、自動運転技術を活用した輸送だ。無人運転の導入はドライバー不足の解消に直結する。長距離トラックの場合、最終的にはレベル3や手動走行併用のレベル4で、例えば高速道路のみ自動運転を可能にするといった形で社会実装が進むものと思われるが、高速道路における長距離移動を分離するサービスも進むかもしれない。
高速道路直結の物流拠点で一般トラックから自動運転トラックに荷物を乗せ換え、自動運転トラックによって遠方まで輸送した後、再度一般トラックに乗せ換える手法だ。荷物を乗せ換える手間がかかるものの、この手法であれば自ら自動運転トラックを導入することなく長距離無人輸送の恩恵を受けることができる。
また、過去に実証が進められた後続車無人隊列走行も、先頭を走る1人のドライバーにより大量の輸送が可能となり、ドライバーの省人化・負担軽減につながる。
いずれにしろ、日本における自動運転トラックはまず高速道路から社会実装を始める可能性が高そうだ。
安全性の向上
大きく重たいトラックの事故は大事故につながる可能性が高く、安全性の確保が最重要課題となっているが、自動運転技術を導入することで事故の防止や被害拡大を図ることができる。
トラックにおける自動運転は、そのサイズや重量からより高度な技術を要するため一般乗用車より導入が遅れているが、自動運転レベル2(部分運転自動化)に相当するADAS技術を搭載したトラックの市場化が始まり、事故抑制効果に期待が持たれている。
また、後続車有人隊列走行を実現するため、定速走行・車間距離制御装置(ACC)と車線維持支援装置(LKA)を組み合わせた技術開発・商品化も進んでいるようだ。
配送の効率化
トラックを無人化することで1台当たりの稼働時間を伸ばすことができるほか、走行速度など一定の環境下で運行するため輸送時間も安定する。また、自動運転とともに車両・運行管理システムの導入も飛躍的に進むものと思われ、全体の運行管理計画なども立てやすくなる。
倉庫業の自動化なども組み合わせることで、コストの削減や業務の効率化はいっそう進むものと思われる。
環境面への貢献
事業用トラックの大半はディーゼル車で、排気ガスによるCO2(二酸化炭素)などの排出により一昔前は環境への悪影響が大きく騒がれていた。近年クリーンディーゼルなど低炭素型ディーゼルトラックの比率が高まっているが、自動運転の導入でこれまでより燃費の良い走行が可能になるほか、自動運転と相性の良いEV(電気自動車)が導入されれば、その効果はいっそう高まるものとみられる。
■海外の自動運転トラック開発企業
ボルボ・トラックス:AuroraやWaabiとパートナーシップ
ボルボ・グループのボルボ・トラックスは2018年、ノルウェーのBrønnøy Kalk AS社との提携のもと、鉱山から近くの港までの約5キロのルートを運行する初の商用自律ソリューションの本格実証に着手したのを皮切りに、2019年にはEVトラックコンセプトカー「Vera(ベラ)」を活用した港湾エリアにおける搬送実証計画を発表した。
同所では2023年にセーフティドライバーなしのドライバーレスによる商業採掘作業を達成しており、2025年までに100万トンを超える石灰石の自動運搬に成功している。
自動運転開発に向けては、2019年に自動運転サービスを手掛ける部門Volvo Autonomous Solutionsを設立したほか、2021年に米Aurora Innovationと提携し、自動運転の共同開発を進めるとともに北米への進出も本格化させた。
2024年には、量産準備が整った自動運転トラックとして「ボルボ VNL オートノマス」を発表した。同年12月には、DHLサプライチェーンを顧客にテキサス州内の2ルートでセーフティドライバー付きの運用を開始している。
2025年2月にはカナダのWaabiとのパートナーシップを発表し、自律走行輸送ソリューションの開発を進めていくとしている。
2025年6月には、ダイムラー・トラックとソフトウェア定義車両(SDV)プラットフォームを通じて商用車業界を変革し、新しい業界標準を確立することを目的に合弁Coreturaを設立したことも発表された。
世界的なトラック業界の地図更新はまだまだ続きそうだ。
▼Volvo Trucks公式サイト
https://www.volvotrucks.com/en-en/
ダイムラー・トラック:2027年に米市場でレベル4実用化

ダイムラー・トラックは、米国市場においてハブツーハブ運行用の長距離輸送用レベル4トラックを2020年代末までに量産化する目標を掲げている。
2019年に自動運転トラック開発を手掛ける米Torc Roboticsに出資・子会社化し、クラス 8 トラックのFreightliner eCascadiaの自動運転化を推進している。Torc Roboticsは2024年、複数車線の閉鎖コース環境でドライバーレス走行の本格実証に着手している。最高時速 65 マイル(時速104キロ)で走行可能という。
2025年には、自動運転対応トラックプラットフォームの最新版をTorc Roboticsに納入したことを発表した。Torcは商業リリースに向けて製品化段階に入り、ニューメキシコ州、テキサス州、アリゾナ州の既存ルートに加え、テキサス州のラレドとダラス間の新路線でも自動運転実証に着手する予定としている。
また、2025年には、子会社の三菱ふそうトラック・バスがトヨタ傘下の日野と対等統合することも発表されている。子会社を通じトヨタグループとの関連も深まり、CASE分野でどのような協業が起こるのか、要注目だ。
▼Daimler Truck AG公式サイト
https://www.daimlertruck.com/en/
ヒョンデ(ヒュンダイ):レベル3トラックの走行実証実施
韓国ヒョンデ(ヒュンダイ)も自動運転トラックの開発に力を入れているようだ。自動運転レベル3(条件付き運転自動化)相当の技術を搭載した自動運転トラックの走行実証実験を2018年8月に実施している。
最大積載量40トンの大型セミトレーラートラック「Xcient」に自動運転システムを搭載し、義王~仁川間の高速道路40キロメートルをドライバーの介入なく走破したという。
▼ヒュンダイ公式サイト
https://trucknbus.hyundai.com/global/en/
フォード:レベル4のコンセプトモデル発表
米フォードの商用車部門は、自動運転技術を搭載した電動大型トラックのコンセプト「ビジョン」を2018年9月に発表した。自動運転レベル4の技術を搭載するほか、電動化、コネクテッド化、軽量化などに関して同社の将来像を表したものという。
また、2019年1月には、商用バンやピックアップトラックの自動運転共同開発に向け独VWと提携することが報じられている。
▼Ford公式サイト
https://www.ford.com/
Plus:米国や中国、欧州でもパイロットプログラム着手

2016年設立の中国系スタートアップPlusは、さまざまな車体プラットフォームに統合可能なレベル4ソリューション「SuperDrive」をはじめ、ADAS「PlusDrive」、AI ベースの認識ソフトウェア 「PlusVision」の開発などを進めている。
中国では、2018年に中国の青島港で同社初の無人レベル4の実証を行ったのを皮切りに、2021年には3,000キロメートル超の蘇州と敦煌間を往復する長距離実証も行っている。
SuperDriveは、ヒョンデやIVECO、TRATON GROUPなどとのパートナーシップのもと、米国や欧州、オーストラリアで取り組みを加速しているようだ。このほか、アマゾンやボッシュ、Luminar Technologies、Navistarなどもパートナー企業に名を連ねている。
2025年3月には、ティアフォーとの提携も発表している。Plusのエンドツーエンドの仮想ドライバーAIモデルとティアフォーのAutowareベースのプラットフォームを統合し、先進的な自動運転ソリューション「Autonomy 2.0」の開発と導入を促進するという。日本市場への導入を目指すとしている。
▼Plus公式サイト
https://plus.ai/
Kodiak Robotics:自動運転ソリューションのサブスクも計画
2018年創業の米スタートアップKodiak Roboticsは、自社開発した自動運転システム「Kodiak Driver」で長距離輸送のゲームチェンジに挑んでいる。
高速道路を主体とした長距離ミドルマイル輸送を自動運転化し、ファーストマイルのピックアップとラストマイルの配達を従来通りの手動運転で行う現実路線で開発を進めている。対象路線は北米西海岸から東海岸に至る1万8,000 マイル以上の路線を網羅したという。
サブスクリプションサービスも計画しており、自動運転ソフトウェアとハードウェアで構成されるKodiak Driverを1マイルあたりの低額料金で運用するサービスを2025年以降に事業化する予定としている。
2024年8月には、JB Hunt Transport ServicesとBridgestone Americasとともに、アトランタからダラスまでの約 750 マイルに渡る長距離ルートの自動運転走行を行ったことを発表している。
▼Kodiak Robotics公式サイト
https://kodiak.ai/
Gatik:いすゞやNXグループも出資 将来日本市場にも進出?

2017年設立の米Gatikは、軽トラックから中型トラックを対象としたミドルマイルの自動運転に焦点を当てた開発を進めている。
米小売大手のウォルマートと提携しており、2021年夏ごろからはアーカンソー州の店舗間約11キロメートルを無人走行する実証も行っている。
2021年4月には、いすゞの北米法人いすゞノースアメリカコーポレーションと自動運転中型トラックの開発に向けパートナーシップを結んだことが報じられている。その後、2024年5月にはいすゞがGatikに対し、3,000万ドル(約47億円)を出資することに合意したことが発表された。
同年8月には、NIPPON EXPRESSホールディングスもGatikへの出資を発表している。資本関係を通じて自動運転トラック事業の知見を深め、将来的に日本での自動運転トラック事業への参入を目指す方針としている。
▼Gatik公式サイト
https://gatik.ai/
【参考】関連記事としては「自動運転で「ミドルマイル物流」に照準!米Gatikの存在感急上昇」も参照。
Aurora Innovation:商用輸送サービスを開始

タクシー用途など乗用車向けの自動運転開発で話題に上がることが多い米オーロラ・イノベーションも、振り出しは自動運転トラック開発だ。
自動運転システム「Aurora Driver」は大型トラックから乗用車まで広く統合可能で、トヨタをはじめUber、ボルボ・グループ、FedEx、PACCARなど、移動や輸送を担う企業と広くパートナーシップを結んでいる。
2025年4月には、テキサス州ダラス~ヒューストン間で商用自動運転トラック輸送サービスとして、定期的な無人配送を開始したことを発表した。約350キロ離れた両市間を、時速65マイル(約100キロ)で高速道路を無人走行するという。今後、2025年中に同州フォートワースからアリゾナ州フェニックスを結ぶ新ルートもサービス化するとしている。
2025年1月には、独コンチネンタルと米NVIDIAと次世代NVIDIA DRIVE Thorシステムオンチップを搭載した無人トラックの大規模導入に向け長期的な戦略的パートナーシップを締結したことも発表している。2027年に量産を計画しているAurora Driverと統合するという。
各州の規制に左右されるが、北米では高速道路におけるレベル4トラックが本格的な商用化を迎え始めているようだ。
▼Aurora Innovation公式サイト
https://aurora.tech/
Pony.ai:後続車無人隊列走行の実証に着手
トヨタが出資する自動運転タクシー開発企業の中国Pony.aiも、自動運転トラックに参入している。ロボトラック「ポニートロン」は、プラトーン自動運転ソリューション「托凌(トゥオ・リン)」により、後続車無人隊列走行を実現するという。有人の先頭車両含めレベル4水準のトラックで構成されるという。
2024年に広州や北京で高速道路の走行試験ライセンスを取得しており、同年末には同国初というドライバーアウト型ロボットトラック隊列走行試験の認可も取得したとしている。
自律貨物ネットワークとしては、北京から上海などを経て深センを結ぶ長距離ルートの構築を計画しているようだ。
▼Pony.ai公式サイト
https://www.pony.ai/
KargoBot:DiDiから独立 コックピットレスの大型無人トラック開発
中国配車サービス大手Didi Chuxing(滴滴出行)の自動運転トラック事業が2023年にスピンオフする形で誕生したのがKargoBotだ。CEOには、は、Aptivを経てDiDiの自動運転開発部門でゼネラルマネージャーを務めていたJunqing Wei氏が就任している。
ロボットトラックのスケーラブルな商業化を目指し、ドライバー1人が2~6台のトラックを操作できるハイブリッド無人運転システム(後続車無人隊列走行)の開発などを進めている。
2025年4月の上海モーターショーでは、運転席のない大型無人トラック「KargoBot Space」を発表した。コックピットをなくしたことで貨物スペースを25%増加させ、有効積載量を10%増加させることができるという。
KargoBot Spaceに基づくバルク貨物モデルと速達モデルを2027年に量産し、25万元+サービス料5万元/年(約600万円/年)で誰もがロボットフリートを持つことができるようになるとしている。
自動運転専用設計の大型トラックなど、独自路線の動向に要注目だ。
▼KargoBot公式サイト
https://kargobot.ai/
DeepWay:アポロの技術でレベル4大型トラック開発へ
百度(Baidu)とLionbridgeは2020年、自動運転トラック事業を目的に合弁DeepWayの設立を発表した。アポロプロジェクトの技術を活用した自動運転トラックだ。
2021年に発表した大型EVトラック「DeepWay Star」は、アダプティブクルーズコントロールやレーンチェンジアシスト機能などを備えたレベル2相当の高速道路インテリジェント運転システムを搭載しており、継続的なアップグレードによって最終的にはレベル4クラスの自動運転機能を実現するとしている。
▼DeepWay公式サイト
https://deepway.com/
Einride:EV×自動運転の高効率運行を実現
Einrideは自動運転貨物EVの開発を手掛けるスウェーデンのスタートアップで、2016年創業。2019年に公道走行を開始し、2020年には次世代車両の商用展開を発表している。倉庫内などの限定空間から徐々に一般公道へとODDを拡大していく計画だ。
自動運転システム「Einride Driver」をはじめ、自動運転車両「eBot」、車両群を監視するコントロールタワーなど、複数の先進的なハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントを採用しており、スウェーデンと米国の公道などですでに導入されている。
スウェーデンのMorgongåvaでは、オンライン薬局大手Apoteaとのパートナーシップのもと、同社の倉庫間で商用自動運転による配送業務が毎日行われているという。
▼Einride公式サイト
https://www.einride.tech/
Stack AV:動きないもののポテンシャルは高い?
Argo AI創業者のブライアン・サレスキー氏が2023年に設立したスタートアップ。ペンシルベニア州ピッツバーグに本拠を構える。ベンチャーラウンドでは、ソフトバンクグループが10億ドル(約1,500億円)を出資したことで話題となった。
今のところ特段の動きはないようだが、有力スタートアップArgo AIの技術力と、ソフトバンクグループによる出資という点から今後大化けする可能性が考えられる。同社の動向を注視したい。
▼Stack AV公式サイト
https://stackav.com/
頭角を現すスタートアップが続々登場

このほかにも、例えば中国ではWestwell(2016年設立)、TrunkTech(2017年設立)、FABU Technology(同)、Inceptio Technology(2018年設立)、SENIOR(2020年設立)、Qingtian Truck(2021年設立)など、続々とスタートアップが表舞台に出始めている。
TrunkTechは中国EC大手京東集団傘下のJD Logisticsなどとともに高速道路における自動運転輸送実証を進めており、累計輸送距離は120万キロメートルを突破したという。
また、Pony.aiなど、自動運転タクシー開発などを主力としてきた各企業の中からも、自動運転トラック領域に進出する動きが見られる。
自動運転タクシーなどと同様、自動運転トラックもスタートアップが先行して開発を進めている印象で、今後もまだまだ新規参入が相次ぐことになりそうだ。
▼TrunkTech公式サイト
https://www.trunk.tech/
【参考】TrunkTechについては「TrunkTech、中国×自動運転トラックで大本命!?120万キロという累計輸送距離」も参照。
■自動運転トラック事業をやめた海外企業
その一方、自動運転トラック事業から撤退する企業も出始めている。2016年創業のエンバーク・トラックスは2023年、全従業員宛にレイオフを告げ、その後トラック事業を売却したことが報じられている。また、隊列走行技術の開発を進めていたLocomationも廃業が報じられている。
詳しくは「自動運転トラック開発の米Embark、会社清算か 従業員70%解雇」の記事も参照してほしい。
2015年創業の中国系新興企業TuSimpleはまさかの転身を遂げた。一時は米ナスダック市場への上場、日本進出など有力企業に数えられていたが、2024年初頭に上場廃止する方針を発表し、米国事業を縮小していた。
TuSimple:自動運転業界からアニメ・ゲーム業界へ転身

2015年創業の中国系新興企業TuSimpleは、米アリゾナ州を起点に自動運転が可能な物流網を拡大していく方針を掲げ、長距離自動運転トラックの実用化を進めていく戦略を推し進めていた。
運転席無人の走行実証成功をはじめ、米ナスダック市場への上場、日本進出など有力企業に数えられていたが、2024年初頭に上場廃止する方針を発表し、米国事業を縮小した。その後、2024年末までに社名を「CreateAI」に変更し、事業を大幅変更したようだ。AI技術でアニメやゲーム業界に変革をもたらすとしている。まさかの転身だ。
その一方、TuSimpleの共同創業者の一人Nan Wu 氏が、同社の事業を引き継ぐかのように2024年に日本国内で新会社ロボトラックを設立している。
2025年3月には、資金調達シードラウンドで東京大学協創プラットフォーム、PKSHAアルゴリズム2号ファンド、AIS CAPITALなどを引受先とした第三者割当増資で3億円を調達したと発表した。
Wu氏は早稲田大学で客員准教授を務めていたこともあり、日本に馴染みがあるようだ。今後、日本市場で存在感を増していくことになるのか、必見だ。
【参考】TuSimpleの動向については「自動運転トラック開発の米TuSimple、「AIアニメ事業」に転換 いきなりの発表」も参照。
■日本の自動運転トラック開発企業
いすゞ自動車:アメリカでミドルマイル自動運転に挑戦

いすゞは2016年、日野と自動走行・高度運転支援に向けたITS技術の共同開発を行うことに合意し、視界支援、路車間通信、加減速支援、プラットフォーム正着制御の4つの技術を開発していくことを発表した。
2019年にボルボ・グループと商用車分野における戦略的提携に向けた覚書を締結し、自動運転をはじめとしたCASE対応に向け技術的な協力体制を構築するとともにUDトラックスの譲渡に合意した。
ボルボ・グループとは、20年以上の長期にわたる長期戦略的提携を交わしつつ、2021年3月には日野とトヨタと商用事業でCASE分野における協業を行い、再度トヨタとの資本提携に合意したことを発表している。
2024年には、米GatikやApplied Intuitionとそれぞれパートナーシップを深めている。Gatikとは2021年にいすゞの北米法人がレベル4トラックの開発で提携を交わしており、今回新たに3,000万ドルを出資し、パートナーシップをより強固なものとした。計画では、2027年にレベル4商用車事業を開始するとしている。
Applied Intuitionとは、最長5年間のパートナーシップ戦略に基づきレベル4トラックの共同開発を加速する。日本の高速道路輸送向けにレベル4トラックを開発し、2026年に実証を行い2028年度中の事業開始に向け準備を進めていく方針という。
このほか、UDトラックス、日野自動車、三菱ふそうトラック・バスの国内商用車メーカー4社は、豊田通商、先進モビリティ、みずほリサーチ&テクノロジーズが進めるRoAD to the L4事業に協力し、高速道路における路車協調による自動運転トラック実証に参加している。
【参考】いすゞの取り組みについては「いすゞ、米国で攻勢!ミドルマイル自動運転車を2027年量産開始へ」も参照。
UDトラックス:2030年までに完全自動運転トラックの量産を目指す

いすゞ自動車グループ傘下となったUDトラックスは、2018年4月に発表した次世代技術ロードマップ「Fujin & Raijin(風神雷神)—ビジョン2030」の中で自動運転技術を柱の1つに位置付け、研究開発を進めている。2030年までに完全自動運転トラックと大型フル電動トラックの量産化を目指す方針だ。
レベル4関連では、工場の構内や港湾など一定区域における安全な低速自動運転技術の開発をはじめ、高速道路における自動運転やCACC技術を用いたトラックの隊列走行技術などの開発を進めており、2018年に大型トラックによるレベル4のデモンストレーションを本社敷地内で実施している。
2021年には、神戸製鋼所とレベル4を搭載した大型トラックによる自動運搬技術の実証を行うことを発表した。
大型トラック「クオン」をベースとしたレベル4車両を1台使用し、加古川製鉄所内の運搬コースの一部をルートに2022年下半期を目途に走行実験を行う予定としている。実証を通じ、スマート物流サービスや製造・物流現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を図っていく構えだ。
いすゞなどとともに、RoAD to the L4における実証事業にも取り組んでいる。
【参考】神戸製鋼所との取り組みについては「UDトラックス、自動運転レベル4の共同実証実施へ 神戸製鋼所と合意」も参照。
日野自動車&三菱ふそうトラック・バス:統合に合意
トヨタグループにおいてバス・トラック部門を担う日野は2018年、独フォルクスワーゲン(VW)グループのバス・トラック部門と戦略的協力関係の構築に向けた合意を交わし、既存の内燃パワートレーンやハイブリッド、電動パワートレーンをはじめ、コネクティビティや自動運転システムなどを含む技術領域で協力体制の構築を目指すとしている。
一方、ダイムラー・トラック傘下の三菱ふそうは、社長兼最高経営責任者(CEO)のハートムット・シック氏 が2018年、「レベル3(条件付き運転自動化)を通り越してレベル4を目指す」ことを公言し、ダイムラーと協調しながら2025年にも高速道路などに限定した完全自動運転トラックを実用化する意向を示していた。
両社は2023年5月、経営統合についてと親会社のトヨタ、ダイムラー・トラックを含む4社で基本合意書を締結したと発表した。その後、日野の認証問題などが浮上し延期されていたが、2025年6月、最終合意に達したことが発表された。
三菱ふそうと日野は対等な立場で統合し、2社を100%子会社とする持株会社を設立して2026年4月の事業開始を目指す。トヨタとダイムラー・トラックは、持株会社の株式をそれぞれ 25%保有することを目指すという。
統合会社は、高い競争力のもと商用車分野におけるCASE技術開発を通じてグローバルにビジネス強化を図っていく。もちろんそこには自動運転技術も含まれる。
世界的に押し寄せている業界再編の波を象徴する統合事例と言える。日本国内では、いすゞ・UDトラックス陣営と日野・三菱ふそう陣営のわかりやすい構図となった。現状、自動運転分野においては協調領域が大半を占めており、2陣営4ブランドの体制は大きく変わらないものと思われる。
【参考】日野については「日野の自動運転戦略 建機やトラックの無人化に着手」も参照。
【参考】三菱ふそうについては「三菱ふそう2019年中に自動運転レベル2導入 その後はレベル4へ「飛び級」」も参照。
TRUST SMITH:国内ベンチャーも自動運転トラック開発へ

東大発AIベンチャーのTRUST SMITHは、工場敷地内における自動搬送トラックの開発を進めている。ファクトリーオートメーションを実現するソリューションを中心とした研究開発の中で、自動運転車による工場内の事業自動化を支援する関連会社SMITH&MOTORSを立ち上げ、障害物回避型アームアルゴリズムや自動搬送ロボット、自動搬送トラックの開発などを進めている。
自動運転システム向けのオープンソースソフトウェア「Autoware」を活用する予定で、レーザレーダーやカメラ、GNSSなどの環境センサーを活用し、自車位置や周囲物体を認識しながら倉庫内などで自律走行を実現していくという。
【参考】TRUST SMITHについては「東大AIベンチャー、「完全自動化工場」へ自動運転トラックの開発スタート!」も参照。
T2:2025年夏にレベル2トラック事業化

三井物産は2022年、AI企業Preferred Networksの技術提供のもと、自動運転トラック開発を手掛けるT2を設立した。高速道路を中心にレベル4網を構築していく構えだ。
2023年には三菱地所との資本業務提携に合意し、レベル4トラックによる日本の幹線輸送と、その発着地点となる次世代基幹物流施設を融合させたシームレスな輸送を実現していくという。
まずはレベル2トラックによる幹線輸送の事業化を2025年7月に開始し、2027年にレベル4自動運転トラックを事業化する計画だ。
2024年11月には、レベル4トラックでの幹線輸送サービス実現に向けた仲間づくりの一環として「自動運転トラック輸送実現会議 〜L4 Truck Operation Conference〜」を設立した。佐川急便、セイノーホールディングス、日本貨物鉄道、日本郵便、福山通運、三井住友海上火災保険、三井倉庫ロジスティクス、三菱地所、 KDDIが参加している。
2025年に関東・関西間の高速道路一部区間で自動運転トラックを用いた幹線輸送事業を開始する計画で、セイノーホールディングスなど各社とともに実証を積み重ねている。
2025年に入ってからは、F-LINE系の味の素、ハウス食品グループ本社、カゴメ、日清製粉ウェルナ、日清オイリオグループをはじめ、パナソニックグループや大王製紙、日清食品、東邦ホールディングス、江崎グリコ、キユーピー、住友化学、住化ロジスティクス、アサヒ、キリン、サッポロ、サントリーなど、荷主側の実証参加が相次いでいる。
2025年6月には、神奈川県綾瀬市から兵庫県神戸市までの高速道路区間約500キロを走破する実証に初めて成功したと発表している。レベル2+による走行形態だが、夜間から明け方という視認性が悪い条件のもと、該当区間における自動運転率が99%に達したという。ほぼ無介入ということだ。
目標達成に向けた自動運転システムの向上、そして荷主を巻き込んだ実務面における課題解消に大きな期待が寄せられる。
【参考】T2については「日清、「カップ麺」輸送を自動運転化へ?食品大手、いよいよ無人化に本腰」も参照。
ティアフォー:高精度地図不要のトラック向け自動運転システム開発へ
自動運転バスやタクシーの開発で活躍するティアフォーも、自動運転トラック領域に足を踏み入れた。高速道路におけるトラック向けの自動運転システム開発を発表し、2024年度から新東名高速道路で実証に着手している。
独スタートアップdriveblocksの技術を活用し、長距離・広域の高速道路環境に対応できる高精度地図を必要としない認識技術を導入する予定という。
2025年3月には、同業のPlusとの提携を発表した。従来よりも広範な運行設計領域を可能とする次世代自動運転システムの開発に共同で取り組むとしている。End-to-End AIを活用した「自動運転2.0」を実現し、さまざまな車種・環境に対応可能な自動運転システムの構築を目指す構えだ。
同年4月には、経済産業省の補助事業「モビリティDX促進のための無人自動運転開発・実証支援事業」における自動運転トラック開発事業を完了したと発表した。
新東名高速道路に設定された自動運転車優先レーン開通区間(駿河湾沼津SA~浜松SA間)における実証走行に成功したという。
エンドツーエンドの自動運転システム開発に徐々にシフトしているようにも思われ、さらなる高度な自動運転開発に注目だ。
【参考】ティアフォーの取り組みについては「自動運転トラック、新東名高速で「高精度地図なし」実証 ティアフォー」も参照。
■日本における物流と自動運転、実現のロードマップは?
高速道路におけるレベル4実現へ官民が本腰
官民ITS構想・ロードマップでは、2020年度に新東名高速道路での後続車無人隊列走行システムを技術的に実現する目標を掲げ、2021年2月に新東名高速道路の一部区間で3台の大型トラックが時速80キロメートル、車間距離約9メートルで隊列走行する実証に成功している。
レーダーを用いて前方を走行する車両との車間距離を一定に保つ技術「ACC(Adaptive Cruise Control)」に加え、車車間通信でより精密な車間距離制御を行う「CACC(Cooperative Adaptive Cruise Control:協調型車間距離維持支援システム)」などが実用化される見込みだ。
実証を積み重ね、2022年度以降に東京大阪間の高速道路における後続車両無人の隊列走行の商業化実現を目指す方針としていた。
最新の計画となる第2期デジタルライフライン全国総合整備実現会議では、先行的な取組み(アーリーハーベストプロジェクト)として2024年度から「自動運転支援道」整備に向けた実証を開始するとしている。
新東名高速道路の駿河湾沼津SA~浜松SA間の100キロ超の区間で、合流支援情報や車線変更を支援するための情報提供をはじめ、自己位置特定精度を向上する環境整備、V2X・V2N通信の環境整備などを進めていく。
最新のロードマップ案によると、2025年度以降東北自動車道の佐野SA~大谷PA間約40キロでも取り組みを開始し、長期的に東北~九州へインフラ整備を拡大していく。2030年までにレベル4自動運転トラックの運用を開始し、2030年代に拡大を図っていくとしている。
一般道における自動運転トラックに関する取り組みや施策は特にない。まずは自動運転バスやタクシーで技術を磨くことが先決のようだ。
ラストマイル関連では、主に歩道を走行する自動配送ロボットに加え、車道を走行する中速・中型モデルの実用化に向けた議論や実証が進められている。トラックではないが、物流を担う自律走行ロボットとしてこちらの動向にも注目したい。
【参考】日本における自動運転トラック関連の施策については「【重要】自動運転サービスの「支援道」、ロードマップ案が判明」も参照。
■【まとめ】日本でも高速道路レベル4が加速中
米国では、Aurora Innovationなどの先行組が商用化段階に達し、まもなく本格ビジネス化のフェーズを迎えそうだ。一方、自動運転トラックに対する各州の対応は分かれており、広域展開にはなお時間を要するものと思われる。規制に関する動向含め注視したい。
中国では、スタートアップの新陳代謝が依然として活発なようで、新興勢が次々と水面下から顔を覗かせている。こちらも規制の関係で本格運行には待ったがかけられており、政府の動向に注目したいところだ。
日本においては規制面はほぼ整っており、あとは安全確保に向けた技術面とインフラ要件、運行ルールを煮詰めるだけとも言える。自動運転開発は国内でも飛躍的な伸びを見せており、高速トラック領域では米中を追い越す可能性も出てきた。
日進月歩で進化を遂げる自動運転業界。自動運転バスやタクシーとともに、トラック領域における自動運転化の動向にも引き続き注目していきたい。
■関連FAQ
トラックが自動運転化されれば運転手不足の解消につながり、輸送コストも低減されていく。トラックに限ったことではないが、安全性の高い自動運転システムが実現すれば、事故率も手動運転より飛躍的に低くなる。
アメリカ企業ではEmbark TrucksやKodiak Robotics、中国系企業ではPlus、カナダ企業ではGatik、日本企業では東大発AIベンチャーのTRUST SMITHなどが挙げられる。
まず高速道路での隊列走行で「後続車無人」を実現するのが第一歩だ。その後、高速道路での自動運転レベル4(高度運転自動化)の実現を2025年以降に目指すロードマップを政府は策定している。詳しくは「官民ITS構想・ロードマップ」を参照。
日本のトラックメーカーも自動運転化に向けて技術開発を進めている。例えば、いすゞ自動車グループ傘下となったUDトラックスは、2030年までに完全自動運転トラックの量産化を目指している。日野自動車はADASの技術開発に注力しているが、トヨタグループの一員として、トヨタ本体との技術のシェアに関しての期待感も高い。
ボルボ・トラックスは自動運転スタートアップの米Aurora Innovationと提携し、まず高速道路での自動運転実用化に向けた取り組みを進めている。ダイムラーはいち早く自動運転レベル2を実現したトラックメーカーとして注目を集めた経緯があり、2019年にレベル4実用化に向けて5億ユーロ(約620億円)を投資する計画を発表している。
(初稿公開日:2019年2月7日/最終更新日:2025年7月1日)
【参考】関連記事としては「自動運転が可能な車種一覧」も参照。